ホームに戻る

9月2日給与問題学習会報告

講師:賃金・人事制度検討委員会 川端 望委員

はじめに

 大学は法人化したので民間企業と同じように給与を交渉できるし、しなければならなくなった。法人化前は交渉で決められる範囲が限られていたので、給与の交渉は組合なのにあまり得意ではない。特に教員は、これまで研究費の方が気になり、自分の給与のしくみについてあまり知らない人も多かった。しかし、この数年、いつまでたっても給与は上がらず、逆に下がってきている。やっていられない、考えずにはいられない状況にある。

 そこで現在の給与に関する問題をお話しする。今後の短期的および長期的見通しについて話す。

 そもそもの問題として国家公務員時代は労働基本権が非常に制限されていたので給与について交渉することはできない。雇い主が大学というより国全体である。国と交渉できるかというと、公務員労組はやっているが、実効性が弱いし、大学独自の交渉はできない。賃金について労働協約を結ぶこともできない。というように国家公務員は権利が制限されていた。その代わり国家公務員は人事院があり、妥当な賃金水準を決めていた。政府はそれを尊重して国家公務員関係の法律を改正する。そうすると給与法とか勤務時間法というものに細かく国家公務員の労働条件が規定され、あとは法律で決まっているのだからしょうがないとなっていた。

 ただ非常勤職員は法律で決まっていないグレーゾーンの部分が多かった。その分やりようはあったが基本的な部分は非常に劣悪だった。

 それが法人化されてどうなったかというと労働基本権が回復した。民間企業と同じように交渉できるし、労働協約を結べるし、何か問題があればストライキをすることもできる。

 ただ問題は大学の予算は運営費交付金で決められている。それは政府が一定の基準をおいて算定したお金だ。どうやって算定するかこれがそもそも問題だ。予算を与えますから好きなように使っていいとなった。しかし大学で労使合意して給与をどんどん引き上げて、その分のお金をくれるかというとくれない。ではどのくらいくれるかというとそれがはっきり決まっていない。とりあえず国家公務員だった最後の年を基準にお金をくれて、そこからいろんな係数をかけて増やしたり減らしたりしている。つまり原資が限られている中であまりいじくれないということがある。

 今年の問題は何かというと、経済界で公務員の給与は高すぎてけしからんとなっていることだ。下げろ下げろと政府に要求してきている。人事院はあまり下げたくないのか自分の権限が減るのがいやなのかわからないが、財界が言うほど下げないが、やっぱり下げるという動きをしている。それは国家公務員について決定したものだから、我々には直接関係がない。しかし国家公務員の給与を下げた場合、独立行政法人も同じように下げなさいといって、運営費交付金を減らしてくる恐れがある。そうするともともとの給与の原資が減ることになる。

 それから各大学の役員会が、もうめんどくさいから給与を国家公務員と同じにしようといってくるおそれがある。

 そこで我々は国家公務員の給与引き下げが本当にやむをえないもので合理的なものなのかを判断する必要がある。また、それがどうであれ、国立大学法人や東北大学にあてはめることがどういうことなのかという二段構えで考える必要がある。

 結論としては給与を引き下げることに合理性はないし、特に国立大学法人や東北大学の給与は国家公務員の給与よりずっと低いのでますます引き下げる必要はないという、そういう方向の話になる。

公務員に対する批判とその正当性

 人事院の動きだが、公務員の処遇に対する批判が非常に強まっている。私は前の勤務校が大阪市立大学だったからわからないでもない。背広はもらっていないが、互助組合の福利厚生は手厚かった。そこに市が多額のお金を出していたのが、バランスを失した厚遇だというので問題になった。これは象徴的な例だが、地方公務員が厚遇だと言われて責められている。ついでに国家公務員も責められている。また、独立行政法人の予算を見直し、給与を減らすといってきている。選挙では民主党が国家公務員の給与2割削減といっていて、自民が勝っても民主が勝ってもそっちの方向に行くだろう。

 理屈としては2つある。1.国家公務員の給与は一部地域で民間の給与より高いのでけしからん。2.年功序列で処遇している。これを職務職責勤務成績に基づくものに改めるべきだという考え方だ。

国家公務員の給与勧告の手順について

 ではそうした批判は正しいのかということを考えていく。国家公務員の給与を人事院が勧告するといってもそれはどうやって決めるのかという問題がある。国家公務員の給与勧告の手順というのは、まず今の国家公務員の給与を調査するのと同時に民間企業の給与を調査する。具体的には企業規模100人以上かつ事業場規模50人以上の民間企業を調査する。さらに言えば国家公務員で係長にあたる仕事をしている人は民間企業ではどういう人かを調べ、例えば公務員の係長と民間の係長というように、だいたい仕事が同程度の人と比べてどっちが高いかを決める。

 これは後のややこしい問題と関係があるが、本来は仕事の種類や難しさで決めればいい。しかし、わが国は誰がどのような仕事をするのかというのがあいまいな人事管理をしている社会だ。例えば大部屋で仕事をしていてだれがどの仕事をするのかをあまり細かく決めずにやっているようなホワイトカラーの働き方がある。つまり仕事を厳密に区分することができない。つまり、経理の専門家、営業の専門家というようにはっきりわかれていない。そのため仕方ないので役職段階と学歴と年齢でおおざっぱにこれと相当する人は誰かを決めている。これを統計学の概念でお互いの構成をそろえるためにラスパイレス方式というのを使って、民間と国家公務員でどっちが高いのかを決める。で、どっちが高いから国家公務員の給与を下げようとか上げようという話になる。今まではずっと上がっていたが、今度は下げようということになってきた。これが官民較差の比較の方法だ。

