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東北大学総長選考会議による「国立大学法人東北大学における総長候補者の選考及び総長解任の申出に関する規程(案)」(2004年12月13日)に関する要望

2005年1月17日

国立大学法人東北大学
  総長  吉本 高志 殿
  総長選考会議議長 小田  滋 殿

国立大学法人東北大学職員組合
執行委員長 吉田 正志

 去る12月13日の東北大学総長選考会議において提示された「国立大学法人東北大学における総長候補者の選考及び総長解任の申出に関する規程(案)」は、同月22日に開催された教育研究評議会において、単に「報告事項」として処理され、現在ではあたかもそこで承認を受けたものであるかの如く扱われた上で役員会においてそのままの形で強引に決定されようとしている。しかしこれは、国立大学法人法第21条において「国立大学の教育研究に関する重要事項を審議する機関」として規定され、設置が義務づけられている教育研究評議会の存在を著しく軽視した行為であると言わざるを得ない。同条第3項には教育研究評議会が審議する事項として「学則(国立大学法人の経営に関する部分を除く。)その他の教育研究に係る重要な規則の制定又は改廃に関する事項」が挙げられているが、総長候補者の選考や総長解任の方法がこれに該当しないという論理は、法人化後の国立大学においては「総長の教育研究に関するリーダーシップが重要だ」と一層盛んに喧伝されていることを考え合わせれば、いかなる強弁をもってしても不可能であるはずである。かかる重要事項を教育研究評議会において単に「報告事項」として扱って、あたかも総長選考会議が作成した原案が合法的に教育研究評議会を通過したかの如く装うことは暴挙としか言いようがなく、言語道断の所為である。したがって、本組合としては、即刻この原案を撤回し、教育研究評議会において該当規程を慎重に審議し、全学的合意を得た上で決定することを強く要望する。

 また、総長選考会議による原案は、以下に例示するような重大な欠陥を含むことをも指摘しておく。

 まず、総長の解任については「出席した委員の4分の3以上の賛成がなければならない」(第8条第5項)と明確に規定している一方で、肝心の総長候補者の決定については、「前条に基づき推薦された総長候補者を基礎として、最終の総長候補者1人を決定する」(第6条)とあるのみであって、全会一致を必要とするものか、あるいは多数決によるものかすら規定がなされていない。また、最も重要なこととして、総長選考会議は、いかなる経緯の議論をし、いかなる理由をもって最終候補者をある1人に決定したかに関する情報を大学構成員に明らかにする義務を自らに課しておらず、また同時に、総長選考会議メンバー、理事、教育研究評議会評議員以外の大学構成員には、経営協議会および教育研究評議会から推薦される当初の候補者の絞り込みに関して自らの意見を反映させるべき仕組みを一切設けていない。これは、総長の決定は選考会議の密室決定によるものとすると公言するに等しく、甚だしく非民主的・独裁的かつ「お上」意識的な時代錯誤であるとの誹りを免れない。また、総長と一部理事には教育研究評議会と経営協議会からの委員選出に際してそれぞれ一回ずつ投票権があり、さらに選考会議自体にすら直接参加権があることや、経営協議会のメンバー自体が総長の任命であること、またそもそも、総長とともに役員会を構成する理事も総長の任命による者であること、等々により、この制度は次期の総長となるべき者を決定するにあたって総長の意向が幾重にも働きうる、極めて非常識かつ非道義的な制度であるとさえ言うことができる。このような「反民主的」とさえ呼ぶことのできる規定案は、即刻撤回することを重ねて要望する。

 国立大学法人法第12条には、

第十二条 学長の任命は、国立大学法人の申出に基づいて、文部科学大臣が行う。
前項の申出は、第一号に掲げる委員及び第二号に掲げる委員各同数をもって構成する会議(以下「学長選考会議」という。)の選考により行うものとする。
一 第二十条第二項第三号に掲げる者の中から同条第一項に規定する経営協議会において選出された者
二 第二十一条第二項第三号又は第四号に掲げる者の中から同条第一項に規定する教育研究評議会において選出された者

(下線は引用者による.以下同)

との規定があり、また、

3 前項各号に掲げる者のほか、学長選考会議の定めるところにより、学長又は理事を学長選考会議の委員に加えることができる。ただし、その数は、学長選考会議の委員の総数の三分の一を超えてはならない。

とも定められているが、これは、このような非民主的・独裁的な手続きを定めるために存在する条文であると解釈すべきではなく、

7 第二項に規定する学長の選考は、人格が高潔で、学識が優れ、かつ、大学における教育研究活動を適切かつ効果的に運営することができる能力を有する者のうちから行わなければならない。

という項こそが最も重要であることは言うまでもない。そしてまた、同法には一般大学教職員の意向を問うことを禁じる規定などは存在しない。

以上のことから、本組合としては、この第7項に明示されたような優れた人物を総長候補者として選出するためには、教育研究に関して一定の見解を持つ人々の集合体である大学の教職員一般による「意向投票」が是非とも必要であると主張する。従来行われてきた総長選挙制度にも大部局以外から当選者が出にくいという一定の問題点が存在したことは本組合としても承知している。しかし、このような密室での、総長の意向があまりにも強く働きうる次期総長候補者選出方法がその問題点を補って余りあるような制度たり得るはずがないことは誰の目にも明らかであるし、また現に、多くの他大学においては「意向投票」の仕組みを取り入れた学長候補者選考方法を定めつつあるのである。

 最後にもう一度、学内コンセンサスを得ようともせず、後世に憂いすら残しかねないような制度を強引かつ性急に定めようとする最近の態度を、即刻改めることを総長、役員および総長選考会議委員に対し強く要望する。

以上


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