第二編　模索（1950年～56年）（昭和25年～昭和31年）

　ベトナム・朝鮮・中国と相次ぐ社会主義国の誕生、アジアにおける民族解放闘争の大きな前進に対応してアメリカとそれに育成され、従属する日本の支配層は、日本をアジアにおける前進基地に仕立てるため、その体制確立-サンフランシスコ体制の確立-に血道をあげた。朝鮮侵略戦争開始をテコに、単独講和と再軍備をすすめ、国内的には、レッドパージ、反共的労働運動の育成（総評の結成）、破防法の制定、教育の反動化と激しい弾圧の嵐が荒れ狂った。

　こうした事態の中で、日本の労働、民主運動の主要な部分が、朝鮮侵略戦争支持を表明するなど、一時、重大な後退を示した。しかし、サンフランシスコ体制が日本国民、労働者にもたらす激しい矛盾と戦争への強い反省は、その復元力を充分に内包していた。

　東北大学においても、イールズによる「赤色教授追放講演」、大管法、行政整理など、おしよせる攻撃の浪の中で、「戦う組合」への「模索」が続けられた。

第三章　朝鮮戦争下の組合運動（1950年～51年）

　しかし、占領軍と日本独占資本による労働運動と民主運動にたいする弾圧と賃金凍結による強度の搾取は、労働者、学生の闘争をよびおこした。

I　「イールズ事件」

イールズ来仙

　東北大学では、学生を中心に「イールズ事件」が闘われた。前年（1949年）7月以来、各地で「進歩的教授の追放」を講演してまわり、多くの大学で発生している辞職強要の元凶であるイールズが、5月2日に東北大で講演することになった。3月には大学に通知があったが公表せず、4月中旬に来仙の噂が流れて重大問題となった。大学側は、講演の性格をあいまいな形にしようとしたが、学生側は、当日は休講にせずと言いながら教官に講演出席を要請して自然休講の形となっていること、会場が中央講堂ではなく授業に差支える法文一番教室にあることなどから、講演会に公的性格が与えられているとし、公的な場合、各大学の例の如く講演の結果が義務づけられる、つまり「赤色教授追放」が実施されるので、講演を公開して中央講堂で行うこと（つまり講演の性格を私的なものにすること）を要求した。

学生の画期的闘い

　「大学の自治、学問の自由」を求め、当日の5月2日は抗議行動を起こし、会場内で講演の性格をめぐる学生の発言があいつぎ会場は騒然となり、1時間余で講演を断念して流会となった。会場は学生大会の場となり、さらに、3・4・5・8日と決起大会を開くなど、今まで不活発であった学生の活動が異常なほどに高まった。この中で数人の学生が公務執行妨害などで逮捕されるなどの弾圧をうけたが、「大学の自治・学問の自由」を守るために占領軍政策に公然と反対した画期的な闘争であった。この闘争は北大でも公演中止に追込むなど全国の大学の闘いを激励し文部省のレッド・パージ攻撃にたいする反撃の口火を切った。

複雑な職組の対応

　この事件に対して連合会は、事前の活動もなく、当日は委員長が日教組大会で不在、副委員長は選出されていたが名目のみという状態で事件の本質も掴めず、対応は遅れた。学生側からの共闘申し入れにも、再三の会議で、「講演はきいてもよいし妨害した学生は悪い」「組合が学生側に簡単に同調した様にみられては困る」「イールズ問題に関係しない方がよい」などの意見もあり、職組の対応は複雑なものがあった。

学長との正式会見の承認

　結局、共闘は行わず、大学側の発表した事実経過の相違を独自調査で解明する方針をたて、そのためのビラを数枚作成した。そして「イールズ来学に対する認識の深さが異なっている」が、問題の本質を学内の非民主的運営に求めて学長と交渉し、組合代表と学長との正式な随時の会見の承認を得た。

　問題の本質をなかなか掴めなかったが、原因を学内の非民主的運営に求めたことは、「大学の自治、学問の自由」が、大学当局のみでは守りえないことを提起し、大学構成員の意見を大学運営に反映させることを要求したことであり、注目すべきで点であった。

II　戦争勃発と組合運動

物価急騰

　イールズ事件対策の苦慮するうち、6月25日日朝鮮戦争が勃発した。開戦と同時に物価急騰にみまわれ、前年1月以来釘付けにされた給与改訂を中心に値上げ闘争が高揚した。7月国会に向けた給与改訂要求、次期国会をめざした日教組9,700円ベース要求を行った。寒冷地手当の早期支給も要求し、9月、10月に半分ずつ支給をかちとり、さらに超勤手当の増額と公平支給を要求した。

住宅組合の結成

　また、住宅問題の深刻化に対処するため、設立された住宅金融公庫への申込み、建築を個人で行うより組合で行ったほうがよいとして、7月20日に東北大学職員組合連合会住宅組合を結成した。（51年夏に20棟完成）

レッド・パージ阻止

　このような経済問題と同時に、レッド・パージ問題がある。10月9日の学長交渉で「学内に該当者はいないと思う」の言明を得、「薮蛇的結果にならぬ様自重」するとともに、当局の動きを監視し、結局レッド・パージの実施を阻止した。しかし、廃校となる旧工専職員10人ほどの半強制的退職問題がおこり、強制反対と、止むを得ない場合の再就職斡旋を要望した。

反戦平和の意思表示

　このほかでは、平和擁護世界大会委員会が50年3月によびかけた、原子兵器禁止ストックホルムアピールの署名運動に7月頃から取組み、朝鮮戦争下で反戦平和の意思表示を行った。また、教育委員会委員選挙には宮城音五郎氏を推薦した。

本部事務局職組の脱退

　しかし、登録人員280名を擁した事務局職組が9月に脱退した。官僚機構が次第に整備され、職制の圧力のために組合活動が困難となり、「組合を毛嫌いする風潮」が生まれて脱退となった、事務局職組の動向に、連合会内に激しい反発が生まれたようである。

第3回定期総会

　朝鮮戦争下の「軍事監獄」ともいうべき状況の下で、10月14日に第3回定期総会をむかえた。情勢報告では、日教組第17回中央委員会の情勢報告にもとづいて情勢分析がなされた。運動方針は、前総会を踏襲している。とくにレッド・パージについては、その意図を「言論思想の統制によって労働者を悪条件下に従属せしめ及至企業経営を経営者の意のままに行うにある」と捉え、「学問思想信仰の自由を無視し且つ生活権そのものを剥奪するような不当かく首の如きは組合として最も好まざるところ」としている。また「物言えば唇寒し秋の空　赤色旋風に恐れてか　とみに権利の正しい主張の少なくなったことよ」（連合会ニュース　台風眼）にみられるように、激しい弾圧となかなか成果が上がらないという情勢の下で、組合員の意識の低下がみられ、困難な状況下で憂慮すべき事態にたいし、一層の団結と強化拡充を訴えている。こうして第3期の活動にはいった。

III　物価高騰下の組合運動

9,700円ベース要求

　50年6月から51年2月の間に、卸売で35.7％上昇という物価高騰のため、激しい弾圧下にもかかわらず50年末から51年春にかけて労働運動は盛り上がった。政府の給与改訂7,981円ベース、年末手当0.5ヶ月にたいし、日教組大学部は、9,700円ベース、3ヶ月分を要求した。

「手足をくうプラスアルファ」

　平均して1,000円程度のベース・アップで、しかも、1級1号は500円、15級2号は、11,060円と上に厚く下に薄い内容は、多くの労働者の憤激をよんだが、1月実施となった。半月分の年末資金には「0.5ヶ月で何のたしになる」と、中央交渉を中心とした活発な闘いが展開された。結果プラスαとして1,500円までの支給が実現したが、300円は文部省、1,200円は各部局負担となり、超勤費、研究費を減らして支給したもので、「手足をくうプラスアルファ」となった。連合会では、「給与引上げを要求するのは当然のことであるが現在一般に正面きってそうしたことを言動に表すことが法にふれ道義に合わない様な雰囲気をかもしだしている状態で、中央の闘争に依存せざるをえなかった」と総括している。

