と き 2001年7月13日(金) 午後1:30〜5:30
ところ 片平市民センター 3階 第1・第2会議室
この大会議案は問題別、職種別に経過報告と今後の運動方針・課題を併記し記述しています。仕事と生活環境・自己確立など私たちの要求に密着した領域で活動しあえる組合をめざし、職場討議をすすめ、すべての組合員から意見が反映されることを期待します。
<目 次>
第1号および3号議案(経過報告と運動方針)
はじめに
1 賃金をはじめとする生活改善のたたかい
2 大学をめぐる動きとわれわれの取り組みについて─教文部のとりくみ─
3 専門技術での評価と上位級の大幅確保をめざして─技術系職員問題の取り組み─
4 教務職員制度廃止による教務職員問題の全面的解決に向けて
5 待遇改善、諸要求の実現を組織拡大でかちとるために─事務職員部─
6 東北大学にふさわしい図書館組織の確立と図書館職員の待遇改善をめざして─図書館職員の運動─
7 医療事故をなくすためにも看護婦・医療職員の増員を─医療部門の運動─
8 定員削減問題と定員外職員の運動
9 職務の正当な評価とサービス残業解消のために─賃金対策部の運動─
10 福利厚生の充実でうるおいある生活を─福利厚生活動─
11 創意を発揮して様々な文化・レクリェーション活動を─文化部─
12 広い視野にたって楽しく元気に─婦人部─
13 楽しい交流・仲間づくりとインターネットも活用した情報交換とで活動環境の改善・充実をめざして─青年の運動─
14 平和と民主主義、地球環境を守る運動
15 広げよう労働戦線、地域共闘の取り組みを─県内共闘組織のとりくみ─
16 当面する選挙闘争について
17 東北大学職員組合50年史」編さんの取り組み
18 活発な支部活動をすすめ、見える組合活動をめざし、日常的な組合員拡大を
第3号議案の基調
2001年度の運動の基調と重点課題
第4号議案I
2001年度会計予算編成方針
第2号議案
2000年度会計決算報告
第4号議案II
2001年度会計予算案
教職員共済会計報告
労金会計報告
はじめに
[小泉内閣の登場]
政権末期には5%前後という低支持率にあえいだ森内閣に代わって本年4月末に小泉内閣が発足しました。新しい政権には現在80%を越える国民の高い支持率があるといわれます。
前任の森首相は、密室劇によって首相の座に就き、在任中は、数々の問題発言を行い、えひめ丸事件では、事柄の緊急性・重大性をわきまえず、事件通報後も数時間ゴルフに興じていました。
小泉首相は森派の会長として森首相の在任中は、その失政、失言をかばい続けてきましたが、この間の動きは対照的です。
4月に、森内閣では参議院選挙を戦えないという強い危機感を背景に、多くのマスコミを動員して全国規模で自民党総裁選挙が行われました。小泉首相は、下馬評では2番手でしたが、田中現外務大臣と組んで、自民党の解党的出直しを前面に掲げ、最終的には対立有力候補の橋本元首相を大差で破って新総裁に選出され、組閣後は、新内閣を「改革断行内閣」と呼び、旧弊除去を声高に唱えています。
新内閣の発足直後には、熊本地裁でハンセン病患者に対する国の政策、国会の怠慢を厳しく指弾した原告全面勝訴の判決がありました。法務省や厚生労働省の官僚はこの判決を不服として控訴方針を採ったのに対し、首相のイニシアチブで国は控訴せず、判決が確定することになりました。これには国民各階層から強い共感がよせられました。
こうした経緯、さらに多数の女性閣僚や、ワイドショーの常連学者の登用、さらにこの間、田中大臣が外務省高官の失態を叱責する場面がしばしば放映されたりするなかで、小泉内閣は、自民党を中心にした内閣でありながら、森内閣までの一連の連立政権の無為無策に強い憤りと閉塞感をもった国民各層から、大きな期待をよせられ高支持率を得ているのでしょう。
[小泉内閣の「改革」路線]
しかし、いささか過熱ぶりが目立つマスコミ報道はともかく、この間の国会論戦やそれに先立つ自民党の総裁選挙における新首相の発言を冷静に見ると、新首相が唱える「改革」路線は、「改革」というよりはむしろ「改悪」であり、それも日本の進路を大きく右旋回させ、早晩、国民各層の期待を裏切りものであると考えざるを得ません。
第一に、小泉首相は総裁選のさなかから靖国神社への公式参拝を敗戦記念日の8月15日に行い、在任中に首相公選制を突破口に憲法「改正」の道筋をつけ、集団的自衛権の行使に道を開きたいと繰り返し言明しています。
第二に、小泉首相は、橋本内閣以来の自自公、自公保連立内閣が深刻化させた長期不況の克服策として、銀行の不良債権の処理を促進する発言を繰り返しています。民間シンクタンクは、これを徹底すると、この2、3年のうちに失業者が100万人単位で増加すると予想しています。また連合総合生活開発研究所が本年6月9日までにまとめた「勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート」によれば「大都市圏に暮らす雇用労働者の4人に1人が『今後1年間に失業する不安』」を感じている」といいます。
第三に、小泉首相は、橋本内閣の厚生大臣でした。現首相が当時まとめた「21世紀の医療保険制度」は、窓口で支払う自己負担を、高齢者は1割〜2割、現役世代(本人)は3割、大病院の外来は5割負担にする「高齢者医療制度」をつくり、すべてのお年寄りから保険料を徴収するとしていました。首相はこの構想は現時点でも堅持していると答弁し、坂口厚生労働大臣はこうした方向での医療制度の「改革」を徹底することを明言しているのです。健康保険本人2割負担が導入されたのはこのときでしたが、今年からは高齢者の1割負担が開始されました。この結果、全国各地で、受診抑制や中断などの深刻な事態の急増が報告されています。
こうして、小泉内閣の「改革」は、「改革」が「断行」されればされるほど、憲法の恒久平和・戦争放棄の理念と相容れず、ただでさえ厳しい状況下におかれている大多数の中小業者を倒産の危機に追いやり、失業者を増大させ、多数の国民の医療・福祉を切り下げる結果を導く可能性が濃厚であって、大多数の国民の要望とは対立せざるを得ないでしょう。
