片平キャンパス駐車場有料化に反対します
東北大学職員組合執行委員会
2012年3月29日
去る2月21日の部局長連絡会議で「片平キャンパスにおける自動車等入構ルールについて」が報告され、 3月16日の教育研究評議会で「片平キャンパス構内自動車入構管理規程」が審議・制定されました。同規程は通勤・通学のための自動車の利用に対して「別に定めるところにより」課金するというもので、入構負担金の額を含む「構内自動車入構許可基準」が事務的に周知されています。職員組合は、以下の理由から、この有料化には反対です。すなわち、1)有料化の理由に説得性が無く、単なる自動車通勤・通学者への負担増でしかないこと、2)自動車通勤・通学者のコンセンサスを得ておらず、労働法上も疑義があること、3)制定から実施までの期間が短すぎ、おそらくはそのために法に基づく教育研究評議会の審議以前に規程の施行を前提とした運用が行われるような、ルールを無視した大学運営が行われていること、です。
「片平キャンパスにおける自動車等入構ルールについて」に別紙として添えられた「本学のキャンパス交通計画の基本的な考え方(本学がめざす方向)」によれば、目的は自動車利用の抑制ということになるようです。抑制すべき理由として、土地の不足、歩行者の保護、環境への配慮の3点が挙げられています。
しかし、土地は足りないのでしょうか。少なくとも公表された資料では駐車スペースと駐車台数が具体的に比較検討されてはいません。実際問題として片平キャンパスでは、現在も一定の入構制限が行われており、駐車スペースが絶対的に不足しているわけではありません。この点で、自動車通勤・通学者の他に不特定多数の利用者がいる星陵キャンパスや他大学の病院キャンパスとは事情が違います。将来のキャンパス計画が理由にされていますが、本規程の原案である平成22年12月17日付「片平キャンパスの自動車制限ルール(案)」(駐車場検討WG)や平成23年1月6日付「外来等の自動車の駐車場利用ルールについて」の論拠となっているキャンパス計画案は、その後、片平南キャンパスの売却計画の大変更などにより、プランとしての現実性はすでになくなっています。一方、有料化したからといって各自動車通勤・通学者の駐車スペースがきちんと確保されるということでもないようです。これから徴収する料金で駐車場の整備を行うというのは、有料道路の建設前に通行料を徴収するようなものではないでしょうか。
構内で歩行者を保護するために自動車を排除するのは有効な手段ですが、車がまったく構内に入らなくなるのではない以上、まず採るべき手だては、歩車の動線分離やバンプの設置などでしょう。最近行われた北門付近の整備はこの観点からはきわめて不十分なものでした。有料化によって入構する車の数が多少減る程度では、歩行者保護の点では何の意味もありません。
環境やエネルギーの観点から自動車の利用を抑制してゆくことは世界的な流れです。しかし、それは十分な代替手段があってはじめて意味を持つのであり、一方的に負のインセンティブを付けても効果は期待できません。ましてや、有料化によりどの程度の抑制が見込まれるのかも示されていないようでは、論拠とするには弱すぎるでしょう。
結局、この有料化によって教職員・学生が得られる利益は不明確で、一方的に負担だけが増やされるというものになっています。
有料化の検討過程で利用者の声を聞くプロセスがほとんどありませんでした。賛成反対を問うだけでなく、有料化されたら車の利用を止められるのか、代替手段はあるかといった調査が行われてしかるべきではないでしょうか。労働法的に見た場合にも問題があります。駐車場を無料で利用できることは、長年にわたる労使慣行であり、有料化することは労働条件の不利益変更に当たると見なされます。この場合、就業規則の不利益変更と同様の労使協議が必要です。今回、組合も過半数代表者も決定のプロセスにいっさい関与していません。この規程が法的に無効である可能性も高いのです。
施行のわずかひと月強前に部局長連絡会議に報告され、その後も利用者に対する周知は行われておらず、施行半月前に突然新しい入構ルールに基づいて申請を行うよう通知されています。しかも、3月16日付教育研究評議会議事録によれば、この件が審議事項として扱われており、この規程の制定には評議会の議決が必要であったことが明らかです。しかし、一部部局においてはこれに先立って入構申請受付が始められており、評議会を無視した大学運営ルール破りが行われています。
時代の趨勢として将来のどこかの時点で自動車利用の制限が行われることまでを否定はしませんが、そのためには市政レベルでの環境整備と丁寧なコンセンサス形成の過程が必要でありましょう。私たち東北大学職員組合は、今回の駐車場有料化に反対し、規程の速やかな撤回を求めます。