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東北大学制度検討委員会
B目標評価・財務会計委員会

  委員長 小田 忠雄 殿

2000年8月30日

東北大学職員組合
法人化対策特別委員会委員長
法学研究科・教授
吉 田  正 志

「国立大学法人東北大学の制度(目標評価・財務会計)(案)」に対するパブリック・コメント

 去る8月21日付で、標記案に対するパブリック・コメントの募集がありましたので、東北大学職員組合法人化対策特別委員会として下記の通り提出いたします。
 なお、本法人化対策特別委員会及び本パブリック・コメントの性格については、A委員会案に対するパブリック・コメントに記したものと同様ですので、ご参照ください。

A:全体的事項

  1.  パブリック・コメント募集期間について

     A委員会案のパブリック・コメント募集については、示達から締切までおよそ1ヶ月近い期間が設けられていたため、それなりに検討を加えることができた。しかし、今回のB委員会案については、それがわずか10日しかなく、慎重に検討するには必ずしも十分な期間とはいえない。職員組合員に広く意見を求める余裕も少なく、結果的にこのパブリック・コメントもごく限定された事項に限ってのものとならざるを得なかった。
     よって、十分に検討を加えられずに残された事項については、9月評議会への「中間報告」を待って、改めて意見を表明したい。

  2.  パブリック・コメントに対する回答について

     少なくともA委員会案と同様、委員長より回答せられたい。

  3.  不確定要素と東北大学の自主性・自立性について

     委員長の断る通り、「法人化」に関する法令が未だ示されていない現状では、B委員会案に不確定な部分が多いものにならざるを得ないことは理解できる。
     しかし、東北大学にとって望ましい「法人化」を成し遂げるためには、法令の成立を受け身的に待つだけでなく、法令の中身に積極的に注文をつけていく態度が不可欠である。その点で、「大学側から案を出すことも必要である」(10頁)、「国大協は強く要求すべきである」(12頁)などの姿勢は重要である。この姿勢はさらに強めつつ堅持すべきである。

  4.  大学の「倒産」という事態の存否等について

     IVには、大学の経理について詳細な説明がなされているが、「非公務員化」が予定されている教職員にとって重大関心事の1つは、はたして大学が倒産するという事態があり得るのか否かであり、このことについてはまったく触れられていないように思われる。この点についてB委員会はどのように考えているのか。

B:個別的事項

III(3)2.及び3.について(5頁)

 2.3.において、6年程度の中期目標期間で評価を行うことの困難性、非妥当性が非常に具体的に明らかにされている。にもかかわらず、6年間を中期目標期間とし、その範囲で計画を立て評価を受けること自体は丸のみしてしまっている(5.の記述の中に若干の対応策が見られるが)。むしろ,中長期的事項については,目標・計画を掲げつつ,6年間では結果が出ないことを積極的に述べるようにしていくべきである。制度の不備を指摘しなければ、是正は行われないだろう。

III(6)4.について(7頁)

 教職員の人事の適正化に関する目標について、「3)(非公務員型の活用)」とはいかなるものか。具体的内容を示されたい。

III(6)5.について(7頁)

 事務等の効率化・合理化に関して、現場を薄くし中央に集中する方向を考えているようだが、むしろ、現場に十分な人員を配置し、管理部門をこそ効率化すべきであろう。この間進められてきた学科事務の集中化などによって、結局、非常勤職員によって業務を支えざるを得なくなり経費増を招いたり、教員の事務的業務負担が増え教育業務に支障が生じる事態となっていることを踏まえるべきであろう。

III(7)1.について(7頁)

 「第2に、研究教育の向上には政府の財政負担増はあり得る。」という記述の根拠は何か。先行する独立行政法人では10年間で10%の総額経費の削減を無理矢理目標に記述させられている。「研究教育の向上には政府の財政負担増が必要であり,国大協などを通し働きかけると同時に、世論形成をも図る」などとすべきではないか。

III(8)2.(8頁)について

 国立大学評価委員会・大学評価・学位授与機構の評価の他に、「本学で、1)教員の個人評価を行い成果の最大化を図る」とあるが、この教員の個人評価とはいかなるものか。具体的内容を示されたい。

III(8)3.(8頁)について

 社会への説明責任に関する目標として、「2)評議会、運営協議会、部局教授会、施設運営委員会の議事要録を公表」、とあるが、役員会の議事要録も公表すべきである。

III(9)5.(8頁)について

 その他の重要目標として、「5.環境に関する目標・・自然保護、化学薬品・実験材料・医療廃棄物の分別処理等の環境保全」とあるが、全体的な省エネ(電力、水)およびリサイクル推進を入れるべきである。

III(10)2.(8頁)について

 中期目標原案作成の注意点の1つとして、「6年間で到底達成不可能な目標は、たとえいかに望ましくてもあげない」とあるが、相当長期にわたる目標を掲げた後、当面その第1段階として6年間にここまでする、というような書き方をも否定する趣旨か。長期的研究は、当然こうした書き方にならざるを得ないと思うが、どうか。そうでなければ、「法人化」は長期的・基礎的な研究を衰退させるとの批判を免れないだろう。
 目標に挙げず、計画に盛り込まれないならば、すなわち実施しないことであり、制度の不備を指摘すべきである.

