第四編　岐路（1962年～66年）（昭和36年～昭和41年）

　空前の安保闘争に教訓を得た支配層は、みせかけの「米ソ平和共存」と池田内閣の「高度経済成長政策」を背景に、新たな思想・文化攻勢・組織分断攻撃をすすめた。この「ケネディ＝ライシャワー路線」と呼ばれた大がかりな「アメとムチの政策」は一定程度功を奏し、安保闘争に萌芽をみた全国民的団結はクサビをうちこまれた。日本の民主、労働運動は一部に労使協調路線が顕在化するなど、複雑で困難な状況を新に迎え、日本の将来にかあくぁる傷痕を残した一つの分岐点ともなった。

　この時期、東北大学においても、同様に、高度成長政策を背景とした。大学再編成、官僚統制と洗脳の嵐が大きく表面化した。理工系偏重の「学園整備計画」や、もの言わぬ教師づくりをめざす「宮城学芸大問題」などが典型であった。しかし、こうした攻撃と事態の発生は、逆に過去の経験と蓄積が大きく発揚され、「東北大学二つの道の抗争」における正しい方向での解決と学内民主勢力の団結と統一の強化に向かって歩を進める結果となった。

　東北大学にとっては、日本全体の歩みと異なった意味において、重大な「岐路」の時期であった。

第十一章　「大管法」をめぐる闘い

I　大学管理制度改悪の動き（1962年）

高度成長と思想・文化攻勢

　池田内閣は、アジアにおけるアメリカの冷戦政策に積極的に加担し、自衛隊強化、沖縄基地強化、日韓会談推進など、安保体制の下でのアメリカに従属した軍国主義復活を進め、一方で大独占のための高度経済成長政策を遂行した。また、安保体制下の思想・文化攻勢を強め、「ケネディ＝ライシャワー路線」と呼ばれる米帝国主義のイデオロギー攻勢、学力テスト、首相の「人づくり政策」と「大学管理制度改正」の強調、中教審の「大学教育の改善について」など、教育の国家統制の強化をねらう反動文教政策の推進が特徴的であった。しかし、高度成長政策は早くも破綻を示し、「所得倍増政策」に期待を寄せた国民の夢は、物価の急上昇によって破られて行った。

「自信をもって闘おう」

　安保闘争後、日本の民主的運動は、複雑で困難な状況にあったが、連合会運動も例外ではなかった。「一体本当に勝てるのか」という疑問から、課題と、闘争に確信を持ちえず、「闘いに対する確信」、「自身をもって闘おう」が再三繰返されねばならない停滞状況にあった。高度経済成長に必要な忠実な技術者の養成、軍国主義的教育の復活と軍事研究促進をねらう大学管理制度の改変に対する闘いが重要課題として登場してきた。

活発化する大管制度の動き

　大学管理制度をめぐっては、中教審、国立大学協会、学術会議の三機関の動きが活発となった。国大協は前年11月に「大学自治の確立のためには、人事に関する自治の円滑な運営」が必要だとして、教授会権限の縮小と学長、評議会の権限強化を骨子とする中間報告を発表した。池田首相は5月に、参院選めあての遊説第一声で、大学教育が「革命の手段」に使われているので大学制度を再検討すべきだと暴言を吐き、また学長任命についての政府の発言の強化と学長権限の強化、教授会権限の制限と諮問機関化等を骨子とした答申が中教審から10月に提出されるに至る。

池田発言を重視

　国大協の中間報告に対しては、「大学の自治の担い手が学部教授会にあることを根本的に否定した考え方」だとする教育大文学部教授会の批判が、全国的な反響を呼び、連合会でも、中間報告をニュースで資料として渡し、助手会に申入れて討論の場を設けた。池田発言に対しては、日教組が重視して抗議行動を指令し、6月には全国各大学の教官有志が「大学自治を守る会」を結成し、国大協も暗に池田発言を批判した。

中教審答申を延期に

　連合会は、5月29日に、池田発言即時撤回と、大学管理制度改悪反対の抗議電報を発し、さらに、政府案に反対し、教授会を大学自治の基本であるとした学術会議勧告案賛成の態度を表明し、「大学管理制度の改善について」のパンフを発行して学内啓蒙に努力した。このような反対運動の中で6月末予定の中教審答申を延期に追いこんだ。

教研レポート「大学の機能と実態」

　大学管理制度改悪の動きのなかで、2月に日教組教研集会が福井市で開かれ、大学教育分科会は中教審諮問をめぐる討論が行われた。連合会は、(1)大学の目的と性格、(2)教官及び教務職員の現状、(3)技術系職員の現状、(4)大学の機能と職制、の四つのテーマで、1月20日に学内教研を開き、この成果を「大学の機能と実態」と題したパンフにして、教研集会で報告した。

「ピンとこない春闘」

　生活と権利を守る闘いでは、まず、一律5000円賃上げ、公務員最低賃金12,000円などをかかげて春闘に入ったが、「春闘がピンときていない」状態で、盛り上がらなかった。しかし、警務員、作業員の勤務条件の改善に取組み、一部に任官者を得る成果を上げた。苦情処理問題では執行部的役割を果す法制小委員会を3月に設置した。文部省、人事院、学長と交渉を繰返したが、両省が責任のなすり合いに終始し、大幅な改善の見通しも立たず、また、工学部精密機械系提出者がやめていく事態もおこり、行きづまりをみせた。

非常勤職員の全員定員化

　常勤的非常勤職員の全員定員化要求で闘ってきたが、一月の次官会議で5000数名の定員化が決定し、各単組では、部局長交渉で現員の定員化を要求して一定の成果を得た。教務職員の待遇改善要求では、日教組大学部の取組みの活発化に呼応し3月に教務職員小委員会を設置して対処し、5月の第一回小委で、(1)単組に教務員会を組織すること、(2)大学部の「教務職員の身分給与に関する統一要求書」の討議、を決定して取組んだ。

市長選・参院選へのとりくみ

　3月に、公安調査庁の一調査官が、本学学生に情報を強要した事件が農学部で発覚したため、単組ごとに調査し、さらに4月には全学四者連絡会議を開いて討議した。結局、農学部の五者合同会議の学校当局を通して運動するということで、声明を出して抗議した。公務員の厳しい政治活動の禁止の中で、市長選、参院選に取組んだ。市長選では、1月に、生協委員会、全学院協代表と大学関係者の要求を討議し、1月27日に候補者に五項目の公開質問状を提出し、回答を速報で配布したこと、1月15日付河北新報が連合会は前回松川支持を掲げたという「一騎打ち物語」なる記事を載せたので、県労評、河北労組の応援を得て、講義し訂正させたこと、等の活動を通し、革新候補の当選に貢献した。参院選では、全国区小林、岩間、地方区戸田、阿部各候補の推薦を5月の委員会で決定した。

婦人部活動の可能性の検討

　平和擁護の課題では、アメリカの核実験再開に対する抗議行動を展開し、5月9日に来仙したライシャワー米大使に、核実験即時停止、沖縄返還要求の2000名署名を付して抗議文を手交した。また、第8回世界青年学生平和友好祭へのカンパ、モスクワで開かれた「全般的軍縮と平和のための世界大会」へのカンパ活動を実施した。

