東北大学職員組合50年史第2部

　８１年の第二次臨時行政調査会の設置および８２年に成立した中曽根内閣のもとで、平和と民主主義、国民生活の破壊が急速に進んだ。日米共同演習、有事体制・国家機密法制定の策動、「人勧凍結」など、「戦後政治の総決算」を標榜する政治は国民各層に危機感をもたらした。さらに消費税の導入、昭和天皇の死去にともなう天皇制イデオロギーの強調も８０年代を特徴づける出来事であった。

　だが、これらに対抗すべき労働運動においては右翼的再編がさらに加速され、労使協調路線を明確にした「連合」が結成された。これに対して、「政党からの独立」「資本からの独立」「要求の一致に基づく行動の統一」の三原則を支持する勢力は「全労連」を結成し、職組も宮城県労連に参加した。

　また、日教組大学部は、すでに８６年に日教組から独立する方針を決定し、一定の紆余曲折はあったものの、８９年に「全大教」を結成した。職組も臨時大会を開催して全大教への加盟を決定した。労働運動の再編、日教組大学部の全大教への移行という激動のなかで、国民のための大学を目指して職組の運動は多面的に展開した。

第３章　労働戦線の右翼的再編に抗して

３．１　対米従属下の国民生活の危機の深まりと労働運動の転換

３．１．１　８０年代の政治・経済状況

　世界経済は、６０年代の高度成長が７０年代には停滞に転じ、インフレーションと不況の同時進行という、いままでにない状況が推移した。この状況はイギリス・アメリカのような「小さな政府」よる総需要の抑制をはかり、危機の乗切りと経済の立直しをはかろうという動きを生み、８０年代を通じて自民党政府がとった「臨調路線」はこの流れを基本にするものであった。アメリカはベトナム戦争後、大きな景気後退におちいり、８０～８２年は企業倒産件数で、３３年の大恐慌をも上回り、失業者数で第二次大戦後最悪という状況であった。また、財政赤字も膨大な軍事支出のために毎年１，０００億ドルを越え、８３年には１，９００億ドルに達した。これが厖大な国債発行、高金利を招き、その解消のために日本が大いに利用された。

３．１．２　国政の右傾化、第二臨調・中曽根内閣の基本路線

　６０年代は政治的には日米軍事同盟の強化がはかられる一方、経済的には「高度経済成長期」にあり、自動車・テレビなどの耐久消費財の購入・消費が大幅に増大し、経済成長の柱となり、急激な経済的発展を遂げた。しかし、アメリカ経済の落込みにより７０年代に入り下降を続け、とくに７５年には７３年対比で２０％の落込みとなる一方、激しい物価上昇によって労働者の生活のみならず、中小企業・農民の経営とくらしも大きな打撃をうけた。

　一方、民主主義陣営が統一戦線を組んで闘った６０年安保闘争の経験から、政府・財界は民主主義陣営と労働戦線の分断、労働組合の右傾化工作に着手した。民主主義陣営の一部に生じた安保闘争敗北論を利用した反共・親米思想の導入による民主・労働運動の分断政策は一定の効果を上げ、労働組合幹部のなかに反共思想が定着し、７０年代になって政治・経済・労働運動など多くの分野にその影響が現われ始めてきた。

３．１．３　「臨調路線」の導入

　８０年１月に共産党排除による社会党と公明党の政権合意が結ばれ、政治戦線における右翼的再編の動きが強まった。一方、大企業の利益追求や軍事費を優先する目的のために、国民の医療・教育・福祉拡大を切り捨て、農業・林業・漁業など一次産業や中小零細企業に大幅な犠牲を強いる方針をもった第二次臨時行政調査会が８１年３月に発足した。当時、経団連会長であった土光敏夫を会長とする「第二臨調」は、行政管理庁長官であった中曽根康弘との全面的な連携のもとで「小さな政府」を旗印にして、公務員数削減と賃金抑制、「民間活力の導入」と称しての国鉄・専売・電電公社の民営化、各種の「規制緩和と自由化」に関する政府の諮問に対して答申を次々と出した。第一次答申を基本とした「行政改革」一括法案が１１月の国会で成立し、翌８２年７月には、「行政改革に関する基本答申」が提出された。１１月、中曽根内閣が成立するとともに「臨調路線」が一段と強化され、８３年３月に第二次臨調最終答申、同年５月に「行政改革大綱」の閣議決定と急ピッチに進められた。

　東北大学にもこの影響はすぐに現われ、学内人件費・研究費等々の予算の削減が続いた。さらに、人事院勧告の低額化、勧告実施の凍結・カットは公務員労働者の生活を圧迫し、年金・医療・福祉制度の改悪、消費税導入は国民全体に深刻な問題を押し付けた。国鉄・電電公社の民営化の過程で、徹底した労働組合と活動家の差別および不当労働行為が頻発したが、総評はこれらに対抗する動きをほとんど示さなかった。

　「臨調行革」路線の展開と同時に、反共・労資協調路線に基づいた労働組合の再編成が進行した。８０年９月には鉄鋼・電機などの民間主要６単産による「労働戦線統一推進会議」が発足した。８１年５月に「労働戦線統一の基本構想」が発表され、同年１２月に具体的再編成に向けた「労働戦線統一準備会」を発足させた。この間、鉄鋼労連は「春闘方針を受け入れることが出来ない」ことを理由として総評に組合費を納入しない行動をとり、「基本構想」の承認を迫り、総評の右翼的再編に奔走した。社会党は「社公合意」によって、民社党とも協調路線を取り、自民党政治を下支えする役割を果たした。中曽根内閣の成立以降、「戦後政治の総決算」が唱えられ、「日米運命共同体論」「日本列島不沈空母」「シーレーン防衛・四海峡封鎖」などアメリカとの軍事同盟の強化が露骨となり、憲法改悪を視野に入れた「野党」の取込みが公然と行われるようになった。一方、国会では「国対政治」といわれた共産党を排除した運営が日常化した。これは自民党の政治資金が「野党」に流されたうえで、自民党と、共産党を除く「野党」による国会対策委員長会談が国会運営の中核とされる、議会無視のなれ合い政治であった。

３．１．４　８０年代の春闘

　８０年代の春闘の特徴は「管理春闘」の傾向が一層強まったことである。「管理春闘」とは、日経連など経営者団体や自民党・政府と右翼的な労働組合幹部によって管理された「春闘」という意味である。具体的には、主要な労働組合が、労資協調の路線に立ち、「賃上げは、経営実態との整合性を重視して」とする独占資本の「経済整合性論」に基盤をおいたうえで賃上げ要求をするというもので、闘争もスケジュール的なものとなり、当然のことながら低額回答で妥結する結果が続いた。４月初旬の第一陣の鉄鋼労連への低額回答は、続く三公社五現業・私鉄・金属・電機など春闘全般の相場づくりの基礎となった。これは公労協に対する低額回答の根拠となり、公務員共闘にも妥協が強要され、その結果スト中止指令が出されるという流れの定着化の兆しをみせた。このような労働運動の新たな流れのなかで、統一労組懇に参加する多くの組合では地域や職場の要求を基礎に、労働者の要求と国民的な諸要求および課題とをむすびつけて闘うことによって、より高い回答を獲得してきた。

３．１．５　８１年春闘

　８１年春闘は「大学教職員の賃金を平均２万円以上、１５％引き上げること」を中心要求として、この課題と物価値上げ反対などの国民的諸要求実現とを結びつけて闘われた。春闘方針は宮教大職組と合同で開催された職懇において活発に討論され、引き続き機関会議の討議を経たのち、中央委員会で決定された。批准投票の結果、５７％で１時間を限度とした時間内食込み闘争を含む戦術が確立された。

　８１春闘の特徴のひとつに「ひとりぼっちの春闘をなくし、８１春闘勝利を目指し最後まで闘い抜く」を合い言葉に「地域・職場から８１春闘の勝利を推進する仙台実行委員会」が結成されたことが上げられる。これは未解決組合を県内労働組合が共同して支援し、激励するねらいをもった試みであった。この活動に参加した金研・科研・病院支部は、地域春闘の世話役活動を通して他の労働者と直接的な連帯をするという貴重な経験を積む成果を得た。

　回答の第一陣は４月９日、鉄鋼労連に６．９％（１３，５００円）の低額回答、１５日には三公社五現業、２２日は私鉄が７．６％、１４，７００円で妥結、そして２３日に公労協に１３，９９６円（加重平均７．６４％）の回答が出た段階で、公務員共闘はスト中止指令を出した。職組は地域の春闘勝利昼休みデモなどで闘っていたが、２３日の低額回答で妥協したことに強い怒りを示し、公務員二法（退職手当改悪法および定年制法案）の粉砕を目指し、地域の労働者５００名とともに怒りの昼休みデモを決行した。この春闘の重点のひとつに仙台圏への地域調整手当の支給要求があった。職組は学長交渉で取り上げるとともに、県国公共闘の人事院交渉において学内から１週間で集めた１，７００名余の署名を提出した。

　公務員二法は前年秋の国会で継続審議となっていたが、３月、８１年度政府予算案の成立後、その審議に入った。職組は三次にわたる公務員共闘・国公共闘による上京要請団に参加した。政府・自民党は、民社・公明の賛成で会期を延長し、公労委の仲裁裁定と抱き合わせにして公務員二法の審議を行い、二者択一を迫る卑劣な戦術をとった。職組は６月４日、公務員共闘の統一行動として全学集会とデモ行進を行い、公労協も６月５日にストライキを配置して廃案を目指した。結果的に「定年」法は成立したが、「退職手当減額法」「仲裁裁定」は継続審議となった。

　人事院は８月７日、定昇込み７．３９％の給与勧告を行った。この勧告は私鉄・公労協よりも低いものであった。しかも、９月からの臨時国会では「勧告」「仲裁裁定」が「行革一括法案」成立の取引き材料に使われ、「行革一括法案」が成立し、仲裁裁定の完全実施と引換えに勧告が期末手当分をカットされたうえで政府に受け入れられた。この結果、「勧告」の完全実施が１０年ぶりに破られるという事態になった。