地域別の官民比較と人事院による是正方法

 これをいままでは全国についてやってきたのだが、今回は地域別にとられているというのが特徴だ。地域別にとってみると、民間と比べて国家公務員の方が高い地域と、民間の方が高い地域が出てくる。当然民間の給与が低い地域は国家公務員の給与が高いということになる。したがって、東北・北海道が一番それに該当する。昨年度は4.77%東北・北海道では国家公務員の方が高い。比較する場合行政職Iだから、これを比較してその後教育職や医療職も決めている。今年は確か4.8%ぐらい東北・北海道では国家公務員の方が高い。

 これをどのように是正するかというと、まず俸給、つまり給与を5%引き下げるといっている。今回人事院勧告では具体的に4.8%引き下げるといってきた。それから調整手当を廃止する。実は今でも地域によって、賃金や物価や生計費が違うから少し上乗せされている。これを調整手当といって、仙台では俸給プラス3%もらっている。で、俸給を4.8%引き下げる、調整手当てを廃止する。その上で地域手当を上乗せする。この地域手当は地方に比べて大都市が有利になるようにできている。なぜ大都市が有利になるようになるかというと、いままでは民間賃金、物価、生計費の3つの指標でなんとなく決めていたのだが、今回は民間賃金だけを比較して賃金を決める。そのため民間賃金が高い地域は地域手当が高く、民間賃金が低い地域は地域手当が低く設定される。一番すごいところで東京23区では地域手当が18%つく。一番低いところでゼロとなる。わが仙台は調整手当は3%だったが地域手当は6%に上がる。この地域手当がいかに東北・北海道に不利かというと、まず5級地6%の中に宮城県仙台市がある。それから6級地3%の中に名取市と多賀城市がある。これは名取と多賀城の給与が高いのではなく、仙台の隣接市であるためで、隣の市町村から給与が高い市町村に通っている場合は隣の給与も少しは上げましょうということで救済されている。地域手当の恐ろしいところは、仙台市、名取市、多賀城市、北海道では札幌市が3%に入っている以外、東北・北海道ではどこも入っていない。東北・北海道では民間の給与が低いので国家公務員の給与も引き下げるべきで、仙台、名取、多賀城、札幌以外は救済する必要なしということだ。そこで仙台に勤務地のある国家公務員の給与はどうなるかというと、以前の俸給・調整手当の合計に対して、俸給・地域手当の合計は2.2%引き下げとなる。仙台に住んでいる国家公務員の給与はどうなるかというと、2.2%引き下げとなる。ただし、これは級の低いほうはあまり引き下げない。高い人を引き下げる。簡単に言えば若い人は引き下げない。年寄りは7%ぐらい引き下げる。したがって、横軸に年齢、縦軸に賃金額を取った場合の賃金カーブの傾斜が緩やかになる。

 年功賃金には二つの意味が合って、年齢が上がるとなんとなく賃金が上がるということと、勤続が先の人を後の人が追い抜かないという意味がある。で、最初のほうの意味での年功序列がけしからんということになっている。年功序列の処遇がなぜできたのかについては、複雑なのでいまは触れない。

 とにかく給与は下がることになる。また退職金は退職するときの賃金で算定されますから、退職金も減ることになる。これは実際に人事院勧告で出された。

地域間で賃金格差があるのは正しいか

 しかし、こうした議論はかなり問題がある。これはつまり民間企業間や地域間で賃金格差があるのは正しいからそれに国家公務員も合わせるべきだという意味だ。東京と仙台と稚内や沖縄で給与格差がまったくあってはだめというのは物価が違うのでそこまではいわないが、でもどこまで違っていいのかというのは当然議論があっていい。地方の立場からすればいくらなんでも東京に一極集中しすぎだというのが問題となっている。そういうときに給与格差を鵜呑みにして、国家公務員もそれに合わせるべきだというのはあまりに地域差別、地方差別ではなかろうかという問題が出てくる。これを大学に持ち込むと、当然、東北・北海道にある国立大学法人の給与は低いということになりますから、どうやって優秀な人材を集めるのか、みんなばからしくて東京にいってしまうのではないかということになる。当然給与が減れば地方で買い物する金額が減るので景気は冷え込む。

国立大学法人に適用した場合の問題点

 これを国立大学法人に適用した場合どうなるかということを考えてみたい。国立大学法人の給与というのは完全に自由に決めていいのかというとそうではなくて、政府は一定の方針を持っている。国立大学法人法と独立行政法人法通則法というのによれば、国立大学法人職員の給与の水準は当該独立行政法人の業務の実績を考慮し、かつ社会一般の情勢に適合したものとなるように定めなければならない、というふうになっている。それから人事院勧告の後の閣議決定で国立大学法人職員の給与改訂は国家公務員の給与を十分考慮するようにという要請が出ている。したがって社会一般にあわせろ、法人の業績を考慮しろ、国家公務員を考慮しろとなっている。それじゃ独立行政法人の給与は国家公務員の給与に比べて高いのか低いのか調べないといけないということで、実は今全部調べている。それで出てきたのが、文部科学省と左上に書いてある資料(「国立大学法人等の役職員の給与等の水準(平成16年度)」の概)です。それが国立大学全体のもの。東北大学のものは「国立大学法人東北大学の役職員の報酬・給与等について」という資料です。こういうものが全部の独立行政法人について出ている。その結果、まず国立大学法人全体のほうを見てください。職員の給与水準、対国家公務員ラスパイレス指数を見てください。これがおおむね国家公務員の何パーセントの給与をもらっているのかを表している。事務、技術職員のところをみると86.6だ。つまり、国立大学法人の事務、技術職員というのは国家公務員行政職Iの平均に対して86.6%の給与しかもらっていないということをあらわしている。その下の教育職は101.4だ。これは何と比べているかというと法人化される直前の国立大学の給与と比較している。それと比べて1.4%平均して高くなっている。たぶん年取ったからだ。でも年齢あわせてあるからちょっと違うかもしれない。若くて教授になっている人がちょっと増えたのかもしれない。3つ目にある看護師、これは97.7です。では東北大学ではどうかというと、事務、技術職員では86.0です。ただ看護師の給与は対国家公務員の給与に対して102.2になっている。これはあるが、事務、技術職員では圧倒的に低いということになる。