地域給1割廃止問題

　また連合会としては、11月に人事院が勧告した地域給1割廃止問題にとり組んだ。在仙他官庁との共闘が指向され、12月9日に宮城県官公労組地域給対策委員会が結成された。1人平均800円もの減収に相当し、ベース･アップ分が相殺されるため、大問題となって翌年にひきつがれて行く。

IV　「全面講和で給与を上げろ」

全面講和要求運動

　1951年1月、ダレスを団長とした講和使節が来日した。朝鮮戦争で手痛い打撃を受けたアメリカは、日本の労働運動、民主運動への弾圧を強化しながら、ポツダム宣言の制約をはなれて「合法的」に対日支配を永続化し、ひきつづきアジア侵略の足場とするために、ソ連や中国を排除した単独講和の準備を急いだ。この動きに、1月には共産党、労農党、産別会議など40団体で「全面講和愛国運動協議会」が結成され、全面講和と再軍備反対を表明し「ＧＨＱの道具」として誕生した総評が、労働者大衆の強い全面講和案を反映せざるを得なくなり、3月には「再軍備反対、中立堅持、軍事基地提供反対、全面講和実現」のいわゆる平和四原則を採択するなど、全面講和要求運動が活発化した。

12,200円ベース要求

　大学と組合をめぐる情勢では、物価高騰下のわずかなベース・アップにたいし、日教組第18回中央委員会が12,200円ベースを要求し、「全面講和で給与を上げろ」、「給与引上げ要求で全面講和をかちとろう」など、講和問題と給与改訂を関連させた闘いが組まれた。

大学管理法案の上程

　また、前年秋のレッド・パージを大学関係のみ実施できなかったが、前年来の「新に法的措置をしてレッド・パージをかならずやる」旨の文部大臣談話にそった教育公務員特例法改正案と、大学管理法起草協議会の1年余の審議を経た大学管理法案の国会上程に対する闘いがある。教員の身分保障の条項である特別法第五条の、転任、免職の際、事前審査を公開で自由に陳述できる条項を改悪し、この公開審査の可否を大学の管理機関が一方的に決定しうるものと改め、首切りを容易にし、教員の身分保障の不安定化を意図していた。大学管理法案は、大学法試案要綱と比較して大学の自治をある程度守ったが、その自治は、学長、学部長、有力教授の構成する評議会の自治にすぎず、全教職員学生による自治とは懸隔甚だしいものであった。

地域給問題

　このような情勢の下で連合会は、主として前年からの地域給問題と、教職員格下げ問題で活動した。地域給問題では、大学当局に協力を約束させ、1月12日には地域給対策委員会が在仙官衛長会議に協力を約束させ、さらに4人の代表を上京させ県選出の代議士への葉書戦術などを行った。そして、人事院の動向を見守った。

教職員「格下げ」問題

　1月に、工学部、速研などで実習指導の教務職員を中心に、約170人が事務系へ「格下げ」された。これは前年12月31日付で実施された教育系職員級別推定表の改訂が、教育系職員の給与引上げとなって、事務系職員との給与格差を拡大させた。ベース･アップ等による歳出増を教官定数の制限によってある程度カバーしようとする文部省の政策と、給与拡大への事務系職員の不満をなだめる目的で、一部教務職員の「格下げ」が行われたのである。

事務系職員待遇改善のとりくみ

　これにたいし、「人を下げて自分も下げる」ものとして絶対反対を表明し、学長交渉で格下げの凍結、延期を確約するとともに、事務系職員の待遇改善にのり出した。中央では日教組大学部に事務職員部の設置、2月22日の事務職員全国代表者会議などで対策が立てられはじめ、教務職の解釈拡大による教官系への格付け、調整号俸をつけること、勤務の特殊性を訴えることなどが検討された。

第4回定期総会（51年4月）

　こうして4月14日に第4回定期総会をむかえた。情勢報告では、米ソ対立の深刻化の下で、国内では自由党が講和の主導権を握り、反動攻勢を強め、また、物価急騰で一般勤労者の生活は困窮の度を加えているが、公務員組合は「権力迎合主義根性」のため活動性を失い、日教組へは、活力を欠く点、幹部の保守主義的傾向から組合員の切実な要求に即応しない点を批判し、大学部中執へも、下部大学教組の要求にマッチしない点に批判的である。

8組合、1,200名

　このもとで連合会は、8組合1,200名（3分の1の組織率）で旧国立大学中最上位の組織率だが、前年の事務局脱退等、「組合意識の低下の為に組合組織は次第に弱化の路を辿っている」とし、これを打開するためには、情宣による意識向上と「一歩一歩着実に足下の問題解決から始まり講和の問題世界平和の問題まで視野を拡大し又逆に国際的限界の下国内学内職場と足下の小問題解決に努力」する必要を述べている。そして、12,200円ベース要求などの生活の安定化、民主教育確立、言論の自由確立、国民の為の平和と講和の促進、組合組織の強化を掲げて、第4期の活動にはいった。

第四章　単独講和と組合運動（1951年～52年）

I　単独講和・再軍備と攻撃

単独講和と日米安保の締結

　秘密裡に進められていた日米講和交渉は、米軍駐留・基地提供・日本再武装で一致し、7月には講和条約最終案が発表された。そして9月8日に、サンフランシスコで「平和条約」と日米安保条約を結び、日本の運命を長期に決定した。この単独講和・再軍備は、50年7月警察予備隊創設に51年度予算310億円、52年度には、安保条約の細目である行政協定にもとづく防衛分担金・警察予備隊強化関係の軍事費を、総予算の31％強にあたる1,820億円に膨張させ、必然的に他の予算を圧迫した。このため文教予算の貧困化、職階制強化を含む低賃金政策と首切りが画策された。

「教え子を再び戦争に送るな」

　3月に総評の決定した「平和四原則」は大衆に浸透し、日教組が1月に「教え子を再び戦争に送るな」のスローガンを中央委員会で採択し、第8回大会で平和四原則を確認するなど、全面講和要求の運動は急速に高まった。低賃金・生活苦の根源を単独講和・再軍備政策に求め、「平和闘争と賃金闘争」を結合した闘いがすすめられた。また、世界平和評議会の五大国平和条約締結要求署名（ベルリンアピール）が各職場で取り組まれた。

しのびよる大学への攻撃

　大学をめぐる動きでは、5月に人事院が「地域給に関する勧告案」を提出した。これは1月1日のベース･アップによる予算増額を地域給の削減で埋めようとするものである。

　教育公務員特例法一部改正法案は、前述の第五条を改悪し、国立学校設置法一部改正案は、付則に、「廃止される学校の職員は、別に事例を発せられない時は、昭和26年3月31日限り、職員の身分の失うものとする。」をうけて、ともに6月に国会を通過し、不当な首切りを用意にし、教職員の身分を不安定なものにした。なお、国立･公立大学管理法案は、上程されたが審議未了となった。さらに、職階制の格付け、勤務評定制度の導入が検討されはじめた。

II　多面化する連合会活動

教務職員問題

　このような情勢下で連合会は、教務職員問題・地域給問題・大学予算公開・人事院登録問題に取り組んだ。教務職員問題では、事務局が小委員会を設置して任用基準作成にあたった。小委員会は、大学卒を基準としたが、文部省の基準では、短大卒または部局長の承認となっているので連合会は反対したが、7月に評議会は小委員会案を決定した。そこで学内基準を文部省基準へ修正させる努力が払われた。

地域給と大学予算公開

　5月に仙台の地域給を、現行1割から5分へ引下げる人事院勧告が出されたが、国会で審議未了となった。県公務員給与対策委員会を通じた活動と、国会議員の地元への思惑も動き、次第に1割復活の見通しが現れた。予算公開は、昨年末超勤費配分の不明朗さなどから要求していた。特に、文部省・大学本部・各学部留保分が4～6割を占めて研究費を圧迫していることに対し、本部留保分の使途の明確化と予算配分の公正化を学長に求めた。

人事院登録

　人事院登録とは、49年人事院規則の「職員団体登録に関する規則」によるもので、組合活動を制限するものと解釈され、他大学職組では撤回闘争が組まれたほどであった。しかし、学長交渉で予算問題を取り上げたさい、未登録だから口をさしはさむ権限なしと拒否されたことなどがあり、首切り・職階制実施の動きに強力に対処するため、登録の必要に迫られた。そこで組合登録小委員会を設置し、新規約の作成にあたり、10月には原案が作成されている。