　職組はこの秋の闘争に学習・教宣活動を重視して取り組み、「臨調」「行革」路線の本質と公務員への攻撃の理解を深める春闘学習会は４０回余を数え、参加者は延べ１，０００名に達した。さらに、職組新聞特集号をはじめ、１０種の号外を発行し、その危険な本質を学内外に宣伝した。中央要請行動には、５波にわたって１５５名が参加し、１１月１０～１１日の大学部中央要請行動には宮教大・福島大職組とともにバス２台で上京し、大学部史上初の１，８００名による大行動に参加した。

　日教組が提起した「公務員二法阻止」「行革法粉砕」を重点とした二波の統一行動には、２９分カットの戦術で参加した。参加人数は１０月２９日の衆議院審議の山場段階には２５０名、１１月２５日の参議院審議の山場段階には３２７名であった。「８１春闘の勝利を推進する仙台実行委員会」を発展改組した「地域職場から連帯と交流をすすめる仙台労組懇談会」（略称、仙台労組懇）のよびかけで、医療・教育・公務員・パートなどの分野別・問題別集会がもたれた。１１月、東北大学川内記念講堂で開かれた元総評議長太田薫氏の講演会には、１７５名が参加し、秋季闘争への大きな決起の場になった。

３．１．６　８２年春闘「人勧凍結」反対闘争

　８２年春闘は「管理春闘」「統一準備会春闘」の流れを断ち切るために、職場での討議をより深めることを重視した。２月、第８回川渡職懇は、東北ブロック活動者会議と並行して８２名の参加者で開催された。大学部が提起する春闘方針と専門部よりの職種別・問題別の問題提起について討議を行い、職場からの闘いの強化を確認した。また、婦人部は市内労組婦人部と共催して大阪府職婦人部長仲居氏の学習講演会を開催し、職組婦人部から２５名が参加した。さらに、大学部がよびかけた、８２年度予算案で抑えられた給与財源の増額を要求する４万枚のハガキによる要請活動に取り組み、職組として７３８枚を郵送した。

　公務員共闘は４月１５日にストを設定したが、私鉄大手の妥結で前日に中止した。職組は当初の確認通り時間外集会を開き、２１３名が集会およびデモ行進によって低額回答のままに春闘を終結させることに反対の意思表示をした。８月に出された人事院勧告は６．６９％という低額にもかかわらず、政府は９月２０日の閣僚会議で「非常事態宣言」を発表し、人事院勧告の凍結を決定した。秋闘は「人勧の凍結撤回」、「臨調路線の粉砕、具体化阻止」「教職員の生活改善」などを柱に闘われた。９月、緊急全学集会が開かれ、大雨のなかを２００名以上の組合員が参加し抗議の意思を示した。

　日教組が提起した２月段階の１時間ストライキに対して、職組は短期間の取組みであったにもかかわらず過去最高の７２．５％で批准し、組合員の怒りを反映したものとなった。この運動の高まりは職場活動にも現われ、学習会および職場集会は８７ヵ所で開かれ、総数で１，３４５名が参加した。本部作成による２種類の宣伝ビラが１万枚、プレート１，３００枚、ステ看１００本、地域配布ビラ３万枚が活用されて、大きな運動に発展した。勤勉手当差別支給反対の闘いでは、学長交渉および会見が４回、事務当局交渉４回、部局長交渉が１２支部で１９回に及んだ。臨調路線の突破口として企図されている老人医療費改悪反対と「人勧の凍結」撤回の署名・カンパ活動は２，２２４名、総額で約１００万円に達した。

３．１．７　「人勧凍結」反対闘争を引き継いだ８３年春闘

　８３年春闘は「人勧凍結粉砕、８３年春闘勝利東北大職組旗開き」で幕をあけ、各支部から７７名の参加があった。２月の川渡職懇では大学部山川副部長による「人勧凍結粉砕と８３年春闘勝利の展望」と題する基調講演に基づいた活発な討論が、分科会などで行われた。昨年の人勧凍結の事態を広く知らせることを目的として、県国公共闘会議はチラシを県内に１２万枚配布し、職組は街頭で２万２千枚を市民に配った。

　春闘方針は２月の大学部の討議を経て、中央委員会において「人勧凍結粉砕」を闘いの中心とすることを決定した。４月、勤務時間内の職場集会が全国統一行動として予定されていたが、行動の当日になって、総理府総務長官と人事院総裁による「人勧尊重の原則的確認、８２年人勧凍結への遺憾の意の表明、８３年人勧実施の努力の表明」という意向が明らかになった。公務員共闘は今後の闘いの足場ができたとしてこれを評価し、統一行動中止の指令を出した。

３．１．８　８４年～８９年の春闘

　８０年代の春闘の特徴である「管理春闘」の強化によって、４月初旬の第一陣の鉄鋼労連への低額回答に続いて、三公社五現業・私鉄・金属・電機がこれに追随し、この「相場」に基礎をおいた公労協回答を公務員共闘が受け入れて、スト中止指令を出すという流れがパターン化した状況が、毎年繰り返された。人事院勧告もこの段階でほぼ決まってしまうという構図であったが、地域・職場の要求と、国民的諸要求・課題とむすびつけて闘うことによってより高い回答を獲得する労働組合もあり、それらは労働組合運動にとって教訓的であった。

　「管理春闘」の影響を強くうけて人事院勧告の形骸化が進むなかで、「人事院勧告」および「勧告確定」の時点での闘いが重視されるようになった。８４年春闘は例年のように「春闘勝利・国公大運動の経験交流」の旗開き、２月の川渡職懇での春闘討議を経て、この年の中央委員会は「くらしと平和をまもる“世直し春闘”をすすめよう」の合い言葉で、春闘を闘うことを決定した。前年来、日米合同の「ヤマサクラ５」指揮所演習と実戦演習、核兵器トマホークの実戦配備の動きなど、米極東戦略への自衛隊の組入れが急ピッチで進んでいる事態を考慮したスローガンであった。しかし、この年の春闘は「管理春闘」の様相を一層色濃くし、官民一体の闘いとして設定された４月６日の統一行動に対して、「人勧・仲裁制度をまもる」という抽象的な政府回答をもって闘いの足場ができたとして戦術変更をするという有様であった。この結果は、昨年の積残しを含め平均６．４４％、１５，５４１円という低額の人事院勧告となって示された。しかも、政府はこの勧告を大幅に値切った３．４％以内の賃上げ実施を決定、その値切りの口実としてＧＮＰ１％枠をもち出したり、勧告の「段階実施論」を唱えるなど、勧告制度の根底を変更する発言を行った。

　公務員共闘の統一行動は１０月２６日に設定され、日教組は午後３時行動開始で２時間カットの戦術を提起したが、大学部は「１時間を限度とする勤務時間カット」の戦術を採用し、実施の時間帯に関して大学職組の独自性を尊重することにした。職組での批准投票は投票率８９．３５％、批准率７５．０５％の過去最高での批准であった。公務員共闘は１０月２５日にストライキ突入を指令し、職組は２６日の要求貫徹集会を４００名の参加で整然と行った。

　国公共闘では８４年秋闘を第二次「一千万国民に影響を与える」大運動と位置付けて、職組は秋闘推進会議を設置してこれに取り組んだ。１０月の公務関連共闘主催の総決起集会は１，０００名の規模で成功を収め、職組からは１５０名が参加した。この年の給与改正は３．３４％、８，１３８円の引上げであった。

　８５年春闘はここ数年の賃金押さえ込みのなかで、大学部の生活実態調査に基いて算出された加重平均４３，３００円の大幅賃上げ、退職手当と年金の改悪反対を実現するための予算組替え要求を中心に闘われた。２月、恒例の川渡職懇にかえて、盛岡市で開かれた「大学部東北ブロック８５年春闘活動者会議・職種別懇談会」への参加に取り組み、６０名が参加した。

　公務員共闘統一行動は民間が山場を越す４月１６日に、昼休みより２９分食込みの戦術で整然と行われた。しかし、全民労協主導の低額要求と相も変わらぬ「経済整合性論」に立った闘いの姿勢では、大幅賃上げの獲得は期待できず、５％の回答であった。人事院・総務庁交渉では、後藤田総務庁長官に「昨年、官房長官談話の通り」と軽くあしらわれて終わる始末であった。

　８月に出された人事院勧告は、４月１日にさかのぼり、平均５．７４％、１４，３１２円引上げという低額であったが、近年続いた勧告の凍結および値切りを勘案して、完全実施を強く求めたものであった。人事院のこのような姿勢にもかかわらず、政府は例年より遅い１１月８日の閣議で、率については勧告通りとしたものの、実施時期を７月からとする実質的な値切りの決定をした。これによって政府は人事院勧告を７年間連続して値切ったことになった。

　公務員共闘は「閣議決定期の最重要日」に統一ストライキで闘うことを決定した。日教組は早朝２９分カットの戦術としたが、大学部は時間帯を設定しない１時間ストを主張した。しかし、「閣議決定期の最重要日」という設定の曖昧さもあって、公務員共闘は１０月２８日の総務庁との交渉で「率は変更せず、７月実施で努力する」「８６年度勧告は完全実施する」との政府回答を得て、ストライキを中止した。

　８６年春闘は、昨年同様に大学部の生活実態調査に基づき加重平均４２，０００円を要求額とした。これは公務員共闘の「国公労働者の賃金を２５，０００円、９．５％引上げ」に加えて、「教育研究調整額」（１０％）や昇格遅れの是正分を加味したものであった。公務員共闘は官民総がかりで春闘山場を作り、春闘再構築の必要性を強調し、職組もこの方針を支持した。しかし、全体的には定昇こみで２．６６％で妥結した鉄鋼労連をはじめ、金属労連・同盟への低額回答が春闘の基調となり、「管理春闘」の域を出るものではなかった。