なぜ国家公務員賃金に比べて圧倒的に低いか

 なぜこうなるかというと職種別、年齢階層別の給与の状況が異なっている。とりあえず事務技術職員を見てほしい。平均給与額というのが普通の実線で、で国の平均給与額というのが実線に×がついている。これで何歳ぐらいから差が広がるかがわかる。20代とか30代ではあまり差はない。ところが40代を過ぎると、東北大の事務職員の平均給与額と国家公務員の行政職の差は開いていくことになる。48歳以後になると、年収ベースで200万近く差がでる。なぜこういうことになるのかが次の問題だ。

 これは国家公務員の給与の仕組みを理解する必要がある。国家公務員の給与というのは基本的に職務給だ。つまり職務の困難度や責任度が高いか低いかというので仕事を分類する。事務、技術職員は一級から十二級まであったと思う。数字が大きいほうが困難度や責任度が大きい、給与も高い職務だ。そして、何級の仕事がどこにどれだけあるのかは国が決めている。したがって東北大学も国立大学時代は何級の人が何人いられるという級別定数というのが決まっていた。その配置が級の高い仕事の配置がそもそも東北大学に少ない。そして国立大学全体でも少ない。というのがこの仕組みだ。

 昨年の人事院勧告を見てみたが、行政職俸給表Iが適用される国家公務員の場合、7級以上の人が24.4%いる。東北大学で事務、技術職員で7級、つまり課長以上の人は全体の8.1%しかいない。ありていに言えば係長、課長補佐で定年になる人が多い。つまり上のポストがない。したがってある意味では能力や業績に関係なくそもそも高く評価されるポストそのものが少ないから上にいけないというふうになっている。要するに国立大学の職務に対する職務評価点というのが非常に低い。実はこれは昔から問題になっていて、なんとかしなきゃということで専門職員の制度などが作られて上にいけるように少しずつしてきたのだが、その途中で法人化になってしまった。また、法人化になって仕事が増えた。法人としての説明責任を負うためのいろいろな業務や人事管理のための業務や大学評価のための業務とか労働安全衛生法のための業務や産学連携やとにかく仕事がいっぱい増えている。しかし、法人化した時点での職務評価に基づいた人件費しかきていない。したがって、あえていえば法人法や通則法や閣議決定に従い、事務、技術職員について言えば東北大学や国立大学法人の職員の給与は国家公務員との均衡を考慮して引き下げるべきではなく、引き上げるべきだというふうにいってもいい。

民間企業との比較について

 で、民間企業と比べるとなるとちょっとやっかいになる。今の人事院の計算している官民較差によれば国家公務員はほとんど下がらない。今年は給与は国家公務員がちょっと高い。ボーナスは民間がちょっと高い。ということで今年の人事院勧告としては給与をちょっと下げてボーナスをちょっと上げるというふうになった。差し引きしてちょっと下がるくらいだ。東北大学は国家公務員より14%低いんだから民間より低いかというと、はじめはそうだと思っていたのだが必ずしもそうともいいきれない。なぜなら東北大学の職員の業務をそれに相当する種類の民間の人と比べないといけないからだ。ただそれと相当するといっても、そもそも我々東北大学の職員の仕事が低く評価されすぎているというのを問題としているので、いったい民間のどんな人と比べればいいかは実際なかなかわかりにくい。かなり複雑な研究をしてみないとわからない。ただ東北・北海道というのは仙台やごく一部の都市の一人勝ちになっているので、民間といっても仙台と比べるか、東北・北海道全体と比べるかで違ってくるかもしれない。