[小泉内閣の「大学政策」]
昨年6月以来、文部省(文科省)主導で急速に進められた独法化の議論は、本年6月12・13日の国大協総会で、独立行政法人通則法に限りなく近い「国立大学法人化についての基本的考え方」及び「国立大学法人化の枠組」という2文書を「報告させる」所にまで至りました(詳細は第2章)。このこと自体、大きな問題ですが、独法化を一足飛びに飛び越えた方針が、文科省から提示されるという事態が生じています。
6月14日、文部科学省は、全国国立大学学長会議を招集し、「国立大学の再編・統合を大胆に進め」、「国立大学に民間的発想の経営手法を導入」し、「大学に第三者評価による競争原理を導入する」という3点を骨格とした「大学(国立大学)の構造改革の方針」を提案しました。直前まで、文科相はこのような方針をもっていませんでしたが、小泉首相に一喝され、方針を転換したと伝えられています。政治的圧力によって小泉流「構造改革」が大学に押しつけられたわけです。大学や学問研究の特性をわきまえない、きわめて乱暴で危険なやり方だと言わざるを得ません。
小泉内閣の登場によって、独法化路線とのたたかいは、新たな段階にはいりました。これは一方で、独法化路線の本質が見えやすくなったということもできます。すでに国大協総会や学長会議に参加した学長から、国大協や文部省に対する批判的な発言が相次いでいます。私たちの運動しだいで、局面を打開できる可能性は、まだまだ残されているといえます。
現在、国立大学は、制度が発足して以来の大きな曲がり角にあります。それ以上に、私たちは、我が国の学問・文化・教育を、真に人類の幸福をもたらす方向で発展させ得るのか否か、という岐路に立たされていると言うべきでしょう。東北大学職員組合は、主体的力量を高めつつ、また、大学内外の人々と共同しつつ、独法化路線阻止の課題に取り組んでいきます。
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1.賃金をはじめとする生活改善のたたかい
[1]人事院勧告及び人事院交渉
(1)2000年人事院勧告は、民間との給与格差が0.12%、447円という小幅なものであることを理由に俸給表の改定は行わず、格差分は扶養手当の改定で措置するという不当なものでした。しかも昨年に引き続く引き下げとなる一時金0.2ヶ月分カット(12月期末手当で0.15月、5月、勤勉手当で0.05月)という勧告でした。これで実質賃金は2年連続マイナスとなり、私たちの要求に全くそぐわないものとなりました。
(2)また人事院は、2月14日、勧告で検討するとしていた「俸給体系の基本的見直し」についての考え方を提示しました。今回の「見直し案」は、「職務重視、能力・実績主義給与の推進による公務の活性化」を基本的な考え方として、個人の能力・実績を重視した給与体系への転換を土台にしています。これは、「低賃金の押し付けと一層の差別化導入」であり、大学教職員にはなじまないもので到底容認できません。
(3)このような状況の中、組合は、10月20日全大教東北地区協議会の人事院東北事務局交渉に参加し、他省庁並みへの昇格改善を要求しました。引き続き、6月8日にも交渉を行い、大学教職員の現状を訴え、教育研究調整手当の新設、現行諸手当や労働条件の改善を申し入れました。今後、2001年人事院勧告に向けて、3年連続の実質賃金切り下げを許さない運動を繰り広げることが当面の重要課題です。
(4)また、組合は、2月19日、3月22日にはブロック国公の人事院東北事務局交渉に参加し、官民賃金比較方式の改善を求めるとともに、俸給体系の見直しは大学の現状にそぐわないことを訴えました。
[2]総長交渉
(1)総長交渉は、2000年7月27日(金)に、旧執行部を中心に現執行部が加わって行われました。冒頭、組合側から総長交渉が年1回では少ないこと、教職員の要望を聞く上で総長はなお一層の努力をしてほしいとの趣旨を述べ、以下要望書に従い行われました。
(2)まず、総務部長より、あらかじめ要望していた教職員の待遇改善の事項について次のような回答がありました。
1)給与、手当
7月12-13日の文部省ヒアリング及び7月13日の人事院ヒアリングで東北大学の要望を伝えた。また国大協は各大学の要望を取りまとめて7月6日に文部省、人事院、大蔵省に要求した。文部省は、それらを受けて7月13日に人事院に要望を出した。
2)教務職員
在職者数は80人。助手振替の概算要求は24名出しており、6名ほどの振替が可能だろう。(実際の振替は金研1名、生命科学2名、多元研4名)
3)技術職員の上位級確保
教室系技術職員の現数は407名、そのうち6級以上は65名で比率としては14.7%である。また、管理者を除く事務職員の現数は1379名、そのうち6級以上は217名で比率としては15.7%である。
4)事務職員の「サービス残業」「水曜ノー残業デー」
認識しているが多忙化によりずれている。電算化により事務処理効率の向上を図り改善したい。
5)事務職員・図書館職員の昇任における男女間格差の是正に向けて
今年係長以上に発令された女性は、専門職員1名、専門職員・係長4名の総計5名。女性の登用は今後とも積極的に進める方針である。
6)医療職員の定員増
2000年度の概算要求で、臨床検査技師3名、視能訓練士6名、看護婦77名の増員を要求した。
(3)続いて、各項目について総長から回答がありました。
1)教務職員問題
数十年にわたる問題であり、教務職員には申し訳なく思っている。さらに努力するよう部局長会議で積極的にお願いし、粘り強く頑張りたい。
2)男女間の格差
東北大には女性教官が少ない、国大協が20%に引き上げるガイドラインを出したので、進めていきたい。
3)看護婦の定員増
看護婦は絶対的に不足していると認識している。
4)老朽化、狭隘化した施設設備の改善