　そのような春闘全体の低調な状況のなかで、公務員共闘は春闘山場での統一ストライキ体制を実効ある闘いにすることができなかった。人事院交渉における「民間賃金の実態を正確に把握して較差に基づいて勧告する。公務員共闘の要求を反映するように努める」および総務庁の「勧告を完全実施する方向でのぞむ」とする回答で、４月１８日のストライキを中止した。大学部は定員外職員の待遇改善を求めて３月２８日に統一行動を提起し、職組は昼時間帯の要求貫徹集会を開いた。また職組はストが中止になった４月１８日、昼休みに報告集会を開き要求を貫く決意を示した。

　人事院勧告は４月１日にさかのぼって、平均２．３１％、６，０９６円引上げという超低額で調整額の改悪を含んだものであったが、扶養手当の改善、４週６休の試行が盛り込まれた。公務員共闘は「人勧」の完全実施の要求をかかげて、二波の中央行動を、大学部は四波の独自の中央行動を組織し、職組はこのすべてに参加した。政府は全国の公務員労働者の怒りと要求行動によって、１０月２１日の閣議で「人勧」の完全実施を決定した。しかし、閣議で後藤田官房長官は「官民較差が５％未満なら勧告すべきではない」と発言し、中立であるべき人事院に不当な干渉を行った。

　８７年春闘では加重平均４３，０００円を要求額とした。これは大学の行政系職員の昇給が他省庁にくらべて、級単位で遅れており、教員賃金も民間とくらべ数十％も低い実態を改善する必要から、公務員共闘の要求額に「教育研究調整額」と昇格遅れの是正分を加味したものであった。

　政府・財界の賃金抑制策を打ち破るため、第一に春闘の山場にストライキを含めた闘いを組織し、第二に民間相場引上げが重要なことから、国民生活改善、大企業の利益の社会的還元および雇用の確保の３つを基本とした春闘再構築をはかることと、組合員の声を人事院に反映させることを重点とした闘いを組織した。この年、自民党・政府は売上税（大型間接税）の導入、マル優の廃止の方針を打ち出していた。職組は売上税反対各界連絡会に加盟し、学習会、反対の署名活動および学内各キャンパスにステ看を立てるなどに取組み、また職場新聞でこの本質を取り上げて春闘における要求と関連づけて闘った。このような国民的な反対の盛り上がりのなかで、売上税（大型間接税）の導入、マル優廃止は国会で廃案となった。

　一方、円高不況を口実とした賃金抑制政策を打ち破れず、春闘相場は加重平均で３．４～３．５％（定昇分２．３～２．４％）という低率・低額で抑さえられた。公務員共闘は４月中旬に設定した山場において、人事院の「民間実態・要求を考慮して誠意をもって給与勧告に対処する」および政府の「８７年人勧の扱いは完全実施の方向でのぞむ」という回答によって事実上闘いを終息させた。しかし、職組は、今日の情勢ではこれらの回答が賃金改善を約束したことにはならず、賃上げ勧告がなされない危険性があるとの立場を維持した。要求貫徹と合わせて、病院当局と闘っていた病院支部を激励するために、全学集会を病院玄関前で開催した。また、春闘再構築の宮城県集会は３月に行われ、職組からは７１名が参加した。

　人事院勧告は８月６日、史上最低１．４７％、３，９８５円の賃金引上げと、４週６休の週休２日制導入の勧告をし、１０月２３日に勧告実施の閣議決定がされた。公務員共闘は「勧告」の早期完全実施にむけて二波の中央行動を組織し、大学部も日教組本部の機能が失われているなかで、独自の三波の中央行動を組織し、職組はこれに参加して闘った。

　８８年春闘は、中曽根内閣を継承した竹下新内閣の反国民的姿勢との対決が要求された春闘であり、政労資一体路線を標榜した全民労連発足後はじめての春闘であった。全民労連路線とそれに連動する総評解体に反対する運動は、統一労組懇や「総評旧主流左派」といわれる３２単産・単組で結成された「８８春闘懇談会」を中心に展開された。したがって、８８年春闘は春闘再構築と同時に、労働戦線の右翼的再編成反対、階級的ナショナルセンター確立へ向けた重要な闘いとなった。

　大学部は、生活実態調査と昨年要求した「教育研究調整額」と昇格遅れの是正分を加味した、加重平均４４，０００円を要求額とした。職組は中央委員会で、（１）組合員の身近かな要求をほりおこし組合全体の要求とする、（２）教育予算の大幅増額、（３）臨教審答申具体化・推進の諸法案に反対、（４）春闘再構築の闘いを進める方針を決定した。また、職種別懇談会を「春闘学習討論集会」にかえて、春闘決起の場にした。「統一労組懇全国キャラバン行動」「春闘再構築宮城県集会」「４・１７国民大集会」などに参加し、他の労働者との連帯をはかった。景気の回復基調という有利な条件のなかにあったにもかかわらず、民間の賃上げは政府・財界の低賃金維持の厚い壁にはばまれ、定昇込み４．４６％、１０，４１８円にとどまった。公労委の仲裁裁定も４．３６％、９，９０７円という結果に終わった。

　公務員共闘は２４，０００円の賃金引上げと閉庁方式による４週６休の週休二日制導入の要求を提出した。４月１４日を山場の統一行動日に設定したにもかかわらず、４月１２日の政府・人事院からの回答を「一定の前進である」として統一行動を中止した。職組は予定通りに要求貫徹集会を時間外に切り替えて報告集会を行った。

　職組は、臨教審関連六法案に反対する中央請願行動署名や宣伝活動を行い、また、民主教育をすすめる宮城県民会議のメンバーとして５・１７中央および県集会に取り組んだ。この闘いでは教育予算の大幅増額を求め、大型間接税に反対する取組みとして各支部の一斉行動による集会や街頭・各キャンパスの生協前での署名活動を行い、１，３７８名の署名を集めた。

　８月、人事院は２．３５％、６，７４０円の給与引上げと土曜閉庁による勤務時間制度の改定、寒冷地手当引下げの勧告を行った。職組は公務員共闘の統一行動として、各支部からの要求打電および中央行動への代表派遣などを行い、閣議決定に合わせて行われた国公東北ブロックの東北人事院交渉に参加し、職組の要求を訴えた。これらの闘いの結果、人勧の完全実施を勝ち取った。

　８９年春闘は、消費税の即時撤廃とリクルート疑惑の徹底糾明を求めると同時に、「連合路線」に対抗できる階級的ナショナルセンターの確立および「全大教」結成などの重要な課題を背景に闘われた。

　大学部は春闘再構築を目的に結成した「８９年春闘共同行動実行委員会」に加わり、賃上げ３８，０００円を要求額とした。職組は中央委員会で、（１）組合員が主人公の立場で身近かな要求をほりおこし、それらを組合全体の要求とする、（２）教職員の待遇改善、（３）臨教審路線に反対し大学の自治をまもる、をスローガンに、春闘再構築の闘いを進め、春闘山場に大学部が提起する勤務時間に食い込む集会を行う方針を決めた。この数年間、他の取組みに振り替えていた職種別懇談会を復活させ、７１名の参加で情勢の討議を行った。

　公務員共闘は４月１４日の統一行動を背景に政府・人事院交渉を行い、その後、人事院総裁から「官民較差がたとえ１％でも無視し得ない、一時金について民間の調査を早急に行う、「人勧」の完全実施に努力する」との回答を得た。人事院は、８月、３．２％、８，７７７円の給与引上げ、通勤手当の限度額の改善、期末・勤勉手当０．２％増、単身赴任手当の新設、調整手当の見直しの勧告を行い、勧告は完全実施された。しかし、補正予算作成段階で、自民党が補正予算案と消費税を前提とした関連法案の一括処理を要求したことによって国会が空転し、補正予算の成立が遅れた。

　９０年春闘は、階級的ナショナルセンターが確立し、全大教の結成および宮城県労連の誕生など、新たな状況のもとで闘われた。全大教は春闘にあたって、職場に根ざした要求を重視し、公務員賃金闘争を理論的に、かつ政策的に整備して闘うことを決定した。この結果、これまで賃上げ要求の基礎とした民間準拠を廃して、新たに相場準拠を基礎におくことを打ち出した。生活実態調査に基づいて、新たな考え方によって算出された要求額は、平均３９，０００円以上となり、教員では、教（一）で４１，０００円以上の引上げとなった。この年、職組は東北ブロックの当番校であり、例年の職種別懇談会を全大教東北地区協議会第１回職種別懇談会として、８単組、８４名の参加で開催し、全大教が提起した「相場準拠論」の学習を中心に討議した。

　前年、補正予算の成立が遅れたことによって、国家公務員の３月分給与と期末手当が分割・遅配支給となった。３月、県公務員共闘・国公共闘主催の抗議の集会とデモが取り組まれた。また、職組は緊急支部代表者会議を開き、政府に対する要求・抗議を決議し、各支部が抗議電報を打つとともに、全大教の「給与改善費は当初予算に計上すること」を請願する緊急署名を集めた。さらに県春闘共闘会議主催の「３・２５春闘勝利県民集会」に参加して、地域の労働者との連帯を深めた。３月３０日には「定員外職員の定員化と図書館職員の定員化、春闘勝利全学集会」を川内の図書館玄関前で行った。

　「連合」の中心組合である金属労協が５．８％前後の低額の一発回答で妥結をし、政府・財界はこれで春闘の帰趨を決めようとしたが、全労連はじめ多くの労組は、その後も春闘の闘いを継続した。職組は４月１２日に「春闘勝利、全大教全国統一行動」を全学集会とデモ行進で成功させた。賃金水準について、全大教は「教育研究調整額」の新設と昇格改善を求めて人事院に要求書を提出し、４月２７日に交渉を行った。さらに、同様の内容で文部省交渉を行い、「教育研究調整額」について「人材確保上および教員の特殊性から必要な手当」とする見解を得る前進があった。

