東北大学は、就業規則変更で労働契約の更新上限を原則5年と定め、大学独自の制度で無期転換されない限り、2018年春から非正規職員およそ3200人が順次雇止めされることになります。さらに、2016年2月に、この無期転換のハードルが法改正の趣旨に反して非常に高く設定されてしまったため、職場には不安が広まっています。
2012年の労働契約法改正により、2013年4月1日以降の雇用期間が通算で5年を超える有期雇用労働者は、2018年4月1日以降、本人の申し込みのみで無期雇用に転換できるようになりました。改正労契法の趣旨は「雇用の安定」、つまり、雇止めの不安を解消し安心して働き続けられるようにすることであり、当時の小宮山厚労相は「今回の無期転換ルールの趣旨からしても、5年のところで雇い止めが起きてしまうと、この狙いとは全く違う」(2012年7月25日衆院厚労委)と答弁しています。
東北大学の無期転換制度は、まさに改正法の趣旨と「全く違う」行為ですし、明らかに不利益変更です。なぜなら、以前の非正規職員の雇用上限は、すでに無期雇用の実態にある人を除き、原則3年でしたが、東北大学はその上限を超えて更新できることを明確にしており、実際に多くの人が更新され続けていたからです。しかも、就業規則は2014年4月1日施行であるのに、5年上限は不当にも2013年4月1日に遡って起算するとしています。さらに、この就業規則の変更には、パート労働法第7条にしたがって、短時間労働者の過半数代表の意見を聴く努力義務もあります。東北大学は事業場ごとに1年任期の過半数代表者を2013年3月頃に選出していますが、雇用上限の変更や厳格化という問題を明らかにして選出したものではなく、大学は非正規職員の意見をとくに反映するための努力をしていません。
東北大学の財政事情は、無期転換の大量阻止を正当化するようなものではありません。改正法上、無期転換後も労働条件は従前のままでよいので、追加の財源は不要です。
東北大学は、各部局が「無期転換候補者」として正規職員と「同等、あるいは同等以上の成果を出すと見込まれる者」等を推薦できるとしています。しかし、法定の無期転換には推薦も評価も選考も不要です。不当な条件をつけるのは違法です。東北大学は、このような独自の制度とは別に、改正労契法第18条による無期転換を遵守することを、そして「5年のところで雇い止めが起きてしまう」ことがないようにすることを、きちんと示さなければいけません。
東北大学の公式HPは「被災地域の中心にある総合大学として、復興に全力を傾けていく歴史的使命があります」としていますが、大量雇止め方針はその使命にも反して雇用不安を招き、復興を妨げています。
東北大学は、国大協の会長を出している代表的な大学でもあり、東北地方だけでなく、全国に大きな影響を与えます。私たちは、東北大学が改正労働契約法の趣旨を尊重し、3200人もの大量雇止め方針を見直し、希望者全員に無期転換を認めるように求めます。
2016年9月21日
東北大学職員組合
東北非正規教職員組合
首都圏大学非常勤講師組合
宮城県労働組合総連合