　組織強化の課題では、1100人を数える婦人職員の組織化に取組み、昨年のブロック職懇を契機に、婦人問題の所在と婦人部活動の可能性の検討を目的に、前年11月にアンケートを実施し、2月には報告書を作成してその一歩を踏み出した。

病院組合の結成と医教・抗研職組の脱退

　附属病院では、前年末、看護婦中心に組合結成の動きがあり、連合会の強力な援助もあって、予想を大きく下回ったが、100名を結集し、6月23日に結成大会を開き、連合会加入も決定した。しかし、一方で医教、抗研職組がこの期間に連合会を脱退している。

太田書記の辞職

　また、13年余り「連合会の歴史と共に歩んで来た」太田書記が、5月6日付で辞職し、連合会では、退職金等のカンパを訴えた。なお、後任書記には、工学部専従書記の高橋良子が6月16日付で採用となった。

II　青葉山移転問題

第23回定期総会

　このような諸活動のなかで、7月10日に第23回定期総会を開いた。高度経済成長政策と「日本の軍事化」政策こそ、国民の生活を重苦しく圧迫する反動的攻勢の根源であり、これに対する闘いには、民主的権利擁護と結合させた全国民的反対運動を組織しなければならないと情勢を捉えた。

科学者の社会的責任の討議

　当面する闘争の基本としては、大学制度改悪に反対し、学内外の民主的諸組織との統一行動を組むこと、科学振興を旗印とした科学技術の国家統制に反対し、科学者の社会的責任についての充分な討議を行うこと、生活を守る闘いでは公務員共闘統一賃金要求の実現を最重点に置くこと等を指摘し、そして(1)組織面のかたより、(2)情宣の不足、(3)財政上の弱点、(4)共闘と統一行動の弱さ、(5)毎期役員が全部そろわない点以上五点を組織上の克服すべき課題として提起した。

青葉山移転問題の発生

　23期前半の活動の中心は、青葉山問題と大管法であった。学園整備計画は、施設設定審議会で秘密裡に討議され、前年暮には大綱が決し、大蔵省の承認も得、青葉山移転が具体化してきたが、米軍レーダー基地と開拓農民の問題が持ち上がった。大学側は、基地は代替地があれば撤去するという米軍回答を得て、八木山を代替地とするよう市当局に要請し、開拓農民は財務局の問題で関知しないという態度をとった。

米軍レーダー基地反対

　連合会は、現地調査などを行い、9.26執行委で、基地はベトナムなど国際緊張激化のなかで再開の動きがあり、安保反対の立場から青葉山、八木山ともに反対、大学が基地提供に積極的役割を果すことの責任追及、学園整備計画の公開要求を決定した。27日学長交渉で代替地要請と移転計画の撤回を要求し、また、28日には労評に申入れて、基地再開反対決議をあげ、29日には市長に、慎重に取扱うよう求めた要請書を手交した。

代替地要請を撤回

　連合会の動きに大学側は、学長交渉で代替地要請の承諾と、さきの要請書に基づいて市長が代替地提供を断ったため、要請書の撤回を求めた。連合会は、代替地要請を評議会にかけなかった点を問題としたが、部局長会議がその行動を承認したため、委員長会議の結論に従い、要請撤回を決定し、市長と会見して正式に撤回した。この問題の態度決定のため、10月3、4日に委員会を開催したが統一見解を得られず、整備計画執行の混乱の全責任は大学当局にあり、計画の全面的公開を求める声明文発表にとどまった。

臨時総会で「計画反対」を決定

　このため、12日に臨時総会を開き、研究条件改善のための移転そのものには賛成だが、独占本位の文教、科学技術政策にそったこの移転計画には反対という基本態度を決定した。13日の青葉山現地決起大会、21日の三沢基地撤去東北集会への参加などの活動で、10月末に国見台への移転で青葉山基地撤去に成功した。また、開拓者の土地取上げについては、開拓者の権利と生活を守り、話合いで円満解決のため運動をした。

「大管制度反対学内連絡会議」

　10月15日の中教審中間報告後、反対運動は大きく盛り上がるが、学内では9月に七団体（連合会、助手会、全院協、全学会議、生協労組、教環、川内自治会）で「大学管理制度反対学内連絡会議」を結成し、また、10月末日には、宮教組、高教組と宮城県教職員組合協議会を結成し、高校全入問題と共に大管法反対を取り上げ、学内外の共闘組織の結成を進めて運動を展開した。9月の国大教総会に向けた学長交渉、11.17大管法反対学内集会、12.14大管法学内討論集会、12月17日の法経教官との話合い、11月の街頭署名などの活動がある。

「類例をみない不当な勧告」

　この他では、8月の人事院勧告に対し、「類例を見ない不当な勧告」として反対運動に取組んだこと、ソ連の核実験をめぐって混乱した第8回原水禁大会関係では、核実験停止協定の無条件締結、全般的軍縮協定締結のために団結を訴える大会参加記をニュースにし、啓蒙を行った。

図書館組合の結成

　組織面の動きでは、11月24日に図書館組合が結成されたこと（職員42名中、組合員25名、登録人員10名）、大学部の中執1名削減等の問題に関連し、大学部組織の改編について検討する組織委員会が12月に設置されたことなどがあった。

III　平和と民主教育を守るために

強まる反動化

　1963（昭和38）年に入ると、日本を米の反共軍事体制、核戦略体系の中に強く包摂しようとする動きが更に強まり、日韓会議の強行、原潜寄港、F105D水爆搭載機の配備、三矢研究の発覚など、一連の問題が発生した。このなかで、労働者に対する合理化攻勢、民主的権利の剥奪の動き、大管法をはじめとする一連の反動的文教政策、研究と研究者の官僚統制と権力支配の策動など、大学の自治、教育研究の自由に対する攻撃も強まった。このような情勢下で連合会は、平和と民主的教育研究擁護の課題を中心に闘争しなければならなかった。

「国立大学運営法」を断念

　昨年の中教審答申に基づいて政府は、「国立大学運営法案」を作成したが、学術会議をはじめ、反対の声は全国の大学、教育界に高まった。連合会は、国民会議の提起する全国統一行動と共に、連絡会議を中心に、平和委員会、新婦人の会、民主青年同盟等に呼びかけて学内共闘の幅の拡大をはかり、法案上程を断念させる力となった。

「認証官法案」の上程

　しかし、旧七帝大学長を内閣が任命し、天皇が認証する「認証官法案」が上程され、審議未了まで反対運動が組まれた。この政府の攻撃と、非民主的で、学問の不均衡発展をもたらす学園整備計画に直面し、大学の自治とは何か、民主的な教育研究とは何かという問題が深刻化し、討議と実践が模索され、深められていった。

「民主教育確立」の基本方針

　1月末の委員会で「大学の自治を守り、民主教育を確立する闘いについて」の一定の総括と方針が提起され、(1)総会の公開など、国大教の民主的運営の要求、(2)現在の大学の管理運営を、学問の自由と大学自治との関連から理論的に検討すること、(3)管理運営の中に、国家権力の直接的な支配と干渉を受ける事務系職員がいることは大学の自治と矛盾するので、事務系職員への一般公務員法適用の是非を検討すること、(4)大管法闘争と職場民主化闘争を結合させること、が指摘された。