３．１．９　平和と民主主義をまもる闘い

　８０年代に入って、日米軍事演習の強化など、政府・自民党による安保体制の定着化が一層露骨にはかられるようになった。臨教審路線、紀元節の復活、靖国神社国家管理・政府閣僚参拝は国民に軍国主義を押し付け、教育を政府・財界に都合のよいものに変質させようとする動きであった。また、第９条を中心とした憲法改悪の策動が依然として続けられ、これに対して平和と民主主義、思想信条の自由をまもる幅広い勢力がねばり強い闘いを展開していた。

　８０年、自民党は言論の自由を侵害し、かつ憲法違反である「スパイ防止法」の制定を企図してきたが、８１年において、地方議会で制定を促す決議を求める動きを強めてきた。宮城県議会では自民党が「スパイ防止法制定促進に意見書を求める請願」を委員会で強行可決し、６月の本会議に上程した。職組は憲法会議・宮城統一労組懇・安保破棄諸要求貫徹実行委員会とともに、この危険な動きを県民に知らせる活動を行い、本会議での成立阻止を目指したが阻止には至らなかった。

３．１．１０　強まる改憲策動との闘い

　８０年になって、自民党政府・奥野法務大臣の度重なる改憲発言や自民党の「憲法調査会」による改憲草案づくりの動き、および「自主憲法期成議員同盟」による地方議会での改憲促進決議などの動きのなかで、「５・３憲法改悪反対宮城県民集会」が開催され、藤原彰一橋大学教授が「戦後史と憲法」と題する講演を行った。また、職組は１月２９日～２月２日に行われた沖縄基地の調査と「核基地撤去・軍事基地告発する沖縄集会」に１名を派遣した。

　８１年には、アメリカ上院でのライシャワー元駐日大使の日本への核持込み証言が大きな反響を呼んだ。日米両政府はこれまで日本に寄港するアメリカ軍の艦船による「核」の持込みを否定していたが、この証言は「核」が日本の港にほぼ常時存在するという事実を公的に暴露したことになり、国民の強い怒りとなった。５月、安保条約廃棄宮城県民会議主催の「核持込み糾弾、安保廃棄緊急宮城県民集会」が開かれ、職組は集まった６００名の参加者とともに日米両政府への抗議とデモ行進に参加した。しかし、このような抗議の声が高まるなかで、６月米核空母ミッドウェーの横須賀寄港が強行された。

　８５年、政府・自民党は秋の臨時国会に「国家機密法案」を提出し、「戦後政治の総決算」の柱にしようとした。これはスパイ防止に名をかりて、知る権利を抑え、言論の統制をねらったもので、死刑を含む極刑によって処罰しようとする内容であった。１１月１５日の「河北新報」にこの法案に反対する意見広告を掲載する取組みが提唱され、職組からは１９４名の個人と３団体が紙上に名を連ねて反対の意思表示をした。１１月には職組と日本科学者会議宮城支部の主催でシンポジウムが開かれ、また、多くの支部でスライドを見る会や学習会が開催されて闘いが広がった。このような全国的な反対運動によって同法案は国会で審議未了となり、政府は８６年春の国会への提案を断念した。

３．１．１１　宮城革新統一を考える会（宮城革新懇）結成

　８０年１月、社会党と公明党は共産党の参加を排除することを内容に盛り込んだ政権合意を締結した。この「政党の枠組み」が持ち込まれたことによって、一致できる課題に基づいて幅広い層の結集をよびかけて闘ってきたこれまでの革新統一戦線は崩壊した。しかし、このような全国的な政治情勢のなかにあって、宮城県では「一日共闘」ではあったが社会党と共産党との共闘が維持されていた。作家の作間謙次郎氏らのよびかけによって、同年９月「宮城革新統一を考える会」が社会党元県委員長と共産党県委員長を顧問に迎えて発足した。これは従来の無党派層をも含め、政治革新を求める広範な勢力の結集をはかり得るあらたな動きであった。

　８１年５月には「平和・民主主義・革新統一をすすめる全国懇話会」（全国革新懇）が結成され、革新統一を願う多くの人々への励ましとなった。宮城革新懇は結成後、その時々の課題について学習講演会をこれまで９４回開催し、また核兵器の廃絶を訴えて毎月末の日曜日に続けられている平和行進は２１４回に及んでいる（いずれも９９年１２月現在）。

３．１．１２　日米共同指揮所演習「ヤマサクラ５」

　８３年秋、東北ではじめての日米共同指揮所演習「ヤマサクラ５」が仙台市苦竹にある陸上自衛隊駐屯地において実施されることが明らかになった。この陸海空に及ぶ日米の大軍事演習に対して、職組は統一労組懇を中心とした署名・宣伝活動および苦竹地区でのデモ行進、自衛隊駐屯地付近での反対集会に参加し、演習の即時停止を要求した。

３．１．１３　有事体制・国家機密法制定の策動とその背景

　８４年秋の臨時国会に「国家機密法案」を再び上程する動きや王城寺原日米共同演習の本格化などの情勢から、日常的に平和問題に取り組むことが重視され、職組に平和問題対策委員会が結成された。この年６月、核装備されている巡航ミサイル・トマホークが横須賀の米太平洋艦隊に実戦配備されることが明らかになり、反対運動が各地で展開されていた。この闘いに呼応して「核巡航ミサイル・トマホーク、核攻撃機Ｆ１６、対潜哨戒機Ｐ３Ｃくるな！！全国統一行動、八戸集会」がよびかけられた。平和問題対策委員会はこの集会への参加、反対署名の集約およびその危険性についての学習と宣伝に取組むことを決定した。青年部も多彩な宣伝を行い、八戸集会には４５名が参加して、宮城県からの参加者９２０名とともに集会の成功に貢献した。反対運動の広がりにもかかわらず、トマホーク搭載の疑いのある攻撃型原子力潜水艦タニーが横須賀に入港した。

　９月１８日から１０月２日まで、王城寺原演習場で行われた日米共同実動演習は、前年の陸上自衛隊苦竹駐屯地において実施された日米共同指揮所演習「ヤマサクラⅤ」を実戦化した本格的な演習であった。この計画に反対するために組織された「実動演習反対連絡センター」は、街頭宣伝や演習中の監視行動、２回にわたる抗議集会をもち強く抗議した。職組は平和問題対策委員会を中心に、街頭宣伝や監視行動に参加するとともに、学習会やスライドの上映会で、学内に演習の危険な実態を広めると同時に、９月９日の「演習反対宮城県集会」に１５４名、同月２９日の現地抗議集会には２９名が参加して抗議の姿勢を示した。

　８５年４～９月までに青森県三沢基地にＦ１６戦闘機が５３機配備され、三沢を「対ソ戦略基地」化することに抗議する集会が５月に三沢市で開催された。職組は１３名の代表団を組織して参加した。８６年、連続して毎年強行されるようになった陸上自衛隊と米海兵隊の日米共同実動演習が王城寺原演習場で行われた。この年はじめて陸上自衛隊の戦車と米海兵隊の上陸用舟艇を使って演習が行われ、実戦的・攻撃的要素の一層強い演習となっていった。職組は街頭宣伝や４度にわたる演習中の監視行動、抗議集会に、平和問題対策委員会を中心に参加した。

３．１．１４　消費税の導入

　中曽根内閣は８７年に大型間接税＝売上税の導入を、預金利息「マル優」制度廃止とともに通常国会に上程した。業者団体をはじめ国民各層は直ちに「大型間接税、『マル優』廃止反対各界連絡会」を結成し、反対運動が急速に広まった。職組は統一労組懇が提起した一千万署名活動に積極的に取り組むとともに、「各界連絡会」に加盟し、街頭宣伝・新聞意見広告などの活動を行った。３月８日、代々木公園で行われた「春闘勝利・売上税粉砕・「マル優」廃止反対国民大集会」（１６万人参加）には職組から１８名の代表を派遣した。４月の一斉地方選挙では自民党が議席を大幅に減らし、この法案は事実上廃案になった。

　前年に廃案に追い込んだ大型間接税＝消費税が、再び竹下内閣によって「政府税調」案として、国会に上程された。これは商品の取引き・サビースのすべての段階で課税する大衆課税であった。

　職組はこれまでの運動を引き継いだ「大型間接税反対宮城県各界連絡会議」に加わり、学習・宣伝・署名活動および決起集会の開催に取り組んだ。また、４月に代々木公園で開催された「新大型間接税粉砕国民大集会」には、宮城県各地の代表団９５０名に加わって職組から２５名が参加した。また、「消費税反対みやぎの大集会」や「意見広告」に積極的に参加し、９月１８日の中央集会に４４名の組合員が参加して、大きな力を発揮した。しかし、消費税３％は１１月に「税制関連六法案」の一部として国会で強行可決された。

３．１．１５　昭和天皇の死去

　８８年９月の昭和天皇の重病報道以来、「Ｘデー」を利用して天皇制イデオロギー攻撃がより一層強まった。戦後、昭和天皇の戦争責任が一切問われなかったが、その背景には、４５年８月の第二次大戦終了後における当時のソ連に対するアメリカの世界戦略があった。すなわち、とりわけソ連包囲網のアジアにおける拠点としての日本の重要性から、昭和天皇の戦争責任を追及せず、逆に皇室を最大限利用して米追随の日本を作ることを意図したのである。歴史的にアジア・大平洋侵略戦争の最高責任者としての昭和天皇はきわめて明確であるにもかかわらず、政府は天皇を「平和主義者・戦後復興の精神的支柱」として美化し、その重態の病状を利用して、一切の天皇批判を封じ込めるためにマスコミを最大限に活用した。

　一連のマスコミによる異常なまでの天皇・皇室美化の報道と、諸行事の自粛に対する批判が相次ぎ、職組の婦人部および青年部も学習会でこの事態の本質を考えることの重要性を討議した。１０月には東北大学平和と民主教育をまもる連絡会議の一員として、職組は天皇問題の反動的利用に反対する声明を発表し、内容を記した看板を大学北門前に立てて、教職員・学生・市民に職組の主張を訴えた。昭和天皇は８９年１月７日に死去し、政府は国民に「大喪の礼」など国家神道による服喪を強要した。