営繕関係は総長の裁量経費となったが額は少ない。雨漏り程度の緊急避難的なことを優先せざるを得ない。
5)独法化に関連して
国大協が参加を決めた文部省の調査検討会議では、独立行政法人通則法を凌駕する独自の案を作るのは難しい。定員削減は、独法化された後もありうると考えている。現在のままでも地獄、独法化しても地獄だ。
(詳細は、2000年8月3日、東北大学職員組合ニュース「総長交渉報告」参照)
[3]秋期年末・春闘のとりくみ
(1)全大教は、第22回定期大会「運動方針」をふまえ、2000年秋闘期、2001年春闘期の取り組みでは、独立行政法人化反対を中心に第10次定員削減反対、公務員制度改悪反対に取り組み、3年連続の実質賃金低下を許さない政策・要求活動を進めてきました。組合は、全大教に結集して以下のような活動に取り組みました。
・賃金要求アンケート(142名)
・増員を目指す大学病院看護職員アンケート(320名)
・独法化反対アピール賛同団体署名(142団体)
・教室系技術職員の団塊世代対策要求署名(6/11現在186名)
・公務員制度改悪反対署名(現在取り組み中)
(2)組合は、人事院に官民比較方式の是正を要求しつつ、人事院勧告が実態としてはもっぱら民間との格差によって勧告されることを踏まえ、県国公および県労連に結集して官民一体の運動を進めてきました。
10月12日、2001年宮城県春闘共闘会議結成総会に加わり、国民大集会(11月18日、東京)、2001年春闘討論集会(12月2-3日、茂庭荘)、2.21春闘共闘総行動(全国統一行動)、3.4春闘総決起集会(仙台国際センター)等に参加してきました。
(3)第10次定員削減によって東北大学で5年間に217名(教官73名、看護婦4名、一般職員140名)もの定員削減をおしつけられ、また年金支給開始年齢が、来年度の退職者から10年間で、65歳まで引き上げられようとしており、教職員をとりまく情勢は非常に厳しくなっています。このような中、11月9日人事課長会見を行い、教職員の待遇改善を要求しました。なお、職員の再任用についても現状のままでは、定員の枠を使用するばかりか約半数の見通ししか立っていません。
(4)また、独立行政法人化反対の立場を堅持しつつ、5月18日に、もし法人化されたとしたら私達の身分・待遇はどうなるのかについて、金沢大学法学部教授(労働法専攻)の前田達男氏を講師に招き「法人化問題全学学習会」を開催しました。
2001年度運動方針と課題
(1)独立行政法人化の動きに対しては、2001年4月から独立行政法人化された国立研究所等の現状を全学教職員に知らせていく等の運動を進めつつ、交渉を通じ大学当局に対して教職員の待遇改善や将来の身分保障を強く求めます。
(2)教職員の要求運動を強化することを基本にしつつ、全大教が決定する方針を踏まえ、統一要求、統一行動を重視して取り組みます。また、全大教の文部科学大臣交渉の実現を目指します。
(3)3年連続の実質賃金切り下げを許さないために、人事院勧告に向け官民一体の運動を強めます。教員賃金をはじめ各職種の賃金要求については、支部代表者会議、職場討議を強化し、人事院交渉に反映させます。また、大学の職場にそぐわない俸給表の見直し、実績・成績主義を基本にした公務員制度の改悪、勤勉手当の差別支給問題等に反対し、情宣、学習、対話運動を強め、生活を守るたたかいをすすめます。
(4)教員任期制の導入、キャンパス移転、研究所や事務の統廃合等の大学運営に関する諸問題、看護職員の増員、各職種をめぐる諸問題、教職員の待遇改善等の面で、総長の管理・運営上の責務は重大です。必要に応じて要求を集約し総長交渉を申し入れ、学内の諸問題の解決を働きかけるとともに、文部科学省への上申を求めます。
(5)各支部でも研究科長交渉、所長交渉等で独自要求の取り組みを強めます。
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大学をめぐる動きとわれわれの取り組みについて
今期の教文部の活動は、その中心が国立大学の独立行政法人化問題に関するものでした。キャンパス移転問題や学長裁量経費の増額等の問題もありますが、ここでは、主として独立行政法人化問題とこの期に動きのあった教員の任期制についてとり上げることにします。
─教文部の活動─
1.国立大学の独立行政法人化問題
(1)国立大学独法化をめぐる動き
空前の高支持率を背景として、小泉内閣は「聖域なき構造改革」を進めようとしています。大学もそのらち外ではなく、6月11日の経済財政諮問会議で、遠山文部科学大臣は民営化までも想定した「大学の構造改革の方針」を明らかにしました。そして14日に開かれた国立大学長会議での工藤高等教育局長の発言は、われわれ大学に籍を置くものに衝撃を与えずにはおきませんでした。すなわち、2003年の国立大学の独立法人化を前にして大幅な大学の再編統合を完了させ、99ある国立大学を60程度の法人としてスタートさせるというシナリオが各大学に提示、打診されているというのです。そして最終的には国公私立30大学に資金を重点配分することが「構造改革」の柱だというのです。
このように政府・文部科学省からの揺さぶりをかけられる中、6月12-13日に国大協総会が開催されました。マスコミ報道などでは、その場において設置形態検討特別委員会から「国立大学法人化の基本的考え方」および「国立大学法人化の枠組」が提案され、大筋で了承されたといわれています。しかし、2文書の「提案」といわれているものは、「報告」であり、了承もされなかったことが何人かの学長の口から語られています。ここには、いかに「基本的考え方」と「枠組」が矛盾に満ちたものであるかが示されています。また、全国の大学での運動、国大協総会にあわせて全大教や独法化反対首都圏ネットワークが呼びかけた行動が、一定の成果をあげたと見ることもできるでしょう。
次に、これまでの独立法人化をめぐる動きを概観して問題点を明らかにしておきましょう。