教授会自治論の打破

　(1)の点では、2月に国大教が「大学運営協議会」を設置し、「自主規制」路線を打ち出したことに抗議し、学長交渉で追及した。(2)の点では、中教審答申と大管法を主要問題として1月25～28日に鹿児島で開かれた教研集会で、「大学の管理運営における自主性について」と報告し、教授会自治論を打破し、管理運営の民主化の実現を農研を具定例として主張した。また、この観点から、6月の学長選を重視し、「民主的な人を民主的な方法で」をスローガンにかかげて取組んだ。(3)の点では、大学病院の「封建的な考えと体制」を大きく取上げた。付属看護学校卒業予定者のうち、自治会の中心となった2名が不採用となった事件を発端に、「経済闘争より人権闘争の観が深い」勤務条件改善の闘いを展開した。これらと関連し、現職自衛官の大学院在学が軍事研究との関連で問題にされ、調査と対策など、反対運動が検討された。

米原潜寄港反対闘争

　1月に米政府から原潜寄港の申入れがあり、政府が原則的に承認する決定を下したことに対し、米の核戦略体系への包摂に反対し、平和を擁護する運動が急速に高まった。5月11日委員会で理・農学部提案の寄港反対声明を採択し、15日には、10団体（金・農研、理学部の平和委員会、全院協、全学会議、川内自治会、職組、生協理事会、生協労組、民青）で「原子力潜水艦反対連絡会議」を結成して取組みを強め、6月1日には東北大学平和集会を370名集めて開催し、7月3日にも講演会を開いた。これと同時に、6月16日の三沢平和集会に14名を派遣し、数次にわたる日韓会議粉砕統一行動に参加するなどの活動を繰りひろげた。

持続的学内共闘組織（連絡会議）の結成

　このような、民主的教育研究擁護、平和擁護の課題での従来から課題別の学内共闘の積み重ねは、持続的学内共闘組織を創出し、6月27日に「平和と民主教育を守る連絡会議」の結成をみた。

農民追出しの暴挙

　賃金闘争では、前年末臨時国会で給与法が廃案となったことに対し、給与法の不当性を認めながらも生活苦から成立を期待する矛盾した意識から、民主勢力の国会活動に批判が出た。これに対し、法案内容の情宣にとどまり、スト権をもたない公務員が要求貫徹のためにいかに闘うべきかについての職場討議、指導を怠った点を自己批判し、職場討議の組織と一般産業労働者との連帯を提起した。

　青葉山問題では、財務局の農民切り崩し工作が進展しない状況で、前年度予算を流して焦った大学側は、4月に未開墾の林をブルドーザーで整地にかかるという挙に出た。この行動には各方面から非難の声が上り、連合会も学長交渉で、話合いのつくまで工事中止を申入れ、承諾させた。

大学部の組織再編・強化をめぐって

　日教組に機構整備による中執削減のため、大学部の組織改編、強化が論議されたが、連合会は東北大（ブロック）案を提出して指導的役割を演じた。教育労働者の統一と団結を守り、県教組の闘いを基礎に全国的闘いを発展させようとする現在の組織方針を支持する観点から大学部の活動を支え、強化するため全国大学教職員組合協議会を設立し、1人6円の負担金で専従役員、書記をおくという案であった。結局は、大学部に書記を配置し、執行部増員、1人5円の組織強化費などの強化対策で、一応の決着が大学部総会でついた。

　この他では、4月の一斉地方選では社共両党候補を推薦して当選に寄与し、保育所、独身寮建設問題、共済掛金値上げ反対などで事務局と再三交渉したことなどがあった。

第十二章　「教育養成課程分離」反対闘争

I　強まる大学への攻撃と分断

第24回定期総会

　1963年7月6日に開かれた第24回定期総会における国内情勢のとらえ方では、前総会と差異はないが、大学をめぐる情勢は認証官学長法案、国大教自主規制路線、「人づくり」政策に直結した教員養成制度の改悪、研究と研究者の統制強化など、反動的文教政策の一環としての政府による大学への攻撃は強まっていると捉えている。そして、闘争の基本的態度として、経済闘争を全労働者との共闘で進め、同時に安保体制打破、憲法擁護、平和と独立、民衆主義擁護の闘いと結合させ、(1)学内闘争の重視、(2)公務員共闘、日教組等との共同闘争の強化をかかげている。

「勤評カンパ処理」をめぐって

　また、目標達成の上で執行部体制の強化が必要だとして、連合会と単組の協力関係強化のため単組書記長会議の定期的会合を打ち出した。なお、この総会で「日教組闘争基金（勤評カンパ）処理」問題がでた。この基金は、連合会、宮教組が負債総額すら曖昧にして現在に至ったが、57年度基金の連合会の負債は9万8千余円で、40年までに分納することを決定し、4月9日に「借用書」を宮教組と取り交わしたこと、58年度闘争基金の負債は15万円だが、この返済は、57年度分の返済後に考慮すること等が提案され、承認された。こうして物価上昇下での賃金闘争、反動文教政策と青葉山移転問題との闘争を中心とした、第24期の運動にはいった。

日経連の賃金ストップ政策に対決

　「物価値上げを助長させる如き、公務員の賃上げは望ましくない」という日経連の賃金ストップ政策に対し、「要求をどう闘いとるか」の討論の組織化、スト権等の権利闘争との結合等を目指して闘った。7月に賃金専門委を組織して体制をとり、8月の人事院勧告前後には、国公共闘の統一行動に参加し、10月には、階層別生活実態調査を実施し、11月には総選挙と結びつけて社共両党を支持して闘い、さらに、12月の特別国会には、上京団を派遣した。しかし、大衆的に討議し、職場から闘いを前進させるという見地からは闘いは不充分に終わった。この他の生活と権利を守る闘いでは、強制的退職勧奨に反対し、退職勧奨はすべて組合を通して行うという金研方式で闘うことを決定し、成果を上げたこと、独身寮など住宅問題への取組み、学内、東北ブロック職懇の開催などがあった。

大学、「移転整備推進本部」を設置

　青葉山問題では、9月に大学側は、青葉山川内地区移転整備推進本部を設置して体制を強化し、翌年8月に機械三学科の移転を決定した。これに対し、土地問題未解決のままでの移転反対を表明して警告し、また、計画の秘密性に対しても、民主、自主、公開の三原則を破るとして白紙還元を要求した。また、認証官学長問題では、選挙前には反対を唱えた石津学長が、賛成を表明したことに対し、大学の差別と、大学管理への権力介入であるとして反対を表明し、学長交渉で抗議した。

原水禁運動の統一と団結を

　平和と独立民主主義を守る課題の闘いでは、平民連に事務局長と議長を送り、原水禁大会、能研テスト、寮費負担区分、教員不採用問題、移転、現職自衛官入学問題等で学内統一戦線を積み重ね、その重要なかなめとしての責任を果した。「いかなる国の･･･」で分裂した第９回原水禁大会では、「意見の相違をこえて統一と団結」を訴える報告集会を全部局で開いた。この他では、９月の最高裁判決にむけて、８月の松川無罪確定要求大行進には、岩沼→原町市の行進に、９月の街頭署名に参加し、また、9.1原水阻止横須賀集会への参加、三池、国鉄鶴見事故での抗議文送付などがある。