３．２　宮城県労働組合総連合（県労連）結成

３．２．１　結成までの歩み

　６０年の安保闘争後、日本の労働組合運動への右翼的攻撃が強められ、６０～７０年代にＩＭＦ－ＪＣ（国際金属労連）・電通労組・「同盟」などを中心に労働運動の右翼的再編が進み、企業内組合運動偏重・労使協調路線と特定政党の支持・排除の路線が顕著となってきた。このような労働運動の右傾化は、ナショナルセンターとしての総評、ローカルセンターとしての各県の県評の機能を弱体化させた。一方、日教組大学部をはじめとする資本と政党からの独立、政党支持自由の原則を掲げる労働組合は７４年に中央統一労組懇を発足させ、「組合員が主人公」の立場を貫き、広く未組織の労働者をも視野に入れた闘いと、国民の生活の向上をはかるための運動を展開してきた。

　総評が労働戦線の右翼的な再編成を内容とする「労働戦線の基本構想」を発表して以来、８７～８９年にわたって「真の闘う労働戦線統一」とは何かについて全国的な討議が展開され、それに基づく意思統一がよびかけられた。これに応えて８９年１１月２１日東京日比谷公会堂において、２７単産、４１地方組織、１４０万人の組合員で「全国労働組合総連合」（全労連）が結成された。同時に、宮城県労働組合総連合（宮城県労連）がローカルセンターとして結成された。

　職組は８９年３月の臨時大会でこの新しい労働運動の流れについて討議し、その後の執行委員会で「たたかう宮城ローカルセンター結成準備会」への参加と、準備会の綱領起草委員会はじめ各委員会への参加を決定した。９月、「ローカルセンター結成準備会」が６７単産・単組および３オブザーバーの参加で発足し、職組もこれに参加した。この間、新しい労働戦線構築の動きと意義について職組新聞の号外・「労戦」問題特集を４回発行し、また、「結成準備会」事務局次長阿部芳広氏および福島大学教授吉原氏を講師に学習会を開催して、意思統一の準備を進めた。１１月８日、「たたかう宮城ローカルセンター」加盟を審議する臨時大会が開催され、代議員５０名中賛成４１票、反対３票、保留６票で加盟が可決され、その後の批准投票では投票率８６．４％中賛成６１．３％で批准された。

　宮城ローカルセンター・宮城県労働組合総連合（略称；宮城県労連）は１１月１８日、加盟組合４０、総組合員１４，６７０名で結成された。結成大会では、「政党からの独立」「資本からの独立」「要求の一致に基づく行動の統一」の三原則をもとに、行動綱領と「労働者・労働組合の地方段階での要求の統一を政策として整理し、経営者や地方自治体に実現を迫る」など当面の活動方針を採択した。職組は結成準備委員会の委員に関本英太郎（当時職組副委員長）を、また発足した県労連の副議長に真壁完一を派遣した。

　一方、同盟の主導で進められてきた県労働運動再編成の動きとしては、旧同盟傘下の組合と旧県労評傘下の組合で社会党一党支持の組合および旧中立労連加盟組合の参加で、１２月１日「日本労働組合総連合宮城県連合」（略称；連合宮城）が発足した。結成に際し、連合は労使協調路線・特定政党排除をおもな内容とした「進路と役割」の承認、国際自由労連への加盟および統一労組懇をはじめ闘う労働組合からの訣別という“踏み絵”ともいえる加盟条件を決定した。この結果、県内の労働運動の中心となってきた県労評は、労働戦線に分断と選別をもち込んだ「連合」路線に屈服した形で、自らを解散することになった。

３．３　日教組大学部から全大教結成へ

　日教組大学部は８６年７月に開かれた総会で、８９年に全大教を結成して日教組から独立することを決定した。大学部は日教組中央執行委員会に対して決定に至る理由と経過を説明し、必要な規約改正を要望してきた。これに対して、日教組は８９年の日教組第６７回臨時大会の組織機構整備特別委員会報告のなかで、「８９年日教組定期大会で規約改正も含めて結論を得るよう検討する」と確認した。しかし、その後の組織機構整備特別委員会小委員会では、大学部の日教組からの離脱は「日教組組織の根幹にかかわる」「ほかに波及すると困る」などの理由で認められないと通告してきた。この事態をうけて大学部は、７月の総会、９月の大学部委員会で全大教を予定通り結成することを決定した。同時に、大学部は全大教結成と「労戦問題」とはとくに関係がなく、新組織は「連合」加盟の日教組にも、新しい教職員産別にも加わらず、加盟上部組織については一定の期間をかけて組合員討議を行うことを確認した。さらに、現在日教組加盟となっている県大学教組は、日教組脱退の手続きは取らず、当面日教組と全大教の二重加盟の形を取り、今後の日教組との関係を全国統一対応で調整したうえで、最終的に日教組からの協議離脱を目指すとした。

　同年９月、日教組組織機構整備特別委員会は大学部の「自立」を認めず、しかもこの問題を日教組の中長期の課題からも除外した。さらに、組織確立特別委員会は大学部の組合費納入人員減を認めなかった。このため、大学部は組合費納入を保留し、そのことによって、９月６日からの日教組大会への大学部代議員の出席ができない事態が生じた。大学部は１０月、各県代表者会議を開催し、日教組からの「離脱」に関する日教組執行部との協議について議論した。会議では、（１）日教済会員の資格の剥奪・制限は起こらないと考えられること、（２）日教組との協議事項として組合費納入、書記局の借室料および専従補償などの財政問題や今後の教育・研究活動での協力関係を維持できる見通しであることを確認し、１０月２８～２９日に全大教結成大会を行うことを決定した。

　職組は、これまでの日教組と大学部との協議を承認し、全国産業別組合としての役割を果たすために全大教の結成の意義を確認した。中央委員会では全大教結成大会に代議員を送ること、１１月８日に臨時大会を開催し全大教加盟を議案とすることを決定した。全大教結成大会は１０月２８～２９日に開かれ、これまでの経過報告を承認し、また運動方針を決定して、正式に全大教（全国大学高専教職員組合）が結成された。職組は臨時大会において代議員４８名全員の賛成で全大教加盟を採択した。全組合員による批准投票は投票率８６．４％、賛成７０．７％で批准された。日教組は１２月１５日に臨時大会を開催し、９月の日教組大会に参加しなかった１２県教組・１２高教組の組織離脱を決定したが、大学部には「会費納入状況をみて今後協議する」という態度を示した。全大教は組合費納入問題などについて日教組との協議を継続し、９０年５月に各県大学教組の日教組「退会届」を一括して全大教本部に提出、その取扱いを一任する方針が確定した。９０年７月、日教組定期大会は大学教組の日教組退会を承認し、大学部は解散した。９０年３月現在、全大教加盟は９５単組に上った。

第４章　国民のための大学をめざして

４．１　組合運動の新たな方向

４．１．１　定員外職員の「給与支給日の繰下げ」に対する闘い

　８０年、春闘の中央交渉で文部省は、「定員外職員は相当長期にわたって勤務している実態がある」ことを認め、給与の頭打ちを解消することを約束した。職組は１０月２１日の学長交渉で、頭打ち該当者約１００名に対して早期に不利益分を支給することを要求した。８１年１月１７日に、該当者全員に不利益分が支給され、なかには支給額が約３０万円に達する定員外職員があった。設定された組織拡大月間では、定員外対策委員会が中心となって、職組未加入である約８００名の定員外職員に組合への加入を訴える手紙を送った。その結果、附属病院の動物実験室に勤務する定員外職員がこぞって職組に加入するなどの多くの成果があった。

　７７年に医学部において定員外職員の給与支給日がこれまでの毎月５日から１７日に繰り下げられた。その動きは非水研、通研、図書館に拡大されようとした。職組は支給日の繰下げは「給与は速やかに支給しなければならない」という国公法と労働基準法に違反すると指摘し、その撤回を要求した。支給日の繰下げが部局に広く拡大されようとする動きに対して、職組は反対闘争を強め、１１月評議会に出席する評議員に組合の主張を訴えたチラシを手渡した。１２月１７日の学長交渉で、「定員外職員は弱い立場にあり、支給日繰下げの同意を求められた場合、これに応じざるを得ない」と抗議し、繰下げに関しては職組と協議するように申し入れた。その後、非水研、通研、図書館の給与支給日の繰下げは一旦中止された。

４．１．２　授乳所の認可保育所への移行

　職組は８０年４月、第一授乳所「片平保育所」の法人化に関して基本的な考え方を決定した。さらに、女性教職員１，６００名を対象にして「保育要求」を調査するアンケートを実施し、その７０％が保育を希望していることを明らかにした。大学当局は法人化に際して、当局が土地・建物および設備を提供して、運営は法人片平保育所理事会が行う方針を明らかにした。設立準備にあたる設立委員会が設置され、８１年４月１日開所を目指して活動を開始した。

　このような動きに対して、職組は保育所問題対策委員会を設置して、教職員の保育に対する要求実現と保育所職員の労働条件をまもる立場から積極的に発言した。当初、学長は片平保育所への援助は法的にできないと消極的であったが、その後の学長交渉で学長は、「保育所を教職員が利用してきたことは、福利厚生のうえで意味があった」と表明し、法人化に向けて大学としてできることを検討すると約束した。その結果、施設清掃費の一部負担と保母２名を暫定処置とすることを庶務部長交渉で約束させた。

　８１年６月に、職組は「東北大学保育所の歩みを正しく継承、発展させ全学の協力と合意で法人化を実現しよう－全教職員の皆さんへの訴え－」を発表した。６月、職組は事務局に「（１）暫定処置とする保母２名は保育定数が６０名から９０名になる年度の３月３０日まで延長する、（２）第二授乳所『北四保育所』の法人化については協議を継続し、方向が見出せるように相互に努力する」を提起し、その後、事務局長との間で確認文書を取り交わした。