国立大学を独法化しようという動きが顕著になるのは1999年夏以降です。1998年以前、文部科学省(旧文部省)は、国大協をはじめ、大学人の根強い反対の声を無視することがでず、独立行政法人通則法の国立大学への適用に慎重な姿勢を採っていました。しかし1999年6月頃から一転して積極姿勢に転換します。同年7月には独立行政法人通則法が成立し、2001年から89機関の独法化が決定されます。1999年末から2000年春にかけ自民党の文教部会で国立大学の独法化を「大学改革の一環」とするための議論が開始され、そこでまとめられた提言に沿って、2000年5月に文部大臣が大学再編をおこうなことを表明します。その後、文部省内に「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」が設置され、国大協も通則法に基づく法人化には反対することを表明しつつも、この「調査検討会議」に参加すること、また国大協の内部に「設置形態検討特別委員会」を設置し、ここでの議論を「調査検討会議」に反映させることを決定します。
「調査検討会議」には「組織業務委員会」「目標評価委員会」「人事制度委員会」「財務会計制度委員会」が設けられ、昨年6月以降、これらの小委員会で数次にわたる会合がもたれ、2001年内に「中間まとめ」、2001年度中に「最終報告」が提出される運びとなっていました。国大協の「設置形態検討特別委員会」は、昨年来の、これまた数次にわたる検討結果を、2001年5月21日に「国立大学法人化についての基本的考え方」及び「国立大学法人化の枠組」という2文書に取りまとめました。この2文書はその後6月1日、国大協理事会で検討されましたが、先に述べたように、国大協定例総会において提案され、了承されたということに関しては、当事者の見解が一致していません。
国大協総会に報告された2文書、特に「国立大学法人化の枠組」(以下、「枠組」)には、どのような問題点が含まれているのでしょうか。
第一は「枠組」が、「中期目標」→「中期計画」→「評価」というサイクルを大学運営に持ち込み、「中期目標」を主務省の「審査」「認可」事項としている点です。これは独立行政法人通則法の骨格的システムの容認というべきであり、「国立大学協会は、独立行政法人通則法を国立大学にそのままの形で適用することに強く反対するという従来からの一貫した姿勢を変更する必要があるとは考えない」という「基本的考え方」と明らかに抵触します。大学等がそれぞれの目標を掲げて計画的にこれを実行することは当然であるとしても、これを主務省の認可事項とすることは諸外国に例を見ないものです。大学の研究計画における基本目標の策定が官庁の「認可」事項になるなら、これは学問の自由の明確な否定、それも大学人の側からの否定、という愚挙になりかねません。
第二は、「枠組」が、大学等の管理運営に学外有識者が参加することについて余りにも無限定にすぎる点です。これは「基本的考え方」で強調されている大学の自主性・自律性と整合しません。「基本的考え方」が大学の自主性・自律性を基本にするのであれば、たとえば学長選考では、大学構成員の意志を第一義的なものにすべきでしょう。
第三の問題は、「枠組」が、「評価」と「資源配分」を無媒介に直結させ、人事システムでは教員任期制を積極的に導入し、これを促進する給与体系を設定していることです。大学とその教育・研究活動への評価と資源配分の目的は、大学における教育研究活動の活性化と自律性の確保にあります。しかし「枠組」は「基本的考え方」で指摘されている「学術研究の本質」との関連で「評価」と「資源配分」とがいかなる意味をもつかの十全な洞察を欠いたまま直結されています。欧米では両者は区分けしたシステムによって行われていることにも留意すべきであり、このような無媒介的な両者の結合が、果たして、大学における教育研究活動の活性化と自律性の確保に繋がるか疑問です。とりわけ、研究そのものが長期にわたって継続されて初めて大きな意味をもつ基礎的研究分野では大きな問題が生じるのが必定でしょう。さらに「枠組」は、教員任期制の導入を積極的に促進するために独自の給与体系の創設を主張しています。これはこの制度の自己目的化であって黙視できないものです。
先述のように、右の2文書がどう取り扱われたのかについては、国大協総会参加者のなかで完全な一致を見ていません。また、冒頭に述べた文科省の「大学構造改革」方針は、国大協の従来の議論の枠組みから大きくかけ離れたものです。2文書や文科省の方針が一人歩きを始めたとしたら、ゆゆしき事態です。高等教育政策における国大協の位置づけ、また、大学の自主性を守るという観点からいっても、当面われわれは国大協総会の再度の開催と、日本の高等教育、大学制度の根幹にかかわる問題であるという認識の下での議論を求めていく必要があります。
(2)東北大の動き
これまで東北大学では、評議会の下に「大学制度等調査委員会」(98年10月発足)、「独立行政法人化問題に関する検討委員会」(99年9月発足)がおかれていました。このうち後者が、昨年12月に「東北大学の法人化に関する検討委員会」と改称し、「本学が仮に法人化するとした場合の、東北大学としての望ましい姿や東北大学として必要とされることに関する案を、東北大学独自の立場でまとめ、全学的な合意を形成するとともに、内外に提言し、制度設計への反映」するという方針で議論を始めています。また、「東北大学の在り方に関する検討委員会」に対して、独法化を念頭においた大学の理念、運営体制の検討などが付託されています(4月)。
しかし、議論は、独法化を半ば前提としたものであり、しかも国大協や他大学の議論の後追いにとどまっています。東北大学独自の視点で教育・研究体制を根本から見直し、独法化のうごきに対応しようとする姿勢に欠けているといわざるを得ません。また、情報開示も教授会での資料の配布、ホームページでの簡単な議事の紹介程度の不十分なものとなっています。特に職員層の情報不足は構造的なものであり、「全学的な合意を形成する」という方針とは程遠い状態にあります。職組として、このような状況に対して問題提起をし、民主的な討議を経た上での意思形成を求めていく必要があります。
