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声明 新教員組織の構築に乗じた金研における任期制・不利益変更の強要に反対する

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国立大学法人東北大学
金属材料研究所長   井上 明久 殿

我々国立大学法人東北大学職員組合(以下「組合」と略す)は、現在までに、貴職が所長を務めている金属材料研究所(以下「金研」と略す)において、学校教育法の改正に伴う新教員組織の構築に乗じて、現在任期なしで雇用されている助手・助教授に対して、任期付きへの転換を含む深刻な不利益変更を強いる方針を決定しようとしているという事実を把握している。本組合はこの方針に反対であり、撤回を求めるとともに対案を提示するものである。

助手について金研案では、

「任期無し助手:下記の3種類より各個人が選択。なお新制度での助教は、任期制が原則である。

a) 新たに任期(7年、再任3年1回限り)を付けて助教
b) 任期無しの准講師(職名については全学での対応見て検討)
 准講師は従来通り教授(部門担当准教授)、附属センター長との密接な連携を持つ小グループ(小部門)、附属センター構成員とする
c) (新制度)助手(任期無し)として研究・教育のサポート(但し極一部の人数)
 なお助教、准講師、助手の待遇は同じである」

(金研「『教員組織の在り方』検討委員会検討経過での中間検討案」(H18年8月6日、9月12日))

となっている。

助教:「任期制が原則である」は誤り

文科省は2006年7月24日の全国大学高専教職員組合(以下、全大教)との会見で、 「助教に任期制を付けることは、各大学の判断であり、助教は任期付きとする指導はしていない。」と述べている。また、全学の「東北大学の教員組織における新制度の導入及び移行に関する方針(案)―『新規採用者』と『在職者の移行』は、分離して考える―」(2006年9 月17日部局長連絡会議資料)のスキーム案に「注4:国立大学法人全体の運用状況等を踏まえ、『助教の任用は任期制等の活用に努める』等の本学の方針を再検討予定であるが、当面、平成27年度以後は、可能な限りすべてのポストが、本学の基本方針に基づく運用となることを前提に、運用の詳細は部局の責任で実施する。」とあり、さらに、本文の「基本方針に関する補足」の4に「教員組織の新制度が、若手教員の活動に十分効果的に機能するためには、助教の任期制等による任用、あるいはテニュア・トラック制の活用を含め、我が国の諸制度全体の熟成を待たねばならない要素がある。したがって、国立大学法人全体の運用状況等を十分踏まえ、本学の基本方針の内容、基本方針に基づく運営への完全移行等について再検討し、中期計画第二期終了前年の平成26年度末迄に結論を出すこととする。それまでの間は、各部局における人事運用制度を尊重し、移行期とする」と明記されている。どこにも、「助教は任期制が原則」という記述はない。意図的な曲解か単なる事実誤認なのかは不明であるが、このような誤った認識に基づいて、任期の定めのない研究助手を、任期付き助教に転換することは労働条件の重大な不利益変更であり、許されない。

准講師:社会的に認知されていない職名

では任期なしの「准講師」はどうか。「准講師」などという職は学校教育法に規定がなく、このような職名は、たとえ学内で「助教と同等」と認知されることがあったとしても、対外的に通用する保証はどこにもない。科研費の応募書類等には「職番号」を書かねばならない。また、科研費以外の(特に民間の)競争的研究資金を獲得する場合には、このような社会的に認知されていない職名を応募書類に記した場合に、それが「教授─准教授─助教」という職階のどこに相当するかを理解してもらえずに、応募者である金研「准講師」にとって採択率が低下するという不利益が発生する可能性がある。また、このような不利益は、競争的研究資金の獲得率と額を教員の評価に直結させようとする現在の東北大学の姿勢に鑑みれば、単に研究上の不利益に留まらず、直ちに評価の悪化による人事・給与面での不利益に繋がる可能性が極めて高い。さらに、他大学の准教授公募に対して「准講師」の名で応募した場合に不利とならない保証もない。このように、若手・中堅研究者にとって研究上と人事・給与面での二重の不利益をもたらす可能性があるこのような「准講師」なる職を、「助教=任期制」を拒んだ者へ事実上強要するような行為を、本組合は断じて是認しない。

