東北大学職員組合賃金・人事制度検討委員会
東北大学が法人化されて、はやくも1年以上がたちました。私たちは国家公務員でなくなり、大学と契約を結んではたらく労働者となりました。
変わったこと、変わらないこと。それぞれが感じていると思います。しかし、確実に変わったこともあります。それは、労働条件のうち、「自動的に決まる」部分、良くも悪くもちょっとやそっとのことでは変えられない部分が大きく縮小し、全国と東北大学の労使関係次第で変わってくる部分、つまりは「私たちの努力次第」で良くも悪くもなる部分が拡大したことです。国家公務員でなくなるとは、そういうことです。給与も手当も休暇が細かい点まで法律で保障されることはなくなり、労使自治に広い領域が委ねられました。労働三権(団結権、団体交渉権、争議権)は回復しました。
残念ながら、国立大学法人の制度は、財政や中期目標・中期計画を通した政府による統制を新しい形で残しており、とりわけ効率化係数等を通した財政的な締め付けは年々厳しくなってきています。こうした事態には、労使の立場を超えて大学人が団結して立ち向かわねばならないことも多いと思います。
しかし、学内においては、大学の方針次第で、労働条件は大きく切り下げられるかもしれません。その一方で、私たちが組合に結集して力強く交渉し、経営をチェックしていけば、はたらきやすい職場や公平な処遇を実現することができるかもしれないのです。
東北大学職員組合は、法人化後の労使関係にふさわしい、強く賢い組合になろうと努力しています。この資料では、法人化の前と後で何が変わったか、どこに問題があり、どのように変えればよいかを、組合の立場から整理してみました。自分自身のはたらき方をチェックし、改善していくために、このマニュアルをどうぞご活用下さい。
なお、このマニュアルに表現されている見解は、一部、賃金・人事制度検討委員会による試論を含んでおり、組合の大会・執行委員会で今後変更する可能性があることをご了承下さい。
項目 | 法人化前の労働条件 | 法人化後の法的枠組みと東北大学の制度 | 組合の考え方(試論込み) |
身分 | 国家公務員 | 国立大学法人東北大学職員として大学と労働契約を結ぶ労働者 | - |
法人化時点での承継 | --- | 旧常勤職員は法人に承継(法人法)。非常勤職員は「現状のまま移行」で、基本的に雇い止めなく移行。 | 全職員を承継すること。日々雇用職員は正規常勤職員として承継すること。 |
労働条件の法的枠組み | 国公法、人事院規則など。 | 労基法、労組法、均等法など。 | --- |
身分保障 | 身分保障あり。しかし、官制の改廃による廃職の場合は免職させられうる。これが法人化による非公務員化を合法化する根拠になった(国公法、人事院規則)。 | 就業規則に整理解雇条項あり(本則第25条第4・5項)。 | 整理解雇が可能になったことは待遇改悪である。「やむを得ない事情」があり、「事業の縮小・転換又は組織の改廃を行う必要が生じ」かつ「他の職務に転換させることが困難な場合」に限定していることは評価できる。 |
教員の身分保障 | 評議会の審査結果によらない限り、本人の意志に反して転任・免職・降任されないし、懲戒処分を受けない(教特法)。 | 本人の意志に反する降任・解雇は教育研究評議会の議によるという方針であったが、規程にはない。配転・出向は不明。懲戒は懲戒委員会の審査による(懲戒規程第3条)。 私立大学では、教授会審議を経ない解雇や懲戒処分の有効性が訴訟で争われた例あり(川端[2004]参照)。 |
教育研究評議会の審査結果によらない限り、本人の意志に反して配転・解雇・降任されず、懲戒処分を受けないことを就業規則に明記すること。 |
