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教文部ニュース第二一号

2000.10.1発行
東北大学職員組合教文部 発行
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東北大学学際科学研究センター主催「21世紀の大学」シンポジウム報告

日本の大学の新しい在り方  -国立大学の法人化をめぐって-

2000年9月2日 仙台


 本学学際センター主催による公開シンポジウム「日本の大学の新しい在り方 -国立大学の法人化をめぐって-」が、9月2日に開催されました。  シンポジウムの中では、有馬前文部大臣、阿部本学総長・国立大学協会第一常置委員会委員長、藤田法学部教授・政府行革推進本部顧問という、この問題に関してしかるべき地位と責任のある方々の講演・コメントが発表されました。  以下、三氏の発言を中心とするシンポジウムの模様を簡単にレポートするとともに、出席した教文部員の感想を報告します。

趣旨説明:馬渡尚憲(東北大学副総長)

講演
コメント

教文部員の感想


付:全大教教研集会(Sep.8-10, 2000)報告


趣旨説明:馬渡尚憲(東北大学副総長)

 1999年までは、国大協、文部省ともに「通則法は国立大学になじまない」「高等教育への資金拡充が必要」との姿勢であったが、2000年5月に文部省は、事実上国立大学の法人化の方針を示した。現在、懇談会や調査検討会議において具体案の検討に入っている。
 独法化は行政改革の一環の構想であるが、大学自身法人化は必要である。国立大学の設置形態が変わろうとする大きな節目を、むしろ国立大学の新しい在り方をうち立てる大学改革の機会と受けとめるべきであると考える。
 論点は4つ


講演

I.有馬朗人(元文部大臣・参議院議員)

I-1 経緯(有馬氏OHPに加筆)

96.11 :「行政改革会議」設置
97.10 :東大、京大の独法化案(文部省)
97.11 :国大協反対
97.12 :「行政改革会議」最終報告,「大学の自主性を尊重しつつ,研究・教育の質的向上を図るという長期的な視野に立った検討を行うべき」と慎重姿勢
98.6 :中央省庁等改革基本法成立(2001年から10年で定員の10%削減を含む)
98.8 :小淵内閣発足時の所信表明演説で,定数削減が20%に嵩上げされる.10%は独立行政法人化によって達成と説明.
98.11 :「中央省庁等改革に係る大綱事務局原案」:国立学校は「独立行政法人化の対象となる事務及び事業の検討を積極的に進めるものとする」
99.1 :自民・自由両党の政策合意の際に25%に嵩上げされる.
99.1 :「中央省庁等改革に係る大綱」:「国立大学の独立行政法人化については,大学の自主性を尊重しつつ,大学改革の一環として検討し,平成15年までに結論を得る」
99.4. :「学校教育法等一部改正案」衆院審議における有馬文相の答弁「独立行政化については平成15年まで結論を延ばす.きわめて慎重に検討したい」
99.7 :「独立行政法人通則法」成立:2001年から89機関,7万4000人を独法化.
1999年9月:臨時国大協総会・通則法適用反対
1999年9月:文部省・学長会議で独法化を表明
2000年3月:自民党高等教育研究グループ最終案
2000年5月:自民党文教部会・文教制度調査会「提言」