 要するに、国家公務員と比べてこんなに低いんだから国家公務員とあわせて引き下げるなんてとんでもないといいたい。

昇給方式の変更について

 次にそれ以外の問題として、人事院勧告では国家公務員の昇給方式なども変更しようとしている。国家公務員の昇給方式を我々もまだ使っているんですが、それは普通昇給と特別昇給に分かれている。普通昇給というのは過去一年間に良好な成績で勤務したら1号俸上げるというものです。級というのはどれくらい難しい仕事かで決まっている。そして級の中に号がある。特別昇給は金額換算で昇給全体の15%の原資がある。勤務成績が特に優秀な人にくれる。それは本当に成績査定をきちんとしているのか、困難な部署に配置された人に出しているのか、それともちがうのか、不透明な部分がある。今度はこれを合体させる。毎年、勤務成績をみて、標準だけ上がる人とそれ以上に上がる人の差をつける。それからいままで1号俸だったのを細かく4分割する。新聞に新しい給与表が入っている。例えば4級は古い6級が4級に変わる。旧6級の上3号俸は27万3300円だった。これを4分割して26万2300円から26万8600円まで細かく分ける。勤務成績が普通の人は4号俸上げる。優秀だった人はもっと上げる。優秀じゃなかったひとは3号俸とか2号俸とか、もしくはぜんぜん上げなかったりする。具体的なところで、若い人と中間層では違うが、C良好だったひとは4号俸、つまりいままでの定期昇給と同じだけ上げる。この人たちが75%。特に良好な人は6号俸上がって、こういう人たちは20%。きわめて良好な人は8号俸上がって、こういう人は全体の5%となっている。DとEは絶対評価なので不良な人が誰もいなければつかない。これはさすがに不良な必ず何%かいるようにしろとまではいわなかった。これが仕組みです。それからもうひとつ。級の中に号があって、一年ずつ上がっていく。55歳になるとそれ以上は上がらない。昇給停止になってしまう。それではある級で一番上までいってしまったらどうなるのかというと、いままでは枠外昇給というのになっていた。一番上までいってしまった、そのあと一年半たったら一番上の給与とその下の給与の差額分だけ昇給する。それ以降は二年にいっぺんだけ同じ分だけ昇給する。これを廃止するのが今度の人事院勧告に含まれています。ではいま枠外昇給になっている人はどうするかというと、最初はその級の一番上の号まで引き戻すといっていたが、それはいくらなんでもひどいということで公務員の組合が交渉した結果やらなくなった。結果として例えばある級で20号までしかなかったのを23,24,25まで延長してちょっと年をとっても昇給できるようにした。それから55歳昇給停止というのを緩めて、55歳以降はいままでの半分昇給することになった。これは政財界から非難されるかもしれないが、結構救済措置になっている。

 現時点で普通昇給の勤務評定はきちんとされていないので、実際上普通に働いていれば1号俸上がる。ただ特別昇給はかなりあいまいになっている。なぜそうなるかというときちんとした評価システムがないからできない。特別昇給はあいまいだが普通昇給は毎年ある。この点に関する限り、評価システムはない、かといって露骨な差別はできない、とも言える。だからこれを改善したければちゃんとした評価システムを構築しないといけないがそれはなしでこれらを合体させるというのが今回の決定だ。人事院としては、合体させてきちんと差がついていますよということを政府及び経済界に示すということだと思う。だから実態としてはこれまでと同じようなことになるかもしれない。ただやろうと思えばあいまいな評価基準で差をつけることができるようになる。だから危険といえば危険だ。

枠外昇給の廃止について

 それから枠外昇給が廃止になると誰が影響を受けるかというと、最初は助手や事務職員に影響が出ると思ったが、枠外に該当する人は教員140名、看護師等20名強、医師10名弱、事務・技術職員10名強、技能労務職員若干名ということがわかった。つまり若くして教授になった人がこの影響を受けるようだ。ただ枠外昇給はだいぶ救済措置がとられたのであまりひどいことにはならないかなと思う。

経過措置(現給保障)について

 他に人事院勧告でどのようなことが出されているかを補足したい。大事なところだけ取り上げると、一番大事なことは経過措置だと思う。例えば給与が地域手当の差し引きで3%下がるとして、来年もらえるお金が3%減るのかというとそうではない。救済措置がとられている。現給保障だ。つまり、今もらっている俸給が下がることはない。本当は下がるはずだけど今もらっている金額は保障する。標準どおり昇給していけばいつかは新しい給与制度の下でもいまの給与水準に到達するはずで、そこまでは保障する。ただし保障期間は5年間なので5年たっても現在の給与に追いつかなかったら下がるのかもしれないが、新しい給与制度の下でも今の給与水準になるまでは保障しましょうという過渡的措置になっている。それから調整手当から地域手当の移行はどのようになるのかは実はちょっとよくわからない。これによって例えば仙台で勤めている国家公務員の手取りは給与はそのままで調整手当が廃止になって地域手当が導入されると、人によって妙に上がったり妙に下がったりする人がでてくるのではないかと思う。詳しいことはわかりません。以上が大事な点だ。

運営費交付金の削減について

 これが人事院勧告と、それを国立大学法人に適用した場合の問題点だ。ではこれが国立大学法人や東北大学に影響してくるだろうかという話をする。影響の仕方は二通りある。一つは政府の要因だ。政府が国家公務員の給与を引き下げる分だけ国立大学法人や東北大学の運営費交付金を下げるという場合だ。文科省はこれはないと言っていて、いろんな会議や全大教などの会見でもそう言っている。しかし予算上の権限が強いのは文科省ではなくて財務省だ。財務省がだめだといえば文科省の意見はすぐに吹き飛んでしまう。油断してはいけないと思う。そこで人事院勧告を国立大学法人に持ち込むということは幸いにも理屈に合わない。国立大学法人の給与というのは国家公務員の給与と比べて低いわけだから、国家公務員の給与を引き下げるから国立大学法人の給与も引き下げるべきだとはならない。国家公務員並みの給与は保障しないといけないといっているからだ。もう一つは運営費交付金の削減というのは法人化の理念に反する。我々組合は法人化に反対してきたわけだが、もう法人化されてしまったので、法人化が持つプラス面はなるべく守るというふうにしないといけない。ではプラス面なんてあるのかというと、あるとすれば人事制度や一旦もらった運営費交付金の使い方を大学で自由に決められるということだと思う。だけど、国の方針に合わせて何かあるたびに交付金を下げるぞとすると、金はあげるから使い方は自分たちできめてくれ、ただし情報公開して監督するぞという法人化の理念そのものを否定してしまうわけで、それでは自主的経営も自主的人事政策もないということになる。つまりこれは自主的経営を否定することだから、東北大学は労使一丸となって役員も一緒になって運営費交付金の削減に抵抗するべきだと考えている。以上が国による影響の場合だ。

