2019年2月22日付で,厚生労働省労働基準局長から各省の担当者に向けて,「独立行政法人、特殊法人、国立大学法人等における無期転換ルールの円滑な運用について」と題された事務連絡文書が発せられました.これを受けて,文科省からは2月27日付で国立大学および大学共同利用機関の人事担当者に向けて「貴法人における無期転換ルールの円滑な運用について」とした事務連絡が出されています.
その内容は表題の通り,年度の切り替わりの時期に当たって無期転換が円滑に進むように,というものですが,注目すべきは以下の文章です.
これまで、企業等においては、無期転換ルールの円滑な運用に向けた対応が進む一方で、 一部では無期転換ルールの適用を意図的に避けることを目的とした雇止めと疑われる事案があり、独立行政法人、国立大学法人等に係る報道もなされているところです。
無期転換ルールへの対応にあたりましては、以下の事例のように、無期転換ルールの適用を意図的に避けることを目的として、無期転換申込権が発生する前に雇止め等を行うことは、労働契約法の趣旨に照らして望ましいものではなく、慎重な対応が必要です。
(労働基準局長事務連絡から.下線も本文の通り)
- 無期転換申込権が発生する5年を経過する直前に、一方的に、使用者が契約の更新上限(例:有期労働契約の更新は5年を超えることができない)を就業規則に設け、これに基づき無期転換申込権の発生前に雇止めを行うこと
- 契約更新上限を設けた上で、形式的にクーリング期間を設定し、当該期間経過後に再雇用することを約束した上で雇止めを行うこと
明らかに,東北大学で行われていることは「法の趣旨に照らして望ましいものではない」と言っています.最初の雇い止めから1年が経とうとしているこの時期にこうした通達が出される,そのターゲットは,真っ先に東北大学だと言えるでしょう.
ところが,3月20日に行われた団体交渉の席で,大学側弁護士は「東北大学の更新上限規定は労働契約法改正前からあるものなので,無期転換権の発生を阻止する目的のものではない」と居直りました.下間理事はさすがにそこまであからさまな居直りはせず「組合から,今回の通知を踏まえて検討するべきだという要求があったわけで,持ち帰り検討する」としましたが,一方で,「財源,業務の問題も踏まえて,上限も設定して運用している.こうした考え方に現状変更はないので,有期雇用の運用は避けられない」と,引き続き雇い止めを続ける方針であることを述べました.
東北大学における非常勤職員の扱いは,社会的に批判されるものであるだけでなく,行政府から見ても問題があるものだということが,改めて明らかにされました.組合は,引き続き,人事方針の転換を求めて運動を続けます.
労働基準局長 事務連絡文書(PDFファイル 2.2MBあります)
文科省 事務連絡文書(PDFファイル)