I-2 反対から賛成に変わった理由

○行革の流れの中で、エージェンシーが取り上げられ、以前より意識していた。
○東大総長時代の89年にサッチャー英首相と対談、イギリスの大学はうまくいっていないと感じた。
○東大・京大の独法化案が出された時、反対の論陣を張る。国大協も同様。
○反対の根拠
1)日本の(高等)教育に対する公財政支出の乏しさ
2)独法化の目的である「効率性(+中期目標)」が大学にはなじまないこと
3)大学自体に安定的な財源が無いこと
4)日本の高等教育は私大が担っている部分が大であり、そのことに配慮し重点投入すべきであること。
○その中で大学改革の動き→学校教育法等の一部改正。教特法、学校教育法、国立学校設置法等、国立大学に関する法律がバラバラだったのを文部省がきちんとまとめた。
○国立大学の独法化については平成15年までに結論を得るとの閣議決定がなされた。自分自身は大田行革担当大臣とのすり合わせの中で、平成20年という条件を出した。そんなに長くは待てないということで15年になった。
○通則法と大学の理念の整合性については依然として問題が残っている。しかし一方で公務員25%削減が閣議決定。
○私は去年の初めぐらいまで独法化には絶対反対の立場であったが、私が考えを変えた理由
1)公務員型の独法が認められたから
2)国の財政的支援が必要だが、それが維持される見通しがついたから(独立採算制の回避)
3)諸外国の大学では法人格を持っているのが通例
+自分は理化学研究所の所長もしたが、東大よりはるかに運営容易。予算の次年度繰越や院生の海外渡航など。その経験より大学が法人格を得たほうが良いと確信した。
○独法化のプラスマイナス
+自らの責任の権限により運営できる
+自主性、自立性が確保される
+公務員総定員法から外れる
-中期目標、人事
-評価システム
-組織形態の選択が大学に任されない

I-3 大学改革私案(教育)

○学力低下が問題とされているが、「感想」ではなくきちんとデータを基に定量的に問題を把握しなければならない。
○少子化による進学率の急増にどの様に対処するか(1992年205万、2000年151万、2010年110万)。これには入学定員を半分にして対応するか、もしそれをしないなら教養教育を大切にしアメリカ型のシステムをとる方策しかない。(この点からして、何故教養部を軒並みつぶしたのか私には理解できない。)

I-4 大学改革私案(研究)

○まず、基礎研究をしっかりと守らなければならない。例えば考古学、サンスクリット語研究、天文学といった分野である。そのためには最低限の保障を考えるべきであり、その意味でも当たり校費(積算校費)の確保は大事。
○施設を改善せよ。今次の第二次科学技術基本計画が好機である(5カ年で20兆円?)。それが最後のチャンスかもしれない。
○基礎研究の推進と同時に社会の賛同・協力を大学は得なければならない。例えば特許、起業を推進せよ、ということである。しかし、大学でなければできないものは何か、ということを常に考えなければならない。流行の一歩先を行く必要あり。
○最後に研究の高度化、国際化への対応ということだが、これは教員の1/3〜1/5を外国人にすれば容易に達成できる。アメリカもドイツ等からユダヤ人科学者を受け入れ、研究の水準・ノーベル賞受賞者が飛躍的に上昇した。現在、外国人教員は契約雇用が多いようだがテニュアを与え、日本人と同等に処遇すべきである。これはすぐにできる話である。口だけではなく、大学は実行しなければならない。


II.阿部博之(東北大学総長)

1.大学への現代的期待
○欧米と日本の大学観のずれ。高等教育に対する公財政支出の差。知の創造、知識生産。先進国型と後追い型(改良型)。
○科学研究と教育:国力(含産業競争力)の源泉。未来を構想し方向付けること。
○大学の独立性(自治):国の有り様。(教授会批判、学長選考批判が流布しているが誤解もたくさんある。)なぜオートノミーが必要なのか。研究テーマを自ら発掘し、本当に新しいものをつくっていくためには自治・自律が必要。画一性から脱却しなければならない。

2.ボーダーレス時代の大学改革へ
○国内事業中心から国家戦略の一環へ
○教育研究のインフラ、システムは欧米のスタンダードから大幅にずれており、学術・科学研究の競争力にブレーキ。
○競争相手は海外の大学。(教育の国際通用性)
○a.フロントランナー b.中堅層

3.評価システムの整備(が必要)

4.初等中等教育(との接続)、教養教育(が必要)

5.学術文化創造立国と科学技術創造立国
○国の競争力に資する大学でなければならない。ただし、どの学問分野も大事。国及び納税者との合意点を探りながら改革する必要あり(アカウンタビリティー)。これまでの国立大は文部省におんぶにだっこであった。


III.池上徹彦(元NTT役員・会津大学副総長)

