ホームに戻る小特集の目次に戻る

教務職員問題に関する検討結果報告


国立大学協会第4常置委員会
平成3年10月16日

<目次>

教務職員問題に関する検討結果報告

  1. 職及び職務内容
  2. 昇格基準
  3. 適用俸給表及び職務の級
  4. 初任給
  5. 俸給制度曲線
  6. 在職者の現状
  7. 検討結果
  8. まとめ
[参考資料]
  1. 俸給制度曲線
  2. 教務職員の職務内容等の実態
  3. 教務職員問題をめぐる諸情勢

教務職員問題に関する検討結果報告


1、職及び職務内容

 職及びその職務内容については、国立学校設置法施行規則第1条に定められている。なお、職務内答についてその定めは「教授研究の補助その他教務に関する職務に従事する」と、なっているが、文部省大臣官房人事課長通知によって、「イ 教授研究の補助として学生の実験、実習、実技若しくは演習を直接指導する職務、ロ 研究題目を担当して直接研究を行なう職務」と、より具体的に示されている。

2、資格基準

 文部省大臣官房人事課長通知によって、次の責格基準が示されている。

  1. 大学の卒業者であって、専門課程を修めたもの、又は関連経歴を1年以上有するもの
  2. 短期大学又は高等専門学校の卒業者であって、専門課程を修め3年以上の関連経歴を有するもの、又は関連経歴を4年以上有するもの
  3. 高等学校の卒業者であって、専門課程を修め8年以上の関連経歴を有し、業績のあるもの、又は関連経歴を10年以上有し業績のあるもの
  4. 前各号と同等の資格を有すると認められるもの

3、適用俸給表及び職務の級

 教務職員には、教育職俸給表(一)が適用され(昭32.7.25人事院指令9−56)、また、職務の級としては、「1級Jが設定されている。(一般職の職員の給与等に関する法律第8条及び人事院規則9−8別表第1 級別標準職務表)
 なお、官名は「文部技官」となっている。

4、初任給

 初任給は、学歴区分に従い、次のように定められている。

5、俸給制度曲線

 行政職俸給表と比較した場合、年齢で40才程度、俸給で1級20号俸程度でそれまで上回っていた行(一)4級の制度曲線を下回り逆転現象が生ずる。

6、在職者の状況

  1. 在職者数
     現在の在職者は83大学1,289名である。そのうち14大学において20名以上の在職者を有する。
  2. 在職年数
     昭和49年当時は、3年以下の短期在職者が全体の約半数を占め、10年以上の長期在職者は1/4弱であったが、現在は、10年以上の長期在職者が全体の半数を超え、3年以下の短期在職者は1/4程度となっている。
  3. 年齢構成
     昭和49年当時は、34才以下が全体の約7割を占めていたが、現在は逆に35才以上が全体の7割弱となっている。
  4. 学歴構成
     昭和49年当時から新大卒以上は全体の7割強を占め、現在の8割強と大差はないが、修士課程修了以上については、当時の16.7%が23.9%と1.5倍になっている。

    7、検討結果

     教務職員は、教授研究の補助として学生の実験、実習、実技若しくは演習を直接指導し、または研究題目を担当して直接研究を行なう職務、いわば助手に準ずる職務に従事することとなっている。また、初任給決定上の学歴区分においても短大卒から博士課程修了まで幅広く、研究者養成のための機能が制度上含まれていると考えられる。
     更に、俸給表の面でも、大学卒31年53才で最高号俸(教(一)1級36号)に達する仕組みとなっており、この点からも長期在職を前提としない過渡的官職としての性格が窺われる。
     在職者の現状を眺めると、このような制度の趣旨に沿った適切な運用の実態が認められるものの、不適切な運用の実態もかなり認められる。即ち、職務内容面で制度上予定していない事務等に従事している者が一定割合を占め、また、在職の長期化が顕著となり、制度が予定しているところと異なる様相も見られる。
     このような過渡的官職としての教務職員制度の役割と、一部に見られる現実の運用との乖離こそが教務職員問題の本質である。これほ、制度の趣旨が多義的で分かりにくいため、その結果として多種多様な長期在職者を生むこととなった不適切な運用に起因するものであろう。
     このような現状から、必然的に処遇上の問題が起こってきた。よって、運用の適正化に加えて、処遇上の緊急対策も見逃すことのできない重要な課題として指摘しなければならない。