書記長会議の定期化

　組織面では、総会で提起された書記長会議を重視し、月末の執行委を書記長会議賭して定期開催し、活動上の中核として位置づけた。また、青年婦人部結成の動きなど職場の一番下積みにいる青年・婦人の活動が活発化しはじめた点が一つの特徴となった。

II「4.17スト」をめぐって

複雑化する統一戦線運動

　1964年（昭和39年）に入ると米日支配層の懐柔と弾圧による民主勢力の分断工作の強化、高度経済成長政策で労働者の生活改善の幻想をばらまき、親米、協調主義路線の育成は、労働運動、統一戦線運動にいっそう複雑な状況をもたらした。原水禁運動の分裂を口実に、安保反対国民会議など中央、地方の共闘は停止状態となり、また、反共、親米路線をかかげた同盟会議は、全日本労働総同盟を結成した。

「2つの道」をめぐる対立の激化

　しかし、極度の「合理化」と労働強化、新安保体制下での軍国主義復活の進行は、日和見主義的、セクト主義的路線に反対し、階級的路線を求める労働者の闘争意欲をも昂めた。この情勢下で、4.1スト問題がおこったのである。また、大学に対する攻撃は激しくなり、反動文教政策に追随する独占資本に開かれた大学か、国民に開かれた学問研究の自主的民主的発展をめざす民主的大学かの「2つの道」をめぐる対立も激化し、東北大においては、宮学大、青葉山問題をめぐる闘いが本格化した。

激しい物価上昇に抗する春闘

　激しい物価上昇は、単なるスケジュール闘争に春闘を留めてはおかなくなった。3月には書記長会議を春闘委員会に切替え、闘いを、国民的課題と職場にねざした要求とが結合したものにすべく努力を払った。単組毎に職場の要求を掘り起こして一定の成果をあげ、これを基礎に全国民的統一要求である最賃制要求を重視し、学習討論、統一行動への参加などを経て、4.1ストを迎えた。

4.17スト「批判声明」

　公労協を中心とする4.17半日ストの提起に対し、(1)賃上げ闘争は全国民的課題と結合してはじめて解決し得るので、賃上げだけ取上げてストをするのは問題である。(2)安保のような全国民的支持がなく、弾圧に対して全く無防備な状態でのストは危険であり、冒険主義的戦術である、と二点にわたって批判し、4.13春闘委は再検討を求める声明を発表した。

スト中止総括をめぐって

　結局、ストは全国的に中止されたが、図書館職組から、下部討議を欠如して声明を出した手続上の問題と、ストをかかげている時に中止しろというのはおかしいので参加すべきだという声明反対の意見、農研からは、ストを盛上げるという姿勢が連合会にあったかどうかという意見が出された。結局、「これが正しかったかどうかは、職場の要求にのった闘いを進める中できまる」として、「いかにしたら大幅賃上げを獲得できるかを、職場で討議」を開始し、そして全民主勢力と団結し、政治的要求と職場に根ざした要求を結合させ、「職場から闘いを前進させなければだめなのだという芽が出て来始めていることは大きな成果」と、25回定期総会で総括している。

独身寮・向山保育所設置を実現

　この他では、超勤費の合理的配分を求めて超勤専門委の設置を決定したこと、工学部の青婦部が持続的に取組んできた独身寮（富沢・工専跡）設置を獲得したこと、新婦人の会等との共闘で向山に市営保育所の設置を実現したことなど、多面的な活動が一定の成果をみせている。

III　東北大学「二つの道」

「全面的大学再編成の動き」

　大学をめぐる動きでは、文部省が学科目の省令化を決定したことに対して、大学自治の干渉の橋頭堡だとして抗議し、国立学校特別会計法に対しては、大管法の財政版だとして反対運動を展開した。学内では、川内東分校の教養部統合、学校教育科が教員養成課程となり、教育学部川内分校を設置するなど、教育学部の名目的改組があり、また農学部が青葉山へ移転した跡に宮城学芸大学を設置するという噂が流れとび、宮学大設置の動きがにわかに強まった。

電子ライナック問題

　工学部の移転では、電子ライナックの富沢設置の問題が生じた。この電子ライナックは学術会議総会が昭和37年に決定した、原子核物理学全体のひずみない発展を求めた将来計画と無関係であったことから、学内の原子核若手研究者さらに全国物理学者の強い反対がおこり、連合会もその建設運営を将来計画の一環に位置づけなおして根本的に改革し、自主・公開・民主の三原則を守るべきであると要求し、これが満たされねば建設を支持できないと学長交渉などで抗議した。

第25回定期総会

　7月11日（土）に、第25回定期総会が開かれた。勤労大衆を犠牲にして対米従属下の軍国主義、帝国主義復活の路線を歩む池田内閣の下で、日本の独立と平和は脅かされ、生活と権利の侵害は著しくなる情勢下で、大学に向けては、特別会計法、講座学科目省令化、教員養成制度改悪の企図など、「国づくり人づくり」政策にのった全面的な大学の再編成をめざし、大学の自治、学問の自由に対する攻撃を強化していると情勢を指摘した。

組合の階級的民主的強化を

　この結果、学内でも、移転計画、労働強化、統制強化の攻撃などの問題が渦まき、困難な条件であるとともに、たたかわざるを得ない条件ともなり、日常要求を基礎にした創意性ある闘いによる各単組の前進、青年婦人部結成の気運、労働運動、移転問題での討論の深化がみられたとした。そして、職場での要求を基礎にして創意性ある闘いをくみ、同時に、他の職場、階層の要求をも支持し、労働者としての連帯感、国民的立場に立つ運動をすすめるなかで闘いを全体として発展させ、要求を実現させ、組合を階級的民主的組合として強化して行く必要性を強調した。そして、専従役員と連合会の単一化の必要性を再度指摘している。

全国的突破的としての宮学大問題

　反動勢力が米日独占に役立つ大学づくりのため、大学の合理化と再編成を全国の大学に押しつけ、大学を意のままに支配・統制しようとする攻撃のなかから、東北大学においては、それが宮学大問題、学園整備計画となって具体化してきた。

　宮学大問題は、昭和37年の教養審答申「教員養成制度の改善について」に色濃く現れた、教員養成制度の改悪の動きを背景として、時の文部大臣が地元出身の愛知揆一であったことなどから、全国的な突破口として攻撃の鉾先がむけられたことから生じた。8月に杉江大学学術局長が来仙して、40年度設置を一方的に発表したが、予算化不可能という状況下で一時宙に浮いた。しかし、11月に入り、文部省は40年度設置を再表明し、事務局長も、「敷地として農学部跡を使える」などと一方的内諾を文部省に与え、事態は急変した。

統一戦線強化の呼びかけ

　連合会は、指定職俸給表、新3等級の新設など、職階制強化を特徴とした人事院勧告に対する討論の組織、病院付添婦の不当首切り反対、労組結成（連合会へも加盟）の支援など、生活と権利を守る闘いをすすめるとともに、10月には、原潜寄港反対を中心に、平民連主催の全学集会を開いた。そこで、学内外の統一戦線の強化を呼びかけ、急変する事態に対処する態勢を整えようとしていた。