(3)職員組合の取り組み
今期、職組は、独法化問題への対応を最大の課題として位置づけ、教文部を中心に取り組みを行いました。
2000年7月28日に行われた総長交渉では、総長から独法化への幻想を打ち砕くような発言を引き出し、9月に行われた全大教教研集会で紹介しました。独法化の制度設計に深く関わる阿部総長の発言だけに、反響を呼びました。
学習会・シンポジウムは、共催のものも含め、10月25日、11月25日、3月10日、5月18日の計4回行いました。特に、11月26日に行われた宮城県教職組合協議会主催のシンポジウム「地域社会と大学─仙台から国立大学がなくなる?!─」は、100人を超す参加者を集め、マスコミにも報道されるなど、一定の成功を収めました。他の組合、特に宮教大職粗と共同歩調をとれたことも、今後につながる大きな収穫でした。3月10日と5月18日の学習会では、それぞれ三宅則義全大教副委員長、前田達男金沢大教授をまねき学習を深めました。また、教文部員が講師となった支部主催の学習会が三回行われました。ただし、シンポジウムや学習会を次の運動につなげるという視点が弱く、単発的なものに終わらせてしまったことは反省しなければなりません。
今期、全大教から独法化に関する個人署名の提起はなく、12月-1月にかけて団体署名のみが取り組まれました。職組では諸団体に積極的に働きかけを行い、124団体から賛同を得るという全国的に見ても先進的な成果をあげました。
独法化に関する宣伝という面では、全大教パンフレット「もし、国立大学等が独立行政法人化されたら」の全教職員への普及活動(秋・冬)、独法化した国立研究機関の実態を暴露するビラの配布(5月)などを行いました。しかし、刻々変化する情勢に対応して、機敏に宣伝を行ったとはいいがたく、問題を残しました。前期執行委員の個人的努力で運営されていた職組ホームページ上の大学改革問題のコーナーを、今期にはいってほとんど更新できなかった点も反省しなければなりません。
申し入れ活動としては、5月28日の東北地区国立大学学長会議にあわせて、総長に対して、国大協のまとめた独法化に対する「基本的考え方」を再考するよう要望書を提出しました。来期も情勢に応じて、職組の見解を公にし、申し入れ等を行う必要があります。
独法化問題が山場を迎える来期は、なお一層の情報収集と分析、宣伝が必須となります。執行委員の枠を越えた教文部の充実・強化が求められます。
2.教員任期制問題
(1)全国的動向
大学教職員をはじめとする多くの強い反対にも関わらず、1997年6月に「大学の教員等の任期に関する法律」が成立した後、これまで多くの国公立大学、国立研究所等で任期制が導入されています。全研究科、全講座、前教員に任期を課す北陸先端科学技術大学院大学、医学部のみの全講座、全教員に適用する弘前大学、全学で助手にのみ任期を付ける富山県立大学、逆に定年延長を決めた東大では居座りを防ごうと教授を中心とした任期制を一部に取り入れるなど、その適用の形態は様々ですが、2001年5月現在で48国立大学、9公立大学、6大学共同利用機関(極地研など)に何らかの形で任期制が導入されています。任期制の対象はやはり助手が一番多い傾向にあります。任期も2-7年と幅があり、ほとんどの場合は1回程度の再任を認めています。
任期制は、多くの場合、学科(部局)、講座の再編や新設、新ポストの増設に伴って導入されています。このことは、「いやしくも大学に対して、任期制の導入を当該大学の教育研究条件の整備支援の条件とする等の誘導を行わないこと」とする衆、参両議院の「教員任期法」に対する附帯決議に明らかに反して、文部科学省がいわば“飴と鞭”政策によって任期制を積極的に大学に押しつけようとしているためと考えられます。こうした動きが前記したように多くの国公立大学での任期制導入をもたらしています。さらに、国大協においても国立大学法人への移行時には積極的に任期制を取り入れるとする考えが明らかにされています。このように、私たち多くの大学教職員の強い懸念にもかかわらず、教員任期制への動きはますます激しくなっています。
(2)東北大学の動き
本学では、すでに通研の三研究分野の教授(7年、再任不可)、助教授(5年、再任2年1回)、助手(5年、再任2年1回)、医学系研究科の1分野の教授(3年、再任2年2回)、ならびに加齢研の2研究分野の助手(3年、再任不可)と附属センターの助手(4年、再任不可)に任期制が適用されていました。さらに、2000年4月からは新たに発足した多元物質科学研究所(旧素材研、科研、反応化学研)の全4部門中融合システム研究部門の全9分野の教授、助教授、講師、助手全ての教員に任期(5年、再任2年1回)を課すことになりました。ここでも組織再編、新分野増設に伴う任期制導入がはかられています。しかし、同じく4月から任期制を導入した金研の場合はもっと徹底しています。全部門全分野の全ての教員に任期制を導入しました。4月から任用される教授(10年、再任可)、助教授、講師(10年、再任5年1回)、助手(7年、再任1回3年)に適用されます。そして当然のように、再任の可否を審査するため、全ての教員は1年1回の業績評価を受けることになっています。ちなみに、金研においても4月から教授、助教授、助手各1名のポスト増がありました。 また、現在工学研究科と一部部局の改組に基づく「環境科学研究科(仮称)」の設置が構想されています。この組織でも既存研究科・研究所等との人事交流、移籍を前提として5年程度の任期を付す基幹教官と、同じく5年程度の時限を付した流動教官が想定されています。このように学内においても、今後は組織の改編、新設、ポスト増に伴う教員任期制の導入がはかられるものと思われます。
(3)組合の取り組み
