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教育改革のあり方シンポジウムの資料 その1
資料1
『人材養成』の競争主義の教育から、人間の成長・発達を保障する教育へ
宮城高教組 出浦秀隆
1.わたしたちは子どもと教育をめぐる情勢をどうとらえているか
- 少年事件の多発、いじめ、登校拒否・高校中退の増加、「学級崩壊」などの深刻な事態
- 長年の政府・文部省の文教政策によってつくり出されたものである。
- その中核をなしていた“競争”と“管理”の教育の破綻を示している。
- 子どもの現状は、経済・社会・文化などあらゆる面にわたる国民犠牲の政治と不可分の関係があり、社会的危機として国民的な力で解決することが必要。
- 子どもと教育をめぐる危機を打開するため運動の新たな条件も広がっている。
- 国民的関心の高まり
- 子どもを教育運動の前進…教育条件整備を求める3000万署名、
全国各地の30人学級実施
- 国連「子どもの権利委員会」の勧告(日本の子どもたちは極度に競争的な教育制度のもとで、発達上の障害にさらされている)
2.わたしたちの教育改革運動の課題
- 子どもの実態を明らかにしながら、「教育改革」の本質とねらいを明らかにし、どうしたら危機を打開できるか教育改革プランを示すこと。
- 子ども観、学校観を豊かにすること
国連子どもの権利委員会の勧告
- 子ども・父母参加の学校づくり
教科、生活指導などで、子ども参加の教育実践
父母、地域住民に開かれた学校づくり
- 教育制度の民主的改善
統制の教育行政から、自由と自治の教育行政へ
高校入試制度、大学入試制度の改善
- 国民的共同行動の推進
30人学級、高校入試制度、子どもと文化の問題、子どもが育つ地域づくり、
《高校から見た大学改革、大学入試改革について》
- 進行している大学改革を、国民にとって大学はどうあるべきという観点からともに考えたいものである。
- 多くの高校では、高校入試で切り裂かれた子どもたちの人間関係を高校3年間で取り戻してやりたいと願いながら、全く裏腹に、大学合格率競争の下で心の傷を増幅させる事態となっている。→高校中退者の増加
- 高校現場の大学入試への率直な批判
- 大学合格率アップのため、一学期に学校祭を終わらせてしまう高校が増えている。学校行事をカットし、味気無い学校にせざるを得ない高校の追い込まれた状況を大学は知っているだろうか
- 出身校名が外に出ることで、「県内で何番目」「全国で何番目」と最大限宣伝され競争に拍車がかけられている。この対策はないだろうか。
- 一次試験の結果を本人に知らせること
- “つやのある授業”“山あり、谷ありの授業”を工夫して自主性、思考力を育てたいが、大学受験優先のためそれが困難になっている。
- 1月初めのセンター試験のため、教えたいことを早々に打ち切っている。
- センター対策は、結局はドリルが必要であり、それは、補習”でカバーできるから、0時間授業・7時間授業の補習強化となってしまう。授業そのものが補習化しつつある。
- 受験競争での勝ち抜きだけを考え、教育の目的も、教職員の人権も否定した特進校(かっての愛知や、一部私学のような)が全国を覆い、宮城でも拡大している。それが、まともな教育をますます困難にしている。
- 私大ではじまった“生き残り策…選抜時期の早期化。選抜方法の多様化、複線化、受験科目の少数化などは、高校教育をますます歪めている。
- 幼児期から競争に駆り立てられ、塾通い、模擬漬けになればなるほど、元気のない、自主活動に手のかかる事態となり、大学生となった暁には、当然勉強はしないしできない。
- 《センター試験》対策などを中心にやっている生徒から、「自分で考え、自分で学ぶ」目的意識のある生徒は育ちようがない。
- 18歳人口の減少している今こそ、大学の収容能力を減らさず、むしろ増やすことではないだろうか。一つの高校、一つの大学の生き残りで、子どもにとって魅力ある学校ができるのだろうか。
- こうした問題は、教職員の多忙化を招き、「進路担当教師の最大の不安は過労死!」という事態となっている。
☆子ども、教職員の健康と命を守り、人間を育てる高校・大学づくりのための国民運動、いつまでも子どもを敵対的競争に追い込んでおいて良いのかという国民的運動を提起するとき。