学長交渉のあり方に反省

　同時に、この契機ともなった学長交渉のあり方に反省が加えられている。従来の納得･協力を求める「お願いします」式では懇談会的であり、もはや限界にきたので、「交渉」式のものにする必要があるというものである。

講和問題へのとりくみ

　講和問題では、かつてポツダム宣言に基づく講和促進という、正しい全面講和をスローガンとしてかかげたが、現実の活動はかなり低調であった。「講和問題をやらぬ組合はやめろ」の声もあったが、「講和を問題にするのは迂遠でもあり、又危険でもあるから一切タッチすまい」、「組合は講和を云々すべきではない」という組合員の声に規制をうけ、米英・ソの講和案の比較・四原則の解説、講和問題の推移を資料としてニュースに載せるなど情宣活動にとどまった。

工専廃止問題

　このほか、夏季手当1.5ヶ月（結果は1,000円）、給与改訂、赤字補給金要求などの切実な経済問題をとり上げた。しかし、工専廃止に伴い、20人にのぼる全国一の退職者（9人）、転職者を出してしまっている。

「連合会の進む道」

　なお10月10日付連合会ニュースに「連合会の進む道」と題して学内の非民主性をつき、「すべて平等に参画された会談がなされねばならない。あらゆる人の意見がきかれ更に納得されねばならない。それが民主主義だ。･･･学内審議決定について評議員の権限は当然と思う唯提案したいことは良く下々の意見を聴取し或いは発表せしめる機会を与えなければならないという事である」と主張し、予算公開などの要求の基礎となる理念を示し、翌年の学長選参加要求につらなっていく。

選研職組加盟

　組織としては、6月に宮城県教職員組合協議会に加盟し、従来の県教組との協力関係を協議会形式にたかめた。また、選研職組40名が工学部職組に加盟し、行政整理の動きとともに、10月には抗研・金研が連合会復帰を約束するなど、連合会勢力は着実に増大した。

おしよせる行政整理の波

　こうするうちに行政整理の波がおしよせ、対決を迫られながら、10月13日に第5回定期総会を迎えた。米ソニ大陣営の対立下、日本は安保条約・MSA（米・日の相互防衛援助協定）で米国の勢力圏に入り、再軍備に走り、「昭和20年8月の惨苦の尽に野たれ死ぬか平和の天地に生きる幸を感ずるかの運命を決する重大関頭」であると情勢を報告し、12,000円ベース即時実施・馘首移動反対・平和四原則の貫徹などを運動方針としてかかげた。そして、10月から翌年1月まで、行政整理反対に全力をあげた第5期の活動がはじまった。

III　行政整理反対闘争

戦闘性をとり戻した労働運動

　朝鮮戦争下の困難な条件の下の「単独講和」反対闘争を通じて、労働運動は戦闘性をとり戻し、炭労、電産などの秋季闘争を皮切りに、年末手当闘争に入った。公務員労働者は、平和、ベース･アップ、行政整理問題にとりくんだ。8月に人事院が勧告した11,263円ベースすら政府が従わず、10月に10,062円ベースを実施したことにたいし、物価高騰下では実質賃金の切下げであると批判して12,000円ベースを迫った。

教官1割・事務職2割削減案

　行政整理は、軍事予算増額のシワ寄せであるが、行政改革、冗費節減の名目で10月に国会に上程された。当初案は教官1割・事務職員2割削減であったが、日教組・大学部指令による定時退庁等の実力行使、座り込み交渉、学内での強力な交渉の反映として、10月21日の国立大学学長会議が行政整理反対・増員要求の声明を出すなどの運動の結果、10月末日の文部省案は、教官系692名（全教官系職員の2.3％）、事務系2,780人（同7.6％）、計3,472名に削減され、さらに国会闘争の結果、1,962名に修正された。この後は実施段階の闘いに移った。

200名で「決起集会」

　連合会は、総会で決まった正副委員長が辞退（結局、佐藤正助前委員長が10月末に留任となる）して執行部の成立が遅れ、また組合員のなかに「対岸の火災視」するものもあって取組みが遅れた。行政整理反対闘争を協力にすすめるため、10月末に執行委員会（従来の常任委員会を改称）のほかに各単組1名の闘争委員を設置した。10月末日の臨時総会後に「学制改悪行政整理反対決起大会」を工学部機械科大講義室に200名を集めて開き、本格的取組みのきっかけとした。

「定時退庁」実力行使

　連合会委員長は、各単組委員長を招集し、「従来は迂遠な形で日教組にオンブして議決に参加するのみだった。可能な迄に此方も具体的闘争をやるべきだ」と、学内での具体的闘争を強調し、協力と団結を訴えた。ハガキ戦術、決起大会決議文の送付・署名運動・闘争資金カンパ・職場大会・懇談会などの多様な形態の闘争・情宣をくり返した。そして、日教組が出した11月8～12日の間の定時退庁指令をうけ、その効果についての論議はあったが、「団結の誇示と世論の喚起」のため各単組一致できる形態として、15日に定時退庁を決行した。当日は、昼に第2回臨時総会を開き、1万2000円ベース即時実施、学制改悪行政整理反対の闘争宣言を決定し、総会後、闘争宣言を学長に手渡し、行政整理返上に立ち上がることを要求した。5時には、一斉定時退庁が開始され、「おりからの日暮れに足音はことされ高くひびき、歴史的な音は他の流れとともに大きくなり実力行使をたからかにうたったのである。」と成功裡に遂行された。このほか、10～11月の間にのべ3回、4人の代表を上京させ、中央闘争にも連帯している。

座り込みで学長交渉

　12月に入ると、実施段階の闘争に移った。12月17、18日の各大学への割当てなどを決定した全国局長会議に出席した事務局長が帰学すると、連合会は、24日に座り込みを敢行して学長交渉を実現し、割当て数を公表させ（全国1,910名）、さらに「大学の自主的処理に依って生出血は出さぬ事」を学長に申入れた。

実質的首切りの回避

　翌52年1月21日の学部長会議で部局毎の割当てが実施され、今次の行政整理は最終段階を迎えた。この中で、部局への割当てを止めて学内でプールせよという要求、各単組の部局での闘いにより、「最後には出血させろの豪語」を崩し、欠員と希望退職者によって実質的首切りの回避に成功し、一応の勝利を得た。

年末手当プラスα支給獲得

　51年末にはこの他に、年末手当0.8ヶ月支給に対して、学内プラスα獲得闘争を行政整理反対とからめて展開した。12月26日に座り込みを行い、1,300円の支給を承諾させたが、結局、ほとんどの部局では事務室関係のみの支給にとどまった。

IV　学長選参加闘争

全教職員の平等参加

　1952年に入ると行政整理反対と併行し、学長選挙への参加闘争が行われた。前年12月21日に、「民主主義の原則から全教職員が平等に参加すべき」旨の要望書を提出した。この「平等に参加」は、評議会などで1人1票の投票権と誤解された。

中間投票

　そこで、「投票前に投票権を有する者が職場或いは部局で良く職員全員に問うてそこからにじみ出る就任の世論をこそ投票に反映せしめるならばこれ自体も又美はしき民主的な選挙の一方法ではないか」と反論し、決定の前段階、または中間段階で全職員の意向を問う手段を講じ、それを決定に反映させるべきだと要求した。

学長候補への質問状

　これが拒否されると、第一次選挙で選出された候補者に、就任意志、組合活動をどう思うか、学校振興の抱負について、以上3項目の質問状を出し、その回答をニュースに載せるなどの活動を行い、学長選挙を全構成員のものとする努力が払われた。

第五章　サ体制強化と労働運動（1952年～53年）

I　政治支配体制の強化と組合

講和条約の発効

　52年前半は、4月28日の講和条約発効で、日本の政治支配体制が大きく変化する過渡期であった。講和発効によって一連の占領法規が失効するため、支配勢力は治安対策を固め、労働三法の改悪を準備した。また朝鮮戦争下に復活した独占資本が「合理化」による過酷な搾取、収奪を強化してきた。3月には東大ポポロ劇団事件などがおこり、大学の自治にたいする攻撃も露骨に強化されてきた