○国立大の独法については産業界関心なし。
○法人格の取得は当然、それはスタートでしかない。法人化で問題が解決するというのは間違い。法人化してどうするかが問題。
○大学が研究をストップしても企業には影響なし。企業が一番気にしているのは教育の問題。次の世代・人材をどう確保するかということ。
○独立行政法人で一番分からない点は、公務員型というところ。
○総務庁の独法パンフは総じて分かりにくい。そういうものはうまくいかないという気がする。
○大学は出口論で考えるべき。例えば大学院を重点化しドクターが多く輩出されたらどうなるのか、というところからドクターコースをどう変えるかとかんがえなければならない。
○アカウンタビリティーとは、うまくいかなかったことの納税者へのゴマカシである。
○独法化後の大学は、自主性自立性の確立と自己責任の徹底、競争原理導入と個性化の推進、がカギ。


討論《コメント》

IV.藤田宙靖(中央省庁等改革推進本部顧問・東北大学教授)

IV-1 経緯

○行政改革会議では3つのアプローチがあった。
1.民営化に向けての第一歩
2.効率性の実現(イギリスのエージェンシー)
3.中央省庁の垂直的減量の一手段
 行政改革会議の最終報告および通則法は第3のアプローチを中心としたもの。
○ここまでピッチに事態が進行するとは思わなかった。
○大田大臣、他の顧問からの圧力で文部省が受け入れという経緯。
○その後の動きについてはジュリスト論文で予測した範囲で動いていると理解している。

IV-2 その後の問題点

○様々なずれがでてきている。特に個別法の位置付けについて、改革推進本部事務局の姿勢は行政改革会議の最終報告とは明らかに違う。矮小化されている。
○例えば、「通則法」が予定する「個別法」の定める事項に組織・運営事項等の修正を含めることができないという姿勢を事務局は示しているが、それは最終報告とは異なる。
○では特例法ではどうか、ということになるが、その場合は独法制度の枠内を越えることになり、同制度の恩恵(=国からの財源措置、独立採算制を採用しない)を受けられないことになってしまう。(・・・というのが事務局の見解)
○如何に大学とはいえ、組織・人事・財務の自由に加え、主務大臣からの一切の介入を受けないということが、一般に通用するか?
○一度「通則」を作ると、その修正ないし例外は滅多に認めないのが、官僚の一般的性向。
○自民党提言は大学改革の一環と明記している点、大学固有の調整法、特例法を明記している点で評価できる。また、文部大臣説明もリーズナブルなものであった。少なくとも最悪の事態は避けられた。
○ただし、「行政」の一部でないと国からのお金が出ないのか等、検討すべき点は多い。また、特例法としてやる方向もあったのではないか、と思うこともある。


V.高柳雄一(NHK解説委員)

○社会が大学に期待しているものは、教育の終了の場ということである。
○諸外国の大学を見て、グループ研究の取りまとめ的リーダーやテクニシャンが重要だと感じる。(日本の大学はそこが弱い)
○大学が社会に向けアピールしなければならない。


《フロアからの質問とその応答》

○通則法には理念が無い。大学固有の立法措置が必要ではないか。また、大学には公務員型が適用されるようだが、非公務員型にすべきだと個人的に考えている。
(有馬)もし非公務員型だと独法反対運動が激化し、民営化論と正面衝突するおそれあり。国が国立大学を守るために現実路線をとったと理解している(民営化論をやっと抑えられた)。
 何故これまで、日本の高等教育への公的支出が少なかったのかは簡単な話である。私学に多くを任せてきたということ。これからは私学の助成もしっかりしないといけない。私は私学も独法化すべしと考える。そうなれば、国からの公的支出も増える。
 特に国立大学の持つべき理念というのは私学ではできない部分を担うということ。文化の継承、発展を担わなければならないし、そのためには授業料、入学金も安くなければならない。私学並を目指す現政策は逆行している。

○独立という言葉にどのような意味がこめられているのか。
(藤田)国の行政の一部を担いながら、国とは独立した法人格を持っているということ。ただし、あいまいできちっと詰まっていない部分ある。例えば、大学が求めた認可を主務大臣が却下し、それが大学にとって不服な場合、訴訟や申し立てを行うことができるのか、という問題がある。現在の国立大学及び特殊法人ではできないが、理屈上独法ではできそうとも考えられる。そこが詰まっていない。

