2007年6月5日
国立大学法人東北大学
総長 井上 明久 殿
国立大学法人東北大学職員組合
執行委員長 関本 英太郎
さる2月27日に行われた経済財政諮問会議では、「成長力強化のための大学・大学院改革について」と題する「意見」が出され、その中で「大学の努力と成果に応じた国立大学運営費交付金の算定ルール」として、運営費交付金の競争的経費化をはかる動きが浮上しました。その後、教育再生会議、総合科学技術会議、規制改革会議等も巻き込みながら高等教育財政をめぐる検討が進められています。このような動きに対して、文部科学省は5月18日に行われた全国大学高専教職員組合(全大教)との会見の中で経済財政諮問会議の「意見」に対して反対の意を表明しています。
財務省による「国立大学法人運営費交付金に関するシミュレーション」によれば、特別教育研究経費の配分割合に基づいても科研費の配分割合に基づいても東北大学に対する運営費交付金の配分は増加することになります。しかしながら、経済財政諮問会議の「意見」は東北大学として賛成すべきではない問題点を孕んでいます。
第1に,元来運営費交付金とは学生定員を基礎として積算される基礎的・基盤的経費という性格を強く有していたものであり、今回の算定ルールはその性格を突然変えてしまうことになります。このことは東北大学を含む全ての国立大学法人の財政的運営の根幹を変えてしまうことに他なりません。
第2に、財務省の作成した配分の「シミュレーション」は特別教育研究経費と科研費の配分に基づいていますが、このような配分方法は研究にあまりに重きを置き、教育を軽視しています。このような姿勢は、東北大学の理念と相反するものです。教育に対する効果は一朝一夕には現れず、その評価は簡単なことではありません。競争的資金の獲得のために高評価を得ようとすることは、評価の困難性、評価に要する時間と費用、関係教職員らの労力等を勘案すれば、研究・教育水準を現在よりもむしろ低下させてしまう可能性すらあります。
第3に、競争的資金の配分比率が高くなることによって、一方では当然のことながら大学教員たちの研究志向が競争的資金を獲得できそうな分野・領域の研究に偏ってしまい、他方ではそのような分野・領域を支える基礎的・基盤的研究が疎かになり、ひいては日本全体の当該分野・領域の学問が地盤沈下してしまう危険があります。そして、このことが「研究第一主義」を掲げる東北大学にとって好ましからざる事態であることは自明のことです。
以上のような理由より、われわれは運営費交付金の配分に関し従来通り「学生定員を基礎として積算される基礎的・基盤的経費」という性格を維持することを強く望みます。
6月中・下旬の「2007骨太方針」の中に国立大学法人等の競争的経費化問題が盛り込まれるか否か、また、その後の8月末の概算要求と財務省交渉等が大きな「山」になると思われます。したがって、国立大学法人東北大学としてもこの問題に対し早急に対処する必要があります。来る6月13日に開催予定の国立大学協会の定期総会は、国立大学法人東北大学が経済財政諮問会議の「意見」に対する自らの態度を表明する絶好の機会であると考えられます。井上総長におかれては、この要請文においてわれわれが表明した考えを理解された上で、国立大学協会の定例総会にて、経済財政諮問会議の「意見」に対して明確な「反対」の意を表明していただくことを強く要請いたします。
以上