グランドホテルで分離決定

　教育学部では、片平部会はいち早く分離賛成を決定し、川内部会は反対を決めて対立し、12月1日の定例教授会でも結論を見出せなかった。にもかかわらず、皇学部長が、学長への学部としての回答書の末尾に付した不当な「よろしく御処理願います」の一文を理由に、学長は分離問題を制度審議会に付託してしまった。制度審議会は学内外のわきあがる反対の声を押し切って進められ、会議場を転々と変えて逃げまわる醜態を演じながら、ついに、12月15日に、警官隊に守られて、グランドホテルで、採決という方法で教員養成課程分離を決定するという、異例につぐ異例を繰返して強行決定した。

東北大の歴史に重大な汚点

　学長、事務局長らは、文部省の内政干渉、自治侵害に忠実な姿勢をとり、教員養成に直接携わる当該学部の教授会が反対しているにもかかわらずこれを無視するという、大学の自治の原則を踏みにじり、東北大学の歴史に大きな汚点を残したのである。連合会は、この自治の破壊に対し、連絡会議の集会を組織し、独自の交渉を行うなどして、強力な反対の態度を表明して闘った法経教官有志など、各部局教官も「大学の自治を守れ」と次々に「声明」を発し、たちあがりを示した。このような経緯で、官学大の40年度設置は実施されることになったが、東北大学の「二つの道」をめぐる対立はいっそう激化し、熾烈なものとなり、翌年、全学を揺るがし、全階層をまきこむ大規模にして歴史的な闘いであった「40年9月闘争」へと発展して行った。

第十三章　東北大学（昭和）40年問題

I　大学を揺るがした農学部問題

重大問題を内包する学園整備計画

　東北大学の学園整備計画は、政府の高度経済成長政策にもとづく科学技術振興策に即した理工系拡充計画に立脚するものであった。工学部は11学科から25学科への拡充構想をたて、この敷地獲得のため、昭和36年に、青葉山・川内地区へ医学部を除く全学部と教養部を移し、片平地区には附置研究所を集合させる案（「事務局素案」）を作成した。この案には、第一に、学長・事務局長なほんの一握りの人間が一方的に作成し、教授会等をはじめとしてなんら民主的討議がなされていなかったこと、第二に、理工系に偏重した計画で、学術会議の勧告にも示された「科学の均衡のとれた発展」をはかった計画ではなかったこと、第三に、移転計画が文部省規準で実施される限り、研究・教育条件は不十分であり、労働強化が予測され、生協排除も露骨に示されたこと、第四に、青葉山開拓農民の生活派会をもたらすものであったこと、等々の幾多の問題を内包していた。

農学部移転問題

　前年末になりふりかまわぬ強引な方法で宮学大設置を決定したのにつづき、1965年の年明け早々より、宮学大敷地問題の解決、整備計画推進のために、当局側は、農学部の久保田山移転を強行しようとした。この農学部問題は、大学を大きく揺るがす大問題へと発展して行った。

　農学部跡に宮学大を設置することは、文部省との間に既に暗黙の了解が成立し、しかも、仮設置の富沢地区には、建設中の電子ライナックの放射能問題もあり、その結果、学長・事務局長は、農学部の移転を推進本部は早急の結論を得ることをめざしたが、農学部教授会は、1月には「久保田山は不適当」、3月には、「早期移転はできない」という決定を行った。同教授会が移転先の土壌を問題としたので、土壌調査などが実施され、また、予算等のおどしが不当にも加えられたが、6月に再度、「移転できない」という決定を下した。くわえて、教養部教授会も移転反対を表明するに至り、当局側の意図した移転強行は、重大な困難に直面した。この局面を打開するため、6月末に、推進本部のメンバーを3倍に増加し、各教授会の意向を反映できるよう下部討議に付すなど、一定の民主的改革を行って譲歩せざるを得なかった。

「青葉山移転シリーズ」

　このような経過の中で連合会は、宮学大問題での責任追及のための事務局長追放、連絡会議の提起した学長退陣要請、以上2件の署名活動を展開し、同時に、宮学大阻止のために、国会に向けた闘いとしての国会請願、県民に対する運動としての「宮城県民民主教育を守る共闘会議」結成への運動（3月末に結成）、福岡で開かれた教研集会での報告など、宮学大問題に主力を注いでいたが、農学部問題の急変とともに、農教授会、農職組支援の闘いと、「青葉山移転シリーズ」として新聞を発行するなどの情宣活動に努めた。そして、6月15日には、農学部で、「青葉山強制移転反対総決起集会」を農職組と共催し、農教授会が移転拒否の結論を出すうえで、強力な支援となった。

創意ある春闘を志向

　連合会は、これら大学の自治を守る闘いとならび、春闘をスケジュール闘争に終わらせないため、大きな力と創意を発揮して闘った。国公共闘のアンケートは、各単組が独自に創意あふれた集計を行い、職種、階層の相違による要求の額と内容が異なることが明確にされ、要求の複雑さと多様性が浮き彫りにされた。また、3月の春闘討論会でだされた大学独自の給与実態調査が実施され、わけても昇格の慣習規準が解明され、職階制と級別定教制の不合理さが誰の目にも明らかとなった。このような創意性を発揮した諸活動の中から、春闘を真に深化させる芽があらわれ、給与対策部が発足し、賃上げ獲得に本格的な取り組みを開始した。

安保県民会議の再開

　この他では、前年結成の病院付添婦の組合に対する切り崩しとの闘いが行われたが、一方で、行(二)問題が全国的に取組まれるなかで、連合会では独自の取り組みがなされなかった。

　また、春に安保県民会議の活動が再開されてこれに結集し、ベトナム侵略反対、日韓会談阻止、沖縄小笠原返還要求、憲法改悪阻止（「宮城県憲法改悪阻止各界連絡会議」に平民連として参加）などの課題で、学内外の民主的組織と共同した闘いを展開した。

第26回定期総会

　青葉山移転問題が重要な段階に直面した7月10日に、第26回定期総会が開かれた。中心議題は、当然の事ながら移転問題で、「青葉山移転問題に関する特別報告」が行われた。冒頭で移転計画反対の理由を三点（既述）指摘したのち、現在の情勢を分析し、闘いの反映として、推進本部が拡大改組されたこと、さらに、「これまでの大学の各機関が当局のいうことを殆ど討議もせずに承認するだけのもの」であったものが、推進本部の各委員が、積極的に発言し、しかも当局に批判的な意見を述べるようになったことなどに進歩がみられたが、追いつめられつつある大学当局は、宮学大の例からも、「窮鼠猫をかむの勢」で、何をするのかわからない可能性と危険性を十分認識する必要があると警戒を呼びかけた。

移転計画の白紙還元を

　そして、たたかいの方針として、(1)移転計画の完全白紙還元の要求、(2)学長・事務局長の責任追及、(3)勤務、研究、教育上の諸要求・不満を、全部局のすべての職員学生が提起し、かちとる闘いをまきおこすこと、(4)統一と団結を強めて前進すること、以上4点をかかげ、この闘いは、「強まっている官僚統制に反対し、大学の自治を守り発展させるたたかい」であり、重要な社会問題政治問題であるとその性格を規定し、さらに、大学の自治は大学の力だけで守ることは困難であり、平和と独立と民主主義を守るたたかいの一環として位置づけて闘うことの重要性を強調し、「学内における統一と団結をかちとり、種々のたたかいを発展させ、全国の民主勢力と手をつなぎ、統一戦線の発展をかちとり、そのなかで青葉山移転反対闘争をさらに一歩前進させようではないか」と結んだ。なお、この他では、職場の要求を個別要求と統一要求に整理し、キメ細かな闘いの推進を主張し、さらに、闘争態勢の強化が緊急の課題となっていることから、10月末を目標として、組織一本化までの組織の段階的改善策五点を示し、討議を訴えた。