私たちは「教員任期法」が成立する前から、教員任期制が教員の身分を不安定にし、長期的視野に立つ研究、教育を阻害すること、学問、研究の自由を損なう危険があることを主張し、一貫して反対してきました。しかしながら、任期法は成立し、前述したように本学をはじめ多くの国公立大学で任期制が導入されています。学内においても、「任期制導入は各部局の判断に任せ、トップダウン的に導入をはかることはしない」とする阿部総長発言以降は、総長交渉になじまない議題とされてきました。その結果、各部局でほとんど抜き打ち的に任期制導入が決定されました。これからも、各支部と密に連絡を取りながら、これ以上の任期制導入がはかられないよう粘り強く学内各層に働きかける必要があります。 そもそも「教員任期法」においてすら、任用に際して任期を定めることが出来るのは(1)「先端的、学際的又は総合的な教育研究の職」、(2)「自ら研究目標を定めて研究を行う助手」、または(3)「特定の計画に基づき期間を定めて教育研究を行う職」に限定されています。したがって、部局全体、大学全体に任期制を適用する場合、「教員任期法」そのものに違反している可能性すらあります。したがって、今後は任期制そのものに対して反対するばかりではなく、導入された任期制、導入されようとしている任期制の法的正当性を厳しく吟味しなければなりません。
3.その他の問題
(1)総長選挙
二○○○年九月に行われた総長選挙は、近年まれにみる激戦となりました。これは、現職への不満とともに、独法化への不安が反映した結果といえます。職組としては、特定の候補を支持するということはせず、従来通り、一次選挙で選出された五名の候補者に質問状を送り、寄せられた回答をビラとインターネットで公開するというかたちで選挙に関わりました。
(2)東北オープンユニヴァーシティ(TOU)
東北オープンユニヴァーシティは、今期も着実に取り組まれ、成果をあげています。しかし、依然として組合員の個人的努力に依存するという形態は変わっておらず、職員組合との関係という点では、問題を残しています。執行委員会がTOUをしっかりと位置づけ、その活動を組合員に知らせながら、支援を行う態勢を確立する必要があります。
2001年度運動方針と課題
(1)独立行政法人通則法に基づく国立大学の法人化、および小泉内閣の「大学構造改革」方針に反対し、全大学人の総意としてこれをはね返す取り組みをします。当面は、国大協総会の早期開催を要求し、その場で、独立行政法人化の議論が総会として了承されてはいないことを確認し、「大学構造改革」という文部科学省の新たな方針に対する議論を行うよう求めていきます。総長交渉でも、この問題をただしていきます。
(2)「大学構造改革」や独立行政法人通則法に基づく法人化によっては、大学が付託された課題に応えることができないことを一層、学内外に訴えていきます。
(3)独立行政法人化とも関連して、なし崩し的な教員の任期制導入に反対し、各部局で文部科学省の予算誘導に乗じないよう取り組みを強めます。
(4)キャンパス移転が長引いている問題や大学院重点化後に生まれている研究・教育労働条件に関わる問題が解決されるよう要求していきます。
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3、専門技術での評価と上位級の大幅確保をめざして
(1)第10次定員削減の閣議決定に基づいて、東北大学では技術・事務系職員で140名の削減を計画しています。これまでのように技術職員の不補充で消化するならば、技術の継承・蓄積に禍根を残すばかりか研究・教育に大きく支障をきたすことは必至です。
─技術系職員問題の取り組み─
(2)1997年11月に訓令33号に基づく専門官制度が導入されてから3年半が経過し、この間若干の改善が図られてきました。
2000年10月現在、東北大学に在職する技術職員は、6級以上60名(14.81%)、5級以下345名(85.19%)、合計405名となっています。級別定数は以下の通りです。
級
1
2
3
4
5
6
7
8
定数
11
36
71
46
181
44
13
3
率(%)
2.72
8.89
17.53
11.36
44.69
10.86
3.21
0.74
(3)当面の大きな課題の1つは、団塊の世代に6級退職を保障する課題です。
これまでの運動の到達として、団塊の世代にも6級以上での退職が当然保障されるべきです。しかし、2001年度の技術専門職の定数増は全国的に見ても、専門官について17増、専門職員について66増に留まっている状況であり、団塊の世代が50代をむかえた技術系職員の待遇改善にはなりえず、このままいけば団塊の世代で5級退職者が出ることが予想されます。
このような現状は、大学の昇給昇格の実態が他省庁に比べて全体として2級程度低いことに加え、団塊世代対策がまったく不十分なことからきています。この状況を打開するために、専門職の職場であるという位置付けを高め、専門官定数および専門職員の6級定数を拡大することはもちろんとして、団塊世代という昇給昇格の上でとくに不利な世代を救済する特別な手立てを講じるという観点からは、専門職の6級配分の拡大が重要です。
なお、技術専門官制度と事務専門職制度とはそれぞれに歴史的経過のある別個の制度ですが、掛長ポスト増が総務省管轄であるのに対して、専門職の導入や級の適用は文部省で判断し配置できること等、主任退職の続出を回避しようとする事務職員の取り組みには、学ぶべきものがあります。また、長年にわたる取り組みののち文部省による専門官制度の導入によって一応の終止符をうった専門行政職俸給表適用要求運動について、団塊世代対策とは区別して、きちんと整理、総括することが専門官制度にもとづく技術職員運動にとって重要です。これらを踏まえて、当面の団塊世代対策として文部科学省に対して早急な6級定数拡充策(少なくとも15%以上)を要求する必要があります。