○独法化は大学改革にとってプラスかマイナスか。
(阿部)独法がプラスになるかマイナスになるかはこれからの検討でまったく変わる。今後の検討結果によって左右される問題。ただし、法人格を持つメリットはある。
(有馬)通則法をいかに外すかで変わる。この考えはだいぶ浸透してきたが今後も一層努力しなければならない。率直に言えば、新しい法をつくる必要もあろう。例えば、国家公務員法と教育公務員特例法との関係が参考になろう。
(池上)プラスかマイナスかは分からない。内部の人次第。またトップの役割が重要になろう。
(有馬)技官など研究支援者の減少は大問題である。私は定員削減に教授ポストを使うべしとの考えだ。助手ポストの減少もまた問題。
(阿部)東工大とMITの比較をすると、教員の数はそう違わないのに支援職員の数は圧倒的に違う。これは定員削減に理由があり、基本的には大学以前の問題と認識している。

○学生の立場から一言。大学は学生のためにあるのではないか。学生に対する教育をもっとしっかり考えてほしい。
(有馬)あなたのおっしゃる通り。TA等を導入して学生対応をきちんとすべきである。教員は休講はしてはならない。学生による授業評価もきちんとやるべき。特に旧帝大は徹底的に変える必要がある。

○教育、研究に加え、生活という視点を重要ではないか。
(池上)確かにその視点は重要。一生を通じたライフスタイルの中で大学のあるべき姿を考える必要がある。
(高柳)大学の活動を社会にアピールし、その活動分野もいろいろ模索する必要が大学にはある。


教文部員の感想

・各講演とコメントを通じ、独立行政法人への移行は動かしがたい決定であり、その中でいかに大学に対する特例措置を確保するか、その後の運営をいかに工夫するか、というシンポ全体を貫くトーンを感じた。しかし、一方で藤田教授が示した行革推進本部事務局の「頑なな態度」からすれば、特例法・調整法に多くのことは期待できそうにないということも言えそうである。調査検討会議の結論を大学にとって実り豊かなものにしたいという願望とともに、その可能性がどの程度存在するのか、そして貧困な結果に終わった場合に新たな仕切り直しが可能なのか等を踏み込んで語ってほしかった。(教文部A)

・今回のシンポの柱は、独法化と今後の大学像の2つだったと思います。
 独法化については「最悪の状態(民営化への第一歩)を脱した」「これから文部省、政府との折衝の中で、通則法をそのまま適用しないような制度設計を画策する」、今後の大学像については「学長のリーダーシップによって更なる改革を」「教育、特に基礎の重視」といった話がほとんどの演者から出されていました。有馬氏が随所に示していた大学改革試案などは、多くの参加者の関心を集めていたようです。
 このシンポをさらっと聞いていると、「よりよい大学に作り変えていくためには、独法化がそのきっかけとなる」と思えてしまいます。それがこのシンポの意図だったとしたら、主催者の思惑どおり、大成功でしょう。
 しかし、「独法化」と「今後の大学像」が、私にはどうしても結びつきません。大学改革の目的って何なのでしょう?。独法化が教育重視につながるのでしょうか?・・。
 私は、フロアからの質問の時間において、気後れして質問できなかったことを悔やんでいます。(教文部B)


全大教教研集会報告

(農学部支部 斎藤和佐)

 全大教教職員研究集会が9月8日から10日までの3日間、北海道教育大学札幌校において開催されました。全体のテーマは「知の復権・創造へ −独立行政法人化に反対し、未来を拓く大学・高等教育づくりを−」と題され、初日が中央執行委員会の基調報告と記念講演、二日目が課題別分科会、三日目も引き続き分科会、そして閉会集会という日程でした。私は初日と二日目に出席し、独立行政法人化問題を対象とする分科会では東北大職組の取り組みを紹介しました。以下、独法問題を中心に集会の模様を簡単にレポートします。

