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2002年10月11日
東北大学総長
 阿部 博之 殿

東北大学職員組合
 執行委員長 高橋 満

東北地区国立大学長会議にあたっての要望書

 大学・高等教育の充実と教職員の待遇改善・地位確立のために日頃からご尽力されていることに対して心から敬意を表します。
 さて、10月14日に開催される東北地区国立大学長会議に関して、国大協より、「討議をお願いしたい事項」として、「国立大学法人化後における一般事務系職員の採用方法等について」、「国立大学法人の経営責任と新しい連合組織の担うべき役割の範囲について」、「法制化作業において国大協として重大な関心を持つべき重要事項について」、「法人化後の初代学長の選考について」等が提示されているという情報を得ました。
 このことについて、まず、国立大学法人法案すら出ていないにも拘わらず、このような先取り的な行政運営が行われることについて厳しく抗議するとともに、東北大学職員組合は、「独立行政法人通則法」に基づく大学の「法人化」はもとより、「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」が2002年3月26日に発表した「新しい「国立大学法人」像について」(いわゆる最終報告)による大学の「法人化」についても、反対であることをあらためて表明するものです。
 その上で、法人化される場合について以下に若干の意見を提出します。地区学長会議での検討にあたっては、この組合の意見をふまえた主張をしていただけるよう強く要望します。
 また、東北地区国立大学長会議の内容について、組合に対して開示するよう要望します。
 なお、組合の加盟する全国大学高専教職員組合(全大教)は、「「新しい『国立大学法人』像について」に対する私たちの意見」を発表しており、参考資料として別添します。

1、国立大学法人の内容について、調査検討会議の最終報告を既成事実ととらえず、その改善に努力すべきである。東北大学の制度検討委員会における検討過程において、多くのことが既成事実と決め込まれている。たとえば、役員会・評議会・運営協議会の関係や運営費交付金の算定方法等について、法案提出や審議の過程での変更の余地は十分にある。総長には、大学にとっての原理・原則という点から改善を働きかける立場で、主張していただきたい。

2、東北地区の大学の再編・統合について不合理な合併はすべきではないという点から主張していただきたい。

3、教学・経営の分離について

 経営の諮問のために外部の専門家を入れることや、大学の情報公開に基づいて広くパブリックな議論の中に大学をおくことが必要だとしても、経営審議機関に恒常的に外部者が参加することは適切ではないと考える。
 また、運営協議会の委員は誰を代表しているのか、その責任はどうなっているのか明らかではなく、総長による指名なので社会の代表とも言えない。総長の意向を具体化するというのであれば、教学および社会の側からのチェックが抜本的に働くものとなるよう主張していただきたい。

4、アウトソーシングについて

 大学の教育・研究には本来的にアウトソーシングすべきではない部署があると考える。例えば、技術業務の中には、研究の不可欠の要素として、本来大学の中で人材を作り上げ、技術を蓄積していくべきものがあるし、事務についても、教員・学生と密着した領域などアウトソーシングがただちに業務の合理化につながるものではないのではないか。総長におかれては、大学の教育・研究に関わる本来業務についてはアウトソーシングすべきではないことを主張していただきたい。

5、人事制度について

 教職員を非公務員とすることは大学改革にとってどのような意義があるのか、制度検討委員会の議論でも、弾力的で多様な人事制度や流動性につながるというよりも、公務員制度改革に連動した検討がされており、非公務員型を選択する意味はまったく不明である。非公務員型の採用は合理的理由を欠いており、公務員の人減らし以上にほとんど意味がない。総長におかれては、東北地区として非公務員化に反対の立場から対応をとるよう主張していただきたい。

6、事務職員について

 調査検討会議最終報告にせよ、東北大学制度検討委員会の中間報告案にせよ、「事務職員とは何か」がはっきり定義されず、事務職員が本来大学運営にどう関わるべきかにつても何ら論じられていない。
 組合としては、仮に非公務員になったとしても現在の労働条件を低下させることは認められない。また、東北地区各大学間の人事異動については、今まで同様、本人の希望をふまえたものとすべきである。
 これらについて学長会議において強く主張していただきたい。

