国立大学協会(会長、蓮實重彦・東京大学長)は14日、東京都内で総会を開き、文部省が国立大の独立行政法人化に向けて設置を予定している調査検討会議に積極的に参加し、協会の意向を反映させる方針を決めた。さらに、国大協内に「設置形態検討特別委員会」を設け、今後の国立大学のあり方について政策提言をすることも決定した。
総会後、会見した蓮實会長は「通則法による独法化に反対する姿勢は変わらない。特例法を作るにしても、これまで出ている例では足りず、それをさらに広げることでしかるべき法人格を得るようにしたい」と述べた。文部省の検討会議への参加方法については、今後決めるとしているが、国大協内に設けられている常置委員会の委員長が参加する案が浮上している。
【澤 圭一郎】
[2000-06-14-19:59]
文部省が国立大法人化の制度づくりのために設置する検討会議について、国立大学協会(会長・蓮実重彦東大学長)は十四日、総会を開き、協会の代表者を参加させることで合意した。
国大協はこれまで「行政改革を目的とした独立行政法人通則法を国立大にそのまま適用するのは反対」などとして慎重な姿勢を示してきたが、制度づくりの議論に加わるとの意向を示したことで、法人化への動きが一気に加速しそうだ。
文部省は五月末に法人化を正式に表明。財政、人事、教育研究体制など具体的な制度づくりのために関係者や識者による検討会議を六月にも設置するとの方針を示した。
国大協は、通則法に添って大学の特殊事情を考慮した「特例法」を制定するなど、国立大側の意見を十分反映した法人化の在り方を探りたいとしている。
また国大協の内部にも法人化について検討する特別委員会を設け、文部省など各方面に積極的に提言していくことも決めた。法人化をめぐっては、地方の国立大関係者を中心に「効率性を求める法人化は大学には適さない」「競争にさらされ統廃合が進む」と懸念する声がある。
しかし、総会後に会見した蓮実会長によると、検討会議に参加することに関しては一致したという。
(了)
[2000-06-14-19:33]
文部省が、国立大学を国の組織から切り離して、いわゆる「独立行政法人」にすることを決めたことについて、全国の国立大学で組織している国大協=国立大学協会は、独立行政法人も含めて、独自に望ましい大学のあり方について検討し、文部省に提言していくことを決めました。 国大協はきのうときょう東京で総会を開き、文部省が先月末すべての国立大学を独立行政法人にすることを決めたことについて話し合いました。 このなかで、地方の国立大学からは「大学の予算が削られるおそれがあるので、独立行政法人化には反対すべきだ」という意見が出されたということです。 そして、二日間の話し合いの結果、文部省が独立行政法人の具体的な運営方法を検討するため、近くつくる研究会に国大協からも代表を送り、大学側の意見が反映されるようにするとともに、国大協として独自に独立行政法人も含めた大学の望ましい姿について検討し、文部省に提言していくことを決めました。 総会のあと、記者会見した国大協の蓮實重彦(ハスミシゲヒコ)会長は「国立大学を独立行政法人にするという文部省の決定を受け入れたというわけではない。独立行政法人も含めたさまざまな形態について議論し、国民にとって理想的な大学のあり方を提言していきたい」と話しています。
[2000-06-14-19:22]
(2000年6月14日23時50分〜24時)
国立大学は改革の岐路に立たされています。独立行政法人への移行に向けた検討がはじまるからです。明治19年に東京帝国大学が設立されて以来114年、設置形態にまで手を加えようというのは初めてのことです。99の大学の学長が集まって、今日まで開かれていました国大協(国立大学協会)の総会でも、大きなテーマとして取り上げられました。今夜は、独立行政法人化によって国立大学はどう変わるのかを考えたいと思います。
独立行政法人といいますのは、橋本内閣にはじまる行政改革の論議から出てきたものです。国の行政機関のうち、現業やサービス部門を経営感覚をもった法人に衣替えして、運営の効率化とスリム化を図ろうというものです。国立大学は当初その対象にはなっていませんでしたけれども、およそ13万5千人の教職員を抱えることから、独立行政法人化すれば国の公務員削減目標が達成しやすくなるという事情から、対象に含めようという論議が高まりました。しかし大学関係者や文部省の抵抗もありまして、政府は去年の4月に、この問題は大学改革の一環として検討し、結論を西暦2003年までに出すと先延ばしすることにしました。
これを受けまして検討を続けてきた文部省は、先月末に全国の国立大学の学長にたいして、独立行政法人への移行を進める考えを正式に伝えました。法人化されれば国に縛られずに大学が予算の使い道ですとか学科の再編が自由にできるメリットを生かして、改革が進むというのがその理由です。
では、国立大学を独立行政法人化した場合どう変わるのでしょうか。ただちに私立大学になるわけではありません。まず、大学は自らどういう大学をめざすのか、5年間の目標を立てるよう求められます。教育や研究の成果をどれだけあげようとするのか、といった目標づくりです。そして5年後にこの目標がどれだけ達成されているのか、第三者機関によって評価されます。この機関は教育研究の内容を理解できる専門家によるものでして、一般の独立行政法人の評価機関とは性格が異なります。この評価にもとづきまして、大学ごとの予算配分が決まります。あくまでも仮定の話なんですけれども、成果が充分にあがっていないと判断された場合には、最終的には廃止を求められることもありえます。
では、こうした改革案を大学関係者はどう受け止めているのでしょうか。学長の集まりである国大協は、今日、教育や研究の質を高めるために大学にとってどういう設置形態がふさわしいのか、今後委員会をつくって検討し、政策提言していくことにしました。
