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「准職員、時間雇用職員の正職員への転換について」(「正職員(事務・図書職員)への登用制度案について」)の団体交渉打ち切りの経緯について

2007年3月22日
国立大学法人東北大学職員組合

東北大学職員組合は、この問題について2006年12月5日から4回交渉を継続してきましたが、2月27日の交渉をもって一旦打ち切ることとしました。以下、その経緯について簡潔に報告いたします。(准職員は、法人化以前は日々雇用職員という呼称でしたが、一括して准職員と表現します。なお、すでに3月5日付で「正職員(事務・図書職員)への登用(案)」にもとづく「平成19年度国立大学法人東北大学職員登用試験」の募集について周知(本部事務機構サイト内、学内アクセス限定)されています。)

定員削減を補い、正規職員と同様の職務を担ってきた人たちへの不当な格差

東北大学には、1980年7月以前から数十年もフルタイムで正規職員と同じ職務をになって働き続けながら、ただ非正規の身分であるために給与や待遇において不当な格差を余儀なくされている「准職員」が80数名在職しています。公務員時代に、国の定員削減政策によって東北大学の定員も第十次にわたって削減されましたが、それを補い正規職員同様の業務をこなしてきたのが、「1980年7月以前採用の准職員」です。その正規職員化は、長年にわたる組合の重点的な要求であり、法人側とねばり強く交渉を重ねてきました。

公務員制度の制約のもと、本学においても各部局の努力も含めて1980年代までにいくつかの部局では正規職員として任用されるなど、一定の進展を見ることができましたが、ほとんどの「准職員」は非正規職員に据え置かれたまま、根本的な解決を図ることはできませんでした。また、1980年7月を境に、新たに採用されるフルタイムの非正規職員の雇用は3年限度とされ、その代わりに更新限度のない時間雇用職員が増大しました。今東北大学で働いている長期勤続の准職員および時間雇用職員は、定員削減を補い、正規職員と同様の職務を担ってきた人たちです。それにも拘らず、法人側は、准職員の不当な格差を根本的に是正する施策を提示することができず、長年にわたって放置してきました。

この認識から組合は、(1)1980年7月以前採用の准職員は、当然に正規職員に転換すること、(2)法人化以前より長期にわたって勤続している時間雇用職員について、勤続実績を強く考慮した正規職員登用制度とすること、を基本的な要求としていますし、今回の一連の交渉は終えても、さらにこの要求での取り組みを進めることになります。

「“法人試験の教養試験”をクリア→面接等→“若干名”登用」という法人提案

2006年5月2日、組合は法人側に、「1980年7月以前採用の准職員について、正規職員への登用の道をつくること」を含む要求項目を提出し、この要求に基づき6月5日、28日、7月7日に交渉を行いました。この交渉の中で、徳重理事は「1980年7月以前採用の准職員だけに限らず、准職員、時間雇用職員を正規職員に採用する方法や条件について検討していきたい。案として具体化した段階で協議したい」と回答しました。

11月24日、法人側は組合に、東北大学独自の新たな人事登用制度案として「正職員(事務・図書職員)への登用(案)」(pdfファイル,Wordの元文書から組合で作成)を提示しました。その骨子は、「勤続1年以上の准職員と時間雇用職員を対象として、優秀な人材を広く募る」、「国家公務員の一次試験(教養試験)を活用した一次試験を実施し、それをクリアした人の中から、面接等による二次試験を経て、若干名を正規職員に登用する」、というものでした。2月には具体的な試験日程として「東北大学職員登用試験実施案」(事務図書.pdfファイル,法人側提案文書から組合で作成)が追加提案されました(以下、2案を合わせて「登用案」)。

「独自に新たな『登用案』を設けること自体は評価するが、『登用案』が採用している“登用方式”は受け入れられない」という立場を決定

組合は、これを受けて法人側との団体交渉に入ることにしました。それにあたり、四役会議、本部執行委員会、支部代表者会議での協議の下に、また准職員の組合員と意見交換を行い、さらに他大学の事例を参考にしながら、以下の立場にて交渉に臨むことを決めました。

  1. 法人側が独自に新たな「登用案」を設けること自体は評価する。
  2. しかし、「登用案」が採用している登用方式は受け入れられない。その理由として
    1. 提案されている登用方式では、第一次試験として教養試験が課せられ、その合格者のみが第二次試験としての面接(図書の場合は、専門試験および面接)を受けることができる。この方式では、当初の段階で准職員のこれまでの勤務実績・評価が反映されない。
    2. ある程度高齢になっている「1980年7月以前採用の准職員」が、1年以上勤めた比較的若年の准職員や時間雇用職員と同一の試験を受ける場合、はじめから大きなハンディを負うことは否めない。
  3. 一定の試験を受けることを否定するものではない。その際、組合としては、第一次、第二次のステップを踏まず、代わりに「適正な試験」を行うことを要求する。たとえば、九州大学のように、教養試験に代えて小論文を課し、並行して面接を行う。これは、「1980年7月以前採用の准職員」に別途の手立てをあてがうことになるが、これまでの勤務実績の判断に立ったものである。採用は、これらを総合的に加味し決定するものとする。

