今年4月から労働契約法が「改正」され,5年を越える契約更新が行われた場合には,被雇用者の希望があれば無期雇用への転換が義務づけられました.従来から判例として確立していた法理を明文化したものといえます.この法改正に対応する大学全体の方針は未だ明らかにされていませんが,これに起因すると思われる事態が発生しています.
時間雇用職員の方々は1年間の労働契約を更新しながら働いています.労働条件は,毎年,労働条件通知書によって労使相互で確認され,これが契約書となっています.ここには,職務や労働時間,賃金などのほか,次年度以降この契約の更新が行われるか否か(更新する,更新する場合があり得る,更新しない)が記されています.
工学部事業場で,この4月の契約更新にあたって,長年にわたり契約を「更新する」とした労働条件で働いてきた時間雇用職員・准職員の労働条件通知書の記載が,特に説明のないままに「更新する場合があり得る」と変更されていることが判明しました.法人化以前から雇用されている時間雇用職員は契約更新に限度を付けないことは,これまで何度も確認されてきたにもかかわらず,この条件が一方的に不利益変更されてしまったのです.
この変更に気づいた職員からの質問に対して,上司からの説明は,事務部長の交代により今までのような「更新する」という対応はしないこととなった,この変更は本部人事課の指導に基づく,というもので,事業場全体で大規模に行われたことが明らかになりました.組合との協議も行わず,労働者への説明さえされていない,このような労働条件の一方的な切り下げは明白な労働法制違反です.
支部から連絡を受けた本部執行委員会では,6月17日に行われた団体交渉で,この問題を取り上げ,担当理事に説明を求めました.団交の席で理事は,法人化以前から反復雇用されている時間雇用職員および1980年以前から雇用されている准職員については契約更新の限度を設けていないことを改めて確認し,したがって,改正労契法と合わせると,現時点で事実上無期雇用となっていることを認めました.その上で,工学部事業場での労働条件の一方的な不利益変更について,本部人事課からの指導に基づくものではなく,改善が必要であり,具体的に確認して対応することを約束しました.一方,全学的人事管理のミスであるとの指摘に対しては,部局が責任を持って行っていることであるが,問題があれば対応するという姿勢でした.6月17日団体交渉報告(pdfファイル)
これを受けて,組合では以下のように問題を整理して,事務レベルでの折衝を行いました.
本部人事課では事業場に対して経緯を説明する文書の提出を求め,これに基づいて事業場との間で対応を協議した結果,7月25日に至って,本部人事課より「工学部事務部に対し,従前の取り扱いに則り,労働条件通知書の修正及び再交付を要請し,現在工学部で対応を検討しているところです」との回答を得ました.
しかし,これによって労働条件を回復したのは,当初から問題として取り上げ問い合わせを行っていた少数の職員にとどまっているようであり,個別に問題とされない限り,当局側から修正するつもりはないように見受けられます.
組合は引き続き,不利益変更の全面的撤回を求めていきます.
また,今回の問題が工学部事業場だけの問題なのか,身近な職場で同様な問題が起きていないでしょうか.お気づきの点があれば職員組合までご一報ください.