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独立行政法人の問題点
この文書は全農林筑波地本行革対策委員会により作成され,
大学改革メーリングリストに発信されたものを,
東北大職組がhtml化したものです.
3月16日最終修正版を元に修正しました.
○ 独立行政法人の基本的性格
- 逆立ちした行政改革:国民の願いを逆手に取り、財政のムダ遣い、「政・官・財」のゆ着、高級官僚「天下り」等の温床を拡大する独立行政法人
- 第二次臨時行政調査会が財政再建を口実にした「小さな政府」を掲げて以降、特に公益法人や第3セクター(広い意味での行政を担う「法人」)に行政の実施責任を押しつけることが常態化し、このことが財政のムダ遣い、「政・官・財」のゆ着、高級官僚「天下り」の温床になっている。
問題点:以上のように「法人」でゆがんだ行政の問題点を整理もせず、イギリスの「エージェンシー」をまねて、国の「負担」を減らすために検討されたのが、試験研究機関等の独立行政法人化
- 「小さな政府」を掲げて行財政改革を行うと宣言したのに、それ以降4年間における無責任きわまりない財政赤字の増加は政府・与党の責任ではないか?
問題点:財政赤字増加の責任を試験研究機関等の独立行政法人化でごまかそうとしているのではないか?
問題点:以下に述べるように、ほとんど国直轄(現在の状態と同じ)であるに関わらず、国の都合の良いように(生殺与奪権を持って無責任)扱えるものが「独立行政法人」なのではないか?
- 独立行政法人制度とこれまでの特殊法人との違いは?
- 独立行政法人制度が、これまでの特殊法人などと違うのは、一つ一つの機関・事務の法人化の前に、国の行政機関と民間法人の中間制度である独立行政法人制度の「共通法」を作る点にある。
問題点:この制度を「受け皿」にして、実施事務は「いつでも、いくらでも」独立行政法人化することができる仕組みを作ろうとしているのではないか?際限のない独立行政法人化の制度作りではないか?
- 独立行政法人の設立の審査手続き等をできるだけ制約を少なくしてとあるが、国研からの移行をスムーズにとの解釈もできるが、高級官僚の天下り先を次々と作ることも可能となる。
問題点:恣意的な運営、癒着の温床作りとならないか?
- 独立行政法人が行う仕事は、政府が決定する政策の枠内:どれだけ独立しているのか?
- 独立行政法人が行う仕事は、政府が決定する政策の枠内でだけである。例えば、産業構造の「調整」、すなわち、農林水産業の縮小や医療費抑制の政策を政府が掲げているときに、関係研究機関や病院への予算措置が潤沢に行われることは考えらない。
問題点:独立行政法人では、悪政を実行するための業務執行を限られた予算の中で行う効率化・簡素化だけが迫られることにならないか?
- 人員管理の弾力化(定員法の適用除外)は一方で「人員整理の自由」を拡大することになる。
問題点:行政に都合の悪いデータ等を公表させない、又は研究をさせない結果とならないか?
- 独立行政法人の解散については何の決まりもない。
問題点:独法化5年後以降政府の都合(予算など)によって解散に追い込まれないか?
○ 独立行政法人試験研究機関に働く者の身分・賃金・要員は確保できるのか?
身分に関する問題は、いつ決まるのか?「独法化計画策定」においてか?
- 職員の身分・定員はどうなるのか?
「国家公務員型:現業職員(林野・郵政等の特別会計定員)と同じ扱いで、法定定員制度の対象外となり、職員の任免は独立行政法人の長が行う」、「非国家公務員型:現在の特殊法人(原研、理研、動燃、海洋技術センター、海群生物環境研など)と同じ扱い」とある。
問題点:財政状況による定員の変更とそれを理由としたリストラの放任では?
- 身分仕分けの基準は?
「原理的には現行と同じままの国家公務員とは相容れない」、「国家公務員型:独立行政法人のうち、その業務の停滞が国民生活又は社会経済の安定に直接かつ顕しい支障を及ぼすと認められるもの(端的にいえば、争議行為の影響が大きいもの)、その他当該法人の目的、業務の性格等を総合的に勘案して必要と認められるものの職員」、「非国家公務員型:上記以外のものの職員」とある。
問題点:試験研究機関ならびに農林水産業関係の検査指導機関の職員の身分については、全く考慮されておらず、公務員身分はずしが先にありきの論理である。
- 職員の処遇・賃金
- 処遇は?