<石井紫郎氏の記念講演>

> 『「学術公法人」私案−「独立行政法人」の対案(ジュリスト2000.6.1)』を公表され、「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」の委員でもある石井紫郎氏(国際日本文化研究センター教授)による記念講演と質疑・意見交換が初日に行われました。石井氏がこの問題に関わってきた(関わらざるを得なかった)経緯、現在の情勢、独立行政法人の問題点、対案として提起された「学術公法人」の説明、という構成で講演は進められました。行政に強く管理統制を受ける独立行政法人制度を大学に適用することは憲法上に保障された「学問の自由」に対する侵害である、という真正面からの指摘とともに、独法化の弊害の一つとして「フィクション(大学側の不要な作業、書類作り等)」の増大を強調されたことが印象に残りました。私が理解した限りでの石井氏の講演の大要は次の通りです。

○当初、大学共同利用機関の独立行政法人化は「国立大学」ではなく「国立試験研究機関」との整合性を踏まえ、早急に結論を出すことが求められていた。それに対し共同機関側は「国立大学」との整合性を主張するとともに、各機関の代表者による検討組織をつくり昨年8月には答申を提出した。自身(石井氏)も検討組織の一員、3つある部会のうち基本問題を検討する部会の長を務め、この問題については比較的早期から関わってきた。(この間の経緯については『激震国立大学』所収、石井「大学共同利用機関の「独立行政法人」化問題」を参考のこと)
○この夏につくられた「調査検討会議」は、文部省主導の組織という印象を受けた。また、「調査検討会議」の4つの部会に対応して、文部省もエキスパートを集めた4つの作業班を用意しているようだ。パブリックな場でこの問題を議論することを文部省は避けている。
○一方で国大協の姿勢はパッシブであり、また制度の検討・設計に関する実務力、機動力という面で文部省と比較するとかなり見劣りする。甚だ憂慮すべき事態である。 ○大学の法人格の有無と、大学の自律性との間には何の関係もないと考えている。契約の主体となることができても、大学運営の自律性が増すかどうかは別の問題である。
○通則法第3条には、独立行政法人の業務運営における自主性に配慮ということがうたわれているが、大学の自主性・自律性は全く次元の違う話である。学問の自由と大学の自治は憲法で保障されている。
○独立行政法人制度には「合議制」という発想が全く無い。しかし、大学が「合議制」無しには成り立たないことは、例えばカリキュラムの決定一つをとっても明らかである。
○また、大学にとっては通則法を無害化するほど形式と実質のズレが拡大し、その部分を埋めるために不要な作業、書類作り等の「フィクション」が増大することが予想される。他方、行革推進派にしてみれば、通則法の無害化はけしからんという話になる。
○通則法の下での手直しということで最初に作業量を少なくしても、徐々にフィクションが増え作業量が増大するであろう。しかも、通則法の枠組みが残る限り、大学の自治に対する明らかな侵犯となる。
○したがって、レディメイドの寸法直し(通則法プラス調整法)よりも、オーダーメイド、大学の特性を考慮した独自の立法措置が必要だと考え、「学術公法人通則法」案を提起した。
○「学術公法人通則法」案の詳細は配布のジュリスト論文に譲るが、先に問題にした大学の自主性については第三条で「憲法第23条に基き、学術公法人の教育研究の自由と自主性は尊重されなければならない」と定めており、また合議制については第28条で「学術公法人の適正な運営を図るため、各学術公法人に評議会、教授会等の合議機関を置くもの」とすると定めている。
○この私案をパブリックな場で議論、批判してほしいし、この私案をきっかけとてパブリックな場での議論が広がってほしい。