III(12)1.(12頁)について

 「記載事項例」の詳細な記載事例について、「自主自律の法人化の趣旨に反する」との認識を支持する。

III(15)自己点検評価の学内体制(14頁)について

 自己評価は,組織の評価システムが無い時点での策であったのではないか?国立大学評価委員会、学位授与機構、のみならず総務省の評価委員会,および運営諮問会議等の評価を受けるものと考えられ、自己評価自体の必要性が疑問である。各々の評価に莫大な予算・時間・労力を消費することは、教育研究の足を引っ張ることになる。

III(16)5.及び6.(16頁)について

 中期目標が達成されなかった場合について、「深刻な事態」「総長、役員、部局長等の責任が問われる」といった言葉が並んでいる。目標未達成は許さない、といった雰囲気である。しかし、科学研究に失敗はいわばつきものである。失敗しないに越したことは ないかもしれないが、失敗を恐れていては科学の発展はとうてい望めないであろう。もちろん、国民に対する説明責任はとらなければならない。しかし、総長等の責任になるからといった、脅しともとれる表現は避けるべきであろう。むしろ、責任は総長等が引き受けるから、失敗を恐れず未知に立ち向かってほしい、というくらいの度量を総長、役員には期待したいものである。

III(19)1.(18頁)について

 「研究教育の時間を大幅に割いて研究教育の改善のための評価作業を行うことは本末転倒である」との指摘は、全く同感である。しかし、「法人化」以前の現在、すでにこの本末転倒の事態に陥っているのではないか。現状を改善しない限り、「法人化」以後はいっそう深刻な様相を呈すると思われる。また、この評価作業にどれだけ教員自身が携わることになるのか具体内容を示されたい。

IV(19頁〜)について

 金融資産の形成は可能か。

IV(1)16.〜18.(22〜23頁)について

 1) 学生納付金特に授業料については大学に一定幅の裁量性が認められるが、東北大学としては経営を考えて上限をとるのか、学生の経済を考慮して下限をとるのか、それとも横並びで標準的な額をとるのか、できるだけ早く東北大学独自の方針を提案すべきでないか。

 2) 学生納付金は、各研究科・学部によって差異を設けていいように読めるが、東北大学としてはどうするのか。たとえば医学部・歯学部学生と法学部・経済学部学生との間に授業料の差異を設けるつもりか。

IV(1)21.(23頁)について

 授業料免除制度は、少なくとも現状を下回らない形で、ぜひとも残すべきである。

IV(3)16.(26頁)及び(11)12.(34頁)について

 1) 附属病院の赤字補填の一方法として、「年度内の人件費削減」があげられているが、これが職員(定員内・定員外両者を含む)数の削減ないし給与の減額を意味するならば、組合として認められない。

 2) 重大な医療過誤等による賠償が必要となった場合、その額は東北大学全体として負担するのか、付属病院として負担するのか。

 3) 附属病院における「法人化」へ向けての職員に対する説明会では、病院経営の効率化、高利益化が強調されたと聞く。このことが、職員の労働強化をもたらすならば、職員組合として受け入れられない。

IV(6)4.(28頁)について

 1) 予算案を「法人化」後の評議会に諮ることは賛成であり、むしろ当然と考える。

 2) 「職員給与水準・・・といったいわゆる「経営」事項」との表現があるが、A委員会案11頁には「ベースアップや人件費総額については大学には当事者能力がない」との記述があり、両者間に矛盾があるように思われるが、どうか。

IV(7)3.及び7.〜9.(29〜30頁)について

 1) (7)項には、4.〜6.が脱落している。

 2) 2004年の「法人化」スタート時に、教職員数を削減するようなことがあってはならない。とくに定員外職員については、その雇用を完全に保障することを報告案に明記すべきである。

 3) 「配置教員数に教務職員を含めること」もしくは「教務職員を廃止すること」を明記すべきである。

 4) 「給与は本学共通の給与体系による必要がある」との認識を支持する.しかし,例外として「競争的資金による場合」を設けていることは納得できない.

 5) 退職金や雇用保険についての具体的な対策を検討していただきたい.

 6) 「中央経費」について、運営費交付金の算定根拠に入れず、配分段階で予算化するとしているが、運営上当然発生する費用であれば、交付金算定根拠に含めるべきである。

IV(8)4.及び5.(31頁)について

 1) 学生納付金の過不足は、当該部局の経理に影響を及ぼすように読めるが、この方式を貫くと、経営安定化のために、各部局がいわゆる水増し入学を認める方向に走り、学生定員が名目的なものになる恐れがないか。

 2) 標準以上の経費を要した場合の補填策の1つとして「年度内の人件費削減」があげられているが、これが職員(定員内・定員外両者を含む)数の削減ないし給与の減額を意味するならば、組合として認められない。

IV(11)(32頁〜)について

 1) 自己収入として土地の処分収入が挙げられているが、土地建物が法人に「出資」された場合はよいが,「長期無償貸与」の場合不可能ではないか。

 2) 国立学校特別会計の累積債務を「システム」が引き継ぎ、大学法人がその償還に当たるという制度のように見えるが、附属病院に相当な財務的困難が生じないかどうか、委員会の意見を聞きたい。このことについて、シミュレーションをしていれば結果を教えてほしい。

IVについて、その他

 1) 民間企業では内部留保が経営上重要な役割を果たしているが、大学ではB委員会案の「剰余金」がそれに当たると解してよいのか。

 2) 人件費中の退職金については、通常の運営費交付金に含まれて配分されるのか。


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