「職員の給与その他の処遇については、当該独立行政法人の業務の実績及び当該職員の業績が反映されるものとする」とある。
問題点:勤評体制がストレートに持ち込まれ、給与格差が拡大するのでは?
- 賃金は?
ア 人件費は、「運営費交付金の中で手当する」とある。また、独立行政法人の長が中期計画において、職員の給与に関する計画を定めるものとされている。
問題点:法人の業績に対する評価により予算を削られた場合には、人員削減で対応するしかなくなるのでは?
イ 職員の給与については、「国の経営する企業に勤務する職員の給与に関する特例法」より柔軟な仕組みが考えられ、「該当独立行政法人の業績及び当該職員の実績が反映されるものとし」「他の国家公務員及び民間の給与等を考慮して定めるものとする」となっている。
また、職員の賞与についても、府省の評価委員会が法人の業績に対して行った評価を勘案して法人の長が決定する仕組みとされている。
問題点:「公務員準拠」を前提にした「労使協議」が保障されているにすぎない。また、法人の実績と「職員の実績」に応じて柔軟に賃金が変動させられることとなり、目に見える業績の上がりにくい分野の職員の給与は、現在とは比較にならないほど不安定なものとなるおそれがある。
- 要員・採用
- 定員が確定せず、「弾力的な運用が可能」とあり、「採用の弾力化」が検討されている。
問題点:効率化のための免職(解雇)や、民間委託、派遣労働の活用などの不安定雇用者を大量に雇用する自由を拡大したり、縁故採用が可能となる危険も持っているのでは?
- 定員管理でも、「事前定員管理の対象外=総定員法と定員査定の対象外」とされ、「独立行政法人の長の運営責任に委ねられる」こととなっている。
問題点:人員は毎年度の報告事項であると同時に、業務評価の対象とされており、運営改善の数値として、人員削減が重視されることが一般化しているわが国で、独立行政法人だけがその縛りから解き放たれるとは考えられない。生首切りを発生させることになるのではないか?
- 独立行政法人に切り替わる場合の雇用継続について、「事務事業に係わる権利義務等の承継や引き継ぎについては適切な措置」とある。
問題点:JRへの採用差別と同様の事態さえ懸念されるが?
○ 独立行政法人試験研究機関の業務内容は?運営は?
- 業務内容は?
法人の業務の内容は、個別の法律で規定されており、実施しなければならない仕事の内容は決まっている。その行政の執行(業務運営)だけに責任を負わせ、運営の善し悪しを評価委員会を使って事細かに評価するために、目標は「数値」で示すことが基本となっている。
問題点:どれだけ良い研究か、国民が求める医療内容かではなく、目標に対する結果だけを追い求めることにならないか?
- 運営は?
独立行政法人の運営は、以下の流れで行われることが検討されている。
1)所管大臣の「中期(3〜5年)目標の設定」、
2)法人の長による「中期計画」の策定、所管大臣の計画認可、
3)法人の長による「年度計画」の策定、
4)所管大臣の予算要求、
5)法人の長による業務執行、
6)中期計画終了時の所管大臣による業務の見直し。
そして、各省に置かれる評価委員会が、「業務の評価基準」を設定して、中期目標、中期計画、年度計画、業務、組織運営などの評価を行うとしている。
問題点:評価について、独立行政法人の長が、弁明をする仕組みはあるのか?一方的な評価が下されることはないのか?さらに、総務省の評価委員会によって、法人の民営化・主要業務の改廃が頻繁に起るのではないか?
- 中期目標は?
中期目標について、「大臣が中期目標を府省の評価委員会の意見によって定める。目標は3〜5年以内とする。目標は出来る限り数値化する。」とある。
所管大臣が設定する中期目標が重要な意味を持つ。
その目標は「できる限り数値」で示すこととされ、1)中期目標の期間、2)目標を達成するための業務運営の効率化、3)国民に対して提供するサービス等の業務の質の向上、4)財務内容の改善、などとされている。
中期目標の設定そのものは、所管大臣による一方的な「行為」であり、独立行政法人は、その目標を達成できる「財務計画」、「人員計画」、「給与等の計画」などの策定が迫れる仕組みになっている。
問題点:たとえば対前回中期計画の1割経費削減という目標達成を求められた独立行政法人の長は、そのための人員や組織削減計画の策定を迫られることになり、国民の行政ニーズとは無関係に、目標設定が「政策的」に押しつけられる危険性がないのか?