II「東北大学（昭和）40年9月闘争」

不当な圧力をかける文部省

　総会で情勢と闘争方針を明確にしたが、情勢はますます緊迫の度を加えた。文部省は、「農学部の移転が決定しなければ移転予算全額を認めない」という不当な圧力をかけてきた。ここで、文部省の意図に従って移転計画の素案を確定するか否かの重大な選択に迫られ、7月17日に、この重要な課題を背負った評議会が開かれた。この評議会を目前にした15日に、平民連の名で教授会、評議会に、(1)教授会決定の尊重、(2)計画の白紙還元と、全構成員の意見を充分に反映した計画案の作成、(3)現在の文教政策の是正をはかること、等々を骨子とした意見書を提出した。この圧力と、総会の特別報告に指摘された学内の新しい情勢、さらには各部局の思惑もからみ、評議会は、文部省、学長の意図どおりには計画を確定しなかった。

行き詰まり打開の学生弾圧

　一方、評議会がバリケードで囲まれたこと、また、その後の学長会見を取り出し、学長などは学生の処分を画策した。この処分問題は補導協で検討されたが、学生部長名の告示にとどめることに決定された。ここでも、学長等の意図は挫かれた。ここに、移転計画と学生処分はともに完全に暗礁に乗り上げ、行き詰まりをみせた。

　この事態を打開し、移転計画の強行を策した当局と、当時、盛り上がりつつあった日韓条約反対、ベトナム侵略反対運動の弾圧をねらっていた県警とが結託し、学生運動、学内の民主運動に対する弾圧と学園整備計画反対闘争に楔を打ち込むことをねらい、17日の曽我事務局長暴行傷害等をデッチ上げ、不当なむき出しの弾圧を加えてきた。8月31日、9月1日、10日に、学生3人の逮捕と1人の指名手配など、不当な逮捕が行われた。さらに、3日には、「傷害事件」の現場検証と称し、東北大学の戦後の歴史はじまって以来の警官隊の導入が行われた。

爆発した教職員・学生の怒り

　この不当な大学介入を行った警察権力と、二日間の平民連主催の全学集会で、学内に警官をいれないようにすると約束しながらこれを踏みにじった学長、さらには、宮学大問題以来、あいついで大学の自治の破壊をほしいままにしてきた学内反動層に対して、教職員・学生の怒りは大きく爆発し、大学の自治を守るための大闘争に結集して行った。

二度の「東北大学集会」

　最初の学生逮捕に対し、平民連加盟の団体は、北署に抗議行動を行い、2日夜の9時から3日午前2時まで、平民連主催で、学長・学部長・補導協委員・教職員学生が、法文一番教室において、警察の学内立入りについての集会を開いた。翌3日の警官導入に対しては、激しい抗議活動を展開し、前夜の集会での約束を反故にし、警官の立入りを容認し、協力定態度すらとった学長の行為に激しく憤った教職員、学生は、学長の責任を厳しく追及した。そして前夜同様、平民連主催の「大学の自治を守る東北大学主会を開き、学長、学生部長の報告ののち、両者の責任を徹底的に追及する活発な討論がかわされた。このなかで「大学の自治はたたかって守るべきものである」にもかかわらず、県警に対し、「一貫してお願いするという態度」しかとらない学長には、大学の自治を毅然たる態度で守るという確固とした姿勢がまったく欠如していることが、多数の参加者の前で明らかにされた。

学生ストを支持

　このような経過にもかかわらず、当局側は責任をとろうとしないばかりか、あくまでも移転強行を策した。この当局側の厚顔にして無責任な態度に対し、学生自治会連合などは、7日に闘争宣を発し、不当弾圧反対、大学の自治を守れ、学長退陣などのスローガンをかかげ、ストライキで対決しようとした。平民連でもこの間、学長会見などで責任追及を行ってきたが、15日の学生ストを前にした14日夜、「ストも止むを得ない。それを支持し共に闘う」という結論に達した。

嵐の中の全学集会

　15日には、5千をこえる学生を結集して全学学生大会を開き、スト宣言を発し、整然たる全学ストに突入した。17日には、平民連主催の「不当弾圧反対、学長の退陣を要求する東北大学教官職員、院生、学生総決起大会」に、嵐の中にもかかわらず4千名が決起し、闘いのピークを迎えた。18日には全学教官集会がもたれるなど、学内反動層は、全学全階層の抗議の渦に包囲された。ここに至って学長は、部局長会議を招集して退陣の花道を作ろうと画策したが、部局長の拒否と教職員学生の敏速な行動によって阻止され、連絡会議代表との会見で厳しい追及をうけ、ついに辞意を表明した。

学長辞任

　翌19日に人事協議会が開かれ、理工系評議員の強い抵抗をうけて難航したが、2千名の学生の包囲下の徹夜の審議で、(1)農学部移転の決定がないにもかかわらずその手続が進められるのを黙認したこと、(2)学生の逮捕、警官の学内立入りが、警備警察の活動としてなされたことを認める了解事項を付し、20日午前1時頃、学長の辞意を受理した。権力に追随した学長を、学内外民主主勢力の力で辞任させたのは、戦前戦後の日本の歴史を通じてはじめての事件であり、大学の自治の歴史にとって大きな意義をもつ、画期的なできごとであった。

III　闘う組合へ

「石津の道」を拒否した学長選

　石津学長の辞任後、元村学長代理の下で移転計画が討議されたが、学長代理は石津路線を踏襲し、文部省に対しては毅然とした態度をとりえず、会見要求には応じようとせず、学長辞任以後の学内の大勢は、根本的には変わっていなかった。そこで、きたるべき学長選挙のもつ意義が重大化し、連合会は、この選挙は自治の確立と学内民主化のための選挙である、と位置づけた。そして、有権者、全組合員に、「大学の現状を深く認識し、自主的、民主的に運営するため全学の英知を結集し、それを正しく発展させる中心として、学内緒階層の信望をになう人」を学長に選出しようと訴えた。11月実施の学長選では、石津学長の道を進もうとした元村学長事務取扱は、上位に進出できず、大学が全体としてこの反動路線を拒否したことを示し、学内外の反動勢力に大打撃を与えた。しかし、本川歯学部長が2、3票の僅差で広根金研所長を破り、中立主義を標榜しながら、実は移転計画を推進してきた「影の首脳」の当選を許した。だが、この僅差は巨大な圧力となって学長の姿勢に大きな影響を与え、「整備計画は、急がずじっくり」と言明せざるをえず、整備計画もしだいに一定の民主的討議のルートにのりだした。

東北大民主化の第一段階を切り拓く

　このように、全国的学園闘争の先駆として、また、揺れる大学の自治としてマスコミをにぎわした「東北大学40年9月闘争」は、東北大学の自治の確立、ならびに民主的運営への第一段階を切り開いたのである。

