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声明 「国立大学法人東北大学総長室規程」に対して、東北大学における非民主的運営と不透明な審議を助長することを懸念する立場から批判する!

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国立大学法人東北大学
総長  井上 明久殿
理  事  各  位
教育研究評議会評議員各位

去る10月25日、「国立大学法人東北大学総長室規程」(2006年10月25日、規第142号)の制定およびこれに関連する諸規程の制定・改訂が強行された。東北大学職員組合は、すでにこれが強行される以前に、東北大学総長のさらなる権限強化への懸念および民主的な運営が損なわれることへの強い危惧から、「新運営体制整備の基本的枠組みの検討のあり方について」(要請)(2006年10月19日付)にて慎重審議を要請する旨の要望を行った。しかし、この度それに応えることなくこの規程が性急かつ強引に制定されたことについて、極めて深刻な遺憾と懸念の意を表明するものである。

そもそもこの「総長室」制度の導入について、東北大学職員組合は、10月10日に開催された教育研究評議会の場においては言及がなかったものを、わずか3日後の10月13日に各教育研究評議会評議員に対し、早稲田前理事(中期計画担当)名の「規程の書面による審議依頼について」なる文書においてメールという手段で突然示されたものであることを把握している。そして、この「規程の書面による審議依頼について」には、「このたび、井上次期総長より、新運営体制整備の基本的枠組み(中略)として新たに総長室制度を導入する旨の意向が表明され、下記のとおり関連する規程の制定及び一部改正について、別添『規程の制定について(平成18年10月)』に記載の理由により上申されました。また、併せて井上次期総長より、新運営体制へのスムーズな移行を図るため、本規程案については、現執行体制のもとで審議いただきたい旨申出がありました。今後、10月23日に役員会及び経営協議会の開催が予定されておりますが、教育研究評議会については、それまでの間に開催予定がないことから、総長の指示により教育研究評議会評議員各位あて、別添『規程(案)』を書面配付することによりご審議させていただくこととしました。ついては、本規程改正についてご意見がございましたら、平成18年10月19日(木)12時までに総務部総務課総務係あてお知らせ願います。」(引用部分,下線強調は引用者による)との明記がある。

本組合としては、このような経過にて制定された「総長室」設置に対して、二つの点から強く抗議する。一つは、今般、かかる重大な規程の制定に関する教育研究評議会の審議が、評議員からの総務部総務課への意見提出、しかも10月13日から19日までのわずか7日の間に回答するという措置で済まされたことにされているという事実である。教育研究評議会評議員が部局構成員にこれを示し、さらに部局の意思決定に関わる議決機関たる会議が開催されて討議に付し、その結果を大学本部に伝達することは、わずか7日間では明らかに不可能である。それにも拘らず、ごく短期間での「メール審議」を提案し、その期日が過ぎたことを以て教育研究評議会での「審議」が済まされたことにされたことに対しては、学内民主主義の立場から到底容認できるものではない。そして二つ目は、「経営及び教育研究等に関する重要事項」(第2条七)の「企画立案及び総合調整等を行うこと」(同条本文)とまで規定された「総長室」の任務は、国立大学法人東北大学の教育研究及び運営の最重要審議機関である「経営協議会」及び「教育研究評議会」の所掌事項に大きく踏み込んでおり、両者の自立性を踏みにじるとともに審議機関としての重要性を奪うものとなっていることである。本組合としては、今回の「総長室」の設置が総長のさらなる権限強化につながることを危惧するとともに、これまでもややもするとトップダウンの強引な手法が目についた東北大学の運営において、さらに審議の不透明性が助長されることに強い懸念を抱くものである。

東北大学職員組合は、今般の規程制定に関して、教育研究評議会において本来の役割である「審議」が実質的に行われたか否か自体について重大な疑問を呈せざるを得ない。教育研究評議会評議員各位に対し、教育研究評議会は国立大学法人法第21条において「国立大学の教育研究に関する重要事項を審議する機関」と明確に位置付けがなされた国立大学法人の教育・研究に関わる最も重要な審議機関であることを再認識し、また、今般教育研究評議会において行われたこの重要規程の制定プロセスについて、その適法性を真剣に再検討されるよう強く望む。本組合は、重要規程について今回のような制定プロセスを許すことは、教育研究評議会を空洞化・形骸化し、学内民主主義全体を圧殺することに容易に繋がりかねないと考えるものである。

東北大学職員組合は、何よりも東北大学の教育研究・運営管理が東北大学に働くすべての教職員の同意のもとに進められることを強く願うものである。また総長には、もし「総長のリーダーシップ」を発揮するのならば、こうした民主的大学運営のために発揮していただくよう切に望む。本組合は、その立場から「新運営体制整備の基本的枠組みの検討のあり方について」と題する要望書を提出したわけであるが、それに謙虚に耳を傾けることが全くないうちに「国立大学法人東北大学総長室規程」が制定されたことに対して、遺憾の意を表明するととともに強く抗議するものである。本組合は、国立大学法人法第21条こそが全学において教育・研究に関する学内民主主義を存続させるための拠り所となる条文であるとみなしている。この条文を尊重することなくしては、学内民主主義はすぐにも滅び去るであろう。新役員会および教育研究評議会評議員各位においては、このことについて改めて十分に認識されるよう切に望むものである。

以上

2006年11月22日

国立大学法人東北大学職員組合本部執行委員会


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