教員任期制の基本性格 | 三つの条件(先端的・学際的研究、期限付きの研究、研究助手)のいずれかを満たす特定のポストを任期つきとし、当人の同意を得てそのポストに配置(任期法)。一部部局では全教官職任期制や現任教官の任期制への転換事例があり。 | 三つの条件のいずれかを満たす仕事について、特定の教員と任期つき労働契約を結ぶ。1年過ぎたら退職の自由あり(任期法。本則第10条)。現任教員は当人の同意なく任期制に転換できない。任期制の導入は各部局の判断に委ねる。テニュア制の導入、教員公募の制度化、任期制教員数の拡大等を考慮した新制度への適切な移行を図る(中期計画)。 任期法と別に5年間までの有期雇用も可能に(労基法第14条、本則第10条2項)。対象の制約がなく、退職の自由がない(ただし暫定措置でいまのところはあり)。 | 任期法と付帯決議の趣旨を守り、全員任期制や現任教員の任期制への転換を行わないこと。労基法第14条よりも任期法を優先させ、無制限な有期雇用導入や人身拘束を行わないこと。 |
教務職員制度 | 教育職だが教官でない。職務に比して待遇が劣悪。一部、助手への振替を実施。 | 制度を廃止し、助手または技術職員への振替を行う。ただし、任期付き助手への転換あり。 | 現任職員を任期の定めのない助手等に転換し、処遇を改善すること。 |
日々雇用の非常勤職員(定員外職員) | 1980年以前から雇われている日日雇用職員が存在。定員内職員と同等の仕事をしている。部局予算による雇用。毎年3月30日に雇い止めし、4月1日からの任用を繰り返す異常な任用形態。昇給・手当・退職金・休暇等が劣悪。 | 労基法適用。「現状のまま移行」の方針により「准職員」となった。部局予算の範囲で雇用。4月1日から翌年3月31日までの1年の有期雇用。継続任用は3年限度で特殊な場合は5年限度だが、1980年以前の採用者は例外とする。正規職員への登用はしない。給与、退職手当は現状のまま。期末手当は任用中断日がなくなることで夏の分が2005年度から改善される。 | 1980年以前から長期にわたって在職している日日雇用職員を正職員とすること。それができない場合でも、正職員と同等の職務についていることにかんがみ、以下の点を正職員と同等にすること。
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時間雇用の非常勤職員(定員外職員の中のパート職員) | 部局予算による雇用。退職金なし。昇給・手当・休暇等が日日雇用よりも劣悪。 | 労基法、パート労働法適用。「現状のまま移行」により新たに「時間雇用職員」となった。部局予算による雇用。1年の有期雇用。継続任用は3年限度で特殊な場合は5年限度。法人化以前から更新限度なしで雇われていた時間雇用職員には、法人化後も限度はつけない。 | 以下の改善を求める。
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総長選挙参加 | 教授・助教授・専任講師と一部助手が選挙権。 | 学長選考会議が選考(法人法)。東北大では、評議会、経営協議会が推薦した候補を基礎に、学長選考会議が選考。構成員投票を廃止。 | 従来以上の構成員参加を「意向投票」として保障すること。総長選考会議に現職総長や理事を加えないこと。 |
教育研究評議会の権限 | 評議会が大学運営の重要事項を審議・決定(国立学校設置法、教特法)。 | 組織の改廃は役員会、予算審議は役員会と経営協議会が審議(法人法)。評議員は管理職ではない。 | 組織の改廃や予算に関する審議権を教育研究評議会にも認めること。 |
部局の運営 | 教特法適用。教授会の議に基づいて学長が行う。事実上教授会自治。 | 教特法は不適要。学校教育法第59条により教授会は重要事項を審議する権限を維持。役員会は運営費交付金の範囲内でたてられた部局教授会の雇用方針を尊重。管理職としての副部局長設置。教員人事は別項参照。 | 教授会を研究・教育の重要事項審議機関とすること。 |
事業場の単位 | --- | 小規模なところ以外は部局。小規模なところは事務組織の管轄によってくくっている。過半数代表選出方法は事業場によって異なる。 | 事業場における使用者代表を明確にし、労働者の過半数代表選挙を民主的に行うこと。 |