　東北大学第一授乳所「片平保育所」の法人化は８２年１月に厚生省の認可がおり、同年４月、社会福祉法人「木這子」かたひら保育園の正式名称で、定員６０名の認可保育所が発足した。職組は対策委員会で、全職員の新保育所への移行、移行後の職員の待遇および「東北大学の保育をすすめる会（仮）」の設立などの協議を行った。一連の動きは「法人認可保育所『かたひら保育園』の発足と今後の課題」にまとめられて、日教組大学部第１１回保育所集会で発表された。また、東北大学を離れた「かたひら保育園」の職員は新たに「かたひら保育園労働組合」を結成し、職組はその結成を援助した。定員６０名で発足した保育園は、０才保育を中心に多数の利用希望者があったことから、８３年には７２名の定員に増員された。

　８４年、北四保育所の法人化に関して仙台市は、「８６年度認可を想定し、当初は総定員３０名規模で発足し、４５名規模にもっていく方向で」との意向を表明した。８５年６月、学長は「８６年４月法人化」の意向を北四保育所（ことりの家保育所）に提起した。職組対策委員会は、（１）「ことりの家保育所」の現状と問題点、（２）「かたひら保育園」３年間における経過と問題点などについて、職員および利用者の意見を中心にして検討を始めた。同時に北四地域の保育所利用者および利用希望者を対象にしたアンケート調査を行った。

　文部省は事務局に、（１）法人化後も病院の看護職員の子女を優先的に利用させるのか、（２）法人化後はこれまでのような授乳施設を開設することはない、（３）法人化後の保育所に大学の経費を支出できない、の３点について、大学の意向を回答するように求めてきた。事務局は、看護職員の子女を優先する趣旨に変更はない、法人化後に新たな授乳施設の開設はしないし、法人に大学の予算を支出しないと文部省に回答する旨を職組に伝えてきた。これらは、保育所が将来的にどのような経過をたどるか不明な段階では回答できない内容を含むことから、職組は事務局への回答を留保した。しかし、１１月、仙台市は国からの補助財源の削減を理由にして、当初の８６年４月開設に向けた認可が不可能になったことを通知してきた。

　８７年仙台市と大学当局は、８８年４月に「ことりの家保育所」を法人化することで合意した。職組の対策委員会は、建物の新築と、産休明けから就学前までを対象にした当初定員６０名を確保することを実現する活動に入り、１０月に施設の建設が着工した。さらに職組は北四保育所の法人化に際して、（１）現職員全員を新保育所で採用すること、（２）現在の保育園児はすべて新保育所に移行すること、（３）職員の待遇が現行を下回らないことを大学当局に申し入れた。また、先の文部省通知に対する大学当局の回答について職組の合意が求められ、検討の結果１０月３０日に双方で確認書を取り交わした。このような経過をたどって、８８年４月「ことりの家保育園」が社会福祉法人「木這子」の運営する認可保育園として、定員６０名で発足した。

４．１．３　高齢者問題対策

　定員削減がますます強められ、この政策を一層推進することを企図して退職勧奨制度が強く押し付けられるようになり、勧奨による退職拒否に対して制裁を科すことが政府部内で検討されていることが伝えられるまでになった。また医療・年金・雇用など福祉全般の財源を削減する姿勢が強められ、ここに少子化の議論が加わることによって、７０年代には高齢者問題が社会的な関心事となった。この状況から職組は、７５年に高齢者対策委員会を設置し、その検討に着手した。

　７６年９月、総評主催の「全国高齢者大会」に職組から代表が参加し、これをうけて「学内高齢者懇談会」が開かれ、（１）勧奨年齢の統一、（２）再就職の保障、（３）医療制度の確立、（４）年金制度の確立、（５）退職後の組織化と学内交流の５項目が要求としてまとめられた。

　７８年８月の人事院勧告は、「５６歳昇給延伸、５８歳昇給停止を内容とする給与表改正」と「６０歳定年制の導入」をはじめて打ち出した。職組は学内高齢者集会を開催し、ここでは、技術系職員に対して行（一）四等級昇格が退職勧奨の道具にされていること、および臨時職員では年齢制限による勧奨と厚生年金についての問題点があることなど切実な問題が出され、次の２点を高年齢職員の差し迫った要求とすることを決めた。（１）行（一）五等級での退職はさせないこと、および退職勧奨と同時に四等級に昇格させ、四等級の勧奨対象者は三等級へ、行（二）職員については一等級に昇格させること（２）教官と同じ６３歳に勧奨年齢を引き上げること。

　７９年１２月に「中高年齢者の生活実態調査」を実施し、これをもとに翌年１月の川渡職場懇談会に新たに設置した高齢者分科会で、５６歳昇給延伸、５８歳昇給停止および６０歳定年制の導入と退職金削減反対を最重要課題として取り組むことが話し合われた。しかし、政府は７９年１２月の給与法改定で人事院勧告通りに昇給延伸・昇給停止を、また「共済年金法改定」によって６０歳定年制を前提にした「年金の６０歳支給」をそれぞれ闇討ち的に実施した。また７９年１１月、６０歳定年制を閣議決定した。さらに、政府は８０年に退職金１０％削減を含む「退職手当法」の改正案を国会に提出したが、国民春闘の闘いのなかで廃案に追い込まれた。

４．１．４　６０歳定年問題

　８０年、政府は退職手当法の改悪と定年制導入を閣議決定し、国会に提出した。退職手当法は勤続２０年以上の勧奨退職者に対して退職金を２０％加算するこれまでの方式を、８１および８２年で１０％加算に減額しようとするものであった。一方、定年制法案は「行政改革」の目玉として、８５年から国家公務員に６０歳定年制を実施しようとしたものであった。

　公務員共闘は二法案の国会審議の山場にストライキを含む統一行動を設定した。職組は日教組と大学部の決定によって批准投票を行い、５８．９％で批准した。また、法案成立を阻止するために、総理府・人事院への中央交渉に参加し、また地元選出議員への要請活動などに取り組んだ。二法案は盛り上がる反対運動のなかでともに廃案となった。しかし、これらの法案は９月の臨時国会に再提出された。日教組と大学部は中央抗議行動を１０～１１月に三波にわたって行い、職組も各職場における一斉昼休み集会をもった。しかし、退職手当法と定年制法は継続審議となったが、給与法・週休２日法は成立した。

４．１．５　婦人部結成２０周年記念行事

　８８年、結成２０周年を迎えた婦人部は、その記念行事として農学部の木村修一先生による講演会「働く婦人の健康と栄養」を開催した。アトラクションとして琴の演奏を楽しんだのちに、その後の懇親会では婦人部の創設準備期からを振り返った話題、とりわけ保育所づくり、学童保育運動などに大きな成果を実らせてきたことに思いを馳せた。参加者の多くが若い大学職員として婦人部にかかわり、結婚・子育てのなかでの活動であったが、これから老後をどのように生きて行くかなど、新たな課題に取り組んでいくことを決意しあった。

　この節目を期に「婦人部のあゆみ」第１１期から第２０期を発行した。また、２０周年を記念した「春のミニコンサートと交流の夕べ」を開催した。

４．１．６　春のミニコンサート

　８９年４月、婦人部結成２０周年を記念して企画された「春のミニコンサートと交流の夕べ」が、楽しく元気が出る文化行事として定着し、毎年行われるようになった。生演奏を肩を凝らさずに聴け、軽食や飲み物もあり、子連れでも参加できるという企画がその要因であった。加えて、ときには婦人組合員の作品の展示もあるというユニークな発想が参加者の好評を得た。９８年には職組創立５０周年記念行事の一環として取り組まれ、３０７名の参加者によって大きな成功を収めた。

　これまでのコンサートは次の通りである。

1989　多賀城アンサンブル室内楽の夕べ
1990　多賀城アンサンブル室内楽の夕べ[40周年記念行事]
1991　東北大学マンドリン楽部　マンドリンの夕べ
1992　佐藤よしみシャンソン・コンサート
1993　酒井さえりジャズの夕べ
1994　コンフント・トラピチェ　フォルクローレコンサート
1995　本田宏彦　ALPA（アルパ）の夕べ
1996　わらび座笛とうた、民話の夕べ
1997　仙台フィルハーモニー管弦楽団女性奏者によるカルテットの夕べ
1998　山内すみえ　春のソプラノ・コンサート
1999　八嶋博人ヴァイオリン・リサイタル[50周年記念行事]

４．１．７　４０周年記念行事

　８９年の１０月２９日に組合創立４０周年を迎え、組合の団結を深めるとともに、労働運動が大きく変化するなかで、職組の４０年を振り返る記念事業を行うことを中央委員会で決定した。実行委員会は本部執行部の教宣、文化・組織・青年・婦人部・各支部１名および各種事業ごとの実行委員で構成し、ほぼ全支部から実行委員が派遣された。計算センター支部の小玉邦子氏を実行委員長として、支部対抗ソフトボール大会・囲碁大会・文化講演会・記念式典およびレセプション・音楽会（婦人部を中心に）などを事業内容とした。

　文化講演会は１１月３０日、メインテーマを「２１世紀に向けて、みつめなおそう食糧と環境」として開催され、「私たちの食糧は、いま」水間豊氏（農学部）および「地球的規模の環境変化をめぐる諸問題」川崎健氏（農学部）の講演が行われた。なお、ここには２０名の市民の参加があった。職組の旗開きをかねて、１月１９日記念式典およびレセプションが、１４１ビルですべての支部から１５０名の参加者で行われた。会には川渡支部から７名が参加し、婦人組合員のさまざまな出展や保育所支部の子供の絵などが会場をなごやかに飾って会を盛り上げた。記念式典では５１名の永年組合員が表彰され、「労働組合と民主主義－東北大学職員組合の歴史をふりかえって－」と題して吉田正志氏（法学部）による記念講演がなされた。記念文化行事は婦人部主催で４月２０日戦災復興記念館において、多賀城アンサンブルによる「室内楽の夕べ」が開かれた。

