方針を転換して雇用安定化へ、里見総長の決断を強く要請します

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2018年3月22日

国立大学法人東北大学 総長
里見 進 殿

国立大学法人東北大学職員組合
執行委員長 片山知史

 3月も残すところわずか、里見総長の任期もほぼ終わりとなっています。震災の翌年、壊れた建物の中からの6年間の重い任務、誠にお疲れさまでした。しかし、総長にはまだ残された重大な課題があります。現在の異常な非常勤職員制度を見直し、本学の教育研究が円滑に前に進むような環境を取り戻すことです。

本学だけが雇用条件を悪化させている

 非常勤職員の雇い止めを行うのは本学だけではないというような認識がまだ学内にはあるのかもしれません。しかし、この件に関する本学の方針は全国的に見ても特異なものです。全国大学高専教職員組合(全大教)の調べによれば、大規模大学21校の中で、改正労働契約法に対応して非常勤職員の待遇を従来よりも悪化させ、大規模な雇い止めを強行しようとしているのは本学だけです。
 大阪大学、九州大学のように無期転換を認めていない大学も存在しますが、これらでは従前から雇用上限を厳密に運用しており、この3月にも例年と同様の雇用上限者の入れ替えが行われます。本学のように、協議延長制度が存在した京都大学、熊本大学などではこの制度を存続させ、あるいは拡充して長年勤務した非常勤職員を雇用し続けます。新たに独自の無期転換制度を設けて、ほとんどすべての非常勤職員を雇用し続ける名古屋大学、東京工業大学のような例もあります。東京大学、岡山大学、信州大学、長崎大学などでは非常勤職員の雇用上限そのものが撤廃されました。

無期化は社会の流れ、財政的困難は理由にならない

 国立大学をめぐる厳しい財政状況が無期転換を阻む要因として挙げられてきました。しかし、同様の困難を抱える大規模大学で、あるいはより困難な状況にある小規模な大学で次々と無期転換が実現している現在、これはもはや言い訳にはなりません。考えてみれば、多くの民間企業では“安定した財源”などというものは存在しません。先がどうなるか見通せない状況でも、雇用は安定化されるべきだというのが現在の社会の要請ですし、それに応えることが経営者には求められているのです。
 そもそも、国からの財政支出が減少するからといって教育研究を縮小均衡に向かわせるようでは我が国の学術に未来はありません。実際には、本学では、震災復興への大規模財政支出を除外しても事業規模は順調に拡大し、正規・非正規ともに職員数は増加してきています。  財政的な理由で無期転換を拒むことは、社会的要請からも許されませんし、本学の実態からも乖離しています。

社会的信用はすでに大きく傷ついている

 本学の突出した人事方針はすでに本学の社会的名誉を大きく傷つけています。雇い止めが問題となった県内のさる民間企業での団体交渉の席では、「東北大学と一緒にしてもらっては困る。われわれはあのような一律切り捨てを考えているわけではない」という経営者の発言があったようです。誠に不名誉なことだと言わざるを得ません。しかし、5年働いた労働者は守れという法の成立を受けて、10年働いた労働者を切り捨てるというような方針をとっている限り、この不名誉を拭うことはできないでしょう。

一刻も早く決断を

 社会的名誉はすでに傷つき、現場の混乱や分断ももはや取り返しがつかない状況となっています。そうであっても、いや、そうであるからこそ、一日も早い方針転換が必要です。無期転換の規模や制度設計の細部はこれから行うしかありませんが、3月末日を前に、社会的に容認されえない現在の方針を転換して、雇用安定化に舵を切ることだけでも決断すべきです。それが本学に対する総長の残された最後の責務でしょう。里見総長の決断を強く要請します。


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