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教文部ニュース第二四号

2001.12.20発行
東北大学職員組合教文部 発行
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12/8「中間報告をどう読むか」学習会報告

== 自主・自律の「国立大学法人」の実体 ==

 東北大学職員組合では東北地区の国立大学職員組合に呼びかけ、12月8日に文科省調査検討会議の『新しい「国立大学法人」像について(中間報告)』の学習会を行ない、合わせて今後の取り組みについて意見交換を行なった。参加は、福島大学、山形大学、岩手大学、宮城県教職員組合協議会からの参加者も含め20名を超え、今後の東北地区協議会としての活動活性化という目標を確認した。以下はその概要である。

なお,中間報告(新しい「国立大学法人」像について(中間報告)2001/9/27発表)の全文は文部省のサイト独行法反対首都圏ネットワークのサイトで読むことができます.


1. 全大教中央執行委員の品川敦紀氏(山形大学)の講演と質疑応答の概要

<今後のスケジュール>

 初めに、2年後の2004年4月の「国立大学法人」発足に向けてのスケジュールの解説があった。「国立大学法人」化に合わせて大学の再編・統合も行われることから、それに向けた用意もあり、かなり大変な作業を大学・文科省ともクリアしなければならない。2002年中は法案の作成と再編統合の調整が主な作業である。大学の中期目標・中期計画については、2002年後半から文科省と大学とのすりあわせが始まり、2003年の6月には策定完了の見込みとなっている。2003年6月には概算要求が中期計画に基づいて行われ、人件費の大枠が決定することになる。
 労働条件に関しては、このスケジュールによると2004年4月の就業規則作成・届出が一つの山場であり、それに向けて各大学において必要な労働協約・労使協定を結ぶ取り組みが重要。まずは、過半数の職員を組織した職員団体となることが絶対条件。その上で、労働条件についての交渉に強力に取り組む必要がある。

<中間報告の問題点>

 中間報告には曖昧な点が沢山あり、例えば、運営組織(評議会や運営協議会の形態)、学長選考方法、教職員の身分(公務員型か非公務員型か)など基本的かつ重要な点についても両論併記あるいは結論先送りとなっている。中でも、教職員の身分に関しては、有馬文部大臣(当時)が公務員型を前提に大学の独立行政法人化の議論を認めたことからすると大きな後退であると言える。調査検討会議のメンバーの中では、財界人、マスコミや私立大学関係者の発言力が大きいので、曖昧な点はより通則法に近くなる可能性が強い。

 組織業務に関しては、大学運営への大幅な学外者の参加(半数近く)が義務づけられ、学長の権限が大きくなる一方、学長選挙は今までよりもかなり制限された形になり、リーダーシップという名のもとで独断専行型の大学運営となりかねない。さらに、教授会が教授を決められない場合もあるなど、これまでの運営方式から大幅に変わることは必至である。

 目標評価に関しては、大臣が認可した中期計画に沿って評価が行われ、各大学の予算に反映させられることになる。目標や計画は、国のグランドデザイン→大学の長期目標→大学の中期目標→大学の中期計画となっており、国の意向を大学の計画に反映させることが求められる。なお、中期目標は大臣が策定、中期計画は大臣が認可するとなっている。部局ごとの目標は大学の中期計画に盛り込まれることになる見込みであり、その中期計画は数値目標となる可能性が高いと考えられる。例えば、調査検討会議の中間報告(案)に添付された「中期目標・中期計画の記載事項例」に挙げられているのは、次のような記述である。

解説:TOEFLとは英語の学力テストの一種。留学する時には、TOEFLのスコアが概ね550点以上を求められる。ちなみに、600点とは英米の文系の修士課程クラスに入学する時に必要なスコアと考えてよい。受験した人ならわかるが、600点は相当な努力をしても取れない点数であり、大学の先生でもこのスコアをクリアするのは少数であると考えられる。中間報告(案)に添付された「記載事項例」は、深く考えたものとも思えないが、この資料の記載事項が手本となる可能性が高い。
 (上記資料の全文は北大総長室サイトの「独立行政法人化について」ページから入手できます.PDFファイル.)

つまり文科省役人の(案)では、このような具体的な数値を書き込むことが求められており、大学人の感覚とはかけ離れた目標設定のひとり歩きする危険性が大きい。

 中期計画に対する評価は、大学の自己評価に基づいて文科省に設けられた「国立大学評価委員会」が行うことになるが、この内容も非常に曖昧である。そもそも、国立大学評価委員会のメンバーは経済界やマスコミから多く任命されるものと予想され、大学固有の事情に疎い人が委員となる可能性が高く、この人たちに大学本来の使命を踏まえた評価が本当にできるのかという問題がある。国立大学評価委員会は、教育研究に関する事項については「大学評価学位授与機構」が専門的な見地から行なった結果を尊重し、その他の評価(大学の運営方法や経営か?)を合わせて総合的な評価を行うことになっているため、大学経営の面が評価の対象として重視されると考えられる。また、各大学の中期計画は膨大であるため、現在99ある国立大学の評価は点数化したものになると予想される。この点からも、中期計画は達成度を数値で判断できる「数値目標」となる可能性が高い。さらに、評価結果は運営費交付金の算定に反映させられることになっている。しかし、客観的、多面的、公平な評価が必ずしも保証されず、単純な論文数、特許取得数、賞の受賞数などに基づいて運営費交付金が配分される可能性が高い。

