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教文部ニュース第二二号

2001.9.30発行
東北大学職員組合教文部 発行
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独立行政法人化問題をめぐる最近の動向

東北大学職員組合では、いわゆる「独立行政法人化問題」に対して情報を集め対処の仕方を考えてきました。昨年11月には大規模なシンポジウムを開き、広く意見を募り、問題点の明確化を図りました。その後、さらに色々の出来事が起こっていることから、本号では最近の動向をまとめて、今後の議論の基礎にしたいと思います。
  1. 遠山プランなど
  2. 「首都圏ネットワーク」情報
  3. 文部科学省の「中間報告(案)」
  4. 全大教の対応
  5. 東北大学職員組合の活動
  6. 文部科学省の「中間報告」

1. 遠山プランなど

 今年6月11日の経済財政諮問会議で、遠山文部科学大臣は、民営化までも想定した「大学構造改革の方針」を明らかにしました(http://www.sta.go.jp/b_menu/houdou/13/06/010607.htm#top参照)。さらに14日に開かれた国立大学長会議で、工藤高等教育局長は「2003年の国立大学独立行政法人化より前に大幅な大学の再編・統合を完了させ、99ある国立大学を60程度の法人とするシナリオを各大学に提示し打診している」、さらに「最終的には国公私立30大学に資金を重点配分する」という「構造改革」案を表明しました。
 『週刊朝日』の「文科省国立大『脅し』の全容」(8月3日号)によると、遠山プランの内容は(1)国立大の再編・統合を大胆に進める、(2)国立大に民間的発想の経営手法を導入する、(3)大学に第三者評価による競争原理を導入する、とまとめられ、その背景には、経済諮問会議での「骨太の改革」検討において国立大学も民営化プログラムの対象とする強い流れが存在し、民営化を避けたい文部科学省の「本気」の取り組みがあるようです。
 こうした政府・文部科学省からの揺さぶりの中、6月12−13日に国立大学協議会総会が開催され、協議会の内部に設けられた設置形態検討特別委員会から「国立大学法人化の基礎的考え方」および「国立大学法人化の枠組」が提示されました。
この2文書、とりわけ後者には大きく三つの問題点かあるといわれています。
(1) 「中期目標」を主務省(文部科学省)の審査・認可事項とするという、諸外国にも例を見ない制度により、学問の自由を大学人の側から否定することになりかねない。
(2) 大学等の管理運営に学外有識者が参加することに無限定すぎる。大学構成員の意志が二次的に扱われる恐れがある。
(3) 「評価」と「資源配分」が無媒介に結びつけられており、学術研究の視点でなく産業界などの都合によって人事や資金が運用されると予想できる。特に任期制導入への直接的影響が考えられる。

 マスコミ報道では、あたかもこの2文書が大筋で了解されたように報じられています。しかし実際は、2文書は「提案」ではなく単なる「報告」であり、了承もされなかったことが参加した複数の学長により証言されています。


2.「首都圏ネットワーク」情報

その後の動きについて、「独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局」(首都圏の大学関係者が立ち上げた組織で、全大教とは別組織)の情報にもとづき提示します。 (http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010711genjoukyou.html参照)


一、国大協―臨時総会は開催しない

 国大協においては、総会における設置形態検討特別委員会の二文書の提出とその「了承」問題をめぐって、会長記者会見に対する批判が高まった。また、東大職組の呼びかけによる17大学職組や阪大職組の臨時総会開催要求が行われた。
 しかし、国大協理事会(7月5日)は、設置形態検討特別委員会の下にワーキンググループ(責任者: 松尾稔副会長)をつくり「当面の諸課題に対処すること」を決め、多くの臨時総会開催要求に対しては、これを「開催しないこと」を確認した。

二、調査検討会議―「中間報告」は8月末〜9月初

 文部科学省の調査検討会議は、8月末から9月初めにかけて「中間報告」を出す作業を進めており、事務局による「中間報告のとりまとめの方向(案)」を「組織業務委員会」(第12回、2001年6月27日)「人事制度委員会」(第11回、7月3日)に提出した。この事務局案は、5.27国大協特別委員会の「枠組」よりも、大学運営に外部者を多数入れる点、中期目標への主務大臣の関与など、いっそう問題点を多く含むものとなっている(http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency/j130627-1.htm参照)。

三、文部科学省―再編・統合「調査費」の来年度概算要求を求める

 文部科学省は、7月中旬に事務局長に対するヒアリングを行っている。そこでは、「来年度(2002年度)概算要求で再編・統合の調査費を要求するくらいの構えでプランを作れ(このことを学長に確実に伝えよ)」と号令を飛ばしている。このことは、つまりは本年8月までに「調査費の概算要求を持ってこい」という要求に他ならない。