法人の経営者による影響について

 次に法人の経営者によって影響が及ぶ場合だ。これは具体的には東北大学の役員会が人事院勧告とそれを受けての給与法の改正を無批判に追随して同じように引き下げる。実は寒冷地手当の廃止で東北大学は同じようなことをしている。そのため油断はなりません。実は東北大学は法人化されたときに総務部人事課が人事部に格上げされているのですが、国立大学時代の人事課は人事院勧告をそのまま導入する機能しかもちあわせていない。普通の会社の人事課であれば、うちの会社の給与はどういうふうにするか、どういう制度にしたらよいかということを自分で考えて処理する力を持っている。国立大学時代の人事課はもっていない。そのため人事部に拡充されても、独自の制度はたいへんだから人事院勧告と同じにしようといいたくなる気持ちを強く持っているのではないか。しかし、そういう自主性のない経営なんてありえるのかということがいえる。私たち東北大学は東京大学と比べて給与が高すぎるから私たちの給与を引き下げますという。そういう経営者がどこにいるのかということだ。

教員の給与表について

 さらに、教員の給与表に独自の問題がでてきている。国立大学を法人化してしまったので国家公務員の教育職というのがものすごく減ってしまった。今あるのは防衛大学校とか税務大学校とかほんのごく一部です。じつは国家公務員の教育職俸給表Iというのはいまでもあるのですが、これは昔国立大学の教員に適用されていたものとはぜんぜん違うものになってしまったので、人事院勧告に追随しようにもそれはぜんぜん使えないという状態になった。そこで大学の経営者はどうするのかというと、自分で頑張って給与表を考えるのかというと違う。国立大学協会でまとめて参考給与表というのを作ろうとしている。この参考給与表というのは何かというと法人化直前の教育職俸給表Iに今年の人事院勧告を反映したものということで、つまり人事院勧告の欠陥がそのまま引き継がれることになる。つまり全体の給与を4.8%引き下げたので教育職もそのまま下げようというのがでてくる。これは人事院からいろいろな仕事を請け負っているシンクタンクに丸投げして作ってもらっている。これは発想が非常に誤っている。国立大学法人の給与は何度も言うように民間と比較して、それから国家公務員と比較して高すぎないか低すぎないかを決めるというふうになっている。だから国立大学法人の給与そのものを民間と比較したり国家公務員と比較したりしないといけない。なのに人事院勧告というのは国家公務員の給与と民間の給与を比較しただけだから、国立大学法人の給与なんて見ていない。だからそれに追随するというのは考え方そのものが間違っている。本当に国大協が大学全体のことを考えるのであれば国立大学法人の事務、技術職員の給与は国家公務員の給与より低すぎるので引き上げるべきで、そのための運営費交付金を政府はちゃんとくれというべきだと思う。

仕事の価値を正当に認めさせるべきだ

 まとめに入ります。いま東北大学の人事・給与制度が直面しているのはおまえら高すぎるから引き下げろということでもないし、とにかく何が何でも差をつけて給与の一律引き上げを廃止することでもない。東北大学の給与は一番問題になっている事務、技術職員に関して言えばけっして高くない。むしろやっている仕事に比べて低すぎるというべきだし、国家公務員と比べれば上げるべきだ。年功制についていえば職務職責業務成績に基づいた処遇が真の意味で進むのであれば組合としても反対するべきことではない。それでも反対する組合を知っているが、それはやっぱり違うのではないかと思う。ただ、人事院勧告の方針をそのまま持ってくるだけではそんなことはできない。問題は何かというと東北大学の教員や職員がやっている仕事の困難度や責任が正しく評価されていない。だから給与があげようがない、財源がこれくらいしかないのだからこれぐらいでいいでしょというお金しかきていない。だから能力が低いからとか業績が悪いから給与が低いわけではない。だから、問題は職務分類とか職務評価を見直して仕事の価値を正当に認めさせるべきであって、それにふさわしい運営費交付金を政府からもらうことだというのがここでの考え方だ。

職務給の仕組みに即して要求した方がよい

 この考え方というのは、実は私たちが加盟している県労連とは少し違う言い方をしている。わが国の戦闘的、左翼的組合の言い方はむしろ生計費賃金をよこせといっている。食えるだけの賃金をよこせ、豊かな生活をできるだけの賃金をよこせというのが主流だ。主流といっても日本全体で言ったら少数派だ。しかし、国家公務員や国立大学法人の職員の給与の仕組みは仕事給だ。この仕事は何級だからいくらという考え方だ。わが組合としてもその考え方を使ったほうがいいと思う。例えば40代後半になって子どもが大きくなって学費も大変だから給与をあげてくれという言い方をすると、この考え方は現在は通じにくくなっている。そんなことは関係がない。仕事ができるかどうかが問題だと言う考え方が強い。しかし、この仕事は本当は大変な仕事なのに低く評価されていてけしからんといえば、そうかもしれないねと多くの人にいってもらえる可能性はある。だから、国家公務員及び国立大学法人の職務給という仕組みはむしろ積極的に活用しながらいろいろな要求をいったほうが良いのではないかと今考えている。ここまでが今年の話だ。