第六回定期総会

　このような情勢の下で、3月22日に第6回定期総会を開いた。講和、安保条約による再軍備が内政予算の減少と重税、教育費の削減と低賃金に結果したと、国内情勢を捉え、学内情勢は、学長以下の学内の責任ある人が、組合の立場と実績を高く評価している一方で、組合内に「節を売り当局におもねり、良心をカモフラージュせんとする者と利己主義的無関心がビ満」していると報告した。

職階制反対と最賃制要求

　この情勢報告に基づいて、闘争方針がたてられたが、いくつかの特徴がある。給与面では、18歳最低8000円、平均16,684円の最低賃金制の要求、「給与準則」に関係して、職階制反対の原則論と実施の場合には有利な格付を獲得することを求めた。最低賃金制要求は、ベース･アップ闘争では「上に厚く下に薄い」結果を生み、物価上昇においつけないという従来の闘争の反省から出たものである。日教組中央員会は前年末に、執行部提案を否認して最低賃金制要求を決定し、52年春季闘争では多くの労組が、理論的に必要とされる生活費の計算にもとづいて賃金を要求するマーケット・バスケット方式を採用、総評も2月の「賃金綱領」で、最低賃金制の努力を開始した。職階制については、48年1月から一部で導入され、50年5月の「国家公務員の職階に関する法案」で本格化し、52年からは、職階制による新任用の実施、職階賃金の準拠法規である「給与準則に関する法律案」制定の動きで具体化した。連合会の方針は、これらの動向を反映したものであった。

ふたたび役員問題

　ついで、治安立法、労働三法改悪の策動にたいする反対、戦争を前提とする一切の事柄に反対する方針、最低8000円確保、教育研究費増額、大学の自治を守れ、平和を守れのスローガンをかかげ、第6期の活動にはいった。しかし、委員長が決まらず、副委員長、書記長が就任早々で辞意表明するなど、役員問題でもたつき、当面の諸活動に大きな支障をきたした。

II　「破防法」闘争

労働法規改悪反対闘争委

　戦前の治安維持法の復活をねらう「破壊活動防止法案」の国会上程が3月に決まると、総評と中立系組合で前年6月に結成した「労働法規改悪反対闘争委員会」を中心に、4月12日、18日、6月7日の3回にわたるストを決行し、労働者階級が政治課題をかかげ、幅広い層の国民を結集した統一行動の中心となって闘っていた。

「破防法討論会」の後援

　東京では「血のメーデー事件」、仙台でも学生が逮捕されるという事件のおこった第23回メーデーにも、役員問題のもたつきで参加できず、破防法への対処も遅れた。しかし、執行部の弱体と組合員の「経済闘争主義の風潮」に規定されながらも、5月1日に東北大学新聞社主催の「破防法討論会」を後援して500名の参加を得、同30日の経済学部自治委員会主催の討論会を後援するなどの活動を行った。

臨時大会で決議

　だが、6月に、経済学部自治委員会からの共闘申入れを断るなど、学内統一戦線には消極的であり、また6月10日には学生がストライキで闘うなどにくらべ、一部組合員から、遅く手ぬるい、急場しのぎ的態度と批判を受けた。それでも6月21日に臨時大会で反対を決議した。反対闘争の大詰段階ではあったが、政治的課題の全国的闘争の一環に参加し、破防法の本格的発動を許さない力関係を作り出した力となったのである。

III　政治闘争と賃上げ闘争の結合

夏期手当0.5ヶ月実現

　破防法とともに、2年余にわたる地域給引上げの運動も続け、5月から1割へ復活させる成果を獲得し、夏季手当には、1ヶ月を要求して運動し、0.5ヶ月を実現している。

人勧に従わない政府

　職階制問題では、50年12月以後停止されている昇格の即時実施、格付の際に有利になるような職内容記述書の書替え、各職種の級別定数の是正を学長、局長交渉で要求し、職階制反対より有利な格付を獲得する方向に努力が注がれた。また給与改訂では、7月に、13,515円ベースの人事院勧告が出たが、給与の最高と最低の比率が9.3倍から11.6倍へと拡大する「上厚下薄」であり、しかも政府がこれに従わず11,560円ベースを予定した。

「給料が選挙で決まる」

　これに対し、低賃金、反動諸法規成立の原因を自由党政治に求め、政治闘争を離れた賃上げ闘争では根本的解決は不可能であるとして、おりからの10月総選挙に「真の味方を国会へ送れ」、「給料が選挙で決まる」をスローガンに、選挙闘争を行った。具体的には、県給対が推薦する佐々木更三、協力候補として菊池養之輔（以上一区）、同日野吉夫（二区）、さらに県知事候補として宮城音五郎、県教育委員候補として八島炳三、相沢庸治を連合会ニュースで紹介した。

IV　求められる運動の質的転換

炭労・電産の長期スト

　52年秋季闘争は炭労、電産を中心に「合理化」反対をかかげて長期ストを敢行し、サンフランシスコ体制下の労働運動の質的転換を示すものとされた。このような情勢は、9月27日の第7回定期総会にも反映された。

訴え、「東北大学職員の皆様へ」

　総会を前に「第7回定期総会に当り東北大学職員の皆様へ」の訴えを出した。政府権力の未熟な時期には幼稚な闘争でも比較的容易に成果をえられたが、この「華々しかった切り取り獲得闘争時代」が終り、権力強化のため、成果がなかなかえられない段階となり、中央交渉だけや、他人に頼った闘争では解決不可能となったとして、組合員の結集と学内での具体的日常的闘争の必要を訴えた。そして、最低生活を保障するベース・アップ、学内権力の打破、再軍備反対、朝鮮戦争即時休戦、教育委員会市町村設置反対、日教組の組織防衛などのスローガンをかかげた。

年末手当一律1000円上積み

　全国的な秋季闘争の盛り上がりを背景に、連合会は最低賃金8000円、16,800円ベース実施要求、年末手当、超勤費、被服費の完全支給、職階制の有利な格付の要求などをかかげ、11月14日には、中央闘争委員会を設置して闘う体制を築いた。中央への代表派遣、12月8日の定時退庁などの活動を行い、0.5ヶ月の年末手当政府案に0.25ヶ月上積みさせる成果に貢献し、さらに学内予算で教官系を除いて一律1000円をかち取った。

労働運動の成長

　1953（昭和28）年に入ると前年7月に成立した労働関係調整法の「緊急調整制度」に続いて、石炭・電気事業の争議行為を制限するストライキ規制法を制定した。政府の労働者弾圧政策に支えられ、朝鮮休戦による特需減少とともに、独占資本は「合理化」を強化した。これには、日産自動車の争議、三鉱連の「英雄なき113日のたたかい」などの大規模な反撃が展開された。また、5～7月には、労働者が軍事基地反対闘争に指導的役割を演じた内灘闘争、8月の駐留軍基地労働者のストライキなどサンフランシスコ体制下の労働運動の質的転換と労働者階級の成長が示された。

V　大学への攻撃の強化

第三次大管法上程の動き

　一方、朝鮮休戦で反共軍事戦略が破綻したアメリカは、日本の再軍備強化を求めてMSA協定交渉を開始した。10月の池田・ロバートソン会談で、再軍備強化とそれにそった教育方針の確立を約束させられるとともに大学への攻撃が強化された。前年12月に実施規則ができ、2月実施予定の教官系職員を除く職員への勤務評定制度、学長官選化、評議会権限の強化、学部教授会権限の弱化をねらう大学管理法（第三次案）の国会上程の動きなどが年初からおこった。

文部省統制の強化策

　大管法は上程されなかったが、その一部が4月に、文部省令第十一号「国立大学の評議会に関する暫定措置を定める規則」、「学部長選考について（案）」、「学長選考について（案）」として出された。前者は、評議員の文部大臣任命制、人事・予算決定権の評議会への付与、評議会の組織運営を文部大臣に報告する義務など、評議会の権限強化と文部省統制の強化を意図している。後二者は、選挙資格を教授に限定するものである。文部省の大学支配と、学長と一部評議員による大学運営をねらっている。また後半には、MSAによる再軍備強化のための行政整理、再軍備のための教育･研究体制強化が始まった。