４．２　大学「改革」への対応

４．２．１　「筑波法」後の展開

　７３年筑波大学法案の成立によって、大学をめぐる情勢には、政府・財界による大学改革の動きが活発化するという新しい局面が生じた。この新たな展開に対して、職組は憲法と教育基本法の民主的原則を重視した国民のための大学づくりの運動を一層具体的に強化することが求められる情勢におかれた。７４年にはさまざまな「新構想大学」に関する答申が出され、この動きを補完する意味をもった「学校教育法改正案」が国会に上程された。法案には「学部を置くことなく、大学院を置く」ことができる独立大学院構想が意図され、「教育大学大学院」「技術科学大学院」構想のための法律上の準備となるものであった。一方、「筑波型」の大学の管理運営の導入によって、研究費の基準的経費が抑制され、かわって重点配分方式の予算配分が恒常的となり、分野によって予算規模に大きな偏りを生じ、大学間あるいは分野間の歪みが以前にもまして顕在化してきた。

　職組はこの状況を具体的に明らかにするために白書運動を展開し、大学人が現在の大学の状況をよりリアルに認識するための取組みをした。とくに、大学に新たな「目的大学」を設立させることによって、政府・財界主導による国立大学の多様化を果たし、自主的・民主的な大学改革の動きを封じるねらいがあることを強調した。

４．２．２　放送大学と相次ぐ教育大学の設置

　大型投資による「筑波型」の直接支配方式は、全国の大学の反対と高度経済成長の破綻による財政危機によって頓挫し、文部省は新たに「放送大学」と新構想の「教育大学」の創設へと重点を移していった。このような動きは、大学進学者の増大と入試改革などを背景にして、新しい大学像として高い社会的な関心をよんだ。そのようななかで、職組はさまざまな教研集会で積極的な活動を展開して、多数のレポートを提出し、宮教協が中心になって提唱した教育大運動を通して、国民に政府の意図を明らかにし、真に目指すべき大学の姿を訴えた。

　８０年、第二次臨時行政調査会はその中間報告において、日本の産業構造にそぐわない学部および研究所等の削減、大学教員・看護婦の削減を、行政改革の一環として打ち出した。これをうけて、自民党は議員立法で学部・学科・大学院等の設置を３年間抑制することを内容に盛り込んだ「大学抑制法案」を国会に上程した。この法案は憲法と教育基本法を踏みにじる行動を政府が公然と開始したことを明確に示したものであり、大学部を中心にした強い反対運動によって参議院で廃案に追い込まれた。しかし、「放送大学法案」は同じ国会で可決成立した。「文部大臣が学長を選任する」、「教授会は人事権を持たない」、「カリキュラムに相当する番組編成権を理事長がもつ」など、この法案がもつ既設の国立大学にはないきわめて反動的な管理体制の内容が強く批判された。さらに、兵庫教育大学・鳴門教育大学など新教育大学の設立が相次ぎ、教員養成における政府主導の政策的な介入が明確な形となってきた。

４．２．３　臨調路線が描く大学像

　８１年になって臨調路線が一層明確になり、その基本路線は、国民の負担を重くして、技術立国を目指す新たな科学技術政策に基いた大学の再編にあった。その内容は、（１）大学の拡充を抑え、目的および性格の多様化をはかる、（２）一般教育には放送大学を活用し、国公立大学の設置形態を変更する、（３）私学助成はプロジェクト研究中心に切り替え、財政面からの統制・再編をはかる、（４）学費については受益者負担を強める、（５）プロジェクト研究中心に研究費・研究者の配置を考える、などを構想したものであった。臨調路線は全体として「合理化」「効率化」を前面に押し出したものであり、これらの追求は大学における教育・研究の実態となじまない性格を数多く含んでいた。具体的には、（１）共同利用を促進し、機器のフル操業をはかる、（２）研究評価の仕組みの明確化、（３）期限付き研究従事者の処遇の検討、などがうたわれ、教育・研究の実態を無視して「稼動率の低さ」をもっぱら問題にしたものであった。この方針に沿って、農場や演習林利用に露骨な攻撃がかけられ、これらの施設が農学や生物学の重要な教育・研究の場になっている実態を無視して、施設から得られる収入と運営経費の比較という単純な評価のみに視点をおいた指摘がなされた。

４．２．４　行革審の設置

　８１年７月に第二臨調の第一次答申が出された。答申に基づいた具体的な大学への攻撃として、農学部・速研が行政監察の対象となり、研究テーマの選定理由など研究者の意思にまかされている部分にまで立ち入った監察がなされた。職組は大学の自治の根幹にかかわるこのような行管庁による侵害に強く抗議し、監査報告から選定理由などの部分を削除させた。

　８３年３月に第二臨調は第五次答申を最後にその作業を終了し、答申をうけて臨時行政改革推進審議会（行革審）が発足した。行革審設置法では行革審が出す提言は国会決議より尊重されるという超国会的権限が与えられ、第三臨調の設置とみなされるものであった。同年５月に政府は行政改革の具体化方策、すなわち「行革大綱」を閣議決定した。ここでは臨調答申や行政監察に盛り込まれた内容を既定方針として、国立大学に対する具体的方針として次の点を強調した。第一に国立大学において、その新設、学部・学科の新増設および定員増を全体として抑制し、時代の変化に対応した学部・学科の転換・再編成を進める。第二に研究所等の整理再編（共同利用機関化を含む）を行うとともに、本部・学部等の事務機構の一元化を一層推進する。第三として大学・学部の附属施設について、その必要性を見直し、整理再編を含めてそのあり方を検討する。さらに、文部省は昭和５９年度国立学校特別会計予算の取扱いについて、大学予算を厳しく抑制する姿勢で臨むことを打ち出した。これは大学が教育・研究上の必要性から行う概算要求について、本来の大学の権限を著しく抑え、その結果、大学の自治をも否定する内容であることを示したものであった。

　このような政府・財界による大学の教育・研究への攻撃に対応して、職組は、文部省からの調査に対して大学は必ず教授会や評議会等の審議機関で検討を加えてから回答すること、職員の勤務条件の変更を伴う事項に関しては組合との協議・合意を得てから回答することを学長および部局長に対して強力に申し入れた。さらに、各種教研集会で積極的に臨調路線による大学の破壊を研究討議して、闘いの基礎を積み重ねた。

４．２．５　臨教審答申

　８４年９月に発足した臨時教育審議会は半年余りで「審議経過の概要」をまとめ、翌８５年の６月には「教育改革に関する第一次答申」を発表した。答申は「当面の具体的改革提言」として、大学入学選抜制度に「共通テスト」を創設し、その利用の自由化を打ち出した。また、“陰の臨教審”ともいうべき「政策構想フォーラム」が「学校教育行政の行革提言」のなかで、国立大学の法人化と大学運営主体の確立という具体的な提案を行った。さらに、行革審科学技術分科会報告では、首相を議長とする科学技術会議に、「大学の学部学科の構成および大学における研究のあり方」について必要な意見を述べる権限を与えることを主張した。

　このような大学を含む高等教育への政府の介入を容易にし、大学の自治の弱体化をはかる政策が中曽根内閣のもとで次々と打ち出されて行った。８６年４月臨教審は第二次答申を発表した。答申では、戦前および戦後教育の連続性を強調することにより戦後教育改革の評価を低下させ、その延長線上に生涯教育体系への移行の促進を位置付けることによって、公教育の解体と受益者負担の強化、そして権力の教育への介入を容易にする論理を展開していた。さらに、「ユニバーシティ・カウンシル」の設置の提言は、財政および行政誘導を強める状況のもとで、大学の「個性的な発展」をはかることによって、教育・研究への財界・政府の介入および管理強化を容易にすることを意図したものであった。この方針をうけて、文部省は国立大学事務局長会議で、８７年の予算要求に臨教審の「教育改革」を色濃く盛り込む方針を説明した。

　このころ、東北大学では過去１０年で、総予算に占める科研費および各種共同研究・委託研究費の割合が著しく増大し、そこから生じる専門分野間の歪みが大学運営に一定の影響を及ぼしていることが明確になってきていた。職組はこのような情勢をふまえて、各種研究集会、組合学校特別講座「臨教審で大学はどうなる」などを通して、臨教審批判と大学改革についての討議を深め、組合員の理解と取組みを強化することに努めた。

　臨教審第一次答申で盛り込まれた「共通テスト」に関して、文部省はその実施に向けた「新テスト」中間報告を発表し、それまで実施に難色を示していた国大協も受入れの意向を表明した。この「新テスト」は臨教審の「共通テスト」よりさらに競争原理を強めたものであり、これまで以上に、選別と差別を基本にした教育制度の改編が押し進められる恐れがあると指摘されていた。

４．２．６　大学への外部資金導入の強化

　臨教審は８７年４月に第三次答申を提出した。答申は「高等教育機関の組織・運営の改革」と題して、（１）高等教育財政、（２）大学の組織と運営、（３）大学の設置形態の３点に絞り、これまでの考え方をより具体的にした内容であった。（１）については、「多元的な資金導入」を促進するために「産官学」の「連携と協力」関係の強化を推進するとし、（２）については、学長および学部長等の「執行機関」と評議会・教授会の「機能的な役割分担の徹底」を企図したものであった。さらに、（３）については、「国の関与のあり方、管理・運営制度、教職員の身分処遇上の取り扱い、現行の設置形態からの移行の措置」などの問題に対して中長期的な調査研究を進めることの必要性を述べたものであった。

　ここからも明らかなように、大学に財政的にひっ迫した状況を作り出し、一方で、校費に頼らない外部資金導入を容易にする道を用意するという方針が答申から読み取れた。これは財界と結びついた教育・研究を大学にもち込み、大学の自治を財政的な側面から弱めることに直結するものであった。そのためには学長・部局長の権限強化が必要であり、結果として、大学の民主的な管理運営の弱体をきたす恐れを生じさせるものであった。

　職組は、臨教審の本質の理解を全学に求めるために、平和と民主教育を守る連絡会議主催「大学再編攻撃と大学の自治」、宮城県大学関係団体連絡会議主催「教育臨調と大学問題」、組合学校「大学の未来と臨教審」「臨教審と大学の危機」など、講演会や学習会を数多く組織した。８７年８月に臨教審は最終答申を発表して３年間の任期を終了した。四次にわたる答申は、中曽根内閣が掲げた「戦後政治総決算」の方針に沿って、憲法・教育基本法の理念を真っ向から否定し、政府・財界からの要求に応える「教育改革」そのものであった。