　なお、起訴された2学生の公判（「東北大学自治侵害事件」）が開始されると、「両君を守る会」を11月に結成して支援体制をつくり、法廷闘争に入った。12月には、検察側要求で不当にも学内検証を行おうとしたが、裁判所による大学の検証は戦後に例がなく、自治の侵害であると抗議し、これを阻止することができた。

初の10.22半日スト

　連合会は、「9月闘争」において、学内緒階層の統一と団結のかなめとなり、労働者階級としての指導性を発揮したが、その盛り上がりを背景に、その他の諸課題にも意欲的に取り組んだ。要求にほど遠い人事院勧告と、それすら完全実施しようとしない政府に対し、春闘で創意ある取り組みで大幅賃上げを闘ってきた連合会は、日教組臨時大会が提起した10・22半日スト決議をうけて闘争委員会を結成し、闘う姿勢をとり、スト権確立のための全組合員による投票を行った。この結果、組合員の6割がストに賛成するという成果を得た。ストそのものは日教組指令で中止となったが、勧告の1月実施を9月実施にさせるなどの成果をうると同時に、「賃闘がはじめて身近にとりあげられた」という意見があったことにみられるように、賃上げ闘争が本格的に取り組まれる、また、取り組める組合への第一歩となったのである。

全国大学婦人集会の開催

　この他では、400名にのぼる臨時職員のボーナス完全支給をたたかい、従来支給のなかった病院、図書館にも超勤費名目での支給に成功し、10月16～17日の福島県飯坂での東北地区職懇に参加し、9月25日～26日には、第三回全国国立大学婦人集会を東北大学で開催し、東北大学から約70名という多数の婦人職員が参加、賃金と権利、保育所作り、社会と婦人などのテーマで活発な討論を展開した。この集会を成功させた力は、その後の東北大の民主化の闘いへと引きつがれていった。

「日韓条約粉砕闘争」

　また、アメリカのベトナム侵略がますます凶暴化し、沖縄と日本本土がアメリカのベトナム侵略の直接の基地になるという重大な情勢をむかえ、侵略に反対する行動をおこすことを決議した第11回原水禁大会へ参加し、6月に調印された日韓条約に対し、(1)社会主義国敵視の東北アジア軍事同盟であること、(2)独占資本の帝国主義的経済侵略であること、(3)朝鮮の自主的、民主的、平和的統一を阻害するものであること、とその本質を把握し、9･12全国百万人統一行動などの中央動員、地域集会に積極的に参加し、同時に闘っていた「9月闘争」と日韓条約の本質は同じ根源から由来するものであることを広く訴えた。そして、このたたかいを、安保闘争以来の大闘争に盛上げていった。

第十四章　新段階をむかえた連合会運動

　米軍のベトナム爆撃が、1966年6月には、ついにハノイ、ハイフォン地区および、ベトナムの戦争は新しい段階を迎えた。佐藤自民党内閣は、対米従属と依存の政策を強め、東南アジア諸国へは帝国主義的、植民地主義的進出を、国内では、政治、経済、労働、教育等の全分野にわたって反動化を強めた。インフレと各種重税、「産業再編」と「合理化」、低賃金政策は、労働者と人民の生活をいっそう耐えがたいものにした。このような内外情勢下で、わが国の労働者階級と人民の闘争はさらに一歩前進した。それは、わが国労働運動史上ではじめて、世界の労働運動史上にも稀にみる、10月21日のベトナム反戦ストライキに象徴的に示された。

I　諸要求をとりあげて･･･

工学部組合員2名の逮捕

　1966年の春闘に取り組んだ連合会は、まず、2・27物価メーデーに参加し、そして、当面する政治的課題を正しくとらえ、それと経済闘争を結合させてこそ要求もかちとれるという観点から、安保破棄・諸要求貫徹実行委員会の提起した3・20全国統一行動に向けて精力的に取り組み、職場討議、集会を各単組で開いた。3・20に向けた戦いの盛り上りに対して、弾圧が加えられた。3月17日に、青葉山構内で、「保育所を作れ」などのビラを貼っていた工学部組合員二名が逮捕される事件がおこった。連合会は、(1)3･20全国統一行動と組合に対する弾圧である。(2)大学の自治の侵害である、と把握して、県警、中央署に抗議し、平民連と共に22日の学長交渉で、学校当局として県警に抗議することを約束させた。3･20当日は、弾圧にもかかわらず集会に職員148名の参加をえた。また、4･26公労協半日ストに対し、労働者の統一闘争であるとともに、人事院勧告のための自己の戦いとして捉え、42名もの組合員が、徹夜して国労ストの支援行動を行った。

学長・保育所設置を約束

　前記3月22日の学長交渉で、1962年以来の保育所設置運動の結果、昭和41年度中に設置することを約束させる大きな成果を得た。この運動を推進してきた「保育所を作る会」は、約束の履行、保育所の内容、職員の待遇などでさらに活発な運動を進めた。また、臨時職員に、定員内職員に比べて不当に低いが、3月から正式にボーナスが支給されることとなったこと、病院職組が要求を掘りおこし、交渉によって多様な問題で一定の成果を得たことなどが前進であった。

「学園整備計画」一歩前進

　この他では、市長選挙をむかえ、労組・民主団体で結成された民主市政確立連合会（民政連）に加盟し、市民本位の政治を行うことを確約させて島野候補を推薦し、当選をかちとった。

　学園整備計画は、「9月闘争」後も、具体化へむけた論議が続けられていた。「形式上の民主主義」の形態をとりながら推進され、1月の評議会で、久保田山放棄（宮教大敷地として提供）と農学部は移転しないことの二点を決定し、宮教大の敷地を提供することで文部省の反動政策に加担したが、全体としては一歩前進した結論を出した。そして5月には、移転の計画を評議会で決定し、いよいよ計画は具体化して行く。

「民主教育を守る東北大学集会」

　また、大学制度改悪の動きが、多様なかたちで現れた。政府は、大管法、科学技術基本法案の成立をねらい、国大協は、3月に「大学管理に関する意見書」を発表し、大管法の肩代わりともいうべき自主規制案作成の態度を示した。連合会は、この国大協自主規制路線の危険性について警告を行ったが、この面での連合会の動きは、概してにぶかった。この他では、宮城県の教員採用で、東北大卒業生が大量に不採用となる問題がおこり、2月4日に、「宮城県の民主教育を守る東北大学集会」を平民連主催で開き、その後、教育長、副知事らと会見し、さらに6月には、労評議長、宮教組代表もまじえて教育委員会交渉をもち、教育の反動化と闘った。

仙台学生会館の廃止

　一方、学生の管理規制の強化がはかられたが、仙台学生会館に対して学徒援護会からの統一館規の推しつけとなって現れた。統一館規は、学生の経済的負担の増加と自治侵害であるとして学生とともに闘った。統一館規に従わないことを理由に、会館廃止、寮生強制退去を押し付け、4月8日には機動隊の包囲下で仮執行が行われた。