職務給を職能給に変えようという動き

 また、今後どういうことが起きるのかという話もある。一つは国家公務員の職務給を民間と同じような職能給に変えようという動きが国家公務員にある。これは公務員制度改革で言われていることで、前からずっと言われてきたのだが、なかなかいろいろな事情があって実行されていない。ただ来年はやりたいということをいっているようだ。当大学の特任教授をされている兵頭さんという人は人事院から来た人で公務員制度改革をやっていたそうです。この公務員制度改革は民間とちょっと似ていて、職員の能力で1級から8級まで格付けするものだ。これは仕事に給与をつけるのではなくて人の能力に給与をつけるというものになっている。ここから先は話すと長くなってしまうので長くは話さないが、日本的能力主義というのは実は非常にあいまいなところがありる。もともとどんな仕事をやるかは決まっているから、その仕事をやるために必要な能力はこれくらいなので、だからあなたはそれをもっているからいくらというふうにならないといけない。しかし、なんの仕事をしているのかわからないところが日本の人事管理の特徴だ。とくにかくみんなで仕事全部をやるというやり方なので、では能力何級っていっているけどどうやって計ったのというのが問題になるわけだ。その上、日本の能力評価というのは業績、能力、情意ではかっていて、この情意というのは協調性とか上司に対する態度とかまじめさとかそういうものだ。例えば幼稚園に子どもを迎えにいくために定時で帰ると低く評価される場合がある。髪形とか服装とか思想とか男性か女性かというのはここで入り込むわけで、特に女性がこれで差別されたものはあっちこっちで裁判になっている。だからあまりよろしくないというのが私の考えだ。

給与比較の基準を変えようとする動き

 二番目は国家公務員と民間との給与比較の基準が変えられようとしていることだ。給与勧告の手順というのを見ると、いま国家公務員の給与を決めるときに民間の仕事と国家公務員の仕事で似ているものと比べるわけだが、そのさい民間企業の調査の対象は企業規模100人以上かつ事業所規模50人以上だ。そして、正社員だけをみている。ところが、経済界ではこれはけしからんといっていて、いまこんなにパートが増えていて世の中には零細企業も多い。いまは大中企業の正社員だけを比較対象にしているが、零細企業もパートも含めたすべての平均にしろといっている。そうすると比較対象の民間ががたっと下がり、国家公務員は高すぎる、ということになる。でもこれは間違っているし、いま企業でいっていることと矛盾している。いま企業が考えていることはあいまいな年功賃金はだめだといっている。年功賃金はどんどん賃金が上がっているから給与を払いたくない。じゃぁ能力主義で良いかというと企業自身もこの能力主義に疲れている。なぜかというと、結局ちゃんと評価できないから、男性の正社員で歯向かわないやつはみんな年功制で上げるようになってしまう。会社に歯向かうやつと女性とちょっと変わっているやつだけ落とす。それは実は職場のいいパフォーマンスにはつながらない。だから会社自身もこれをやめたがっていて、どうするかというと仕事給と業績給にしたい。仕事の価値を決めた上でそれをどれだけやったかの業績でプラスアルファにしたい。ということをやっている。だからどんな仕事かでまずグレードが決まる。しかし公務員を非難するときだけは公務員の仕事と民間の仕事の似たようなのを比べるという原則を無視して、全部で平均する。それは普段自分が言っていることとぜんぜん違うじゃないのといえるのだが、これが来年持ち込まれる危険性がある。

高年齢者継続雇用制度について

 三つ目に定年延長問題があります。高齢者雇用安定法というのが改正されて、何らかの形で人を65歳までみんな雇わないといけない。来年度から始めて、年金の支給開始年齢が65歳になったらその人たちは65歳まで雇いなさいという法律ができた。具体的には三つのうち一つを選べとなった。一つは定年そのものを廃止しなさい。これはさっきいった年功序列の世界ではできない。もう一つは定年を65歳まで延長しなさい。もう一つは定年を延長しろとは言わないけど再雇用制度を作ってとにかく65歳まで希望する人は雇いなさい。このどれかです。このうちどれが東北大学で採用されるかはまだわかりませんが、いま流れてきている情報では教員の定年を65歳までにする。職員については60歳定年で65歳まで希望者を再雇用するということになりそうだ。これが具体的にはどういう処遇に結びつくかが組合的には問題なのだが、それとはべつに、どう頑張っても人件費は上がる。年寄りの比重が増えるからだ。そうするとその増えたお金は政府はくれるのかという問題になる。つまり法律に対応して定年を延長したのだからそれでどうしても増える分だけ人件費をくれといいたいのだが、くれない恐れがあります。そうするとますますもって給与問題がやっかいなことになるのかなという危険がある。これは今後の問題だ。時間になったのでここで打ち切りとしたい。

質疑応答

地域手当

・地域手当に関して川渡の人たちはどうなるのか。

・いまも調整手当はもらってないのか。

川端 大学内の事業場間格差を組合でどういうふうに考えるかだと思う。資料にも書いたように事業場によっては仙台ではないところもあるからこのままではまずいことになると思う。

・川渡で勤めている人はだいたいどこに住んでいているのか。

川端 川渡周辺だと思う。

委員長 川渡には今月の22日に行って話しを聞きに行こうと思っている。浅虫にも。

川端 浅虫は寒冷地手当も減らされたから大変だ。

・地域手当は異動保障はあるのか。

川端 2年間保障だ。

経過措置

川端 経過措置があるからこの5年間は非常にわかりにくい仕組みになっている。

・今回の人事院勧告では結局給与は減らないのか?