第八回定期大会

　連合会は、年初に大管法国会上程阻止闘争、勤評については「勤務評定は首切りの院外団」、「言論の自由を束縛」として、反対の情宣活動を行った。給与問題では、官公労の最低8,800円（18歳）、18,800円ベース、期末手当3ヶ月の新賃金要求、予算問題では科学研究費の増額、また、戦時中の技術院の如く科学研究を軍備に動員することをねらったものとして科学技術庁設置反対などを闘った。そして、吉田内閣の「バカヤロー解散」総選挙には、反動化と戦争を防ぐ第一の道は、我々の利益を代表する政治勢力を当選させることであると訴えた。この選挙戦のさなかの3月28日に、第8回定期大会を開いた。

反動的潮流の強化と組織強化

　情勢は、アメリカの「巻き返し政策」による日本再軍備強化の下で、軍拡と国民生活窮乏への道か、革新勢力による平和と自由と生活向上の道かの選択が迫られ、学内では破防法成立後、反動的潮流が強化したと捉えている。そして、生活擁護、平和と学園自治の擁護を二本の柱とし、最賃制、新ベース、軍事予算反対、教育予算大幅増額、職階制、給与準則・勤評廃止などの目標と、再軍備反対、平和憲法擁護、軍事基地化反対、米軍早期撤退、大管法反対、学内民主化などの目標を掲げた。そのために、組織強化を精力的に行うことを決定した。

警務員夜勤手当五〇円増額

　「組織強化のためには下級労働者の要求を取り上げる必要があること」は、6月の大学部総会で確認されたが、連合会は、守衛夜勤手当・ボイラーマン、農場臨時人夫手当増額闘争をいち早く展開した。1月末に農学部警務員一同から、夜勤手当が、小使、事務職員と比べて非常に不利な点が訴えられた。勤務実態の調査と併行して2月の局長交渉で取り上げ、不利さと不合理さを認めさせた。当局も6月末日の全国会計課長会議に議題として提出し、文部省も努力を言明するに至った。連合会も大学部と連携した文部省交渉で、同様の言明を引き出し、10月の局長交渉で「学内操作で、もっとも近き将来に若干よくなるはず」という回答を得た。結局文部省予算で、一回に50円増額という大きな成果を獲得した。

川渡農場の加盟（53年7月）

　組織強化の点では、川渡農場と第一教養部に力点をおき、7月に川渡（実員72名で15名登録）の加盟をみた。これよりさき、特研生研究費問題を通して、5月に農学部特研会も加入している。なお、地域給・寒冷地給改善から始まり、ベース改訂、選挙闘争で共闘してきた県給対が、6月13日に再軍備反対、平和憲法擁護、18,800円ベース即時実施などのスローガンを掲げて県官公庁労働組合協議会へと発展的解消を遂げ、県内官公庁労働者の一大統一組織となった。

メーデーに初参加

　この他では、4月に「中国帰国者に話を聞く会」を主催し、引揚げ者6人による中国事情の紹介、6月に中国映画上映など、社会主義中国の紹介に努めている。また、メーデーに初めて正式参加し、参加について学長から、「（参加を）許すとはいえないが学部で賜暇をとらないで然るべくやったらよかろう」の言をえた。さらに、5月20日の世界婦人大会宮城県大会を後援してメッセージを送り、保安隊の軍事調査である「警備地誌資料収集調査に対する協力」の文部次官通達に反対し、マルクス祭実行委員会に加入するなどの活動がある。夏季手当１ヶ月分を要求し、文部省座り込みにまで参加し、0.25ヶ月分の繰上げ支給をかち取った。

臨時総会で組織問題対策

　しかしその中で、連合会の活動が組合員から浮き上がり、しかも6月20日の実力行使ができなかったなど、中央の闘争テンポに遅れるなど、深刻な問題が露呈し、7月18日に臨時総会を開いて対策をせまられた。そこでは、書記局の充実、宣伝活動協会による内部結束強化、中央の闘争テンポにあった強力闘争推進を決定し、事態の打開を図った。

「評議会規則事務局案」

　省令第十一号は「隙をねらって出された大管法」であるとして批判したが、東北大では8月に、「評議会規則事務局案」として具体化した。これは省令と関係なく従来通り運営という約束の違反であると非難し、「運営に充分の注意、従来の精神を以ってする」と学長に言明させた。勤評は秋に本格化したが、足並みが揃わず、絶対反対の農学部以外は提出してしまい、農学部の闘いを孤立させるなど、内部結束の不充分さを再度露呈した。

松川事件のとりくみ

　秋には平和を守る課題として、10月のソビエト英が上映、軍事基地反対大会・平和祭への代表派遣、内灘カンパ、松川事件対策東北大会の主催者として10月24日に「松川事件公正裁判要請、自由と人権を守る大会」を開き、松本治一郎の講演を行うなどの活動をしている。

VI　組合活動の新たな試練-夏期闘争の反省にたって-

第九回定期総会

　こうした活動を経る中で、10月26日に第9回定期大会を迎えた。

　この総会は、闘争目標に政治的課題をほとんど掲げなかったことと並んで、次の点に特徴があった。夏季闘争で重大な試練に立たされた連合会の現状は、闘争方法、態勢を根本から再編することを要求しているとして、活動強化の再検討がなされている。

「幹部の孤軍奮闘は昔の夢」

　「壮大な目標をふりかざして幹部が孤軍奮闘することは昔の夢」で、「身近な問題から出発して地についた活動」を強調した。従来の欠陥を、①日常闘争と情宣教育活動の不足、②執行委員会、書記局の戦う態勢の弱さ、③組織強化と共闘態勢の不足、に求め、ここから、①たゆみない日常闘争の強化、②情宣教育活動の強化、③連合会の性格（協議体か連合体か、常任委員会か執行委員会か）についての明確な態度と、執行委員会と書記局の強化、④組織率40％の点から、組織拡充と未組織部局との共闘体制の確立などを決定し、組合強化の礎を組合員の中から樹立し、活動強化によって組合強化をはかることをうたった。また、工学部の長岡義之が、事務系組合員として初めて役員（書記長）に就任したのも特徴点のひとつであった。

勤評の実質的骨抜きに成功

　秋季・年末闘争の中心は、勤評、学術会議選挙、年末手当であった。勤評では、10月の局長交渉で「不合理で･･･非常に困っている。（給与の）不合理是正に用いたい。5％特別昇給のパスポート（形式的なものの意味）」という回答を得、11月には、(1)特昇に勤評を参考としないこと、(2)教官勤評に反対すること、(3)四・一実施予定の行政整理に勤評を利用しないこと、を局長に申し入れている。絶対拒否の農学部も、特昇の形式的手段としてのみ使うため資格者のみに最上の成績を付けて提出し、実質的骨抜きに成功した。

学術会議選挙

　学術会議選挙は、教育研究に対する攻撃強化の中で重視され、民科などと「学術議会員選挙民主団体協議会」を結成し、学問思想の自由、研究設備の充実、大学の自治のために進歩的学者を送ろうと呼びかけ、第三部服部英太郎他4名を推薦候補としている。

年末闘争中央闘争委員会

　年末闘争には、官公労要求の人事院勧告15,840円ベースの完全実施と年末手当2ヶ月をかかげ、11月に中央闘争委員会を設置して闘った。職場大会、12月15、16日の農・理・工学部の定期退庁の実力行使、三次にわたる上京交渉参加など、団結と情宣不足による執行部の浮き上がりを恐れながら一定の活動を展開した。その結果、当初の0.5ヶ月に0.25ヶ月分の政府の上積みのほか、学内操作で一律160円、その上教務系雇員、事務職員に900円の追給を実現した。

初の事務職書記長・組合を脱退

　この他には、科学技術庁設置反対署名、学生選挙権は郷里にあるという自治庁通達反対声明などがある。しかしこの中で、長岡書記長が、「組合は事務系の問題をとり上げない。日教組は事務系を教官系の下にみている」を理由に脱退を表明した。「離れれば反っていつまでもよくならず」と慰留したが、連合会が抱えていた問題点の一つを示すものであった。