これは、級別定数の配分にかかる取り組みなので、とりわけ全大教の運動にかかってくる課題です。全大教は、2001年5月から、全技術系職員を対象として、文部科学省と人事院に対する要求署名活動に重点的に取り組んでおり、組合も全大教に結集して取り組んできました(6/25現在213筆)。全大教はまた、「研修及び組織化に関する全国アンケート」にも取り組んでおり、近日中に集計結果を発表する予定です。
(4)専門官制度に基づく組織の改編
各大学では、専門官制度の導入を踏まえて、これまでの国大協モデルに基づくライン制の組織から、専門業務別に再編された稼働する技術組織への改変が検討されてきています。既に、熊本大学工学部では国大協モデルを改めた新たな技術部が1998年12月に発足しており、また、岩手大学工学部では、技術職員を含めた検討委員会の討議に基づき、2000年4月より新たな技術部がスタートしています。電通大、静岡大、山口大、山形大等、その他いくつかの大学・学部でも具体的な検討がおこなわれています。
(5)技術職員研修
2000年度は文部省、大学、部局等の主催による各種研修が活発に行われました。
また、東北大学で初の全国規模の技術研究会が、2001年3月1-2日、川内キャンパスを会場に開催され、7分科会、発表件数180件、参加者600名以上という規模でした。この研究会の運営には、理学部、金研、科研、工学部で構成する実行委員会があたり組合員もこの中で研究会成功のために努力しました。
今後も全国的な技術交流の場として発展させていく必要があります。
(6)技術職員部の取り組みの総括
専門官制度導入後、他大学には、組織化の試行(岩手大学)や検討(山形大学)、組織再編(秋田大学)等の動きがありますが、東北大学では、専門官制度に基づく具体的な動きや議論がほとんどありません。運動の遅れについては技術職員部としての対応が不十分であったことを反省しなければなりません。
2000年度は、団塊世代対策の署名運動の他、組合独自の大きな取り組みはありませんでしたが、2月3日の全大教単組代表者会議への参加、5月26-27日の東北地区協議会職種別懇談会への参加を通じて、全国や東北地区の技術職員と交流を深めることができました。また、技術系職員の技術の向上修得をはかるための各種研修会に、組合員が中心となって取り組んできており、一定程度、技術交流の広がりが出てきています。
2001年度運動方針と課題
(1)今日の研究教育の発展に対応できる職務と組織の構築、技術の向上、育成、継承などの具体的方策について討議を行います。
(2)専門技術業務の実態にあわない「15人ユニットのライン組織」を改めさせます。また、専門職制に基づく組織の構築を進めます。
(3)「8項目選考基準」を改めさせ、技術業務で正当に評価させるように大学当局、文部科学省、人事院に働きかけます。
(4)団塊世代対策として、6級以上の専門官定数の大幅拡大の取り組みが重要となっています。6級以上、7級、8級定数の大幅な増を目指して定数確保できるよう組合員の昇格運動に取り組みます。
(5)全国的な技術交流を発展させ、専門技術研修の充実に取り組みます。
(6)全附置研への「技術専門官」の導入について検討します。
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4.教務職員制度廃止による教務職員問題の全面的解決に向けて
(1)教務職員制度の問題点
教務職員は、給与水準として最も低い行(一)3級相当のまま終身処遇されています。23号俸、40歳前後で行(一)職員の給与水準とクロスして以降はずっと行(一)の水準を下回ったままになる給与構造の中にいます。とりわけ、28号俸問題等の給与の頭打ちの広範な存在は、教務職員制度が暫定的制度でありながら、長期にわたって存続してきた結果として顕在化したものです。
そもそも、教務職員問題は「教育職でありながら教員でない」という、整合性を欠く法的な位置付けに置かれた、大きな誤りのある制度の問題です。
沿革的にも、1949年6月の副手制度廃止に際し、助手に移行できなかった人たちを、一時的、緊急避難的に処遇する制度としてできた暫定的制度です。それにも拘らず、制度創設の際、副手以外の職種からも教務職員の中に統合した部分もあり、職種の多様性が出発点から存在していたことが処遇の改善を困難にしています。また、運用面においても、教育職の採用は大学(教授)が自由にできることから、「便利な職」として大学(教授)が便法的に使ってきたことが問題を一層複雑、深刻なものにしてきました。このように、教務職員問題の解決には、制度的な解決、即ち制度の廃止が必要です。
(2)全国的な定数振替の現況
国大協の1991年11月報告と人事院の調整給実甲措置を受けて、1993年度以降、全国的に定数振替が飛躍的に進み、1984年7月には1585名であった全国の教務職員の在職者数は、2000年4月には748名と半減しました。定数でみても、1991年度の1550名が、2001年度には891名と大きく減少しました。しかし、700名を越える教務職員が今なお在職し、その状況は極めて切迫したものがあります。調整給実甲措置の10年間の期限は2001年11月30日に到来します。55歳昇給停止措置が実施され、助手に昇任しても処遇改善にもならなくなる事態も生じつつあります。また、現在なお教務職員のままでいる長期在職者については、その多様性故に、助手昇任への道が益々困難になっているという状況もあります。
(3)国大協の動き
1991年に第4常置委員会が「報告書」を提出して以来、1993年には教務職員問題の現況調査アンケートが実施され、1994年6月には報告書の提出と、遅れている大学への警鐘も含め、国大協が教務職員の助手振替を促進してきたことは間違いありません。組合は、国大協が教務職員問題解決の大きなカギを握っていると考え、これまで様々な要求活動を続けてきました。
1999年以降は、国大協において制度問題が大きく議論され、総会において廃止の決定がなされるのではという期待がありましたが、独立行政法人化の動きなどから議題となるにいたりませんでした。