問題点:目標設定では、職員の意見を反映する仕組みは全くないように思われる。
- 中期目標の期間について
育種、観測など長期研究での設定がどこまで許されるのか?数値化による成果を短期で得られない基礎的な研究対象の扱いはどうなるのか?
問題点:「独立行政法人の業務の性格に応じて目標を設定する」とあるが、具体的な数値目標を(大臣は)設定するから、研究期間中の予算(研究経費、人件費など)、予測される成果(論文数、特許数など)を初めに要求される結果、圧迫され硬直した運営になるのではないか?
- 業務運営の効率化の目標について
どのような内容なのか?例えば、業務の効率化については、職種に無関係にノルマを設定し、人員削減を具体的に示すであろうか?
問題点:全ての職種で適材適所の運営がなされていない現状では本人の希望は全く無視され、上司から要求された業務に「成果が無い」と一方的に判断されれば左遷降格、クビになる恐れも出てくる。
如何に公平な業務の評価を行うのか?病気が原因で業務遂行が困難な場合も全く考慮されないのか?を追求することが重要。
- 国民に対して提供するサービス等の業務の質の向上の目標について
問題点:どのような内容なのか具体的に示されていない。
- 財務内容の改善の目標について
どのような内容なのか?たとえば、財務の改善は、賃金の配分も示すだろう。基本給は低く業績査定によって手当に反映させ、競争原理を持ち込むのか?
問題点:業績の評価を誰が、どのように行うか極めて困難な問題がある。その結果に不公平を必ず生むと思われる。
- 中期目標の「なお」書き:「法人の業務の性格に応じた目標の設定となるよう特に配慮する」について?
課題:効率化のみを目標とさせるのではなく、この記述により、研究機関のより積極的な目標設定業務の発展を保障させるべきである。
- 中期計画
中期計画について、「法人の長は計画(イ〜トの7項目)を定める。この計画は評価委員の意見と大蔵大臣によって認可される」とある。
目標設定で数値化した内容であるから、ここではより具体化した数値が示され、これが評価委員会、大蔵大臣で検討され認可されるから、厳しい査定が前提になるだろう。
問題点:法人組織に関して評価委員会、大蔵大臣が直接介入することにならないか?
- 年度計画
年度計画について、「年度計画の変更はいつのでも、大臣によって変更可能である」とある。
問題点:研究者からの意見(計画)は拒否できるが、行政からの要求は強行される恐れはないのか?研究の計画または内容が公共の福祉に反する恐れがあっても、一方的な設定が要求されることにならないのか?
- 中期計画期間中の業務運営の改善措置
業務運営の改善の措置について、府省の評価委員の権限が極めて大きい。所管大臣は評価を受けて法人の長の交代も要求できる。
問題点:研究者(または職員)側の問題点指摘に対して、対処する機関もなく、一方的な組織運営の変更が要求されないか?長を含めて研究者(職員)が評価委員会に対して敢えて反対意見を具申すれば、交代(更迭、退職を含む)さえ余儀なくされるのでは?長の天下りを容易にし、国民への奉仕者から監督官庁への奉仕者にならないか?また、自らの省予算獲得のために、現在以上に縦割り行政の弊害を大きくしないのか?
○ 独立行政法人の予算は?
- 収入と運営の関係は?
- 独立行政法人は、国や地方公共団体あるいは民間からの出資による資本金を有する「法人」。このため、法人の運営に関わる経費は資産、収入、支出など通常の企業と同様に計算され、収支決算が行われることになる。
問題点:民間企業が資金を出す場合、必ず見返りを要求することは明らかです。出資者は、法人の中期計画の策定や運営に大きな発言力を有することにならないか?また、成果の公表や特許の使用等についても影響力を行使することにならないか?。公的機関としての公平性や公正性が確保されるのか?
- 寄付金、受託収入、手数料・入場料などは、特別のケースを除き法人の収入となるとされている。
問題点:事業会計事務が著しく繁雑になり、業務が増大することにならないのか?会計の人的資源は十分か?
