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退職金大幅削減問題での団体交渉速報

団体交渉の申し入れを12月26日に行っていましたが,1月21日にようやくこれが実現しました.予定を大幅に延長し5時間の交渉の結果,法人側は何らかの提案を検討するとして次回の交渉を持つこととなりました. 一問一答形式の議事録は無理ですので,速報として概要をご報告します.

不利益変更は法人側から団体交渉を申し込む

まず,今回の退職金大幅削減提案について,団体交渉が法人側から申し込まれなかったことについて質しました. 労働条件の変更に当たっては,それを提案する側から団体交渉が申し込まれる,すなわち賃上げ要求などであれば組合側からの申し入れ,切り下げ提案であれば使用者側からの申し入れが行われるべきことは,極めて当たり前のことです.これまで実際に不利益変更の際には法人側から団体交渉の申し入れが行われており,これは労使慣行として確立しています.
しかし,今回,全学説明会の場で理事は「組合とは誠意を持って話し合っていきたい」と何度も述べたにもかかわらず,法人側から交渉申し入れはなく,事務折衝では,法人側から申し込むつもりはないという驚くべき回答が示されました.組合としては,この重大な問題について交渉を行わないことはできませんのでこちらから交渉を要求しました.
これについて,理事は,慣行として確立しているとは認識していないし,そのような引き継ぎも受けていない,全学説明会には組合員も出席していたのだから情報は伝わったと思う,などと発言しました.組合からの記録を確認して欲しいという要求に対して,交渉を一時中断して調べた後,ここ何回か法人側から申し入れていることは確認して,今後,労働条件の明白な不利益変更に当たっては法人側から交渉を申し入れることとする,ついては組合も速やかに対応してほしいと述べ,組合もこれを諒としました.

「公的セクターの一員として,同じ比率で改定を行う」

本題の,退職金大幅削減提案について,まず,その必要性を質しました.これに対する理事の回答は概要以下のようなものでした.

国立大学法人の給与水準は「社会一般の情勢に底号したもの」である必要がある.民間との比較を人事院が行ってそれに基づいて国家公務員の退職手当が引き下げられた.国立大学法人役職員の給与は税金から支給されており,国家公務員とともに公的セクターを構成している.したがってこれに対応した措置をとる必要がある. 実際に,8月7日閣議決定において国立大学法人,独立行政法人にも同様の対応が要請され,12月には文科大臣官房長名で法人の長宛に要請が行われており,また,1月11日には,今年度末退職者の退職手当分として,引き下げられた基準に従って交付金が計算されている.

この説明は,国立大学法人の給与水準について,まず「業務の実績」を考慮しなければならないとした法を歪めて解釈したものです.また,民間水準との比較を持ち出しておきながら,後述するように金額の比較を拒むという矛盾を呈しています.

「差額分を大学として補填することは物理的には不可能ではないがやらない」

組合は,国からの支給額の減額分がどの程度なのか,またこれを大学独自に手当てすることが検討されるべきであると質しました.民間であれば,経営状況の悪化に対して労働者の雇用条件を守るために経営努力を行い財務改善によって労働条件を守ることは当然なされなければならないことです.

これに対して,理事は,差額は概算で年間3〜4億程度になる,これを事業費を削って出せないかと言われれば物理的には出せる.しかし研究とか教育の金を削って出すことは適当ではないと考える,と回答しました.

出せるのに出せないという法人側の態度がはっきりと示されたことになります.研究や教育の金を削ってと言いますが,本来の業務への影響を最小限に止め労働条件を維持することこそが,経営責任でありましょう.また教育・研究が何をおいても携わる人の営みであることをまったく無視しています.教育,研究,医療の現場の“やる気”をごっそりと削ぎ落とすことこそが業務をないがしろにする姿勢です.

「代償措置はいっさい考えていない」

組合は,全国の大学で,不十分ながらもさまざまな,減額を軽減したり代償する措置がとられていることを指摘し,本学の態度を質しました.
ちなみに,1月13日時点で全大教に集約されている情報では,

これらの措置は,到底退職金の削減に見合ったものではなく,各大学とも組合は引き続き交渉を行っていますが,わずかであれ,当局側に歩み寄りの姿勢があることを示すものです.

これに対して東北大では,今回の引き下げに対してはこれを代償するような措置は一切考えないと回答しました.労働契約法10条の定めに反する対応だと言わざるを得ません.

「金額を比較することは適当ではない」

国家公務員の退職手当引き下げの根拠となった人事院の調査における,国家公務員,民間のそれぞれの退職金額は,国家公務員で平均2950万円,民間で平均2548万円であり,この差を解消するために18%,平均402万円の引き下げが行われることとなっています.これに対して東北大学では,2011年度の実績額で教員の平均3458万円,事務・技術職員で2452万円,医療職員で2041万円(いずれも勤続20年以上の定年退職者および勧奨による退職者を対象として算出)であることが当局側からの資料で示されました.国家公務員は行政職(一)の平均額を算出していますので,東北大学では事務・技術職員がこれに相当します.明らかに国家公務員より低く民間平均と比べてこれを引き下げる必要はまったくないことが明らかです.

これに対して,当局側は,まず東北大学の金額は共済からの支給金が含まれておらず人事院調査の数字と直接対応するものではないと言い,ではそれを含んだ数字を示すよう要求したのに対して,今回の措置は金額を比較するものではない,公的セクターの一員として公務員と同じ率で引き下げることが必要だと回答しました.

通則法が定める「社会一般の情勢に適合した」という条件は,どう見ても民間と法人とを比較して,法人が著しく高くてはならないことを意味することは明らかであり,法人側の説明は詭弁であると言わざるを得ません.

「何らかの提案を検討する」

このように,交渉開始時から一貫して一切の歩み寄りを行うつもりはないという姿勢を示してきた当局ですが,組合から,新潟大学での例にあるような,早期退職による退職金の保全と継続雇用による措置くらいは検討できるであろうという主張によって,数日間検討の時間が欲しい,再度交渉したいとの回答を引き出すことができました.
いうまでもなく,この措置は目前に定年退職を控えた職員に対する緊急避難的な措置に過ぎず,これで引き下げ全体が正当化されるようなものではありませんが,わずかとはいえ歩み寄る姿勢を検討するとした当局側の態度変更は認めたいと思います.
第2回交渉は1月24日午後6時から行われます.

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