3月12日に行われた団体交渉で、大学側は、雇い止めを強行する人事方針に変更がないことをあらためて明らかにした。
1.全大教から、全国の大学の状況について、従来通りの雇用上限を維持する大学はあるが、上限を超えた「協議延長」制度を廃止して、従来よりも雇用条件を悪化させた大学は東北大学だけであることが指摘された。無期転換を実現した他大学について、2月7日の団体交渉での理事発言を、「先が見えてやったことではない」と速報で伝えたが、そうは言っていないとの指摘があったので、あらためてその発言を文字に起こしておく。
理事「上限を撤廃した大学があります。そういったところがなぜできているのかということは実はわからない。いろいろ聞こえてくるのは、大変なことになるという声は非常に聞こえてきます。本部の財務担当者も言っていますし、部局の方はもっと、勝手に本部がやったという声も含めれば、いろいろな噂が聞こえてきます。ですから、先が見えてやったかどうかということは実はよくわからない。ですから我々もこれをどうやって乗り切っていくかということはわからないです。」
2.現在複数の雇い止め当事者が申し立てている労働審判について、大学側は「労働審判にはそぐわない」という弁護士作成の答弁書に沿った回答を行い、ただちに協議に応じることはないという姿勢を明らかにした。本気で訴訟に応じるつもりかという質問に対してもこれを否定しなかった。もちろん組合は、当事者を守るためであれば訴訟をも辞さないが、大学人としては改正労契法に関わる雇い止めについての全国で最初の訴訟などという不名誉は許容し難いとの発言もあった。弁護士の甘言に乗らず大学自身の判断を行うよう要求した。
3.2月7日の団体交渉において、本学にはクーリング規定は存在しないことが確認された。しかし、その後も各部局において、クーリング後の再雇用を打診されたり(これ自体は部局担当者の精一杯の好意であると組合は認識している)、また、クーリング規定は存在するという回答が後を絶たない。組合はこれらの事実を、当事者の証言と文書によって示したが、大学側はそれらの事実をまったく把握していないと回答した。また、部局からクーリング規定についての問い合わせがあったことを一度は否定したが、あったかもしれないが記憶していないと訂正した。本学の制度上は3月31日に雇い止めになった労働者を4月1日に採用することは禁じられていない。それができないと大学は言えない。
4. クーリング規定が存在しないのなら、「限定正職員制度等に関するQ&A」の設問E5「部局等の判断で5年上限を超えて6年目に有期雇用職員として雇用することは可能か。」に対する回答「従来から雇用の更新限度が無いと整理されている者を除き、通算契約期間の上限は、あくまでも就業規則で定める『5年以内』である。」は間違っているので、削除または訂正をすべきだ、という2月7日の交渉でも要求した点を再び追及した。それに対して大学側は、再び、「現在、その文書が手元にないので回答できない」という驚くべき不誠実回答を行った。組合が「交渉の宿題を何と考えているのか」と追及すると、謝罪して、翌日までには回答するとした。
5.交渉の最後に、当事者から意見表明がなされた。全文を以下に掲載する。
私たち雇い止め当事者は、勤怠に問題があるわけでもなく、不祥事を起こした者でもなく、むしろ実直に働いて来た東北大の職員です。私たち一人ひとりは、大学本部からすると、単なる一准職員、一時間雇用職員かもしれません。しかし私たちの小さな日々の業務が、先生方や学生さんたちの教育や研究を支え、そして大学の皆さんをも支えているはずです。簡単に、事務的な手続きで、雇い止めにできるのですか?それに加えて、雇い止めをするのは財政面で厳しいからと言っているのに、私たちの後任募集をしているのは、筋が通りません。また、弱者と言われる障がいを抱える方をも雇い止めするのには、到底納得できません。
運営自体に疑念を抱かざるを得ない「限定正職員制度」は、合格者と不合格者の間に歪みを生み、雇い止めの人には苦痛で居づらい職場となってしまいました。100%の合格率と公開している職種も、本当は推薦をもらえず、受験さえできなかった人が多数いる事を隠しています。現場は混乱状態で、酷い部局は、上司のパワハラも起こっているのが現実です。
また、今回雇い止めになる職員の大半は女性です。安倍内閣の最初の成長戦略「女性が輝く社会づくり」を果たすどころか、完全に無視した東北大の方針には、安倍総理も驚くことでしょう。
ちょうど7年前の東日本大震災を、私たちは決して忘れてはいけないと思います。当事者の中には被災者もいる事をわかっていますか?住居を失い、家族とも離れて暮らしながら、それでも期限のある契約でこれまでも働き、これで無期雇用にと、希望を持ってきたのです。震災復興を謳いながら、被災者を踏みにじるような行為が許されると思わないでください。
2018年3月12日
このままでは、東北大学は大きな被害を被る。現場の混乱、業務への支障はすでに生じており、社会的な信用失墜も起こっている。訴訟に突き進めば社会的な傷はさらに深くなり、損害賠償の発生にまで至る。組合は、一刻も早くこの不当な人事方針を転換するように要求して、引き続き団体交渉を行う。
2018年3月13日
東北大学職員組合執行委員会