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東北地区の7国立大学の教職員組合が4月23日、国立大学法人法案に反対して以下の共同声明を出しました。

これに基づいて宮城では東北大学職員組合と宮城教育大学職員組合が4月24日県庁で共同記者会見を行ないました。(宮城テレビ、河北新報、朝日新聞等で報道) 声明は衆参の文教委員、地元議員等へ送付し、また、第74回メーデー宮城県集会で配布しました。

共同声明
国立大学の法人化に反対します

法人化は地域社会の教育研究・文化を破壊するものです

 小泉内閣は、「聖域なき構造改革」の名のもと国立大学を法人化する「国立大学法人法案」を国会に提出し、早期の成立をめざしています。

 東北地区の国立大学は、国民に教育機会を提供するとともに、その教育研究の成果を地域社会に還元することをとおして、地域の学術・文化や経済的発展、そして福祉に積極的に寄与してきました。ところが法人化は、こうした拠点としての大学の存続を危うくさせるものであると私たちは考えています。

 大学の使命は、真理の探究をとおして人類の優れた学術的・思想的・文化的遺産を受け継ぐとともに、それらを発展させて新しい時代や社会の要請に積極的に応えることにあります。そして、大学の社会貢献は、特定の利害・思想の強要ではなく、自由な学問的判断に基づいてなされなければなりません。そのために大学は、政府から独立し、その責任ある自治により教育研究の機能を果たしてきました。

 しかし、法案では、各大学の中期目標は文部科学大臣が定め、その達成をめざす中期計画も文部科学大臣の認可をうけることになります。さらに、国立大学法人評価委員会が文部科学省内に置かれます。そして、文部科学省から評価に応じて資金が配分されます。大学は、こうした統制にがんじがらめにされ、ときどきの国家・政府の方針に従属させられる危険があります。

 統制が強化される一方で、研究教育に対して負うべき政府の公的責任は、今よりもあいまいになっています。法案では、国立大学の設置者は国ではなく国立大学法人となっており、国の財政責任が明記されていないからです。国立大学法人に、採算優先の経営を迫るものになっています。

 大学の機構もトップダウンに改編されます。学長を中心とする役員会と、学長によって任命された学外者委員が中心の経営協議会が強力な権限を持つようになります。経営成績が悪いと判断されれば、基礎科学研究や人文・社会科学などの学部や学科の安易な縮小・廃止が行われる恐れがあります。

この結果、国民の生活にも大きな影響を与えることになります。

まず、国民が高等教育を受ける機会が脅かされるということです。法人化後の各国立大学は、資金調達に全力をあげざるをえない状況になり、大幅な授業料の値上げをせざるをえなくなるでしょう。これは杞憂ではありません。例えば、現在の授業料の52万円を最大で約71万円まで引き上げる試案が文部科学省内ですでに検討されています。

また、財政基盤の弱い地方国立大学は、どんなに質の高い教育研究に努めていても、地域社会の発展に寄与していても財政難に陥り、「競争力が弱い」とされて廃校に追い込まれるか、大学の統廃合を迫られる危険性があります。法人化がもたらす大学の空洞化が地域に暮らす人びとや学生に及ぼす悪影響は深刻です。

さらに、大学病院も法人化によって大きな影響があります。現在でも国立大学付属病院では人手不足は深刻です。たとえば、公立大学や私立大学の病院よりも患者あたり看護師数が少ないのです。しかし、法人化後は、医療の充実よりもコスト削減が優先されるおそれがあります。この結果、医療従事者の人員削減や非常勤化がいっそうすすめられ、大きな社会問題ともなっている医療事故が憂慮されます。さらに患者負担の大幅アップなど、患者がそのしわ寄せをうけることになるでしょう。

これまで東北地区の国立大学は、大学に課せられた社会的使命を果たすため、地域の人材養成、文化・産業・経済・医療など国民生活に密接に関係する領域で大きな役割を果たしてきました。法人化案は、こうした国立大学の存立を危うくする内容をもっています。私たちは、多くの国民の皆さん、とくに東北地区の皆さんに、この「法人法案」の内容を知っていただき、私たちとともに反対の声をあげていただくよう訴えるものです。

2003年4月23日

全国大学高専教職員組合東北地区協議会
弘前大学職員組合
岩手大学教職員組合
秋田大学教職員組合
宮城教育大学職員組合
東北大学職員組合
山形大学職員組合
福島大学教職員組合


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