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教育改革のあり方シンポジウムの資料 その2
資料3
ドイツ版「21世紀の大学」
1「大学大綱法」の制定と改正
- 1.1 高等教育政策における連邦政府と州政府の権限
- 1.2 1976年「大綱法」改正
- ・ 総合制大学(Gesamthochschule)構想と挫折、・特別選抜制度の導入、・ 標準在学期間の設定、
- ・ 大学管理の民主化=「教授団自治」から「集団代表制自治」へ
- 1.3 1985年「大綱法」改正 「多様化」路線の承認
- ・ 教員組織の改組、・ 大学院の制度化、・管理運営の変化=教授権限の強化
2.1 大学改革の社会的基盤
- ドイツ社会の変化を「産業社会」から「知識社会」「情報社会」への転換。
↓
経済のグローバル化=競争のグローバル化。決定的要素としての「知識」「情報」
- 競争の担い手としての大学=国際的水準における教育と研究が不可欠。
- 他方、ドイツ大学の国際的競争力の低下・危機の進行
- 大学と専門高等学校(Fachhochschule)の格差の存在
2.2 大学改革の視点
- 大学の大衆化→フンボルト的大学理念の再検討
- 国際的競争力維持のための構造改革・カリキュラム改革
業績原理・効率性・柔軟性・規制緩和→競争
- 国家の役割:「社会秩序政策」=競争の客観的・主体的条件の保障をはかる政策
2.3 大学改革の諸施策
- 高等教育機関間の社会的格差の解消
- 履修構造の改革
- 標準履修年次の明確化(←財源配分に反映)、
- 学位制度のアメリカ化
- 学生の成績評価(単位制度)と中間試験の実施(進級か進路変更か)
- 入学者選抜への大学の参加(大学間競争の強化)
- 財政改革
- 業績原理にもとづく財政政策=予算配分、
- 「包括予算」による大学の経済的自律性の強化
- 管理運営の強化・専門化(3節を参照)
- 効率的・戦略的管理運営の独立と強化=「大学理事会」(Hochschulrat)
- 評価制度の導入=「自己評価」と「外部評価」→大学間・大学内予算配分における競争
- 大学の研究機能の強化と実践志向
- 私立大学の奨励による「補完と刺激」
3「大学理事会」の創設と設立形態の転換
3.1 大学の組織改革の基本的考え方
- 包括的な組織自治の確立とその保障(人事・財政・管理運営など)
- 「政治的責任」・「戦略的責任」・「操作的責任」の区別と配分
- 「戦略的責任」を担う「大学理事会」の創設
3.2「大学理事会に関する10の勧告」(ニーダザクセン州1997年3月)
- 大学の戦略的指導の機能を担う「大学理事会」の創設を勧告。
- 大学理事会は現在の国家の役割を担う。
- 大学理事会は現在の大学の役割を担う。
- 5ケ年計画と適合的な予算案・戦略計画の承認。
- 理事会(学界3+経済3+政党3)は9名で構成。
- 4年の任期。
- 将来的に大学連盟の創設。
- 「大学理事会の導入を、大学の法的変化とからめることもできる。例えば、財団的性格へと転換する」。
- 大学理事会は学術団体とは区別される。
- 大学理事会の導入に伴い、官庁の当該部署は廃止とする。
まとめ
- 改革の視点、具体的施策に見るように、ドイツ大学の「アメリカ化」が進行しつつある。「国際的基準」への対応という名のもとに。
- 大学の大衆化、ユニバーサル化、しかし、他方で国際的競争、グローバル・コンペティションという状況のなかで、大学の競争力維持のために「経済的競争原理」の全面的導入。
- 「大学理事会」の導入と大学の設置形態の変更とが連動するところに注目。
- 大学の大衆化・ユニバーサル化、グローバル・コンペティションなど、大学をめぐる内外の状況には日独共通する側面が多いのは確か。新自由主義的な思想に基づきながらも、各国の特殊性も見られるが、高等教育改革があまりに歩調を合わせて進んでいるのはなぜか。より具体的契機が存在するのでは。
資料4
ユネスコ国際会議「21世紀の高等教育」経過と論点
UNESCO World Conference on Higher Educationへのリンク
1 ユネスコ国際会議の経過と議論の焦点化
- 1993年ユネスコ総会で、「高等教育の包括的政策」形成の必要性を採択。←高等教育と社会との相互作用とを視野にいれつつ、両者に対する変化の分析に基づく。
- そのため、bottom-upの政策形成、このため地域会議を積み重ねる方針。ハバナ(1996)、ダカール(1997)、東京(1997)、パレルモ(1997)、ベイルート(1998)
- 加えて、2つの地域レベルの専門家会議を開催:ストラスブール(1998:EUと共催)、トロント(1998)