言うまでもなく、「適正な試験」は「次善の策」です。組合としては、従来主張してきたように、できるだけ多くの「1980年7月以前採用の准職員」の正規職員化もしくは一定の人数の提示がなければ、交渉に一切応じないという道を選択することはできました。しかし、正規職員化の道が制度的に保障されるのであれば、本来的要求は要求として掲げる一方、当局案に対して一定の条件の下に交渉を進めることも一つの選択肢でしょう。上述したように、検討の結果、私たちは後者の立場を採り、交渉に当たることにしました。

「長年、評価を経て更新されてきた実績に配慮した適正な試験」をねばり強く提案

この立場で、2006年12月5日26日2007年1月17日2月27日の4回にわたって交渉を重ねました。法人側の「登用案」は、長期勤続者の実績を一次試験において考慮するものではありませんでした。その点で、組合の基本的な要求とは大きな開きがありました。労使の隔たりを反映して、2回目以降の交渉議題は、組合の要求である「准職員、時間雇用職員の正職員への転換について」と、法人側の提案である「正職員(事務・図書職員)への登用制度案について」とが並立して掲げられました。

組合は、交渉の中で、長期勤続者については、毎年度評価の上更新されてきたという実績に配慮した「適正な試験」として実現していくべきだと、ねばり強く提案してきました。これに対して法人側は、教養試験の採点においては「国立大学法人等職員採用試験」における「教養試験」の水準を求めるものではない旨の発言や、二次試験において総合的な評価の中で配慮するという回答を示しました。また組合は、「登用案」において登用枠が「若干名」と表現されていることから、単年度で大勢の長期勤続者を登用することは困難でも、中期的な登用計画で実現することも含めて提案してきました。毎回の交渉に准職員も参加して訴えました。

しかし、「第一次試験に教養試験を課す」「勤務実績等はあくまで第二次試験以降に考慮する」、という法人側の方針は変わらず、私たちが要求する「適正な試験」の導入との隔たりは埋まりませんでした。法人側は、長期勤続者の実績に一次試験において配慮するという姿勢を示すことはなく、大卒新採用者とのバランスも考え、広く優秀な人材を登用する、という姿勢に終始しました。

交渉の入口=“准職員の勤務実績をどう評価するか”に大きな隔たり

今回、法人側が提案した「登用案」は、組合の長年の懸案であった准職員の正規職員化の問題を解決する一つの機会であったことは間違いありません。しかし、法人側の姿勢は、第一次試験としていわば足切りのように教養試験を課し、その段階において准職員のこれまでの多大な貢献をまったく無視した、その意味で著しく配慮の欠けた措置と判断せざるをえません。

組合は、これ以上交渉を重ねても双方に妥結の道を探る余地がないことから、この「准職員、時間雇用職員の正職員への転換について」(「正職員(事務・図書職員)への登用制度案について」)の交渉をいったん打ち切ることを決定しました。結果的に交渉が決裂することになったのも、基本的には、入口の段階において、准職員の勤務実績をどう評価するかという点において、労使の間に大きな隔たりがあったことに起因すると思われます。しかし、今回要求を貫徹し勝ち取ることができなかったのは、組合自身の交渉力量・能力が不十分であったためであることも確かでしょう。

フルタイムで長期にわたり評価の上で更新されてきた職員を正規職員とするための、中期的な登用計画を

それでも私たちが何より押さえておかねばならない点は、問題は、法人側が准職員の不当な格差を根本的に是正する施策を提示することができず、長年にわたって放置したところにあることです。法人側は、あらためて正規職員化を要求する准職員の切実な声に真摯に耳を傾け、その願いの実現のために英断を奮ってもらいたいものです。たとえば、今回自らの政策立案能力を遺憾なく発揮し、本学独自の登用案を作成することができたのと同じように、准職員を正規職員とするための中期的な登用計画を立てることもできるはずです。「1980年7月以前採用の准職員」の数はそれほど多くありません。順次正規職員化を図る計画を具体的に検討することができるはずです。その際、准職員は一定の年齢に達している以上、速やかに導入、実現されることを切に願うものです。

最近いくつもの大手企業において、短時間勤務の非正規従業員を正規従業員として登用する方針を表明しています。先行投資やイメージアップなど、一定の企業戦略にもとづくものでしょうが、待遇格差にずっと苦しんできた短時間勤務の従業員には希望の持てる方策であると言えるでしょう。東北大学においても、同様の方策をとることができないわけがありません。ましてや定員削減の代替としてフルタイムで長期にわたり評価の上で更新されてきた職員ですからなおさらです。「1980年7月以前採用の准職員」にとって東北大学を働き甲斐のある希望に満ちた職場とするためにも、法人側にはぜひとも正規職員化への抜本的対策を講じていただきたいものです。東北大学職員組合としては、法人側が提案してきた「正職員(事務・図書職員)への登用(案)」「東北大学職員登用試験実施案」についての交渉はいったん打ち切ることになりますが、「1980年7月以前採用の准職員」の正規職員化の道を実現するためにも、今後上述の提案を含めて検討を重ねながら、粘り強く交渉を継続していきます。


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