川端 総額ではあまり減らない。人事院も露骨に減らしたいとは考えていない。配分を変えて、民間の給与が低いところは低く、高いところは高くしたが、総額ではあまり変わらない。

「地域給」という用語について

・全労働は地域給反対ということを言っているが東北大職組も地域給という用語で反対運動を展開していいのか。

川端 中身として何に反対しているのかを決める必要がある。地域給は全労働が使っているが、何に反対しているのかわからない。全労働も、いまの調整手当に差が付いているのは反対していないわけで、全国どこでも支払額を同じ水準にするべきだとは考えていないからだ。しかし、地域給反対というと、そういう考え方に見えてしまう。だから何に反対しているかが混乱している。我々は仕事の内容に応じて給与をくれという。ただ物価や生計費を考慮して給与を配分してくれという二重基準を使っている。ただこれはいつでもどこでも正しいわけではない。昔日本は貧しかったので、食べる分だけくれというのは妥当だった。しかし、いまはどれだけ生計費が必要なのかは人それぞれで違う。それよりもどういう仕事をしているのかによって給与を支払ったほうがいいという議論が出てくる。ただ、この地域給はあまりにも地域切捨てではないかということはできる。

定年延長問題について

・定年制について、60歳で定年し、退職金をもらえるつもりで働いてきたが、65歳まで定年延長することで、65まで働かず、62ぐらいでやめた場合、退職金が減るのか?また、定年問題は組合でどのように扱っていくか話し合う必要があるのではないか。

川端 この点はどうでしょう。

委員長 60歳以上は働きたくないということか。

・60歳で退職金がもらえると思って働いてきた。

委員長 60歳以上はすべて旧制度でいう勧奨扱いにしないといけないだろう。

・60歳以上働けるということを喜んでいる人もいる。

川端 定年延長になった場合、途中でやめても不利にならないような計算方法にしなければならない。仕組みとしては難しいことではない。

・教員の65歳までの定年延長と職員の60歳定年でその後再雇用とそれぞれ異なる理由はなにか。

川端 ないと思う。

・60になったら退職金はもらえるのか

川端 60でいったん退職金を払って、それから再雇用になると思う。

委員長 定年再雇用は希望者のみに適用するのではないか。

・現在は定年後働きたい人が100%再雇用されていない。

川端 今後は全員にそうしなければならない。

・罰則規定はあるのか

川端 当分はない。指導はあると思う。労使協定がある場合全員に定年延長もしくは65まで再雇用をやる必要がないというのはあるが、これは反対しないといけない。こういった定年再雇用は民間も一緒だ。ただ、定年再雇用は総人件費は上がる。その分の運営費交付金を政府は与えなければ大学側としても参ってしまう。教員も職員と定年が違っているのはよいのか、よくないのかという問題も昔からあったが再浮上する。こういうことを組合としてどういうふうに主張していくかは悩むところだ。大学側としては教員を65歳まで定年延長し、職員は60歳定年後65まで再雇用という案を最有力候補としてあがっているようだ。それでもかなりのお金はかかる。

・それは教授の給与を保障するから人件費が上がることになる。

昇給停止措置の廃止について

川端 人事院勧告をそのまま適用すると、昇給停止措置を廃止したから、65歳まで給与を上げ続けなければならない。これは大学にとっては負担だ。思い切った構造改革主義者だったら団塊の世代が抜けて正規社員がいなくなったらその分の仕事をパートと外注にまかせて、残った少数正規社員にだけ正社員向け給与を払うというように考えるかもしれない。派遣や外注の導入は、労働条件低下につながる場合は組合は反対することになると私は予想するが、定年についてはどうしたらよいか困っている。定年延長しても予算がつかなかったらどうするのか。

・国大協はこの問題に気づいているのか。

・気づいているでしょう。今回の人事院勧告で余ったお金を退職金にまわそうとしているのではないか。

・事業や資産運用でお金をかせいできて研究するとか、会社のように大学を運営している国はあるのか。

川端 金のあるアメリカの大学なら可能だ。アメリカの大学は持っている財産がべらぼうなので可能だ。日本では寄付でなりたっている私学はなくて、毎年の授業料や助成金でなりたっている。

・ある私学ではお金がないので60歳以上は給与を半額にした。

川端 それだったら無理やり定年延長しないほうがかえって安全なような気がする。

・それは定年延長の根拠や仕組みを大学側と話し合うことが必要だ。

川端 一番大事なことは定年延長分と高齢者雇用促進法で使う部分は運営費交付金で保障するように言うことだと思う。

・今後の大学の動きはどうなっているのか。労使交渉などは。

・ 9月13日頃に部局長会議が行われて、8月末に国大協の案がでて、それを踏まえて会議が行われる。

・現在は再雇用されたい人全員が再雇用にはなっていない。事務では結構あるみたいだが図書館ではまったくない。組合でこの人は働きたいようなので再雇用や雇用斡旋をお願いしますと大学側に言ってほしい。

委員長 男女共同参画委員会で言っている。男性の再雇用希望者には斡旋があるみたいだが女性についてはそもそも声がかからない。その点は組合が言っていきたい。

看護師について

委員長 難しい問題として、事務・技術職員については国家公務員より給与が低いということで上げろということがいえる。ただし看護師については少し高いもしくはトントンだ。要求としては事務・技術職員の給与を上げろといって、看護師はやむをえないということでいいのか。

川端 看護師の給与をどう決めるべきか、比較するなら誰と比較すべきかについて、もう少し検討した方がいい。例えば、民間の病院との比較がされていないのはまずいだろう。

委員長 教員については私立大学と比べてこちらのほうが低い。看護師の場合は普通の病院を比較対象で良いのか。研究・教育機関でもあるということを打ち出したほうが良いのでは。

・厚生労働省管轄の病院は准看護師の比率が高いから私たちより低い。

川端 もしかしたら准看護師の比率が東北大学は他のところに比べて低いのかもしれない。ただ、看護師の待遇改善の基本線というのはどういうものなのか。

・人を増やしてもらうことと年休消化率の向上だけで十分だと思う。現在は年間で2,3日の消化というのも珍しくはない。さらに年休をくれという人には攻撃がいって、指導が入る。