- 資金の収入源は?確実なのか?
独立行政法人の収入として、1)運営費交付金、2)公債発行対象経費となる施設費、3)寄付金、4)受託収入、5)手数料・入場料等、6)余裕金の運用益 が現在想定されている。
問題点:政府による「財源措置」は確実なのか?「財政赤字」を口実に今回の「行政改革」を国民や公務員に押しつけようとしている。「運営費交付金」が、「独立行政法人の経営努力の強制」によって値切られることはないのか?
- 運営費交付金は誰が要求する?
運営費交付金は、「独立行政法人が一般的には独立採算性を前提とするものではない」ことから、「国の予算において財源措置する」ものとされ、あらかじめ中期計画期間を通して総額を計算しそれを年度毎に歳出化する方法と、中期計画に基づいて予算額算定のルールや投資計画を決めそれに沿って毎年予算額を決めていく方法の2つの方式のいずれかによるとされている。この予算は所管大臣(農林水産大臣)が、毎年予算要求することになる。
問題点:運営資金についても、府省におかれる「評価委員会」と所管大臣の権限が極めて大きい。毎事業年度、財務諸表、決算報告書と、監事による意見書とを大臣に提出し、承認を受けなければならないとされている。予算要求、決算報告に際しても、独立行政法人は所管大臣や評価委員会に生殺与奪の権限を握られることになります。
- 交付金の使い方に制限はない?
運営交付金の使い道については「渡し切りの交付金とし」「使途の内訳は特定しない」とされている。人件費はこの運営交付金に含まれ、「人件費相当額についてあらかじめ一定のルールを定めることができる」とされている。また、運営交付金は年度内で使い残しが生じた場合には「翌年度に繰り越すことができる」とされている。
施設費の内、公債発行対象とならないものは運営費交付金に含まれる。
問題点:「交付金の使途は特定しない」と独立行政法人に自律性を持たせるかのポーズを取っているが、財政民主主義の観点から言えば、国民の税金の使途はできる限り明らかにすることが、予算審議の中でも問われることは当然。
いわゆる経常研究費、人頭研究費はこれまで、必要不可欠のものとして不十分ながら措置されてきた。しかし、「使途を特定しない」予算の中で、こうした研究費が確保されているのか?きわめて大きい問題である。
- 利益剰余金・赤字などの対応は?
「損益計算」上利益があった場合には、まずそれ以前の年の赤字の補填をし、それでも余りがある場合には経営努力によるものについては中期計画の範囲内で使うことができ、それ以外のものは積み立てして次年度以降の赤字の補填に備えることになっている。中期計画終了時にもし、黒字になった場合には半分くらいは国庫に納入し、残りを積み立てすることまで書かれている。 一方、赤字になったら、赤字を繰り越すことにするとされている。
問題点:独立行政法人が赤字を出した場合の対策が講じられているのか?。試験研究機関では、運営のための資金はその大部分を運営費交付金に頼らざるを得ない。このため、収支は計画通りにいってプラス・マイナスゼロ、何か突発的な問題が生じた場合には、資金は当然不足することになりる。独立行政法人はその制度設計の時点から赤字体質を強制され、それを回避するため、経営の「効率化」の名により、研究課題の切り捨てや定員の削減、研究業務以外の利益の確保などを強制されることにならないか。都道府県の研究機関では、生産物の売り上げ計画が毎年決められ、それが研究遂行上大きな負担となっている例が認められるが、独立行政法人下ではこのことが常態化する可能性はないのか?。
また、バブル崩壊以降の地価の下落のように、法人の運営とは異なる要因で法人の保有する資産価値が下落した場合にはどのように処理されるのか?
- 法人への税金はどうなる? 品種登録経費は従来どおりか?
税制等の非課税措置の問題です。「大綱」では、「出資形態などその具体的内容に応じ、法人税法上の公共法人とする」等の措置をするとされており、場合によっては、独立行政法人の資産や事業に対して課税されることが否定されていない。
問題点:道路公団に対する地方税の課税が取りざたされているが、独立行政法人でも同様の問題が発生する可能性はないのか?。
また、現在、国の育成品種については登録に関わる経費は無料となっているが、営利目的を否定しない独立行政法人は同じ取り扱いとなるのか?
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