《2一1を中心に》
1、子ども・教育をめぐって何が問われているか
子どもたちが人間としてすくすくと育っていない、日本の未来、21世紀はどうなる
2、教育改革の焦点は、「人材養成の教育」か、それとも「人間の成長・発達を保障する教育」か
日本の子どもたちが「発達上の障害」にさらされているのは、「人格の完成」という教育の目的が否定され、「人材の養成」すなわち「選別と競争」の教育に著しく傾倒したからではないか。
(1)「教育改革」の内容は、財界の「人材養成」の丸のみ(資料2参照)
- 教育制度の弾力化、複線化
中高一貫教育の導入、大学入学年令の特例、小・中学校の通学区域の弾力化
- 教育内容の再編
中教審答申…「心の教育」「新しい時代を拓く心をそだてるために」
教課審 …「生きる力」
- 教員養成制度の改善
教養審答申…要請・採用・研修の各段階に応じた教員の資質向上
- 地方教育行政制度の改善 中教審答申…
国と地方自治体の役割の見直し(教育長任命・学級編制など許認可制見直し)
学校運営システムの統制強化(校長権限の拡大、任命主任制の徹底、職員会議の補助機関化、校長諮問機関の「学校評議会」の設置)
- あまりにも硬直した統制を「弾力化」し、「生き残り」「特色ある学校」に各教委・校長・学校を追い立て、多様に競争させ、統制強化をはかる
- 大学改革と研究振興
(2)政府・財界による「人材養成」=選別・競争の教育と決別し、人間の成長・発
達を保障する教育についての論議と運動が教育を再生
- 理念の基本…憲法、教育基本法、子どもの権利条約および権利委員会勧告
- 子どもから、草の根から、地域から
- これまでの民主的教育運動の財産を基礎に
資料2
政府財界の資料より
---引用文中太字は引用者(出浦)によるものです.---
---また,各々の見出しからは,全文を読めるリンクを張ってあります.---
「次代を担う子どもたちがたくましく心豊かに成長する、これは21世紀を確固たるものとするための基本であります。このため、まず、子どもたちが自分の個性を伸ばし、自信を持って人生を歩み、豊かな人間性を育むよう「心の教育」を充実させるとともに、多様な選択ができる学校制度を実現し、現場の自主性・自律性を尊重した学校づくりや、国際的に通用する大学を目指した大胆な大学改革を推進するなど、教育改革の推進に引き続き力を注いでまいります。
家庭特に父親や地域社会にも積極的な役割をはたしていただきたいと考えております」
(日経連平成10年労働問題研究委員会報告・議長 根本二郎)
第6章 企業の人材育成と教育
「人材は、企業のもっとも重要な経営資源である。企業のみならず国全体の評価も国民の質の高さに左右されよう。構造改革の中でも、とりわけ教育改革に力を入れることが我が国の将来にとって重要である。」
1.企業の人材
「企業の国際競争力は、最終的には人材によって決まる。これからのグローバル社会においては個々人の自律性、個性、多様性を理解し尊重すると同時に、創造性を有し、コミュニケーション能力・語学力、専門性をもっていることが人材の要件である。・・・」
2.21世紀に向けて教育改革に取り組もう
(1)21世紀に向けての精神的な座標軸
国際化が進むにつれて世界から問われるのは、わが国の独自性をどう認識するかということであろう。個人の価値観は多様化するが、自国の文化、歴史、風土についての理解を深めることを通して、精神的な一体性が認識されるはずである。その前提としてグローバル社会においては、日本の歴史はもちろん、諸外国の歴史、文化の歴史が不可欠である。外国と自国の相互的・連帯的理解を通して、日本人の精神的な座標軸を再認識することが必要となろう。
これが、こころの面から国民生活の質的改善に資することになるし、国際競争力の基盤の強化にもつながろう。
(2)教育の改革
昨年、本報告で指摘したように、これからは、「国際的な視野をもった、個性豊かな人間」の育成が教育の目標となる。国家間の競争のみならず、わが国の将来もこうした人材の厚 みによってきまってくるのであって、政府が構造改革の中で教育改革を最重要視している 姿勢は評価したい。すでに大学においては、カリキュラム編成の自由化などの改革にとりくみつつあるが、特色ある人材を育てるために、入試制度の自由化、独自化をもっと進めるべきである。大学入試が変われば、高校、中学の教育も変わり、個性と自律性がある多様な人材を育む環境が整えられることになる。同時に、就学ニ一ズが多様化するなかで、高等教育機関も、それぞれ専門性を高める努力が必要である。