- 論点:relevance, quality, financing and management, co-operation
2 社会と高等教育の変化における矛盾
(1) 社会のパラドックスと挑戦
- 経済のグローバル化とインフォーマル・経済セクターの成長、
- 労働移動の変化:熟練労働力の移動(brain drain)と未熟練労働の滞留、
- 人口学的変化:途上国の人口増大、先進国の高齢化・成人性剥奪、
- 情報技術を含む科学技術の発展と持続的発展の危機、
- 文化のグローバル化・国際化とa sense of identity。
(2) 高等教育のパラドックス
- 高等教育の拡大とこれに起因する教育財政の窮乏(主要なdilenma)、
- 教育の拡大と排除メカニズムの強化、
- 教育水準の拡大と彼ら学生の失業の深刻化、
- too much state intervention and too little state(予算、カリキュラムなど規制における国家介入と長期的視野の欠如)、
- 大学の開放=国際化と孤立化、
- 研究の重視と基礎的研究における大学の相対的位置の低下
(3) 大学のユニバーサル化の基礎
- 能力と意欲あるすべての人々の普遍的アクセスとあらゆる生活段階での適切に準備すること。
- あらゆる生活段階で、すべての人びとの教育要求に対応するため、様々な形態の介入の使用すること。
- 大学の機能は訓練することではなく、教育すること。
- 大学の機能は良心の喚起を含む。
- 価値の危機にあって倫理的な導きの役割をもつこと。
- 大学はその活動をとおして平和の文化(a culture of peace)を発展させなければならない。
- 他の高等教育機関や社会の諸機関との普遍的連帯を形成すること。
- 「責任ある自律性」と「透明なアカウンタビリティ」という二重の原理にもとづく管理を発展させねばならない。
- 特定の文脈にたいする特殊な基準を超えた質とレリバンスの明瞭な基準を設定しなければならない。
- 高等教育のユニバーサル化の究極の価値原理は、相互に支援的な分化と補完のもとで人類のユニティーのためにはたらくことである。
3 高等教育のrelevance, quality, financing and management, co-operation
(1) 高等教育のrelevance
- 政治家、
- 労働世界( the world of work )、
- 初等・中等教育制度、
- 文化、
- あらゆる人びと、
- どこでも・いつでも、
- 学生と教師
(2) 高等教育のquality
- スタッフの質(社会的課題との関わりや倫理的価値意識、教員の継続教育と適切なバックアップ戦略、企業職員と比較して適切な社会的・経済的地位の確立、女性の不平等のaffirmative actionによる解消、業績評価にもとづく資源の集中など)、
- カリキュラムの質(目標=基礎教育、社会的パートナーとの共同の目標、方法=伝達的教授法から学習へ、「throughout life」、構造の改革=生涯学習シェーマによる柔軟性)、
- 学生の質(メリット原理によるアクセス、中等教育機関との連携、学習環境の改善、
- assessmentとregulation文化の確立(目標の明確化、客観的なデータ収集と分析、学生・教師・職員の参加拡大、完全な自律性とサービスへの意志)=「この自律性、責任、アカウンタビリティがそもそも含んでいるのは、教師 /研究者がよい生活、勤務条件と給与をえているということである。この問題は多くの発展途上国でとくに決定的であるが、先進国でも高等教育の給与と企業でのそれにきわめてはっきりとした不均衡があるところでは、高等教育によって必要とされる才能が流出している。」
(3) 高等教育のmanagementとfinancing
- マネージメントの基準:社会的relevance, 質、平等>経済的基準、
- 経済と文化の緊張の解消、
- 長期と短期の緊張、
- チェックと自由の緊張(集権的モデルでも、分権的モデルでもない、第3のモデル=強力な専門的な中央authoritiesを擁するautonomous, responsible and accountableな原理に媒介された構造)、
- 教育拡大と要求されるサービスの増加→質や平等と両立する財政政策、
- 財政基盤の強化は国家の義務(新自由主義の受益者負担論批判)など。
(4) 高等教育のco-operation(略)
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