その後、本年6月に行われた総会に制度廃止の報告がされる見通しとなり、解決への道はにわかに具体性を帯びてきました。それまで、第4常置委員会と第7常置委員会の合同で、教務職員制度廃止を含む助手制度廃止の方向(教員への定数振替、一部は専門技術官に振り替えることが骨子)が検討されていましたが、これについて6月の国大協総会に報告され了承が得られれば、両委員会による「合同作業部会」で国大協としての文部科学省宛要望書の作成を含む検討作業に入る予定とされていたのです。
しかし、総会終了後に、全大教が国大協第4常置の降島委員長と会見した内容によると、国大協総会に報告された第4常置委員会と第7常置委員会の合同会議設置の報告は、「助手・教務職員制度廃止問題を検討するための合同作業委員会をつくり」、「11月の国大協総会を目途に検討をすすめたい」ということで、助手制度廃止そのものを総会に報告するまでにはいたらなかったようです。このことは、「基本姿勢は変わらない」としていますが、後退の感は否めず、この問題を取り組んでいる第4常置と第7常置の委員長が交代したことが大きいと考えられます。今後、11月総会に「制度廃止」が報告されるよう、働きかけが必要です。
(4)全大教の取り組み
全大教のワーキンググループが、1988年に教務職員問題を歴史的観点から明らかにし、その取り組みをまとめて職種別懇談会の討議資料として配布して以降、この問題に大きな展望が見えてきました。
全大教は、1989年6月28日に国立大学協会と文部省に教務職員制度廃止を求める要望書として提出し、以来、様々な形で教務職員制度廃止と教務職員の処遇改善の取り組みの先頭にたってきました。今年5月には、教務職員単組代表者会議をもち、全国の取り組みの交流と今後の課題について討論を行いました。
(5)東北大学における取り組み
東北大学には、2001年4月1日現在72名の教務職員が在職しています(予算定員も同数)。2001年度の概算要求数は24名で、そのうち6名の振替が認められ、さらに、2002年4月1日付けで1名昇任しすることが決まっています。なお、これまでの東北大学における教務職員数の変化の状況を表に示しました。
部局 | 男 | 女 | 計 | 2000/4/1 | 1999/4/1 | 1998/10/20 | 1997/8/1 | 1997/3/1 | 1996/5/8 | 1995/1/1 | 1994/8/1 | 1993/11/1 | 1991/11/1 | 1982/1/1 |
工学部 | 21 | 2 | 23 | 25 | 29 | 30 | 32 | 32 | 33 | 35 | 36 | 38 | 40 | 50 |
理学部 | 2 | 2 | 4 | 6 | 6 | 6 | 5 | 6 | 6 | 6 | 4 | 5 | 5 | 7 |
サイクロトロン | 3 | 0 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | |
農学部 | 5 | 9 | 14 | 17 | 17 | 16 | 18 | 19 | 19 | 20 | 23 | 26 | 29 | 34 |
附属農場 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 | 2 |
薬学部 | 9 | 5 | 14 | 15 | 16 | 18 | 16 | 17 | 17 | 16 | 18 | 18 | 16 | 18 |
医学部 | 1 | 2 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 2 | 3 | 3 | |
文学部 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 | 2 | 2 |
経済学部 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 2 | 2 | 2 | 2 | 1 |
附属病院 | 0 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 | 1 | 1 | 1 |
アジアセンター | 0 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | (文学部) 1 | 鳴子分院 | → | 1 | 1 | 1 | ||
金研 | 3 | 1 | 4 | 4 | 4 | 5 | 9 | 9 | 9 | 9 | 9 | 13 | 15 | 16 |
多元物質 | 0 | 2 | 2 | 反応研 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 |
0 | 0 | 0 | 素材研 1 | 3 | 2 | 2 | 3 | 3 | 4 | 5 | 5 | 5 | 5 | |
0 | 0 | 0 | 科研 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 2 | 3 | |
生命科学(遺生研)* | 2 | 0 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 3 | 6 |
工学分館 | 0 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | (工学部) 1 | |||||||
計算センター | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | (通研) 1 |
合計 | 46 | 26 | 72 | 82 | 89 | 91 | 96 | 100 | 102 | 106 | 112 | 124 | 133 | 150 |
行事予定:(3)全大教東北地区協議会第12回婦人集会の成功に向け取り組みます。
・ミニコンサート
・ミニ旅行
・学習会