小選挙区制反対実行委員会

　民主主義を守る闘いでは、小選挙区制問題が大きくクローズアップされた。国民の支持を失いつつある自民党は、議会制民主主義を踏みにじる強行採決をくり返して日韓条約を通過させたが、前年の臨時国会では補正予算が通らないという事態がおこり、国会運営の困難さにも直面し、最後の延命の道を小選挙区制に求め、法案作成に着手した。この危険な策動に対し、議会制民主主義の根幹を否定するものとして反対運動をくりひろげた。3月には、平民連主催で「小選挙区制に関する東北大学シンポジウム」を二日間にわたって開き、情勢がさらに重大になると、6月14日に「小選挙区制反対東北大学実行委員会」を組織し、21日には、1千名以上を集めて全学集会を開いてデモを行い、小選挙区制の危険な本質を広く市民に訴えた。こうして、小選挙区制法案を事前に阻止する闘いで、貢献した。

II　連合会最後の定期総会

第27回定期総会

　7月9日に、第27回定期総会を開いたが、大学制度改悪の実態とそれとの闘い、そして、連合会組織の単一化の方向を明確に打ち出し、連合化意図しては最後の定期大会となった。

　大学の合理化、再編成、軍国主義化の進行の経過と現段階を指摘し、この大学の自治、学問研究の自由に対する攻撃と表裏一体をなす教職員の生活と権利の侵害を、職場の状態の中で具体的に示した。事務系では、天下り人事や服務規程による労務管理の強化と労働強化、現業部門では、強制的退職勧奨と欠員不補充政策による労働強化、労働災害、研究室関係では、助手、教務職員の低賃金と学生の実験指導のシワ寄せ、病院では、国立学校特別会計制度による影響を強くうけ、定員微増のため、無給医師の大量使用と看護婦等の労働強化、さらには「差額ベッド」の拡大など、職種ごとの現状の問題をあげている。

生活と学問の二本柱を基軸に

　整備計画問題では、「本川学長は、教授層がもつ移転による研究教育諸条件の改善の幻想を利用し、学内の改良主義、保守主義に支えられ、学内の管理機構を整備強化し、形式上の民主主義によって学園整備計画を強行しようとしている」と捉え、これに反対し、学内外で共同して闘うことの必要性を強調した。

　このような情勢下で、大幅賃上げを中心とする生活と権利を守るたたかいと、大学制度改悪阻止、大学の自治、学問研究の自由を守るたたかいの二本柱を基軸とし、教育予算増額、労働基本権の奪還、平和と独立、民主主義を守るたたかいの推進が重要であると述べ、他方で、職場の大小の日常要求をたたかいとることの必要性も指摘した。

多面的攻撃に対する有効な反撃

　そして、協力で多面的な攻撃に対して、有効な反撃とたたかいのできる組合を確立するため、組織の単一化を具体的に打ち出した。ここ数年来、下部討議を訴え、くすぶっていたが、「9月闘争」、「10･22スト」を闘うなかで、その必要性の切実さと、連合会運動の発展した形態としての単一化についての理解がすすんだ。しかし、下部討議は依然として付属し、27期総会で単一化を決定しようと提案した執行部案に、委員会では、特に組合費の増額と決定の拘束性などに疑念が出され、総会の討論でも、趣旨には賛成だが、即時に単一化を決定することには難色が示された。

「単一化の方向」を修正決定

　そこで、(1)単一組織に改組すべきだという執行部の提案と提案理由は聞いた。(2)提案を総会の名において全組合員の討議に付す、(3)討議は、賃上げ、小選挙区制反対などの闘いに取り組みながら早急に行われるべきである、(4)討議を集約し、単一化を決定する臨時総会は、おそくとも9月中旬までに開くよう努力する、(5)第27期組合費は、単一化問題とは別個のものとして決定する、という理学部竹内修正案が提出され、反対なしで可決され、議案書も、「単一化する方向で討議します」と修正された。こうして、単一化問題は大きく前進し、翌年5月の臨時総会で決定され、東北大学職員組合となるのである。

10.21休暇戦術の断念

　総会を終えた連合会は、大幅賃上げと単一化に向けた両輪のたたかいを展開していく。総評は、7月の定期、10月の臨時大会で、ベトナム反戦、最低賃金制の確立、公務員賃金の引上げ、炭労の首切り阻止・合理化反対の四大目標で、10･21ストを提起した。連合会は、8月には勧告にむけたハガキ戦術、8月末には賃金闘争を中心とした学内職懇、9月9日には賃金大学集会を開き、10･21ストに向けた学習・討論が進められた。大学部総会で決定された10･21半日休暇闘争に取り組み、9月22日の委員会で闘争委員会を正式に結成して態勢を作り、10月1日には臨時総会を開き、半日休暇闘争と単一化方式の貫徹を決議した。5日まで批准闘争が実施され、7単組では職場集会をもちながら投票を行い、構成員比53％の賛成を得、方針の貫徹を確認した。しかし、休暇届の集約で不手際を演じて遅れ、集約数は5割弱となり、その上、大学部から一時間休暇闘争への戦術転換指令をうけ、結局、一時間休暇戦術も断念し、時間外職場集会に切り換えた。

青年行動隊

　10･21ストの意義把握の不充分さ、指導水準の低さ、闘争資金、組織の弱さなどから、批准投票に成功しながら一時間休暇闘争すら闘えなかった。

　しかし、職場集会の開催、批准投票の成功、そして、当日の平和民連主催の東北大学4千人集会、科研早朝集会などに、組合員530名というかつてない数の参加をかちとり、さらに、闘争委員会の下に設置された青年行動隊は、組織、指導上の不充分さをのりこえて奮闘し、青年層のエネルギーがかつてなく発揮されるなど、前年の10･22闘争に比べて大きな前進を示し、こんごの闘いに起訴を築き、連合会運動が、疑いもなく新しい段階に入ったことを示した。

非常勤職員の待遇改善の署名

　また、連合化は、統一要求と独自要求を結合させて闘った。その中では、非常勤職員の待遇改善の運動で、図書館職組の署名運動が全学的に広がったこと、保育所設置、病院の超勤費完全支給の闘いがあった。

　一方、組合運動に対する攻撃も強まった。ILO87号条約を逆用して管理職を指定しようとした。これは、組織破壊、分裂の攻撃であると同時に、文部省の行政指導をつよめるための管理職群の強化をねらったものとして反発し、10月の学長交渉で、管理職の範囲を決めるさい、組合と話合うことを要望したが、とりくみは弱く、事務職員は押し切られてしまった。この他では、金研野村氏に対する南署の思想調査があきらかになり、学内諸団体とともに抗議を行った。

東北大学概算要求の民主化をめぐって

　12月に、40年問題の反省の上に、評議会の諮問機関として設置された管理運営検討委員会は、その中の第一専門委員会の報告をうけて、「東北大学概算要求及び共通経費規定（案）」を評議会に提出した。従来、十分な民主的討議を経ず、事務局長等を通じた文部省の反動政策の貫徹を容易にしてきた概算要求を、大学全体の意志にもとづいて行うこと、そのための「予算委員会」などの制度を整備すること、等を内容とした。予算の操縦を通して大学支配と自治破壊を行ってきた文部省にとって、この「案」は容認し難く、他方、40年闘争などの戦いの成果の発展、管理運営の民主化という観点からみて、重要な前進であったことから、この「案」をめぐって「東北大学の二つの道」が激しく闘われるのである。

第四編 岐路（1962年～66年）（昭和36年～昭和41年）

第四編　岐路（1962年～66年）（昭和36年～昭和41年）