 人事・給与面では、かなり不透明な部分があるが、人事の面では学長のリーダーシップの発揮が求められ、給与面では下がる場合もあり得る内容である。まず、教員の任免に関しては、教育公務員特例法が適用・準用されず教授会での任免が保証されないおそれがある。また、学長・学部長の役割が大きくなるので、教授会の意向に反する人事もあり得ることになる。さらに、学長が分野や講座を改廃する権限を得るため、これと合わせて人事も過度に学長主導となる危険性がある。学長は文科大臣による解任があり得るが、一方で監事以外の役員を任免できるため、ワンマン体制を取ることができるようになる仕組みである。給与には教職員の成果・業績を反映させることが求められ、そのために個人の成果・業績評価を行うことになっている。なお、ワークシェアリングなどの多様な勤務形態が謳われていることに注意する必要がある。公務員型と非公務員型の違いは、公務員型なら特定独立行政法人となり公務員試験合格者を採用することが強制される、非公務員型なら争議権が認められる一方で解雇が容易となる、等である。公務員型にしても、俸給額の決定や就業規則の作成・変更に人事院は関与せず、大学(法人)と職員団体(労働組合)間の交渉により決定されることになる。

 財務会計的には、これまでの使途が厳密に決められた国立学校特別会計に代わり、使途の裁量が大きい国から大学への運営費交付金になる。運営費交付金には、標準運営費交付金(学生数を基礎)と特定運営費交付金(特定事業)があるが、どのように算出するかは現段階では不明瞭である。学部講座あたりの校費は非実験系が基本となると言われており、評価が交付金へ反映することからすると厳しいものになりそうだ。また、学費については「自由化」が言われており「値上げ」が予想される。また、運営費交付金の仕組みを通じて、大学間差別が合理化される懸念が大きい。

 労働組合との関係はこれまでとは大きく変わることになる。それは、「国立大学法人」発足、就業規則作成の段階で大学(法人)は、教職員の過半数を組織する労働組合か教職員の過半数を代表する者(非組合員の委任状)の意見を聴くことが義務づけられ、超過勤務や休日勤務についても同様に過半数代表者との労使協定の締結が必要となる等、賃金、勤務時間、配置転換など様々な労働条件について大学(法人)と組合の間で交渉し労働協約・労使協定を締結することが必要になるからである。とくに、寒冷地手当については就業規則ないしは労働協約に入れさせないと廃止されることになり重大である。なお、就業規則は各大学で作ることになっているが、おそらく文科省から雛型が来ると予想される。

2. 各大学でのこれまでの取り組み紹介と情報交換

 山形大学では、教育学部の再編が計画されており、取り組みは活発である。主なものとしては、泊り込みでの学習会、学長との懇談会を開き今後の方針を聞くこと、秋田大学の組合から講師を招いての意見交換、福島大学から講師を招いての学習会等。また、教官の中には情報が伝わっていない人もいると見て、情報提供のメールを送るなど啓蒙活動に努めている。なお、来年度から学長裁量経費で外部コンサルタントに財務を依頼する、との動きが紹介された。

 岩手大学でも、教育学部の再編が計画されており、取り組みを活発化しているところである。これまで、科学者会議との共催による学習会、教育を語る県民の集い等を開催した。今後は、再度の学長との懇談会、経済団体やPTAに呼びかけてのシンポジウム等を開く予定である。

 福島大学では、独法化の議論以前に大学再編−他大学との間での学部統合と大学内での学部再編−の議論が先行し、独法化への関心はやや薄いとのこと。そのような中で、市民も交えた「独法化を考えるフォーラム」を組合とは別組織で立ち上げ活動中とのことである。

 東北大学では、全体的に独法化を前提として事態が進行しており、とくに病院では独法化(=民営化)まがいのしわ寄せが既に始まっている。教授会での情報開示の状況は部局により異なるが全般的に構成員に対する情報が不足しているため、教文部ニュースを中心に情報提供を行っている。

 他大学から東北大学への意見として、「地方大学では尻に火がついているが、東北大学などは安穏としているのではないか?」との強い意見や、「力のある大学ほど研究面での締め付けが強まり、落ち着いて研究できなくなるだろう」といった指摘があった。さらに、全て「数」が物を言うようになってしまうことへの危惧や、「目先の利益に走る年長者を見て次世代を担う若手が育つのか?」というような懸念も出された。

3. 各大学および東北地区協議会としての今後の活動方向

 それぞれの大学において独法化に無関心な層、および関心があっても情報が少ない層が多いことから、各大学でこのような層へ積極的に情報提供をすべきであるとの意見が交わされた。具体的には、ウェブに情報を載せただけではアクセスする人は少ないので、情報をビラやポスターでこまめに伝えることが必要である、等の意見もあった。
 非組合員の間でもこの問題に高い関心をもつ人は少なくないとの認識から、電子メールで組合から非組合員へ情報を一方的に送っている例が紹介された。各単組の取り組みや情報を積極的に交換し互いに利用する、全国レベルでのメーリングリストを活用する、等の案も出された。
 市民に広く訴える手段として、マスコミを通じた活動について情報・意見を交換した。新聞への意見広告は、全大教としても全国紙への掲載予定がないそうで、東北地区として行うことについても費用対効果を考えて見送る意見が大勢を占めた。一方で、新聞への投稿活動は、詳細を東北大の教文部で考えて東北地区の単組と調整しながら具体化することで合意し、さらにマスコミへの話題提供を行う提案がいくつか出された。
 なお、今後の行事として、全大教としては単組代表者会議(1/26-27)、臨時大会(3/9-10)、大学の「構造改革」問題シンポジウム(3-4月。日本私大教連との共同を追求)、東北地区協議会としては職種別懇談会(3/16-17予定)が予定されていることが報告された。とくに、3月の地区協職懇に向けて各大学で努力を重ねるとともに、今後、連絡をとり合い協調体制を目指すことが申し合わされた。

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