 その後は質疑・意見交換ということで、現在の情勢や学術公法人私案に対する質問が会場から出されました。主なやり取りを紹介すると次の通りです。

(質問)独自立法措置を求めることと、調査検討会議に参加することとの間に矛盾はないのだろうか。
(石井氏)自分自身その矛盾の中にいると実感している。調査検討会議は根本的な問題まで検討するものであると当初は認識していたが、実際に調査検討会議・組織業務委員会に出席してみると、総論・基本問題の検討は最初の3回までであとの会議は各論に費やすようである。しかし、自分自身の発言が活かせる場は今のところ調査検討会議であるし、その内部で最大限努力したいと考えている。
(質問)大学評価・学位授与機構による評価と予算等の資源配分のリンクについて詳しく。
(石井氏)現在でもある程度行政によって評価がなされ、概算要求等にその評価が反映されているという事実がある。それならば行政による評価ではなく、もっとしっかりした組織である大学評価・学位授与機構の評価を採用したほうが良いと考える。
(石井氏の原論文には、「その代わり大学の反論権を認める」と続いています、−報告者注)
(質問)私案と学校教育法、教育公務員特例法との関係は。
(石井氏)私案の前提となっている。また、学術公法人の役員・職員の身分は国家公務員としている。
(質問)合議機関の細部については個別法に任せるということになっているが。
(石井氏)大学共同利用機関は、大学とは異なり教授会というものがない。したがって、細部は個別法で定めるということにした。個別法は、国立大学全体で一つ、大学共同利用機関全体で一つ、計二つが適当であろう。
(質問)国立大学制度を維持するということではダメなのか。
(石井氏)そういう選択肢もあると思う。法人化がどうしても必要ならば、ということで私案を執筆した。
(質問)調査検討会議の他の委員は推進派なのか。
(石井氏)国立大学からの委員が多く、問題だと思っている委員も多い。しかし、特例法・調整法で何とかなると考えている委員もいるようだ。
(質問)調査検討会議で自民党提言が取り上げられることはあるのか。
(石井氏)組織業務委員会で話題にされたことはない。しかし、文部省が自民党提言で力を得たというのは事実。

<分科会「独立行政法人化問題と今後の大学・高等教育のあり方」>

 二日目の分科会では、午前に各大学職組・個人によるこの間の反対運動の紹介・報告や今後の運動方針の提起がなされ、午後には質疑・意見交換がなされました。
 報告の中で、独立行政法人に移行した場合の財務構造等の変化をシミュレーションした結果が京都大学職員組合より報告されました。休憩時間に京都大学の方から直接お話を伺うことができ、また詳しい資料も教示していただきましたので簡単に紹介いたしますと、京大の財務構造分析により独立行政法人・運営交付金額相当を算出し、現在の学生数を前提として運営交付金額を私学並みの補助率1割水準、及び行政コスト3割削減水準(補助率は約4割)に減少させた場合、生じた欠損を補填するために学生納付金(授業料等)をどのくらいまで上昇させる必要があるかというシミュレーションでは、前者で5.5倍、後者で2.7倍の学生納付金の引き上げが必要であるという結果が示されています(京大・岡田知弘氏の推計)。私学の役割を否定するものではありませんが、一方でこれまで国立大が国民の教育の機会均等に果たしてきた役割を考えると、暗澹とせざるをえません。また、全国立大学に対して私学並みの教員あたり学生数増大と私学並みの国庫補助率削減を適用した場合、国の大学に対する財政支出等がどのくらい変化するかというシミュレーションでは、財政支出の削減額は7990億円という結果が示されています(京大・大西広氏の推計)。この金額(国立大のほぼ民営化に近い独法化で浮くお金)は、近年の第一勧銀、さくら銀行、富士銀行銀行への各銀行一行に対する公的資金投入額よりも少ない金額、また駐留米軍への思いやり予算にも満たない金額とのことで、まさに日本の高等教育政の貧困を如実に物語っているものでありましょう。
 午後の質疑・意見交換では全大教の運動方針と運動における役割をめぐって、また教員、技術職員、事務職員それぞれの立場から活発な意見交換と討論がなされました。特に複数の方から、国大協が文部省の調査検討会議に参加したことにより、厳しい状況でなかなか元気も出にくいし、またマスコミはあたかも国立大学の独立行政法人化が決定したかのように報じてはいるが、そのような方向に政治も世論も大きく動いていないことを冷静に見据え、反対運動を継続・再構築すべきであるとの指摘がなされ、大きく共感いたしました。


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