第六章　闘う組合への模索（1954年～56年）

　1954年の年頭から造船疑獄が明るみに出て、多数の国会議員が逮捕された。この過程で、吉田首相は法務大臣の検事指揮権を悪用し、事件の中心である佐藤栄作幹事長の逮捕を禁止して、広範な人びとの怒りをかった。しかし、吉田内閣は人民の非難を満身に受けながらも、MSA協定締結にともなう関係立法として、自衛隊法、秘密保護法、教育関係の反動立法として「教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法」、「教育公務員特例法一部改正、労働運動などの弾圧強化策として、自治体警察の否定、中央一元化をはかる「警察法改正案」、さらには自衛隊増強のための行政整理案など、一連の反動立法の国会通過をはかった。日本議会史上初の警官隊の議会導入による強行策等は、広範な人々の憤激をよび、法案に反対する国会内外の闘争を高揚させ、国民の独立、民主主義、平和、中立、生活向上をめざす闘いは、支配層内部の矛盾をいっそうふかめ、混乱に追いこんだ。

I　行政整理、教員政治活動禁止法反対闘争

中央闘争委員会の結成

　1954年に入ると連合会も行政整理と、教育関係反動立法反対の二問題を主要にとり組んだ。1月に中央闘争委員会を結成し、1月30日の東北ブロック会議、2月3日の大学部委員会の討論で闘争方針の確定、情宣に努めた。前年11月の人事院規則による希望特別待遇制度が実施された今回の行政整理は、被整理者には有利との意見もあり、反対闘争には困難な条件があった。

２・１６総決起大会

　2月に「行政整理全面撤回、教員政治活動禁止法案成立阻止２・１６総決起大会」を開き、30数名を集めた。反対と並んで増員運動、各部局割当てに抵抗するため教授会・評議会に対抗すること、反動教育法案には、情宣と教授会・評議会に反対決議を求める運動を行うなどの闘争方針を決定した。

「総蹶起大講演会」

　これにそって活動が進められ、3月1日には「総蹶起大講演会」が、150人を集めて開かれ、松本金寿教育学部長の「政治活動禁止法案について」、柘植秀臣法政大教授（戦後初の入ソ科学者）「生物学者の見たソヴエトの現状」の二つの講演が行われ、法案の危険な内容についての注意の喚起が求められた。

全研工場復帰・第一教養部職組結成

　しかし、3月初めには、欠員、希望待命者、休職者の定員外化などで実出血のないことが判明し、反動教育法案も、「大学は無関係」という意識はこえられず、結局あまり盛り上がりは見られなかった。なおこの間も未組織部局の組織化に努め、金研工場従業員が金研職組に復帰し、また長期にわたる働きかけの結果、第一教養部に職組が結成（2月5日結成大会、107名で76％の組織率）され、友好団体として協力することとなった。（連合会の日教組加盟を理由に連合会への加入はせず）

II　軍事研究・勤評反対のたたかい

「大学をいかにして守るか」（第10回定期総会）

　このような経過の中で、3月27日に第10回定期総会を開いた。

　MSA協定以後の再軍備政策の進行から、再軍備反対の具体的闘争を展開しなければならない情勢であると捉え、日常闘争による組織強化・反動的教育立法・行政整理反対・大学予算増額を重点に、教授層・学生等の非組合員を含めた広範な戦線の結集の必要を唱えた。行政整理・大学予算削減など、再軍備政策による大学の危機が強調され、「大学をいかにして守るか」が重要な課題とされた。

全国の口火を切る軍事研究反対闘争

　このような情勢下で、連合会は、軍事研究反対・勤評反対を主に取上げた。広島・長崎についで3月にビキニと、三度にわたる原水爆被爆は、原子力研究に強い衝撃を与え、また、保安隊からの誘導弾委託研究・保安隊への転勤の噂など、軍事研究の学内侵入の動きが散見されるなかで、学問の自由を守るため「大学の研究は如何にあるべきか」が真剣に考慮され始めた。7月10日に討論会を開き、多様な部局から研究者が出席して活発な討論を行い、多大な成果を得た。これをもとに大学部総会で問題の重要性を訴え、反対決議をさせ、秋の闘争課題に組みこませるなど、全国的反対運動の口火を切る先駆的活動であった。

評定書提出へ方針転換

　勤評問題では、「待遇の公正化の名目で、労働強化と首切りを裏面に隠す」として、6月には全面拒否・評定用紙回収の方針をたてて学局長交渉を繰返した。そして、特別昇給の枠をとる便法として使い、特昇は給与アンバランス是正にのみ使う、という回答をひき出した。そこで、制度撤廃・全面拒否には至らなかったが、骨抜きに成功したと判断し、評定所提出へ方針転換を行った。

地域給改善勧告をつぶした政府

　この他では、夏季手当に官公労の1ヶ月要求を支持して闘ったが、若干のプラスα以外にみるべきものがなく、地域給では、宮城官公労の線で活動し、級地の引上げ（2級から4級へ）の勧告に成功したが、政府に握りつぶされてしまった。

活発な原水禁活動

　三度も原水爆の悲惨な先例をうけた世界唯一の民族の血の叫びである「原水爆禁止」を求める運動は、政党政派・宗教信条のちがいをこえ広範な階層を含んで展開されていった。連合会は、軍事研究反対ともからんでこの問題に積極的に取組んだ。6月にストックホルムで開催の世界平和大会のための宮城県世界平和大集会開催の賛成者に、連合会として名をつらね、数回の集会に参加するなどの活動を行い、原水爆禁止署名運動に積極的協力をしている。軍事研究・原水禁問題等、平和を守る課題での活発な活動が特徴的な点であった。

III　「一人一要求」年末闘争

第11回定期総会

　9月25日に第11回定期総会を開いた。再軍備拡張とデフレ政策の強行下で、世界の平和と、生活と労働の権利を維持する闘いと、MSAの悪影響が色々の形で侵入してきている学内では、市民その他団体と協力の下に、東北大学を民主的教育研究の学園とすることが課題だと捉えている。そしてデフレ政策で人事院が給与勧告を出さないので、一律3,000円アップの新賃金獲得・地域給引上げ・寒冷地手当増額・薪炭手当の獲得・軍事研究反対・平和憲法擁護・学園民主化等の闘争目標をかかげた。

勤評戦術転換で論議

　討論では、勤評の方針転換で論議があり、戦術転換は、目標達成のためには柔軟な戦術と全国的統一行動が必要なために止むを得なかったが、運動が学内のみに留まったこと、戦術転換の際、学内の評定の順位づけに組合代表の意見を入れさせるようにすべきだったこと、などの自己批判が行われた。

「切実な叫び」53項目

　秋季闘争の「一人一要求」運動と、年末手当闘争が活発に行われた。具体的な要求を基礎に「職場からの結集」をはかるため、職場の身のまわりから不満・要求を出していく運動が、6月の大学部総会で提案され、9月の大学部委員会で秋季闘争として正式に決定された。連合会はこの決定をうけて、10月にアンケートをとって集計し、「切実な叫び」の53項目にわたり、11月に学長交渉を行った。

学内操作で341円年末手当

　またその一環として、同月に「東北地区一般事務職員代表者懇談会」を開催し、キメ細かな要求の発掘と事務職員の組織拡大に着手した。このあと年末闘争に移り、12月7日に「年末要求貫徹総決起大会」と共に闘争委員会を結成した。三波の中央動員、夜間デモへの参加・学内交渉と活発に活動した。この結果、12月に成立の鳩山内閣の「人気取り政策」も幸いし、助手以下に1,000円のプラスαを獲得し、学内操作でも事務系のみだが平均341円を獲得した。特に学内操作分は他大学に例がなく、「勝利と言いたい」と評価している。

常盤炭鉱にカンパ

　この他では、11月の宮城県婦人大会に若干の支援と、長期ストの炭労支援の一環として、組合員、非組合員を問わずに訴えて、約計3万2千円余を常盤炭鉱労組への送金、さらには、給与一回払いへの動きに反対するなどの活動を行った。