なお、上記の動きに対し、同ネットワークは以下のコメントを付しています。

文部科学省の「構造改革」の具体的な進め方を整理すると次のようになろう。  各大学の「再編・統合」案は、大学単位あるいは学部単位で具体的に検討されている。この検討作業は、学長および事務局長限り、あるいは事務局長限り、などという形で全ての大学で行われていると見るべきである。
 現在は、ほんの一部の大学執行部のみが情報を独占し、「対等合併」「吸収合併」などの駆け引きが、何らの理念も持たないまま行われている。この種の「再編・統合」にあたっては、・「法人化」への先行争い、・概算要求という予算がらみの取り引き、・現員の「分限免職」の可能性、などが取りざたされている。
 現在、大学に必要とされているのは、経済改革の視点しか持たず、大学を明確に新産業の創出機関に変えようとする「構造改革」を批判し、文部科学省が設定した拙速な「スケジュール」に乗らないこと、本来、大学(university)と学問が持つ総合性と連帯を維持・発展させ、公開・対等の原則に基づいて議論を行うことである。高等教育と大学制度の根幹に関わる問題に正面から対峙すること、このことをおいて大学の将来を語ることは決してできない。地方分権、高等教育の機会均等を保障する憲法的原則に基づき、各大学はそれぞれの地域に対しても責任を負っている。この立場を堅持し、各大学が自らの視点で充実させた方針を積極的に展開すべきである。

3. 文部科学省の「中間報告(案)」

 その後、文部科学省の調査検討会議は中間報告(案)を発表しました(8月9日付)。その基調は、企画と実施を分離し、企画部門に国家意思を貫徹させ、実施部門では民間経営的手法による「効率化」を図るというところにあります。
 この中間報告(案)に対して、上記の首都圏ネットワークが内容分析を試みています。(1)「分析メモ」(http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010822netmemo.htm)では、主要な抜粋に簡単なコメントが付けられています。また(2)「『中間報告(案)』の描く大学組織」(http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010830daigakuzou.htmでは、この「中間報告(案)」が目指す大学組織の方向性を予想しています。(2)の見出し1−9および9の内容を紹介します。


  1. 国家による大学支配が貫徹される。
  2. 学外者という名の官僚群による大学経営部門の乗っ取りが行われ、それによって形成される肥大化した官僚組織が大学を支配する。
  3. 文科省に生殺与奪権を握られた学長による専制体制が構築される。
  4. 基礎組織としての部局、学科の基盤は極めて不安定になり、間断なき再編が進行する。附属諸施設の大学から分離、民営化、廃止等が容易に行われる。
  5. 教職員の共同・協力態勢は破壊され、管理された競争=ラットレースが進行する。
  6. 四重の評価への対処が通常業務を占拠し、評価のための教育研究という倒錯した事態が蔓延する。
  7. 総予算の縮減下で、予算の重点配分が強行される。
  8. 大学の種別化が一挙に進行する。
  9. かくして固定的で流動性のない沈滞した大学群が出現する。

4.全大教の対応

 全国大学高専教職員組合(以下「全大教」、東北大学職員組合の上部団体)は、こうした動きに対抗する運動を模索しています。7月に行われた今年度の定期大会では、「当事者である大学人による事前の検討を一切欠いて、突如提出された文部科学省による大学構造改革の方針は、新制大学の理念である一県一大学方式を何の議論もなく放棄するなど、大学・高等教育の充実発展に対する国の責務を後退させ、むしろ、現政権の経済財政政策に大学・高等教育を従属させるものである」「安易に民間的発想の経営手法の導入をもくろみ、加えて、大学人同士の真の切磋琢磨と公平な評価をゆがめる危険性の高い「トップ30大学」への重点投資など多くの問題を含んでいる」等と政府を批判した上で、「高い自律性を有する大学・高等教育像を求めて、積極的に要求対案を対置していく」とともに、「国立大学法人化に伴う教職員の労働条件決定方式の変更をも視野に入れた組織強化のためにも、『過半数の組合づくり』をめざす」ことを確認しました(28日付大会宣言、http://www.zendaikyo.or.jp/dokuhouka/zendaikyo/24taikaisengen.htm)。
 それをうけて8月31日付で、「学術・文化の未来を担う、高い自立性をもった国立大学をめざして(第一次案)−国立大学法人が備えるべき理念と諸原則〜私たちの「対案」―」を文部科学省に提出しました(http://www.zendaikyo.or.jp/dokuhouka/zendaikyo/01-8taian.htm)。この「対案」は、独立行政法人化は必至と見て、どのような独法化が望ましいかをまとめたものです。
 また9月には、『大学の「構造改革の方針」と法人化問題』という冊子を作成し、加盟組合員に配布しています(http://www.zendaikyo.or.jp/dokuhouka/zendaikyo/0109houjinkaQ&A/Q&Amokuji.htm)。