    8、まとめ

     これまでの検討の結果浮かび上がってきた教務職員をめぐる諸問題は、その多くが運用の不適切さに起因するものてあり、したがってここでは、あらためて適用の適正化と問題解決の方向の指針を示すことが適当であると考えられる。
     一方において、個々の大学或いは学部等においてこれまで行なわれてきた運用の現実、在職者の実態等も考慮に入れる必要もある。
     よって、ここに現行制度のもとで考えられる次のようないくつかの対応策を併記するので、個々の大学或いは学部等が、それぞれの事情に即して問題解決のための努力をすることが望ましい。
     なお、この問題が、今後、様々な場で議論されることになるであろう助手の制度問題、若手研究者問題等と深く関わりあっていくものであり、そのことを視野に入れながら対応していかなければならないものであることを最後に附言しておきたい。


    A 現行の教務職員制度を存続させながら次の何れかの措置を講ずる

    A-1

     現行制度のもとでの運用の正常化に努める
     職務内容を制度本来の趣旨に即して整理し、在職の長期化を防止する。

    A-2

     現行制度を前提としつつ、学内措置として資格基準を助手相当に改める
     教務職員を教育職員への昇任予定官職として明確に位置付ける。

    B 現行の教務職員定数を次の何れかの方法又はその組合せにより段階的に整理する

    B-1

     助手以上への振替を推進する
     教育研究の高度化・専門化に対応した教官組織の充実、助手の定員削減による不完全講座の解消等を目的として助手以上への振替を進める。

    B-2

     専門行政職俸給表適用職員へ移行させる
     然るべき時点で教室系技術職員と統合し、専門行政職俸給表適用職員へ移行させる。

    B-3

     他職種への異動等により定員の段階的整理を進める
     他職種(助手・技術職員等への異動、退職を機に定員を逐次整理し新たな仕組みの活用を考える。

    資料1:俸給制度曲線

    教育職俸給表(一)1級(教務職員)と行政職俸給表(一)との比較(平成2年4月1日ベース)
    年齢構成
    学歴構成

    資料2:教務職員の職務内容等の実態

    1、教務職員と助手の職務内容の比較(昭和49年)
    2、在職年数

    資料3:教務職員問題をめぐる諸情勢

    1、教務職員問題に関する国大協の検討経緯

    (昭和47年文部省に「教員等待遇改善研究調査会」設置)

    審議打切りとなった「報告書(案)」での教務職員関係事項の抜枠

    別建ての俸給表〔「研究教育補助職」(仮称)〕を新設し、大幅な待遇改善を図る。
    ○教育研究の高度化に伴い、重要性が高まっている。
    ○待遇が悪く、有能な人材の確保が困難な状態にある。

    基本的骨格

    現行の職階名称を次のように改める。
    *上記に対する主な意見


    2、文部省等関係機関への要望

    (1)国大協
     教務職員の給与の頭打ち問題の解消
    (2)個別機関(東京大学の例)

    3、文部省技術職員待遇改善検討会の考え方

     技術職員待遇改善検討会におけろ検討状況のまとめ(第2次案(昭和61年))─抄─

     教務職員問題については、学問分野の発展に伴った定員定数の教官職への振替や個別人事によって対応することが先決と考える。
    (号俸延長や給与水準の向上で措置する考え方は、給与水準の維持の面からも、また、助手との均衡の面からも困難)

    4、教務職員の任用資格基準について学内で特別の定めを設けている事例

    1.A大学の場合
        
    1. 大学院修士課程修了者以上   
    2. 1.と同等の資格を有するものと認められる者で、将来、教育職員として目途のついている者
    2.B大学の場合
       大学院修士課程修了者以上

    5、教務職員問題に関する職員団体からの要望

    (東京大学職員組合から国大協及び東京大学への例)
    1. 制度要求
      1. 教務職員制度の廃止
        助手・講師ヘの振替(希望者については行(一)ヘ)
      2. 職名級制度の廃止
    2. 緊急要求
      28号俸給以上の者の昇格
      (教務職員定数の概算要求による助手等への振替、教官欠員定員の流用)


    ホームに戻る小特集の目次に戻る