川端 それは別のところに手を回してやめさせたほうがいい。年休をとるのをやめろというのはよっぽどそんなことをされると職場がめちゃくちゃになるという時以外できないというのが判例だ。

・年休を多く消化している職場は人が多いということで人を減らしていくということをしている。

委員長 大和ハウスは年休を100日まで積み立てることできるようになった。未消化の部分を退職したときやいざというときに使える。

・事務は定年退職するときに一括して休むということが昔はあったが、今やったらひんしゅくを買うし職場は非常に困る。

川端 年休消化率をどれだけ向上させるということを前提に人を配置しろと交渉するしかない。年休取得の妨害は法律違反だという必要がある。

・自分の休みを削って仕事をしているようなものだ。

予算について

・そもそものところで人事院勧告で給与を減らされると運営費交付金を減らされるかもしれないというところから出発したが、経過措置で現状の給料をとりあえず保証するという制度ができたということは運営費交付金は今年の分については減らされないのではないか。

川端 今年は減らされないが、来年は経過措置などの計算が複雑なので人事院勧告そのままだと却って減らせないということになるのかもしれない。今年の分も遡って減らすといってきたら民間では完全に違法なのでそれは闘う。来年に関しては人事院勧告を積算して減らすということはしてこないのではないか。ただ多少は減る。

・経過措置で現給保障していても減るのか。

川端 一年目はあまり減らない。新規採用の分は減る。ただ新規採用の人は級が低く、級が低い人はあまり減らさないとしているから一年目はあまり減らない。教授としていきなりきたひとは低くなる。差がつく。いま新しくきたひとが寒冷地手当がもらえないのと同じ。ただ人事院勧告とは別に大学独自で職員の給与一律何%カットといってくる可能性はある。

・来年度の運営費交付金をどうするかというのは政府はいつごろ決めるのか。それとこちらの賃金交渉というのは当然関わってくる。

川端 スケジュールをうまく組むことが必要になる。

委員長 概算要求が出て、そこで運営費交付金のことも決めることになる。財務省との交渉になる。

川端 文科省は減らすとはいっていないので財務省しだいになる。

民間との比較について

・川端さんの考え方の基礎はどちらかというと仕事給的で同じような仕事をしている人が同じ給与をもらうのがいいという考え方だ。日本という国は平等という考え方を重んじているからそれは良いと思う。例えば東北大学の事務職員と同じような仕事をしている仙台市の民間の事務職員の給与がどれだけ違うのかというデータは集めることはできないのか。

川端 どれとどれが等しい仕事かというのをどう判断するかだと思う。

・あんまり細かいことをいうと結局なにもできないということになる。

川端 がんばればできると思う。ただそういう調査は人事院だから答えるという面もあるので難しいのかもしれない。

委員長 以前、非常勤職員の給与が民間と比べてどうなのかというのを七十七や東北電力に聞こうとしたことがあるが、だめだった。東北大生協なら可能だが。おそらく向こうのほうがずっといいので出しづらいのかなと思う。

川端 できるかもしれないが手間もかかるし難しい。

・我々教員の給与に関しても情報を集めることは難しいのか。

川端 教員の給与に関しては人事院勧告にも民間の平均が出ているのでわりとやりやすい。

・どこからひっぱってくるのか。

委員長 具体的なところで言えば慶応とか早稲田ということを考えている。

・僕は私立大学と比べるのはあまり意味がないと思っている。向こうが多くもらうのはあたりまえだと思う。そうしないといい人がこない。

・我々独立行政法人化して、昔我々は国立大学で給与は安いけど研究費は私大より多いという感じで給与は安いけどという部分を補っていた。しかし研究費もどんどん減らされて身分保障もなくなって片方の条件が悪くなっているから、給与もこんなに低いんだということをむしろ情報として発信するべきだと思う。いままでの前提として私立大学は給与が高くて国立大学は給与が低いということだった。それに見合うものがあった。しかしその見合う部分がどれだけ減っているのか、その上で給与がどれだけ減っているのか、その部分で情報をひっぱってこれるのであればちゃんと情報を整理して理論武装したほうが良いと思う。

・それは法人化前にやったのではないか。

・最新の情報としては東京私大教連が毎年冊子を出していて、おそらく3万円くらいだせば買える。

川端 それを使ってやってみる手がある。そうやってどういう事実を使って宣伝していくのかに関して、慶応はいくら、早稲田はいくら、東北大はいくらというふうにやるとわかりやすい。

委員長 教員だけでなく大きな私大と比較すると事務職員に関してもこちらのほうが低いと思う。

・そういうふうに私大と国立大学法人でどれだけ差があるのかというのがわかるといいのかもしれない。

川端 それの比較をしている論文がでている。ただ、私学では仕事の仕方が何か違うようだ。学生に対する事務職員の数が少ない。仕事の仕方と給与とうまく考えないと、リアルな議論にならない。

・国立大学の事務職員の方が多いのは、いままで国家公務員で国の機関だったから余分な仕事が多かったということか。

川端 かもしれない。たぶん帳簿上の厳しさが違うのかもしれない。独立行政法人になってちっともそれが緩和されず、むしろ悪化しているから問題だ。例えば説明責任のための書類が増えた。

・仙台の国家公務員は今度の人事院勧告で給与が上がると思っている人もいるのではないか。

川端 わかりやすい情宣が必要だ。グラフや表を使って整理して情報を発信していく必要がある。

・時間が来たのでここで切らせていただく。


ホームに戻る