5.東北大学職員組合の活動

こうした状況の中、東北大学職員組合は活動を展開してきました。以下、その概要を記します。

東北大学の動き

 これまで東北大学では、評議会の下に「大学制度等調査委員会」(1998年10月発足)、「独立行政法人化問題に関する検討委員会」(1999年9月発足)がおかれていました。このうち後者が、昨年12月に「東北大学の法人化に関する検討委員会」と改称され、「本学が仮に法人化するとした場合の、東北大学としての望ましい姿や東北大学として必要とされることに関する案を、東北大学独自の立場でまとめ、全学的な合意を形成するとともに、内外に提言し、制度設計への反映」するという方針で議論を始めています。また、「東北大学の在り方に関する検討委員会」に対して、独法化を念頭においた大学の理念、運営体制の検討などが付託されました(4月)。7月17日には、中間報告「『東北大学の理念』について」が出され、学内の議論にふされています。
 しかし、議論は国大協や他大学の議論の後追いにとどまっています。また、情報開示も教授会での資料の配布、ホームページでの議事の紹介(学内からのみアクセス可http://www.bureau.tohoku.ac.jp/dokuho/)程度の不十分なものとなっています。特に職員層の情報不足は構造的なものであり、「全学的な合意を形成する」という方針とは程遠い状態にあります。職組として、このような状況に対して問題提起をし、民主的な討議を経た上での意思形成を求めていく必要があります。

東北大学職員組合の取り組み

 東北大職組は、独法化問題への対応を最大の課題として位置づけ、教文部を中心に取り組みを行ってきました。
 今年に入ってからは3月10日と5月18日に、それぞれ三宅則義全大教副委員長、前田達男金沢大教授をまねき、万一独法に移行した際の組合の役割について学習を深めました。また、教文部員が講師となった支部主催の学習会が三回行われています。
 12月-1月にかけては全大教提起の団体署名に取り組み、124団体から賛同を得るという全国的に見ても先進的な成果をあげることができました。
 宣伝面では、全大教パンフレット「もし、国立大学等が独立行政法人化されたら」の全教職員への普及活動、独法化した国立研究機関の実態を暴露するビラの配布(5月)などを行いました。
 申し入れ活動としては、5月28日の東北地区国立大学学長会議にあわせて、東北大総長に対して、国大協のまとめた独法化に対する「基本的考え方」を再考するよう要望書を提出しています。また、7月2日、「国立大学協会第108回総会等をふまえた要望書」を総長に提出し、7月13日の大会では、大学構造改革・独法化に反対する特別決議をあげました。

全大教教研集会

 こうした中、9月14日〜16日の日程で、全大教の教職員研究集会(教研集会)が鹿児島大学を会場に開かれました。東北大学職組からは、文科系支部の柳原敏昭氏が参加しました。以下は、その報告です。

(1)開会集会(14日)
 基調報告・記念講演とそれに対する質疑応答・討論が中心です。
 基調報告(林教文部長)は、まず「大学構造改革」を大学審議会答申(1998年)以来の「改革」路線の中に位置づけた上で、独法化問題だけを見ているだけでは不十分で、国策としての科学技術政策にも注意を向けるべきだとしました。そして、「自治と高い自律性を有する」高等教育機関はどのような制度の下で運営されるべきかについて全大教の見解を述べました。
 講演は、梶井功氏(元東京農工大学長)による「新しい『国立大学法人』像について」(中間報告案)の解説。文科省調査検討会議人事制度委員会の座長をつとめる方の「内側」からの報告ですから、大学側と文部省側とのせめぎ合い等については生々しさがあり、大変興味深いものでした。しかし、教研集会の冒頭に調査検討会議のメンバーの話を聞くというのは、ちょっと意外な感じがしました。
 討論では、全大教中執が8月31日付けで発表した「学術・文科の未来を担う、高い自律性をもった国立大学めざして〜私たちの『対案』〜」(以下、「対案」)に「国は国立大学法人を設置する」とあったことが問題となり、独法化・「構造改革」路線に対して、どのような対抗軸を作っていくべきなのかということが議論となりました。