家庭教育や初等・中等教育においても、個性多様性を認め、知育、徳育、体育のバランスのとれた教育が求められる。知育の面では、幼い時期から情報化時代に対応できる能力を培う必要もある。
日本の子どもたちは、さまざまな出会いの体験が以前と比べ少なくなっていることが指摘されるが、幼児期から多様な体験を通じて、自他の個性や能力の差異を埋解してこそ、真の自立性も生まれてくるものと考えられる。
教育改革には、時間がかかる。豊かな日本をつくるために、国を挙げて教育改革に取り組むことが必要である。
(財団法人社会生産性本部「中間報告」1998年7月)
はじめに 社会生産性本部会長 亀井正夫
日本社会は現在、急速な変化をとげている。少子・高齢化、高度情報化、経済のグローバル化が進み、地球環境問題や急激な国際情勢の変化にも直面している。21世紀を展望するとき、これらの問題にいますぐ抜本的な対応を施さなければならないことは言うまでもない。折から、わが国はいまようやく改革を進めようとしている。行財政改革、金融改革、経済構造改革などさまざまな改革の中でも最も重要なのは「教育改革」である。なぜなら、これからの世代が自分たちの手で、新たな価値観を構想し、これを着実に実行していくことのできる能力を身につけること、即ち「教育」こそが、活力ある21世紀の日本を作りあげていく力になるからである。
しかし、教育の現状については、ますます多くの人々が危機感を抱くようになっている。「学歴信仰とそれに裏打ちされた画一的受験競争、学校では子どもたちが荒れて、学級崩壊が進む一方で、受験のための塾や予備校が盛況である。教師や親は子どもたちの教育に自信をなくし、家庭や地域社会でも彼らを支える力を失いつつある。進学率が高まるなかで、不登校や中退が増え、学力の低下が起こっている。いまの教育のどこが問題なのか。学校、家庭、地域社会、行政などのありかた、さらには日本社会の大人たちの生き方や価値観も問われていると言えよう。
このような認識のもと、社会生産性本部は、社会政策特別委員会(委員長 堤 清二・(株)セゾンコ−ポレ−ション会長)を設置して、21世紀を展望した教育改革のありかたを明らかにすべく検討を重ねているところである。この中間報告書は、その活動の中間的な成果であり、教育改革のなかでも学校教育制度が緊急を要するとの認識から、教育界をはじめ各界への具体的な具体的な問題提起として取りまとめたものである。・・・」
《第1部本論》
1.問題の背景と基本認識
2.改革の基本的な考え方
3.小・中学校の改革
- 学区制の廃止
- 学校経営権を校長に
- 成績の相対評価を絶対評価に
- 義務教育の見直し
4.高校の改革
- 学校の経営権を校長に
- 高校入学は原則として無試験に
- 高校学力認定のため、統一の外部試験を
5.大学の改革
- 学生定員を廃止し、入試を無くそう
- 学費制度を改革し
- 大学の流動性、機動性を高めよう
6.文部省の役割と施策
- 文部省の役割(法令や通達にたよる管理、産業社会のための人材養成という文部省の役割は終わった)
- 中央審議会の方針(教育問題の所在が的確に捕らえられず対策が対症療法的)
7.教育委員会の整理縮小
8.教育を育む哲学、思想、文化の創造
《第2部 討論》
1.家庭教育の位置づけ
2.小・中学校改革に関連して
- 授業の改革(学級人数は20人〜25人が理想。それに近づけるべき)
- クラス編成を自由に
- 午前に基礎科目を集中、午後は学校を地域に解放
3.高校のカリキュラムの多様化を
4.小・中・高改革に共通して
- 不必要な会議・研究授業・事務書類を廃止する
- 校長・教師に「異動の自由」を
5.大学の改革に関連して
- 奨学金制度を改革する
- 研究費を公正な競争にもとづいて柔軟に配分しよう
- 国立大学の整理統合と、大学設置基準の自由化を
- 学校外教育の充実
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