助手:教育研究補助職への転換

今回の学校教育法改正において現「助手」職が廃止され、「助教」と新「助手」が置かれることになった趣旨は、2006年10月12日、全大教との会見での文科省担当官の発言「助教についての学校教育法の改正の趣旨は、教育研究を主たる職務とするものか、その補助を主たる職務とするかが明瞭でない助手が置かれていたのを、明確に分けて前者を助教とすることにしたことである」に明確に表現されている通りである。また、同じ会見の中で、文科省の担当官が「教員任期法の改正により、大学等の判断で助教にも任期を付けることは可能であるが、全大教の指摘のように、任期という別の要素によって現職助手で助教となるべき職の者が新助手となることは学校教育法の趣旨に反する」という極めて明瞭な表現で、現在金研案において示されているような「助教=任期制」を前提とした選択の強制について否定している。

 現在の金研助手の多くは学位を持つ研究者であり、同時に、研究と大学院等の学生指導に日々従事している教育者でもあることは貴職もよく承知のはずである。 現に研究・教育に携わっている者からその仕事を奪い、「c) (新制度)助手(任期無し)として研究・教育のサポート」という地位に置くことは、絶対に許される行為ではない。

 現に、「助手」は改正前の学校教育法においては「教員」として位置づけられていたのに対し、改正学校教育法第58 条では「その所属する組織における教育研究の円滑な実施に必要な業務に従事する」と規定され、2006 年5 月の文部科学事務次官通知でも、「教授、准教授、助教とは職務内容が明確に異なる職として位置付けることとした」としている。また、大学設置基準第12 条、13 条でも「専任教員」は「教授、准教授、助教」とし、「新助手」は「専任教員」という範疇からすらも除外されている。高度な研究を第一線で担う戦力と位置づけられ、かつ、学生指導にも従事している現在の助手が、新制度において「助手」とされることは重大な不利益変更である。

「不利益の三者択一」に正当性なし

金研案は、選択を個人に委ねる外観を取っている。しかし、任期のない助手が「助教=任期付与」、「准講師=社会的に認知されていない職名」、「新助手=研究教育職からの除外」から一つを選ぶのは「不利益の三者択一」にほかならない。すなわち、労働条件の一方的不利益変更であって違法である。我々はこうした措置の違法性について労働問題を専門とする弁護士の見解を得た上でこの声明を作成していることもここに付言しておく。

 本組合は、貴職がこの「不利益の三者択一」を撤回し、「現助手」の全員を「助教」とすること、現在任期のついていない者を任期がつかないまま移行させることを強く要求する。

任期制を拒んだ助教授に対する意図的かつ理不尽な差別

現助教授についても同様の問題がある。10月4日の説明会において示された案では

「任期無し助教授:
 准教授(新たに任期付き)または准教授(特命教員)(任期無し)を選択する。
 准教授(特命教員)は従来通り教授との密接な連携を持つ小グループ、附属センター構成員とする。また一定期間毎に評価を受ける。」

とある。金研には現に任期付きの助教授と任期なしの助教授が存在するが、任期なしの者が新たに任期を付けられることを拒んだ場合に限って「特命教員」などという奇妙な注釈をその職名の後に括弧書きされることを受け入れねばならない理由が一体どこにあるのだろうか。該当の准教授がこの(特命教員)なる注釈を学外においても必ず書かねばならないとしたら、それは、「准講師」の場合と全く同様の理由で本人の研究と評価および給与に重大な不利益をもたらす可能性がある。任期付与を拒んだ場合でも一応「准教授」となることまでは認めるのであれば、そのまま学校教育法上正当に存在する「准教授」とするのが何故不都合なのだろうか。さらに、研究室名を教授と准教授の連名に変えるが、任期制を拒んだ場合には連名としないという方針が伝えられているが、これなどは屈辱的・差別的で精神的苦痛を与えるハラスメント以外の何ものでもない。ここには一片の合理性も感じられず、これも、任期制付与を拒んだ者に対して不利益を与える違法・不当な差別であるとしか解釈のしようがない。本組合としてはかかる理不尽な差別を断じて容認できない。

 本組合は、貴職に対して、助教授についても現在の案を見直し、金研の現「助教授」は全員が学校教育法上の「准教授」とされるべきこと、現在任期のついていない者を任期がつかないまま移行させることを強く要求する。

2006年10月18日

東北大学職員組合 本部執行委員会
    同    金研支部執行委員会



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