しかし大学関係者の間には賛否の声が渦巻いています。有力大学を中心に、国からの財政支出や教職員が確保されるなら、法人化はやむをえないという容認論が次第に強まっています。その場合、あくまでも大学が金と人を自由に使え、自律性が確保できることが条件です。文部省が国からの予算は使い道は縛らず、単年度ではなく繰り越しも可能になると、大学にある程度の自由を認めるといった点は評価しております。
反対論には根強いものがあります。地方の国立大学を中心に、評価機関による予算配分によって、有力大学にばかり重点配分されるのではないかと心配する声が聞かれます。高い目標を掲げて実行している大学には手厚く、目標が達成されていない大学には冷たい配分になるだろうと予想されているからなのです。また、大学に効率化を求めること自体に無理があるという反対意見もあります。5年間で結果を出しにくい学問分野が切り捨てられ、基礎研究の低下を招きかねないという危惧がその背景にはあります。その一方で独立行政法人化といういわば外圧を利用して、思い切った改革を進めるべきだという積極的推進論もありまして、大学関係者の間の議論はさまざまに分かれたままです。
こうした中で、独立行政法人化の動きをにらんで、大学ごとに改革の動きが出始めています。中でも注目されますのが、医科大学と、同じ地元にある国立大学の統合に向けた動きです。このうち山梨医科大学と山梨大学は先月、2年後の統合をめざして正式に協議をはじめました。教養教育ですとか事務部門を効率化することで競争力をつけることがねらいです。全国には13の医科系大学がありますけれども、香川医科大学と香川大学が統合の是非についてそれぞれに検討をはじめましたほか、大分や宮崎などでも、検討がはじまっているということです。これが実現いたしますと、昭和24年に今の大学制度ができて以来、国立大学としては初めての統合ということになります。これまで増えつづける一方だった国立大学も、再編の時代に入ったことを印象づける動きです。
今回、文部省が関係者の根強い抵抗を押し切る形で独立行政法人化の検討をはじめることで、国立大学が法人化されることはほぼ確実になりました。文部省では今月中にも調査検討会議を発足させまして、独立行政法人への移行に向けた具体的な課題について検討することにしています。これによりまして、大学の教育や研究を国際的なレベルに引き上げることを考えるのは当然のことですけれども、それ以外に検討すべき点を指摘しておきたいと思います。
まず大学が法人化した場合、学生や国民にとって実感としてどう変わるのか、わかりやすく説明する必要があります。たとえば学費にどうはねかえるのか、学生が大学から受けるサービスに変化が出てくるのか、といったことです。なによりも学生や親に新たな負担を強いることのないようにしてほしいと思います。たとえ大学ごとに予算配分に差がつけられましても、安易に授業料や入学金に上乗せしないように、歯止めを求めたいと思います。むしろ経営努力した結果としまして、他の大学より安くして入学しやすくするといった思い切った措置をする大学があるなら歓迎です。
またサービスの面では、たとえば学生にたいして、何を学んだらよいのか相談にのる体制を整えたり、カウンセリング体制を充実させることなどが考えられます。一方国民に向けましては、公開講座を増やすことですとか、図書館などの施設の開放、研究成果を誰でも利用できるような、開かれた大学に変わる必要があります。
この関連でいいますと、事務職員の仕事を事務処理型からサービス提供型へ転換してほしいと思います。熱意ある職員は大勢いるのを知っていますけれども、一体どこを向いて仕事をしているのかといった経験をしたことも少なからずあります。学生や教員を充分にサポートする、あるいは時にはリードするぐらいに変えていってほしいと思います。
さらに文部省には大学の自主性、自律性が実質的に確保できるように工夫してほしいと思います。この点を明確にすることが、独立行政法人化への根強い抵抗感、不信感を拭うための方策だと考えます。大学が立てた目標を評価することによって、間接的に国の価値観を押しつけることのないようにしてほしいと思います。やはり学問の自由は確保されるべきです。
この一方で大学側は、国の規制が緩和されたら、これまでのように、文部省の規制があるから改革が進まない、といった言い訳は許されなくなります。このことを肝に銘じて、大学改革に取り組んでほしいと思います。国立大学の独立行政法人化の問題は、2003年までに結論を出すことになっています。文部省と大学関係者には、この機会をとらえて独立行政法人という設置形態の問題としてだけではなくて、大学のあり方そのものについて徹底した議論を求めたいと思います。未来に知を伝達する責任を果たすためだからです。(了)
国立大学協会(会長・蓮実重彦東京大学長)は十四日、東京都千代田区で総会を開き、文部省が進める国立大学の独立行政法人化の検討作業に積極的に参加していく方針を全会一致で確認した。国大協内に新たに国立大の設置形態について検討する特別委員会を設けることでも一致。今後、国立大学に有利な枠組みをつくり上げるため、影響力を行使していく構えだ。今回の方針決定は事実上、国大協の“法人化宣言”といえるもので、国立大学制度が戦後最大級の変革期を迎えることが確実になった。
国大協は十三、十四の両日の総会で、主として独法化問題への対応を話し合った。その結果(1)独立行政法人の大枠を定めた通則法を国立大学にそのまま適用することは反対(2)国立大学の教育、研究を向上させるためにふさわしい設置形態を検討する「設置形態検討特別委員会」を国大協内に設置(3)独法化についての文部省の調査検討会議に積極的に参加(4)高等教育政策(学術文化基本計画)を策定する議論の場の設定を要請―の四点で合意した。
終了後会見した蓮実会長は「独立行政法人(通則法)を受け入れたわけではない」としながらも、「特例を広げることでしかるべき法人格を得られると思う」と、法人化自体には賛同する意向を表明。そのために国大協の特別委員会から「次々に問題を提起していく」と話した。また、文部省の検討会議にも国大協から数人を参加させる方針を示した。