IV　権利擁護と統一への模索

「神武景気」

　1955年に入って鉱工業生産が戦前の二倍を突破し、国際収支は5億ドルの黒字を出す「神武景気」という言葉が流行した好景気をむかえた。この経済情勢の下に生産性向上運動が積極的に展開され、労資協調主義の傾向が組合運動にはびこり始めたが、大半の労働者は厳しい情勢におかれ、賃金要求にもとづく統一闘争としての「春闘」が始まり、「統一と団結」、「幹部闘争から大衆闘争へ」をスローガンに闘争は発展して行った。また、共通の具体的な要求を基礎に、思想・信条の相違をのりこえた統一行動が、労働運動・大衆運動のなかに拡大しはじめた。原水禁世界大会・母親大会が始まったのも、また、砂川基地闘争などの広範な階層をまきこんだ軍事基地反対闘争が急激にひろがったのもこの年である。

連合会による模擬学長選挙

　新年とともに連合会は、学長選・衆院選・地方選・入試手当の問題に取組んだ。年末闘争に全力を傾注したため、学長選の取組みは立遅れたが、2月1日に「全教職員の意志を民主的に反映する方法を講ずる事」、その第一段階として、「評議会と組合との談合の機会」の設定を要求する要望書を提出した。具体的闘争としては、連合会による模擬選挙が構想されたが実施されず、第一次選挙で選出された候補者にインタビューを行った。

衆院・地方選、候補者推薦問題

　衆院選には、平和憲法擁護の視点から、憲法改悪発議阻止のために取組み、社会党左派の躍進などの革新勢力の進出に貢献した。地方選では、全逓・市労連の共闘申入れを受け、浦田富男（県）、菅原陸三（市）の推薦（4月に入って市長候補に島野武）を行った。日教組から「選挙闘争を闘いとれ」の指令もあり、また賃上げストップの壁をつき破るため、他組合との共闘による活動拡大が必要であるという理由からである。委員会では、推薦することは決めたが、候補者は決定せず、理学部・農研から特定候補を推薦しないという意見も出、候補者決定はウヤムヤとなった。結局、連合会として推薦し、写真入りのニュースの発行、委員会、総会での紹介と挨拶などを行っている。

第12回定期総会

　地方選のさなかの3月26日に、第12回定期総会を開いた。推薦候補の紹介と挨拶のあと議事に入った。鳩山内閣を「反動性の最も強い」内閣と捉え、学内では、貧困な予算と過重労働で教育研究は困難がまし、特に、前年末の給与一回払いの実施にみられるような、「大学運営に於ける当局の逆コースより」を指摘している。そして、健康で文化的な最低生活の保障・平和憲法を守れ・公約実現監視・学園の民主化・組織の強化を大会スローガンにかかげた。

「民主団体との共闘」否決

　討論では、農研から組織強化のため民主団体との共闘の提案があったが、「日教組に入っているだけで問題になっている」現状で、「赤と組んだとか」で否定的な影響があるのではという意見が出され、8対13で否決された。また、工学部より、選挙での推薦について疑義が出された。なお、規約改正があり、会計委員をおき、役員の一員に加えた。

「前進より権利擁護闘争」を

　第12期の活動には軸になるような課題がなく、鳩山内閣の反動政策と大学当局の「逆コース」の下で、「前人よりも権利擁護闘争」の性格が強かった。川渡農場臨時雇3人の首切り問題・理・工学部での行政整理問題・警務員夜勤引継手当の未支給問題・定期昇給のストップ・頭打ち等々にそれが示された。このなかで、組織強化の方策についての討論と模索が精力的に行われている点が特徴的である。6月の執行委員会と臨時総会で、従来の欠陥と強化策についての討論が盛大になされている。

「組合活動以前の問題」

　それと並んで、前年の一般事務職員につづいて、職種別懇談会が連続的に開かれた。6月に女子職員懇談会が、日教組と宮教組の婦人部長を招き、岩大・山大から代表もまじえて開かれ、「組合活動以前の問題」（書記次長のまとめ）が論議の中心となった。7月には4日に警務員懇談会、9日に住宅建設希望者懇談会、30日に作業員懇談会と続いた。しかし、懇談会で不満・要求を出し合うのみで終わらせる事後処理のまずさに批判が生まれ、後の計画を中止した。この一連の懇談会から、組合強化のためには、「組合活動以前の問題」、例えば人と人との関係をどうするか、が重要であるという一つの総括を引き出している。

統一の学内版「全学平和委員会」

　この他では、原水禁世界大会への代表派遣のための募金活動・日本母親大会の募金活動、軍事基地反対闘争の仙台版として、青葉山接収反対闘争に加わり、現地調査などに参加している。この平和擁護の課題の取組みのなかで、全学平和委員会の結成に参加した。1月19日の原子戦争準備に反対するウィーン・アピールについて、平和擁護日本委員会の県委員会から申入れがあり、ウィーン･アピール運動を開始した。この運動のための学内センター結成の必要性が論じられ、「平和を願い原子力戦争に反対する人々を全て結集しようとするもの」として、7月6日に、学生諸団体を中心に、職組・民科が加わって全学平和委員会を結成したのである。大衆運動分野での、思想・信条のちがいをのり越えた統一の気運の学内版と言える。

県労評へ加盟

　対外的関係では、県労評加盟問題があった。県官公労傘下組合の多くが県労評に加盟したため、官公労を解体して県労評官公労部会とし、組織を整備すると共に県下労組の統一をはかりたいという方針が、官公労定期大会に出されることになり、連合会も態度を迫られた。6月16日に臨時総会を開き討論し、官公労の活動を現状以下に落さず、現官公労傘下組合の全部が労評に加入すること、負担金が増額されないこと、以下の点を条件として県労評に加盟することを決定した（7月の官公労大会では、二単組が態度未決定のため決定は1年延期となったが、12月に臨時大会を開き加盟を決定した。連合会は、4月に加盟が実現）。

V　「もう一歩も退くことができない」

第13回定期総会

　権利擁護と組織強化の模索のうちに、第13回定期総会を10月4日にむかえた。日本の政治は、平和憲法下での自立は問題にされず戦争勢力への追従と軍国主義の復活が企画され、軍事予算捻出のために労働者の既得権を奪おうとしており、「われわれはもう一歩も退くことができない立場に追いこまれている」と把握している。

組織対策委員会の結成

　「一人一要求運動」などの日常闘争の体験は、組織強化の必要性をさらに痛感させ、とくに情宣活動の強化が強調され、同時に、組織強化を独自の課題とするため、役員経験者による組織対策委員会の結成が提案された。そして、ほぼ12期と同様の闘争の目標をかかげた。

年末手当0.25ヶ月分増額

　こうして13期闘争に入った。現行一律2,000円アップの新賃金要求などをかかげて秋季闘争に取組んだが、あまり盛り上がりもなく、成果もあがらずに終った。そして、年末手当闘争に移った。2ヶ月を要求して、一般市民へのビラ配布・ハガキ電報闘争、さらには、年末闘争のための中央常駐員に安孫子氏を2週間派遣するなどの活動を展開した。これらの結果、0.25ヶ月分の増額を獲得し、この0.25ヶ月を1956年度から恒常化し、予算にくませることに成功した（この結果、夏季手当0.75、年末手当1.5ヶ月となった）。

高まる統一行動の気運

　前年の保守合同により国会で圧倒的多数をえた鳩山内閣は、1956（昭和31）年に入ると一連の反動法案を国会に提出した。憲法改悪を企図した憲法調査法案、小選挙区法案、都道府県教育委員を任命制に切り換える新教育委員会法案、教科書国定化をねらう教科書法案、健康保険法改正案などである。党利党略を露骨に示した選挙区割りの小選挙区法案が、世論の厳しい指弾にあうなど、激しい反対運動がまきおこった。ことに、前年来の労働運動、大衆運動での統一の気運の強まりは、反動立法反対の統一行動を実現させた。総評も8月の第7回大会で、従来の方針を修正し、問題によっては共産党とも共闘することを決定し、統一行動の気運はさらに一層強まった。

軍事基地反対闘争

　一方、6月には沖縄を原子戦争の永久基地化することをねらったプライス勧告が発表され、本土でも砂川第二次強制測量が開始されるなど、日本の軍事基地化がすすめられた。これにたいしても、沖縄、本土の労働者、農民、学生の激しい反対闘争が展開された。

一律2,000円アップで春闘

　1956年に入ると連合会は、官公労の一律2,000円アップをかかげて春闘に入った。同時に各職種の懇談会の計画、教務職員の枠拡大、超勤費など諸手当の公平配分、職員住宅の確保などもかかげた。

