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夏の一時金0.2ヶ月分の「凍結」提案について:
自主性と透明性のない経営姿勢を改め、大学の実態に基づく誠実な交渉を行うことを役員会に求めます

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2009年6月11日
東北大学職員組合

 現在、国家公務員の夏の一時金(ボーナス)0.2ヶ月分「凍結」が問題となっていますが、東北大学においても、法人が0.2ヶ月分の「凍結」を提案してきました。職員組合は6月1日と4日の2回にわたって法人と団体交渉を行いました。また、法人側は6月5日に全学労使懇談会を開催し、過半数代表者への説明を行いました。

法人側提案内容の概略

 「凍結」提案は人事課のホームページに掲載されていますが、情報提供のために概略を紹介します。この提案は、人事院臨時勧告・給与法改正と同様に、夏の一時金のうち0.2ヶ月分の支給を「凍結」するものです。「凍結」の意味は、夏の人事院勧告の結果を踏まえて最終的に今年度の年間支給率を決定し、12月支給の一時金で清算するということです。おおむね以下のような方針であると理解できます。

一般教職員の場合(6月支給分を0.2ヶ月分「凍結」する法人案)
 6月12月
現在の支給率2.152.354.5
「凍結」を実施1.95(-0.2)--
以下は、法人側の方針を仮想の数値で示したもの
夏に年0.5ヶ月削減の人勧。これに追随1.95(-0.2)2.05(-0.3)4.0(-0.5)
夏に年0.2ヶ月削減の人勧。これに追随1.95(-0.2)2.35(±0)4.3(-0.2)
夏に年0.1ヶ月削減の人勧。これに追随1.95(-0.2)2.45(+0.1)4.4(-0.1)

 6月支給分への影響は、平均すると9.3%、教員で10万7000円、一般職・医療職で5万7000円、再雇用職員で2万円の減額になるとのことです。

東北大学の実態に即さず、政府の政策に追随するだけの給与政策

 そもそも労働条件は労働契約によって定められるものであり、使用者が一方的に変更することは許されません。労働契約法は、就業規則変更によって労働条件を変更する場合には、一定の条件に照らして変更の合理性が明らかにされねばならないとしています。それは、「労働者の受ける不利益の程度」、「労働条件の変更の必要」と、代償措置を含む「変更後の就業規則の内容の相当性」、「労働組合との交渉の状況」を含みます(労働契約法第10条)。

 今回の「凍結」提案の最大の問題は、国家公務員向けの人勧・給与法改正に追随するだけで、東北大学としての経営実態や研究・教育戦略を踏まえた「凍結」の必要性が明らかにされていないということです。法人側の説明の趣旨は(詳細は別紙交渉報告をご参照ください)、人事院勧告と同様にして「社会一般の情勢に適合する」ということに尽きています。「凍結」という方法自体がトリッキーなものですが、もとより夏の人事院勧告で大幅な一時金削減が勧告されることを予想し、12月支給の一時金も、それに追随して削減するという姿勢を、いまから示すものに他なりません。

 もちろん、運営費交付金の財源は税金ですから、給与に限らず東北大学の財務はすべて社会的に説明可能でなければなりません。しかし、「社会一般の情勢に適合する」ことの内容は、独立法人である大学自身が判断しなければなりません。また、法人側がたびたび引用する独立行政法人通則法第63条は、法人の給与が「社会一般の情勢に適合する」とともに「業務の実績を考慮し」て定められるべきことを述べています。

 ですから、何よりもまず東北大学の経営状態に基づいた議論をしなければなりません。財務はどのような状態があるのか、教職員が元気よく働けている状態なのか、その結果として研究・教育ではどのような成果が上がっているのか。これらを労使で話し合いながら、妥当な給与水準を決めて行かねばなりません。その中で、一時金「凍結」の必要が示されるならば、賛否は別としても誠実な議論になるでしょう。

 ところが、法人側は、こうした学内状況をまったく論じようとせず、ただ「社会一般の情勢に適合する」ことだけを理由に「凍結」を強行しようとしているのです。もしそのようなことが許されるのであれば、大学の経営状態とはまったく関係なく給与が決まることになってしまいます。経営の自主性の放棄であり、また教職員に対する使用者としての説明責任の放棄にほかなりません。

巨額の剰余金を計上している東北大学に給与引き下げの必要はない

 東北大学の財務状態は、給与を引き下げねばならないものではありません。むしろ法人化以後、毎年億単位の剰余金(黒字)を計上しており、2007年度末にはそれらが目的積立金として76億円も積み上がり、主として建物整備のために取り崩すこととなっています。剰余金(黒字)の発生理由は複数あると考えられますが、運営費交付金や人件費の削減に耐えながら、教職員が必死に努力した結果でもあることはまちがいありません。役員会は、この状態をどのように考えるのか、今年度も剰余金が発生する可能性があるのか、教職員の努力に報いるために、適切な還元を行うべきではないのかを話し合うべきです。

億単位で浮く資金をどう使うのか

 ここで指摘しなければならないのは、一時金の「凍結」が最終的に削減として確定した場合、削減された教職員人件費はそのまま大学の手元に残るということです。この点が、国家公務員とは異なります。今年度の運営費交付金は確定しており、給与を削減しても返還を要求されるわけではないからです。今回、仮に0.2ヶ月分がそのまま削減された場合には、約4億円の支出減になると説明されています。

 役員会は、経営状況に基づく交渉を行った上で、どうしても「凍結」が必要であるならば、「凍結」が削減となった場合に浮く資金をどう使うのかを明示しなければならなりません。その場合、労働契約法に基づき、削減の代償措置を示すことも重要です。

 しかし、これまでのところ、法人側は、巨額の削減分をどのように使うのかを明らかにしていません。全学労使懇談会では「本学の教育・研究の発展のために使う」という趣旨の説明だけがなされており、教職員への代償措置についてはまったく提案されていません。これはきわめて不誠実で不透明なことと言わねばなりません。他大学では「凍結」は強行されても代償措置が約束された事例もあり(研究費増額、昇格改善、研修の充実、非正規職員の正規職員登用制度拡充など)、「社会一般の情勢」というならばこちらも参考にすべきです。しかし、法人側は団交の席上、他大学が「凍結」を実施しているかどうかは調査したが、代償措置については調査していないと述べました。「凍結」のみありきで教職員の生活や勤務意欲に思いをめぐらさない姿勢です。

結論:自主性のない、不透明な経営を改めよ

 以上のように、法人側の一時金「凍結」提案は、(1)東北大学の経営状態や実績に即して必要性を明らかにしたものではありません。また、(2)「凍結」・削減を強行した場合に生じる億単位の資金をどのように用いるのかが不透明であり、とくに教職員への代償措置が説明されていません。

 以上のことから、東北大学職員組合は、法人側の提案する一時金「凍結」は、労働契約法の要請を満たさない、不誠実で不透明なものであると考え、これに反対いたします。そして、役員会が、自主性のない、不透明な経営姿勢をあらため、東北大学の将来のために必要な給与政策を率直に話し合うことを求めるものです。

参考


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