(2)分科会(15日・16日)
 「独立行政法人化問題と私たちがめざす大学づくり」「大学の『構造改革方針』等の改革に関する具体的動向と私たちの課題」の二つの分科会に出席しました。
 分科会は、各単組のレポート報告とそれに対する質疑応答が中心です。やはりここでも独法化や「構造改革」にどのような対抗軸を作っていくべきかということが話題となりました。ひとつは前述の「対案」を意識した、法人化や法人格取得それ自体の是非をめぐる議論で、北海道大・熊本大・宮崎大学・独立行政法人問題千葉大学情報センター事務局等からは、たとえ通則法と切り離された法人化であっても安易にそれに乗っかってはならないという主旨の報告が行われました。もうひとつは、大学の座標軸ともいうべき大学憲章に関する議論です。大阪大学・名古屋大学の報告では、職組もかかわっているということで、参考になりました。このほか、大学統合をめぐるレポート、法人化後の大学財政のシミュレーションに関する報告もありました。
 東北大職組からは、主として昨年11月に行われた宮教協主催のシンポジウム「地域社会と大学」の経験を中心にレポートしました。市民の間に大学問題を拡げるにはどうしたらよいかということで、貴重なご意見をいただくことができました。北海道地区協議会からは、マンガによる市民向けのパンフレットの紹介もありました。一方で、肝心の大学人の中での情報伝達や議論が不十分であり、運動の正否はむしろ大学内部で運動をどう構築するかにかかっているという意見も出されました。

(3)閉会集会(16日)
 全大教執行部によるまとめを中心に報告します。

  1. 教研集会について
    参加は68大学276人。近年になくレポート数が多く、また激しい議論が行われた。
  2. 文科省のうごき
  3. 国大協の動き
     将来構想ワーキンググループを立ち上げ、国立大の再編統合に関する全国調査を予定。また、法人化について改めて論議する。
  4. 全大教の当面の方針


6. 文部科学省の「中間報告」

 文部科学省の調査検討会議(国大協も参加)の中間報告(案)が8月9日に出されましたが、早速9月27日に中間報告が公表されました。以下にその概要を掲載します(独立行政法人反対首都圏ネットワークがまとめたもの。全文はhttp://www.mext.go.jp/b_menu/public/2001/010901a.htm参照)。


「国立大学法人」制度の概要(調査検討会議の中間報告 9月27日)

  1. 「大学ごとに法人化」し、自律的な運営を確保
  2. 「民間的発想」のマネジメント手法を導入
  3. 「学外者の参画」による運営システムを制度化
  4. 「能力主義」人事を徹底(非公務員化も含め更に検討)
  5. 「第三者評価」の導入による事後チェック方式に移行
(注)独立行政法人との違い
  1. 「学外役員制度」など学外者の運営参画を制度化
  2. 客観的で信頼性の高い独自の評価システムを導入 
  3. 学長選考や目標設定で大学の特性・自主性を考慮


なお、以下の片山知史氏(農学部支部)のコメントも参考までに示しておきます。
 下欄にあるようにいわゆる通則法の独法化とほとんど変わりありません.「通則法に反対」の国大協も丸め込まれた形です。

問題点のポイントは  「中間報告」のとおりになると、なんと「総務庁独立行政法人評価委員会」「文部科学省国立大学大学評価委員会(仮称)」「大学評価学位授与機構」「運営諮問会議」の4つの評価、加えて「自己評価」に対応しなければならず、莫大な予算・時間・労力を消費することになります。教育研究の足を引っ張ることは明白でしょう。それどころか、現人員、予算で果たして可能でしょうか?
 なお、9月11日に地方国立大学長28名による「国立大学地域交流ネットワーク構築の提言―地方国立大学と地域社会の活性化のためにー」(http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/01092028teigen.html)が各界に提出されました。「東北大学の生き残り」ではなく「国立大学全体の発展」を望むならば、東北大学としても尊重すべきと考えます。

 この「中間報告」と、それを作成・提出した「調査検討会議」の位置付けについては、「調査検討会議は、文部科学大臣の私的諮問機関に過ぎず、何かを決定する法的権限はない。また、当該会議には「合意形成」の形式は備えられておらず、中間報告作成に至る過程は不透明で、その正当性に深い疑念を持つ国立大学関係委員は少なくない」という指摘があることを心得るべきでしょう。そうした事情を、あたかも全く知らないかのようなマスコミの反応については、http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/928-dgh-report-news.htmlを参照下さい。

おわりに

 東北大学職員組合教育文化部ではこうした現状をふまえ、10月に拡大教文部の集会を開いてこの問題を討議し、全学的な意志統一に寄与していきたいと考えています。ご意見やご感想などお寄せ下さい。


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