盛会な図書職員懇談会

　2月に住宅問題懇談会を開いたが、単組の強い要望にもかかわらず「赤面するほど」しか集まらなかった。一方、職種別懇談会の一環である図書職員懇談会が2月25日に開かれ、なかなか盛会であった。司書の資格が、職務内容、待遇に政党に反映していない点が議論の中心となっている。

第14回定期総会

　3月28日、第14回定期総会を迎えた。工学部から希望退職者16人のうち一人も組合に相談にこなかったことが出され、金研、農研からも「組合員が組合を頼りにしていない」ことが出され、住宅問題懇談会の失敗も加わり、活動･組織問題を大きく取りあげた。

執行委員会の出席改善

　「組合運動の問題点が多種多様に亘り、問題を解決するのは非常にむずかしい」ので、一期ごとに課題を絞って重点的に取組む方式が提起された。また同時に、執行委員会の強化が叫ばれ、執行委員の出席率を向上させること、三役は必ず出席すること、時間の厳守などの初歩的事項を確認しあっている。

危機に瀕す教職員の生活

　一連の反動政策と「遺憾ながら旧態を留めるところが多い」学内情勢下で、研究室職員の身分不安定、事務職員の弱い立場、事務職員と教室職員との対立など、「敗戦の結果得られた民主主義の下に於ける我々の生活は正に危機に瀕し」ていると情勢を捉えた。そして、生活を守る課題として、一律2,000円アップと減税、公務員法改悪反対、諸手当の公平支給等、職場を守る課題として、研究旅費、講座費増額、大教雇員（現在の教務職員）の身分改善等、平和を守る課題として、憲法改悪、反動文教政策反対等を闘争目標に設定した。

年度区分で規約改正

　なお、年度期区分を4～9月（前期）、10～3月（後期）から、2～7月、8～1月へ規約改正した。理由は、従来の区分では交代期（総会）が、学会の集中する時期と年度末あたり都合の悪い点である。

VI　職階制給与体系への動き（56秋期年末闘争）

問題の人事院勧告

　第14期の活動の中心は、夏季闘争であった。5月末から夏期手当増額、一律2,000円アップ要求に取組み、文書陳情運動、官公労の人事院仙台地方事務所長団交への参加などを行った。7月16日に人事院は勧告を出したが、これはのちに行(一)、行(二)不当格付反対の契機となるものである。

8種の俸給表

　俸給表を従来の5種から8種（研究・医療、技能労務職の新設）へ、15級の職務の級を7等級に改め、しかも職階別に等級を決定し、号俸をのばして頭打ち解消をはかるが、昇格はなくなって昇給のみとみるなど、職階制の強行を意図している。

その本質は目下検討中

　新俸給表切換えのさいの一号俸アップ、3月末の0.15ヶ月の特別手当支給によって、官公労要求に部分的に応じるかのようにみせて職階制給与体系の実現をねらったものである。勧告内容の複雑さのため、連合会はその本質を充分に捉えきれず、7月段階では「或る程度有利な人事院勧告を出させることに成功したが問題を多く含んでおり検討中」とするのみであった。

武谷三男を囲む会

　平和を守る課題として、教育二法反対運動では、「教育を守る県民大会」に参加協力し、軍事基地強化反対では、7月7日の「沖縄問題解決促進県民大会」にも参加協力し、軍事研究問題では、6月18日に「武谷三男教授を囲む最近の原子力問題を語る会」を開き、原子力研究に関する学術会議三原則（自由・民主・自主）の啓蒙に努めた。憲法改悪策動反対では、参院選で改悪反対の小笠原二三夫（全）、高橋富士夫（地）応援のため、ポスター掲示、ハガキ送等の運動を行った。

大部分の力を学内闘争へ

　「余理に全時代的矛盾をかかえているので、まず大部分の力を学内闘争に向けねばならぬ」として、勤評、祭日給、危険手当、被服、超勤費、定員費、住宅問題等に取組んだ。この中で、新坂通に女子職員寮（7室）の完成をみた。そして組織強化のため、5月に組織問題懇談会、6月に図書職員、技術職員、川渡職員の各職種別懇談会を開いている。

県内教育4者共闘

　対外的には、4月には県労評加盟が承認され、また、反動教育公正に対決するため、宮教組、高教組、育英高教組と4者共闘会議を結成し、毎月第1土曜日に会合をもち、県下の教育関係諸組織の統一行動を強めた。

第15回定期総会

　規約改正の結果、2月27日に第15回定期総会を開いた。前総会から短時日であり、情勢、方針に大差はない。その中で、「身分の確保、民主的権利の擁護及び学内民主化の闘い」、「軍事研究に反対し、学術の国際交流を発展させ、平和を守る運動を推進する」という闘争目標が具体的にかかげられている点に特徴がある。

職種別権利の重視

　前者では、定員増と臨時職員の定員化、身分の確保、教務・技術系の身分向上、助手の年限規定反対、事務系の定年制反対、勤評廃止、女子の差別待遇反対、学長・学部長選挙権拡大と教授会構成範囲の拡大、人事の民主化等がある。後者では、軍事研究反対とともに、学術会議三原則擁護、学術会議会員改選の取組み、原水爆の製造・実験・使用の禁止、原子力の国際管理と平和利用等があげられた。

7月勧告の法制化の動き

　新教育委員会法案以外の反動立法に失敗して国民との矛盾を深めた鳩山内閣は、日ソ共同宣言の調印、国連加盟の実現などの外交上の一定の成果をあげて退陣し、石橋内閣が成立した。この政権交代の中で、秋季年末闘争が展開された。

　全国的課題では、人事院勧告、事務官・技官の定数拡大問題、年末手当があった。人事院は11月に給与法改正の意見書を発表し、7月勧告の法制化を進めた。

連合会、反対を表明

　１号俸アップと頭打ち一部改善のみせかけで職階制給与体系の強化をねらっていること、技能労務職新設は、それを国家公務員からの除外を意図した公務員制度調査会の公務員制度改悪策動に連なること、40～50歳で完全に頭打ちとなる点は、定年制と関連していること、1号俸アップでは民間との給与格差が解消しないこと等を理由に、連合会は反対を表明した。そして、現行俸給表の頭打ちと中だるみ解消、一律2,000円アップを要求した。

任官定員増要求

　また、他省の事務職員任官率が7割であるのに文部省は2割にすぎないことから、事務、技官の任官者定員の増加要求が強まり、中央の文部省交渉に呼応した学・局長交渉が行われ、来年度よりの増加を約束させた。この他では、金研危険手当要求の提出、年末年始宿日直手当の実現がある。学内定年制内規制定の動きには、当面制定しないこと、内規は法的根拠をもたないことを交渉で回答させ、また、勤評強化には、給与不合理是正にのみ使用という従来の線を確認させるなどの成果を上げた。

傭人制度撤廃・臨時職員の地位向上

　さらに、雇員、傭人の差別撤廃、一本化（傭人制度撤廃）運動が中央、学内交渉で進められ、文部省に撤廃を言明させた。また、臨時職員の地位向上のため、10月に臨時職員懇談会を開き、9月には、東北地区国立大学一般職員懇談会も開いている。

創立50周年記念寄付天下り反対闘争

　政治課題の取組みは概して弱かったが、砂川、沖縄基地拡張反対カンパに5,000円を現地に送り、9月の県知事選では、カンパ等で革新系候補の当選に貢献している。

　学内特殊の問題として、東北大学創立50周年記念事業寄付金天下り反対の闘いがある。57年が創立50周年（1907年創立）に当り、記念事業のための寄付が、月給の約1割をメドに半ば強制的に全教職員に割当てられようとした。50周年の祝賀自体には賛成だが、寄付金強制には反対を表明し、強制ではないことを確認させた。

　年末闘争は、給与改訂問題に集中していたため、中央・地方ともに立ち遅れ、0.15ヶ月の上積みで終り、連合会も、闘争委員会結成の計画も頓挫するなど、ほとんど取組みもなく終った。

第二編 模索（1950年～56年）（昭和25年～昭和31年）

第二編　模索（1950年～56年）（昭和25年～昭和31年）