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人事院勧告・給与法改定に法的根拠なく追随し、東北大学教職員の生活設計に大打撃を与える給与改定の強行に抗議する

 国立大学法人東北大学は、2005年人事院勧告および給与法改定に追随する形で、本年4月1日からの給与改定を強行した。我々は、このことに対して強く抗議する。

 本職員組合は、2005年10月18日に、「教職員の一時金を、本年12月期から0.1ヶ月引き上げ、年4.5ヶ月とすること」「寒冷地手当を、2003年度以前の状態に戻すこと」「賃金をどうするかは、安易に人勧に準拠するのでなく、優れた人材を確保するためにはどうあるべきかを大学が主体的に判断して、組合に提示すること」「准職員について、給与を月給方式とし、昇給速度を正規職員と同等にすること。退職手当を正規職員と同等の基準で支給すること」「時間雇用職員に対して、勤務時間・勤続期間に応じたボーナス・退職手当を支給すること」を要求して法人側に団体交渉を申し入れ、以後、給与問題を中心とした交渉を重ねてきた。

 法人側役員会は、12月7日に「本学職員の給与の取扱いに関する基本方針」を教職員に提案することを確認した。この「基本方針」は、2005年人事院勧告・給与法改定に追随する形で給与改定を行い、基本給引き下げ・一時金引き上げを行うこと、また、給与構造改編を行い、基本給の大幅引き下げ、調整手当の廃止と地域手当の新設を行うことを柱としたものだった。組合の要求との関係では、一時金や准職員等に関する要求に全く応えないものであり、しかも、「本学の人材確保のために給与はどうあるべきかを主体的に判断すべきだ」という最低限の立脚点も踏まえないものだった。

 組合は、人事院勧告に追随して本学の給与水準を引き下げることにはまったく合理性がないことを昨年8月以来繰り返し指摘してきた。主な論点は以下の通りである。
 第一に、教職員の損失が甚大なことである。組合の当初試算では、定年まで勤務した場合の所得について、従来の制度と比べると、現在45歳の教授は770万円程度、現在40歳の係長は710万円程度の損失が生じることが予想された(基本給、調整手当、地域手当、退職手当のみ考慮)。しかも、2月になり就業規則の文案を提示する段階になって、教授については標準昇給幅が一般の4号俸ではなく3号俸に引き下げられることが初めて明らかにされた。教員の被害額は上記よりもさらに大きくなったと思われる。
第二に、従来の本学教職員の給与水準は類似職種と比べても高くなく、引き下げる必要がないということである。本学の事務・技術職員の平均給与水準は、国家公務員行政職(一)の86%に過ぎない。また、教員の平均給与水準も私学教員の給与より低く、教授が私学の92.3%、助教授が私学の91.3%に過ぎない。職務・職責に応じた処遇というならば引き上げるべきなのである。
 第三に、財政上の必要性がないことである。本学は、2004年度決算で黒字を計上しており、今、給与引き下げを行わなければならない財政状態ではない。また、人事院勧告および給与法改定に追随しなければ運営費交付金が減額されるということはなく、この意味でも引き下げを行わなければならない財政上の必要はない。
 第四に、本学に優れた人材を確保する方針に逆行することである。人事院勧告による給与構造改編は、地域間の給与格差を拡大するものであり、これに追随することは東北大学での人材採用・育成に逆行する。
 さらに、交渉中に明らかになったことであるが、民間企業は人材確保の観点から賃上げを実施しており、宮城県は給与構造見直しを行えばむしろ民間との逆格差になるという見地から賃下げを見送った。東北大学の給与引き下げは、社会情勢に適合したものとも言えないのである。
 こうした我々の根拠ある要求にも拘らず、法人側は人事院勧告に追随して給与の大幅な不利益変更を強行した。しかも、法人側は組合の指摘に対して、「基本方針」でも、団体交渉の席上でも、合理的な反論を何ら行わなかった。「給与構造見直しは、民間の状況を踏まえており、国民からも支持されている」「税金に基づく運営をしており、政府の人件費抑制方針に反する底上げはできない」「中長期的な財務状況は、運営費交付金に対する政府の方針や、毎年の概算要求の結果に制約される」といった、人勧・給与法に追随することを合理化する説明ばかりが繰り返しなされた。国立大学職員の職務評価が国家公務員より低いことに合理性があるかのような発言さえあり、この間の職員の業務と責任の増大を思いやろうともしないその姿勢に、我々は唖然とさせられた。2006年3月17日の経営協議会と役員会でも、組合の主張・要求については概略的に説明されるだけで十分な討論は行われず、「基本方針」が了承されたという。これは、寒冷地手当の削減・廃止のときと同様に、法人化のメリットであるはずの経営の自主性を放棄した態度にほかならない。
 結局、我々の要求と法人側の結論とは、極めて大きくかけ離れたままだった。我々は、今回の法人側の決定には到底納得できないこと、極めて遺憾であり強く抗議すること、我々の理解を得ることなく法人側が一方的に給与システムを変えることになることに対して深い憂慮の念を抱いていることを表明して、交渉を打ち切った。改定後の給与支給にあたり、ここに、あらためて法人側に対する強い抗議の意思を表明する。

 なお、法人側の一つの重要な意思決定として、人事院勧告では地域手当が支給されないとされている地域についても、3%という不十分な数値ではあるが地域手当を支給するという、人事院勧告とは異なる見識を示した。我々はこの点に、今後の法人側の姿勢が改善されていくかもしれないというせめて一縷の希望をつなぎたいと考えるものである。

 組合は、教職員の団結をいっそう強め、労働条件改善のために今後も一層奮闘することを表明する。また、役員会に対しては、組合と立場は違っても、東北大を魅力ある大学にするための人事政策を、自分自身の頭で考えて打ち出すよう、改めて要求するものである。

 2006年4月20日

国立大学法人東北大学職員組合


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