４．２．７　大学審議会の設置と国立学校設置法・教特法「改正」案の強行採決

　８７年９月、自公民３党の強行採決によって大学審議会設置法が可決され、臨教審路線の本格的な具体化がはかられた。大学審議会は大学に関する基本的な事項を調査審議し、文部大臣への勧告権をもつ強力な組織であった。２０名の委員は内閣の承認を得て文部大臣が任命するもので、「大管法」の現代版といわれた。さらに、竹下内閣は、臨教審答申の本格的実施を目指し、国立学校設置法、教特法など六法案を国会に上程した。国立学校設置法では総合研究大学院の設置が内容に盛り込まれ、大学院大学が文部省の主導で推進される端緒となった。また、これらの法案では入学選抜制度における新テストの実施、および教員の新規採用者に初任者研修を義務付ける制度の導入がはかられ、国家統制による人づくり、教師づくりを意図したものであった。　こうした反動的な法案に対して、職組は春闘と結合して「臨教審路線・反動的教育法案反対、教育予算要求実現」の教育署名と大型間接税反対の二大署名活動を展開した。また、中央に設置された国民大運動中央実行委員会のよびかけによる「教育危機突破・反動的教育法案反対」県民集会に取り組み、これら悪法の廃案のために闘った。しかし、国立学校設置法と教特法の二法案は、議会制民主主義を無視した短時間審議と自公民の強行採決によって可決された。

４．２．８　附置研究所の廃止転換

　臨教審路線の進行に伴って、文部省による大学再編のための「行政誘導」が活発化してきた。誰の目にも強引な文部省の姿勢がみえるようになり、スクラップ＆ビルドなる言葉が学内で慣用的に使われ始めた。職組は政府の大学への介入が明確になり、大学内にあきらめにも似た状況が生まれつつあるときこそ、大学の自治と学問の自由をまもり、大学人による自主的な改革が必要であるとの認識から、民主的なルールに基づいた全構成員による真摯な討議をよびかけた。さらに、学術審議会の一方的な研究所評価について、教文部合宿を開催して研究所の現状の把握に努め、自主的な改革を支援した。

　８７年４月、金研の改組に続いて、４８年間続いた農学研究所が廃止され、遺伝生態研究センターに転換された。これは東北大学の基本的研究機関が文部省の強力な圧力で廃止されたもので、これまでの大学の歴史にない、大学の自治を無視した暴挙であった。これに伴い、農学研究所は大学附置研究所から１０年の時限がついた「センター」へと格下げになり、教授会が廃止され、さらに何ら財政的措置を伴わずに農業経済部門の農学部への配置換えが強行されるという、これまでに例をみない内容であった。このような動きは、文部省による片平地区研究所の再編が大詰めにきていることを実感させた。東北大学は８６年９月に「片平地区長期計画説明書」を文部省に提出したが、学問的な議論よりも「文部省に理解され易い」ことが優先される内容であり、臨教審路線に沿った産学共同を推進する議論に終始していた。学長交渉でこの点を追求した職組に対して、学長は“学内合意をまっていたのでは間に合わない”と回答し、このことに大学自治の解体へ大学当局が自ら歩んでいる姿が象徴されていた。

　８９年には高速力学研究所が流体科学研究所に転換され、その後、選鉱精錬研究所が素材工学研究所に、非水溶液化学研究所が反応化学研究所に転換された。

４．２．９　大学教員の業績評価と寄付講座

　臨教審第三次答申で打ち出された「大学教員の業績評価」や「任期制の導入による教員の流動化の促進」の具体化として、国大協第一常置委員会は「各大学へのアンケート」に基づいた「大学教員の教員評価について」を提言した。

　職組は、この問題の慎重審議と、国大協の提言内容の学内公表を学長に申し入れた。同時に、みやぎ婦人研究者の会からのよびかけに応えて、科学者会議宮城支部と共催して、「研究者の雇用と人権」と題するシンポジウムを開催した。シンポジウムでは「研究者の雇用をめぐって」「大学教員の評価について」「婦人研究者問題についての提言」「理学部における公募の経験」の話題提供を中心にして、今日大学にかけらている攻撃の本質について議論を深めた。

　東北大学への寄付講座の設置の動きが始まり、学長からの問題提起が各教授会になされた。職組は他大学の例などの検討を進め、研究内容・人事などについて、大学の自治と学問の自由の観点から検討を開始した。

４．２．１０　大学審議会答申と大学院再編

　８８年、文部省は大学審議会に「大学などにおける教育・研究の高度化、個性化および活性化などのための具体的方策について」を諮問した。内容として、教育・研究の高度化、高等教育の個性化・多様化、組織運営の活性化が盛り込まれていた。これに対して、大学審は「大学院制度の弾力化について」を答申し、各大学院が目的に即して多様化することによって高度化・活性化をはかり、同時に生涯教育や国際化に対応できる新たな機能をもつべきであるとした。

　職組が一貫して掲げてきた国民のための大学づくりでは、教育・研究がもつ多様な側面や大学が自主的に捉えた社会的な要請に具体的に応えていくことのできる大学を作っていくことを主張してきた。大学審答申がいう大学の「目的に応じた多様化」は、政府・財界が求める「社会的要請」に対応したものであることは明確であり、さらに、大学院の再編によって目的別の大学院を創設するということは、学部と大学院教育との一貫性を断ち切る意図であると読み取ることができた。答申は博士課程の目的規定の変更が必要であるとして、現行の修士課程にみられる複線型を博士課程にもあてはめて、大学院全体を目的別に多様化するための設置基準の改定を求めた。これに対して日教組大学部は、現行の博士課程の目的規定の変更はまったく必要がなく、むしろ修士課程の目的規定を博士課程に統一したものにすべきであると主張した。

　答申は多様な大学院創出のために、学部をもたない大学院のみの大学、学部に基礎をおかない独立大学院の拡大、大学以外の研究機関と連携した大学院など７つの類型を提示した。このような構想は、「社会的要請」の名のもとに多様な大学院が設置されることにより大学院の「各種学校化」が生じ、大学院教育の一貫性が失われ、結果として修了者にさまざまな格差をもたらすことが危惧された。

４．２．１１　広域科学部構想とその破綻

　６９年本川学長による「新生東北大学」声明を契機に、「東北大学教育改革」が教養部の改革を１つの焦点にして議論されてきた。８４年６月に教養部教官の大学院参加および「広域科学部」創設が８５年度の概算要求案として正式に承認された。職組はこの案を学内で討議し、（１）２種類の教官をなくすこと、（２）教養部の教官の教育・研究条件の改善、（３）一般教育および専門教育の改善などに、この案が成果をもたらす可能性をもつことを指摘した。そのうえ、専門教育と一般教育の楔形カリキュラムの検討、総合科目やプレゼミなどの新しい方向が有意義になるための学問体系の裏づけや教育実践の積み上げなど、今後に残された課題について議論を重ねた。

　９０年、教養部改革案として作られ、種々検討を重ねてきた広域科学部構想は、１８歳人口の激減などを理由にした学部新設の制限という文部省の方針によって事実上破綻した。これによって、教養部が抱える諸問題は、あらためて全学的に解決を急ぐ課題として振出しに戻った。しかし、全学的なコンセンサス形成の積極的な意思が見受けられず、それらを公的に論議する機関も学内にできていない状態が続いた。職組はこのような状態への危惧から大学審答申を議論し、教養部改革を中心に全学的なコンセンサスを探る「東北大学改革ワーキンググループ」を結成し、シンポジウムを開催するなど学内世論の形成に努力した。

東北大学職員組合50年史 第２部

激動（１９８０～９０年）

第３章 労働戦線の右翼的再編に抗して

３．１ 対米従属下の国民生活の危機の深まりと労働運動の転換

３．１．１ ８０年代の政治・経済状況

３．１．２ 国政の右傾化、第二臨調・中曽根内閣の基本路線

３．１．３ 「臨調路線」の導入

３．１．４ ８０年代の春闘

３．１．５ ８１年春闘

３．１．６ ８２年春闘「人勧凍結」反対闘争

３．１．７ 「人勧凍結」反対闘争を引き継いだ８３年春闘

３．１．８ ８４年～８９年の春闘

３．１．９ 平和と民主主義をまもる闘い

３．１．１０ 強まる改憲策動との闘い

３．１．１１ 宮城革新統一を考える会（宮城革新懇）結成

３．１．１２ 日米共同指揮所演習「ヤマサクラ５」

３．１．１３ 有事体制・国家機密法制定の策動とその背景

３．１．１４ 消費税の導入

３．１．１５ 昭和天皇の死去

３．２ 宮城県労働組合総連合（県労連）結成

３．２．１ 結成までの歩み

３．３ 日教組大学部から全大教結成へ

第４章 国民のための大学をめざして

４．１ 組合運動の新たな方向

４．１．１ 定員外職員の「給与支給日の繰下げ」に対する闘い

４．１．２ 授乳所の認可保育所への移行

４．１．３ 高齢者問題対策

４．１．４ ６０歳定年問題

４．１．５ 婦人部結成２０周年記念行事

４．１．６ 春のミニコンサート

４．１．７ ４０周年記念行事

４．２ 大学「改革」への対応

４．２．１ 「筑波法」後の展開

４．２．２ 放送大学と相次ぐ教育大学の設置

４．２．３ 臨調路線が描く大学像

４．２．４ 行革審の設置

４．２．５ 臨教審答申

４．２．６ 大学への外部資金導入の強化

４．２．７ 大学審議会の設置と国立学校設置法・教特法「改正」案の強行採決

４．２．８ 附置研究所の廃止転換

４．２．９ 大学教員の業績評価と寄付講座

４．２．１０ 大学審議会答申と大学院再編

４．２．１１ 広域科学部構想とその破綻

東北大学職員組合50年史　第２部