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2002年2月25日

東北大学総長 阿 部 博 之 殿

東北大学職員組合 執行委員長 関本 英太郎

教職員の「非公務員化」問題に関する要請書

 大学・高等教育の充実と教職員の待遇改善・地位確立のために日頃からご尽力されていることに対して心から敬意を表します。
 さて、新聞報道によると、2月21日に開かれた文部科学省・調査検討会議の「連絡調整委員会」は、国立大学教職員の身分について、「弾力的で多様な人事制度を実現するため、全員を『非公務員』とする」との事務局最終案を確認したとのことです。
 組合は、法人化される場合には「公務員型」「教特法適用」となることを前提として、独立行政法人通則法に準拠した国立大学法人化に反対してきました。その立場から、今回の事務局最終案における「非公務員化」確認には以下の重大な問題があると考えます。

1、国大協の一貫した立場、調査検討会議における経緯に照らして、この間の調査検討会議「連絡調整委員会」の議論には、急激かつ不当な「非公務員化」「教特法不適用」誘導があったと言わざるを得ないこと

 法人化の際に教職員の身分を「公務員型」とすることは、そもそも国大協が調査検討会議の議論への参加を決定した前提であり、その後も、国大協は「公務員型」を一貫して主張してきました。
 また、私立大学とは異なる国立大学としての存在意義は、「国を設置者とする」と記述されている通り、「中間報告」の認めるところです。しかも、国大協の「中間報告」への意見で教特法については学問の自由の観点からとくに適用が求められています。(「学部長、研究科長、研究所長等の部局長および教員は、各教授会等の専門的な教員集団の審査に基づき、学長(法人の長)が任命する。部局長と教員の懲戒については、関連教授会の議を経て、評議会の審査により、学長が行う。『国立大学法人法』等でこれらについて規定することが必要ではないかと思われる」)
 1月25日の「連絡調整委員会」に提出された資料には、「非公務員型又はそれに近い主張」としては、経済財政諮問会議、総合規制改革会議などの政府関係の機関、経済団体連合会、政党、新聞社説などが多数掲載される一方、「公務員型を主張するもの」としては全大教の意見1件しか掲載がなく、また「非公務員型」には「現行の教育公務員特例法に相当する特例を法律上規定することは困難」との判断が示されていました。
 したがって、国大協の一貫した立場、調査検討会議における経緯に照らして、この間の調査検討会議「連絡調整委員会」の議論には、急激かつ不当な「非公務員化」「教特法不適用」への誘導があったと言わざるを得ません。

2、教職員の全職業生活に関わる重大問題であるにも拘わらず、その決定が教職員をないがしろにして為されようとしていること

 国立大学の教職員は、公務員としてその職業生活を開始し、公務員としての地位が保障されることを当然の前提として勤務に精励してきました。大学教職員の大多数は、今でもそうした地位が維持されることを信じています。そうした公務員としての地位が一方的に変更されることをほとんどすべての教職員が容認しないであろうことは明らかです。
 「公務員型」とするか、「非公務員型」とするかの最も根本的な問題は、「身分保障」です。法律上の「身分保障」があるか、これを失うかということは、教職員にとってはその全職業生活に関わる重大な問題です。こうした、職業生活、雇用の基本に関わる問題を、当事者である教職員の意見を聴くことなく一方的に決定することは、信義に反し、到底許されることではありません。もし一方的に非公務員化の措置が決定されるならば、大学の職場において雇用不安が広がり、日常の教育・研究業務の質も低下することは必至です。文部科学省および調査検討会議は、最終報告を決定する前に、全大教および国立大学教職員の職員組合との誠意ある交渉を行なうべきです。

3、教特法の不適用は国公私にわたる全大学の「学問の自由」にとって重大な問題であること

 国立大学教職員を非公務員にした場合には、教育公務員特例法(教特法)の教員に関する身分保障が適用されなくなります。教特法の規定が「学問の自由」を守るために、歴史的な経験に基づいて定められたことは言うまでもありません。「学問の自由」は、大学における自由で創造的な教育・研究を発展させるための制度的な保障であり、これが大学の研究・教育活動にとって不可欠のものであることは今日でもまったく変わりません。
 本来、「学問の自由」にとっては、私立大学にも同様の法的保障がなされるべきですが、教特法の規定は事実上の規範としてこれまで私立大学にも及んでいました。国立大学について「非公務員化」することによって教特法の規定が意味を失うことになれば、それは、国公私立のすべての大学における教育研究の自由を脅かすことになりかねません。
 「学問の自由」を守るためにも、公務員身分を維持しなければなりません。

4、「非公務員化」「教特法不適用」の真のねらいは市場競争による大学の「自然淘汰」にあること

 1月25日の「連絡調整委員会」に提出された資料にある「非公務員型」を主張する意見の多くは、民間企業との研究協力や大学教員の兼職・兼業を可能にするために非公務員化が必要だと主張しています。しかし、企業との研究協力や兼職は現行制度の下においてもすでに広く行なわれており、まして公務員制度改革がなされるならそうした問題はほとんど解消するでしょう。現在主張されている非公務員化のねらいは、むしろ別のところにあります。
 「国立大学も非公務員型にして」「自然淘汰するのがいい」(尾身科学技術担当相、朝日新聞2001年12月17日)という発言に示されるように、国立大学を民営化または民営に近い形にすることによって、再編淘汰の手段にするというのが、今日の非公務員化の真のねらいです。こうした主張は、私立大学も含めた大学の社会的、公共的な性格を見失った誤った議論であり、高等教育と学問研究のバランスのとれた発展を阻害するものです。地域の発展、国民の高等教育への欲求、科学研究の発展といった見地からすれば、市場競争によって大学を淘汰するというような議論に与することはできません。教職員の身分・雇用の不安定化は大学・高等教育機関の自殺行為であり、「非公務員化」をこのような大学の再編淘汰の道具にしてはなりません。

 以上より、私たちは、下記の2点について総長に強く要請いたします。

1、「最終報告」が出てそれに基づく政府の指導が強まる前に、東北大学として「非公務員型」に毅然として反対の意見を表明し、教職員の公務員身分維持のために尽力すること

2、この問題について、早急に、職員組合および学内教職員の意見を聴く機会を設けること



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