7、雇用の保障と待遇の維持向上について

 公務員から非公務員への転換は身分の激変であり、とりわけ重大なことは、原則として解雇されない立場から解雇されうる立場への転換である。他の様々な権利・義務関係の変化がどのようなメリット・デメリットをもたらそうとも、この転換は教職員にとって重大な不利益変更である。継承される現公務員と、今後採用される正規教職員については、公務員時と同等の雇用保障をすることを、学内規則に明記するという立場で発言していただきたい。少なくとも東北大学については、A委員会は教職公務員について教特法の水準での保障を考えていると理解しているが、総長におかれては、より明確な姿勢を示されたい。同様に、組合は、教職員の待遇の不利益変更には反対である。現状の水準の維持・向上という立場で発言されたい。

8、継承について

 東北大学の制度検討において「法人化時点で東北大学の常勤職員である者は、本人の意思に反しない限り、所要の法律によって、国立大学法人東北大学の職員として継承する」という案が出ていることは当然だが、このことが「非常勤の職員は継承しない」ということならば重大である。恒常的な業務に継続して就いている非常勤の職員は多く存在する。このことは、2002年人事院勧告の別紙第3の報告(6-ウ(イ))においても、「非常勤職員に関しては、現在まで十分な制度的整備がなされておらず、非常勤職員が、常勤職員とほぼ同様の勤務実態を有しながら、定員等の都合で非常勤として採用されるといった運用が見られるところである」と認識されているところである。こうした職員については、本人の意思に反しない限り雇用を継続すべきと考える。非常勤職員の継承にあたって待遇の切り下げがされてはならない。総長におかれては、この立場で主張していただきたい。

9、総長選挙について

 東北大学の制度検討においては、合同委員会=総長選考委員会という構成からも明らかな通り、次期総長選考に関して、現職総長の意向が入り込みすぎるしくみとなっていることは重大である。このような機関で総長選考が行われた場合、現職総長の意向に反した選考を行うことがかなり困難になることは容易に予想される。総長におかれては、学長会議の議論において、公正な総長選考を保障する立場で発言していただきたい。

10、教員評価について

 東北大学の制度検討において示されているような単純なポイント制は実態にあわず、業績給や60歳時の勧奨退職の判断基準として実用にたえるとは考えられない。評価制度の拙速な導入には慎重であるよう主張されたい。

11、給与体系について

 年功序列が理想でないことは明らかであるにしても、どのようにして実際に能力に応じた等級づけをするかについての検討はまったく不十分である。能力主義管理の導入の是非はともかく、査定の方法についての検討を抜きに能力給を導入しても何らかのプラスの効果があるとは思われない。総長におかれては、恣意的な査定のもとで能力主義管理が導入されることのないよう主張されたい。

12、退職金について

 東北大学の制度検討において、「法人化後採用の常勤新規職員について運営費交付金に含めるか否かについて、言及がない。運営費交付金として財源措置がとられるように交渉が必要であり、また本学の中期計画に明確に含めるべきである」との考えが述べられていることは当然であるが、退職金についても同様に位置付けられるべきである。退職金は給与の一部であり、運営費交付金に含めないということが万一にもあってはならない。東北地区として厳重に政府に働きかけるよう主張してほしい。

13、評価結果の運営費交付金の算定への影響について

 評価結果を運営費交付金にどう反映させるかについて、東北大学はもとより、東北地区各大学において一定の見地を表明すべきである。たとえば、中期目標の未達成を理由に運営費交付金が削減されることによって「貧すれば鈍す」的悪循環を引き起こしてはならない。また、経費節約の実現が運営費交付金の増額につながるのではなく、支出の基準自体の切り下げにつながり、さらなる節約を求められるといった結果になってはならない。こうしたことが法人化の標榜する大学改革に逆行することは明らかであり、総長におかれては、運営費交付金のあり方について、各大学・国大協が独自に研究し、一定の見地を表明するよう主張されたい。


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