2017年12月8日 東北大学職員組合
東北大学は11月28日、限定正職員の採用規模について、合格者690人、不合格者131人、合格率84%と発表した。これに対しては、すでに12月4日に国会内で行われた集会で我々の評価を報告しているが、改めて文書として見解を明らかにしておきたい。報道などでは対象者の8割以上が採用され、雇い止めとなる職員は不合格とされた131人にとどまるかのような受け取りかたがされているが、それは実態を反映していない。
第一に、限定正職員制度が、改正労働契約法に対応した無期転換の方策であるかのような大学側の説明は間違いである。このような制度は「労契法18条の無期転換ルールとは別途のものだと考える」というのが労働基準局長の見解である。限定正職員制度は処遇改善のために使い、労契法18条にのっとった無期転換の道が開かれなければ法の潜脱との誹りは免れない。
今年度で雇い止めとなる1140名(2017年9月30日時点。河北新報調べ)に対して受験者数は800名にとどまる。受験者の中には、今年で3年目、4年目の方も含まれているので、4割近い職員をあらかじめ切り捨ててから選考が始まっている。合格率100%とされている業務限定職員(特殊)および目的限定職員についても、前者では部局からの推薦が受験の要件の一つであり、後者では教授からの推薦が応募の条件となっており、推薦をもらえなかった職員が多数存在する。週20時間以内の勤務者はそもそも応募ができない(別紙:当事者の声参照)。すべての対象者が3つの職種のうちどれかには必ず応募できるという大学当局の説明(2017年7月各部局で行われた説明会での回答)は結果としてはまったくの虚偽であった。
さらに言えば、2016年2月時点では、無期転換しなければ雇い止めとなる有期雇用職員は2018年からの3年間にわたって3243人におよび、このうち約1500人が2018年3月での雇い止め対象者数であった(2016年2月16日人事方針案の公表に際して大学当局が示した数字)。この時点から1年半の間に300人の労働者が東北大学に失望し、あるいは見限って退職している。本来の母数から見た合格者の割合(690/1500)は5割を大きく割り込む。
この職はプロジェクト終了、教授の退職など、業務の終了とともに雇い止めとなる事実上の有期雇用である。法的にはこのような雇用形態は、入職時にあらかじめ解雇要件を定めた無期雇用と解されるようであるが(宮城労働局見解)、世間一般の通念としては有期雇用であろう。
以上を考慮すると、業務限定職員(一般)83名、業務限定職員(特殊)189名、計272名だけが安定した職に就けたのであって、1140名のうちの8割弱、900名近い労働者が年金支給開始年齢の前に放り出されることになる。このままでは次年度以降にも同様の雇い止めが発生することになり、非常に大きな雇用危機にあることは変わっていない。
改正労働契約法に対する東北大学の対応姿勢が法の潜脱であることは、この間、総長宛て公開質問状でも指摘しているが、特に以下の点は労働法制及び労使慣行に反しており、違法もしくは限りなく違法に近いと言わざるを得ない。
1)更新上限「原則5年」という就業規則を、組合との交渉を行わないまま「原則」の部分の解釈を変更して、「一律例外なしに5年」としたこと(2017年1月)。文言の変更ではないから「不利益変更には当たらない」と言い張っているが、「原則3年」だった時代には2割程度の「例外」(原則の上限を超えた更新)があり、なかでも3年目に在職した労働者について言えば7割以上が4年目を迎えていたことを踏まえれば、一方的かつ不合理な不利益変更であり、労働法制上無効である。
2)事実上選択肢のない状況で「労働条件通知書兼同意書」へのサインを強要していること。さらにこれを「期待権喪失」の担保としていること。この労働条件通知書兼同意書の記載内容変更は2014年4月に突然行われたものであり、これ自体が有期雇用職員の労働条件についての一方的不利益変更である。「雇い止めの同意を得た」ものではなく強制的に「期待権を剥奪した」人権侵害行為であり、違法の恐れが極めて高い。
3)組合及び当事者たちに対する大学当局の極めて不誠実な対応。二度の公開質問状に対する回答に端的に示されているように、一貫して労働者の権利と真摯に向き合おうとしていない。となると、このような姿勢は、有期雇用職員だけでなく職員全体に向けられていると考えざるを得ない。世界的な研究が次々と発表され、素晴らしい学生たちを育て送り出しているその足下で深刻な人権侵害が進行している。我が国を代表する大学の一つである本学の名誉がこのような形で傷つけられていることを深く憂慮する。