今年8月13日に「国旗及び国歌に関する法律」が公布、施行されました。しかし、国家の統制の象徴である「日の丸、君が代」については、学生の主体性を伸ばす教育の現場にふさわしくなく、多くの学校でその掲揚、斉唱が実施されていません。特に、学問の自由を堅持する大学においては、これまでも慎重に対処してきました。「日の丸、君が代」が法制化されても、多様な思想・信条、学説の存在を前提とした大学は、その取り扱いに節度や見識が求められねばならないことは当然であります。
現在、「天皇在位十年を国民こぞって祝うため」に11月12日の天皇在位10年記念式典にあわせて日の丸を掲揚する旨の文部省からの通達を受けて、東北大学本部および各部局において日の丸掲揚が検討されています。加えて、「国旗及び国歌に関する法律」が公布、施行された際にも、その周知文書が東北大学の一部の部局にお いて各研究室に配布されるという異例の事態がありました。
「国旗及び国歌に関する法律」は「日の丸、君が代」を国旗及び国歌とすることのみを定めた法律であり、その取り扱いについて何ら規定してはいません。また小渕首相も「新たな義務を課すものではない(内閣総理大臣談話、1999.8.9)」と明言しています。にも拘わらず、天皇の式典にあわせた日の丸掲揚の通達、および法制化の周知が行われている状況は、強力な国家による指導、統制が進行しているものと言わざるを得ません。言うまでもなく、憲法では厳然と国民主権を定めています。天皇中心の国家を目指す思想の強要を国立大学に押しつける一連の指示を、到底容認することは出来ません。ましてや、アジア諸国からの留学生・研究員を多数擁する東北大学においてはなおさらです。
私達は、東北大学に「日の丸、君が代」を持ち込むことは、大学の学問の自由、自治を自ら放棄することを意味するものと考えます。国家の指導が強化されている今こそ、大学として毅然とした態度で対応することが必要です。
私達は、今回の天皇在位10周年式典にあわせた「日の丸」の掲揚に反対するとともに、東北大学における日の丸の掲揚、君が代の斉唱が今後とも行われないよう、強く訴えるものであります。
1999年11月10日
東北大学職員組合執行委員会