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12月19日から26日まで学内の5箇所で「退職手当支給水準引き下げに関する全学説明会」が開かれ,退職金を大幅に引き下げることが提案されました.この説明会の開催自体が十分周知されているとはいいがたく(いくつかの部局では結局正式の開催通知はなされませんでした),出席者はどの会場でもわずかで,また,当日会場で配布された「国家公務員の退職手当の支給水準引き下げ等に伴う本学役職員の退職手当の取り扱い方針」なる文書は,
・日付が入っておらず,どこでいつ決定されたかの説明がいっさいない.
・総長名も理事名もどこにもなく,誰の責任で決定したものなのかもわからない.
・実施時期は書かれているが,そこまでのスケジュールが書かれていない.
という奇怪なもので,この重大事を真摯に学内に説明しようとする気はないようです.
しかし,われわれ働くものへの影響は甚大です.
去る11月16日の国会解散直前の混乱にまぎれて国家公務員の退職金の大幅減額がほとんど審議もなしに可決成立しました.11月30日には総務省行政管理局長名で独立行政法人(国立大学法人を含む)でも国家公務員「に準じて必要な措置を講ずるよう要請」がありました.これを受けて12月5日,文科省官房長名で「準じて必要な措置を講ずるよう要請いたします」という「事務連絡」が全国の大学に送られました.
今回,役員会はこの削減措置をそのまま東北大学に適用するという方針案を示しました.現在104の調整率を段階的に下げて2年半で87にするというものです.影響額は平均で400万円にも及びます.
役員会は国家公務員の退職金が削減されたことをもって,それと同率の削減を大学法人でも行わなければならないかのように説明をしていますが,これは大学法人制度を無視した暴論です.
役員会はこれまでも,国立大学法人職員の賃金は「社会一般の情勢に適合するよう定めなければならない」ことを理由に,人勧準拠,公務員準拠でたび重なる賃下げを強行してきました.しかしこの文言のある独立行政法人通則法第63条第3項は,「給与及び退職手当の支給の基準は,当該独立行政法人の業務の実績を考慮し,かつ,社会一般の情勢に適合したものとなるように定められなければならない」というものです.まず考慮されなければならないのは「業務の実績」です.東北大学は法人化以来,教職員の努力によって多くの外部資金を獲得し,また病院の経営でも大きな黒字を生み出しています.ところが役員会はこれを考慮するそぶりすら見せていません.法の定めに反していますし,何よりも働く意欲を損なう態度であり,経営者としては失格と言わざるを得ないでしょう.
給与の7.8%削減でも,また,今回の退職金削減でも,国から来る金が減るのだから仕方ないという説明です.経営者として賃金を下げない努力を行おうもせず,国家公務員と同じにしていればいいとまで公言しています.しかし,7.8%削減も退職金削減も,今年度の大幅な賃下げは,そのまま強行すると民間の基準では違法性が高いことははっきりしています.実際にいくつもの大学で提訴が行われ,また今後も提訴が予定されています.国の言いなりになって法を犯すのではなく,是正を求めて国に働きかけるという選択肢はないのでしょうか?経営者としての責任を自覚されているでしょうか?
そもそも,東北大学職員の退職金は是正を必要とするほど高くありません.
人事院は2010年度の調査に基づき,国家公務員の退職金が平均29,503千円であるのに対し,民間では25,477千円なのでこの差を埋めるべきであるとしています.一方,この間の大学職員の退職金平均額は教員を含めても2,600万円程度,職員だけならば2,200万円程度で(全学説明会でこの額を問われて,理事は答えられませんでした.自分のところの額も知らないままに引き下げをしようとしているのでしょうか),是正が必要な水準ではありません.
国立大学の時代から大学職員の給与は本省と比べて10〜15%も低く,これは法人化後もほとんど変わりません.つまり人事院の調査の対象となる「国家公務員の給与水準」は,法人化によって大学職員などが抜けたことで高額化したことになります.霞ヶ関官僚の給与を民間と比較し,その結果を,もともと賃金の低い大学職員に適用するというのは,どう考えても不合理であり,不公正です.
通則法は,法人の賃金水準が民間と比べて著しく高くあってはならないことを定めているのであり,国家公務員に準じて上げ下げすべきなどとは言っていません.
退職金は賃金の一部であり,あらかじめこれを織り込んで生活設計を行うのは当たり前のことです.それが2割近くも減らされては,そもそも生活設計が成り立ちません.住宅,教育,老後の生活など人生の大きな設計に重大な障害が生ずることは明らかです.
また,35年勤務の教授の退職金が3000万円を大きく割り込むようでは,誰が大学に残りたいと思うでしょうか.現在だけではなく,将来の大学の活力を大きく奪うことになるでしょう.
民間労働法制では退職金がそれまでの労働の対償である賃金の後払的な性格を有することは広く認められています.したがって,退職金に関する就業規則を改訂した場合にも,就業規則改定以前にさかのぼってこれを適用することはできません.
三国ハイヤー事件,朝日海上火災(高田)事件,みちのく銀行事件など,退職金の一方的減額の有効性が争われた事件で,最高裁は,不利益変更直前に退職した場合に支払われたはずの金額が,既得の賃金債権として発生しており,これは侵害してはならないという判断を示しています.
つまり,来年3月に退職する職員の退職金は,そのほとんどが既に確定した金額であり,これを大幅に削減することはできないのです.また,それ以外の職員の場合でも,就業規則改訂日以前の年月については従来通りの104/100の調整率を適用し,改訂日以降にのみ削減された比率が適用されなければなりません.
実際に富山大学では,経営側が社会保険労務士に意見を聞いたうえで,不利益遡及はできないことを認めており,この分の金額を国に要請するために行動を起こすとしています.
一方,東北大学の理事は,全学説明会での質問に対して「国が要請して来るのだから法に反することはないはずだ」という,極めて無責任な回答を繰り返しています.
合理的な理由のない退職金の大幅削減はおこなうべきではありません.
退職金の財源は,一般の運営費交付金とは別に特殊要因運営費交付金として措置されるとのことです.であるならば,国に対して,この削減を行うと,通則法の定める「社会一般の情勢」から(下方に)逸脱すること,また公務員と異なり労働法制下では退職金の不利益遡及はできないことを訴えて,この減額を行わないよう要請を行うのが,まずは当然の対応であろうと思われます.同じ問題は全国の国立大学法人が抱えているわけですから,国大協としても行動すべきでありましょう.
また,国からの減額が行われたとしても,大学として独自にこれを補填することは可能ですし,その財源もあるのではないでしょうか.減額分は本学の年間予算に比して高々1%に満たないはずです.東北大学のここ数年の決算黒字額は削減分を十分カバーできる額となっているのではないでしょうか.
そもそも,こうした基礎的な経営指標を示さずに減額を提案すること自体が,通則法の定めた「業務の実績」をまったく考慮しない,法から逸脱した態度です.
今回の大幅な労働条件切り下げには合理的な理由がありません.これを阻止するために組合に力をお貸しください. 労働基準法と労働契約法に基づく労働法制下では,労使の力関係が労働条件を決めます.労働者の力が弱ければ経営陣の言いなりに条件が改悪されていきますが,労働側の力が強ければこれを押し戻すことができます.法制度は労働組合と経営陣が対等に交渉を行うことを前提に成り立っています.組合に力を集めて,理不尽な仕打ちに対抗しましょう.