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特別決議

拙速な国立大独立行政法人化案に与せず大学と学問の創造的発展のために議論と行動を広げよう

 国立大学は全国に配置され、その学費も比較的低廉のため、教育の機会均等を国民に保証する役割をこれまで果たしてきました。また、私立大学・公立大学等との連携の中で、主に長期的・基礎的視点を必要とする学問分野の研究・教育を国立大学は担ってきました。このような日本の高等教育の中での国立大学の役割が十分に分析・検討されないまま、『自民党提言(2000年5月9日)』『文部大臣説明(2000年5月26日)』に基づき、国立大学の独立行政法人化を軸とする上からの強権的な国立大学の再編・統合が、今まさに拙速に進められようとしています。

 独立行政法人化は、国立大学のみならず大学制度の根幹をなす「学問の自由」、「大学の自治」をも大きく脅かすものです。
 自民党・文部省両案は、「法人格の賦与が大学の自主性を高め、独立性の確保につながる」という昨年来の論理に依然として立脚しています。しかし独立行政法人とは「評価、中期目標、人事」を通した国家による多様な介入が前提の制度であり、国家に対する大学の独立性を逆に損ね、大学の自由度の減少をもたらすことは明らかです。両提案ともに一定の修正措置を施すとしていますが、その内容は「通則法枠内での調整法」案であり、このような独立行政法人の本質を何ら変更するものではありません。
 また、自民党提言は独法化推進に加え、トップダウン型運営体制の導入や学長選考方式の見直し等も主張しています。少数の大学管理者への権限の集中は「大学の自治」を明白に否定するものであり、また「大学の自治」が「学問の自由」を保証していることを想起するならば、自民党提言は憲法と教育基本法の理念に対する明白な侵害です。

 現在の国立大学に少なからぬ問題があること、私たちはそのことまでをも否定するものではありません。しかしその問題は、文部省が自らの裁量行政と独法化後の管理強化を厚顔にも棚上げして強調する「国立大学の自主性・自律性・自己責任の範囲の不明瞭さ」にとどまるものではありません。また、一面的理解に基づいて自民党が強調する「国立大学における競争的環境の不在」に根源的に起因しているのでもありません。現在深刻な問題は、教職員の繁忙化とそれに伴って危惧される教育研究体制の空洞化、パート職員等の増大にみられる大学に働く者の身分の不安定化、大学院生等の若手研究者に対する不十分な処遇等々の問題であり、これらがこれまでの乏しい予算措置と相次ぐ定員削減、教養部廃止と大学院重点化等の大学審路線の行き詰まり、総じてこれまでの貧困な大学政策に起因することは明らかです。このような問題を一顧だにしようとしない自民党・文部省の姿勢は、彼らの言う「大学改革」としての独立行政法人化という論理がいかにまやかしかを雄弁に物語るものです。

 昨年以来、大学教授会、大学教官有志、学術団体、教職員組合等によって独法化反対運動が全国規模で活発に展開されています。この間東北大学職員組合でも総長・評議員への申し入れ、学習会の開催、学内での署名・募金集め、学外での情宣活動等に積極的に取り組みました。
 国立大学の設置形態の変更は、わが国の学問研究の将来を左右するだけでなく、教育制度全体、さらには世界の学術文化に大きな影響を及ぼすものであり、十分な時間をかけて真摯に議論・検討すべき性質のものです。私たちは、その根拠さえ曖昧な国家公務員削減のつじつま合わせに端を発し、「大学改革」の名のもとに強行されようとしている国立大学の独立行政法人化にあらためて反対します。
 そして、現行路線下の独立行政法人化に東北大学として反対することを総長に強く求めるとともに、独立行政法人化の重大な問題性を内外に一層訴え、自由で創造的な学問と大学の発展に引き続き努めていくことをここに宣言します。

右、決議します。

2000年7月14日 東北大学職員組合2000年度定期大会


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