教員の採用・昇任 | 選考。教授会の議に基づき総長が行う(教特法)。 | 多様な採用制度の導入。部局長の申し出に基づき総長が行う(教員任免規程)。 | 教授会の議に基づくことを就業規則に明記すること。 |
職員の採用 | 国家公務員試験。 | 「国立大学法人等職員統一採用試験」による。 | 検討中 |
定員 | 総定員法など。 | 東北大学独自に、運営費交付金で雇用する教職員を「配置職員数」と「人件費総枠」で管理。部局自己収入による雇用は、退職金について部局が責任を持つならば可能。非正規職員は別枠の部局予算。非常勤講師は別枠だが、部局人件費で雇用可能なようでもある。 | すべての雇用形態を包括する人件費基準を作成し、雇用について大学で責任を持つこと。 |
勤務の原則:職員の義務と権利制限 | 忠実義務、職務専念義務、政治的行為(国公法)、公務員の地位を利用した選挙運動禁止、教育者の地位を利用した選挙運動禁止(公職選挙法)。 | 誠実義務、職務専念義務、施設内での政治・宗教活動の禁止条項あり(本則第31、32、36条)。政治・宗教活動禁止についてのガイドライン案が出されたが、過半数代表者のコメントを受けた後、未確定。 | 政治・宗教活動禁止条項を廃止すること。当面、政治・宗教活動の定義を限定し、職場秩序を乱し、業務遂行を妨げる活動以外は禁止しないことを明確にすること。 |
勤務の原則:職員の権利と使用者の義務 | 平等取扱いの原則(国公法)。 | 上司の義務、大学の安全管理義務などにふれ、用語も労働契約上のものにほぼなっている(俸給→基本給、休暇願→休暇届)。しかし、労働者の義務・使用者の権限規定が多い割には、労働者の権利・使用者の義務規定が少ない。 | 対等平等の契約にふさわしい就業規則とすること。民族、国籍、思想信条、性別などにより差別されない均等処遇原則、公益通報者保護、健康診断に際し医師を選ぶ権利などを明記すること。 |
正職員人件費財源 | 勤務条件法定主義と連動し、義務的経費として措置される。 | 運営費交付金の一部であり、裁量的経費。効率化係数はかからないが、退職手当分が十分に措置されない懸念がある。算定の基礎がはっきりせず、人事院勧告・給与法改正に追随した算定になる危険がある。 | 政府は、人事院勧告・給与法改正にかかわらず、各大学の自主的人事制度設計に対応した人件費を確実に措置すること。 | 非正規職員人件費財源 | 物件費から支弁 | 運営費交付金における人件費算定の基礎に算入されていない。 | 政府は、運営費交付金算定の基礎に、非正規職員の人件費を加えること。 | 給与制度 | 給与法、寒冷地手当法、人事院規則等により決定。 | 法人化前の給与表と給与制度をほぼ維持。著名な研究者や専門職に対する年俸制(給与規程第46条)や外部資金による特別手当(同上第40条)制度新設。大学院担当の基本給調整分を改訂することを検討中。2005年人事院勧告・給与法改正で予想される給与削減にそのまま追随する可能性あり。 | 議論を尽くすことなく給与を変更しないこと。自主性なく給与法改正に追随しないこと。給与の原資にかかわらず、雇用責任を明確にすること。 |
諸手当 | 同上。 | おおむね法人化前のとおりだが、寒冷地手当が人勧と同様に廃し・削減された。人事交流の場合は国立大学法人間の移動でも単身赴任手当を支給。調整手当の移動保障縮小。新幹線通勤手当の対象拡大。衛生管理手当新設(給与規程第39条)。裁量労働制実施によって教員に支給できなくなった入試業務・論文博士審査分の超勤手当を特殊勤務手当化(特殊勤務手当支給細則)。2005年人事院勧告・給与法改正で予想される手当再編にそのまま追随する可能性あり。 | 議論を尽くすことなく現在の諸手当を削減しないこと。自主性なく給与法改正に追随しないこと。 |
昇給 | 国は1年に1号俸昇給させることができる。55歳昇給停止。 | 国家公務員時代の昇給方式を維持。ただし運営費交付金次第で人件費総額の制限が厳しくなる。2005年人事院勧告・給与法改正で予想される査定強化にそのまま追随する可能性あり。 | 就業規則によって、少なくとも現行の昇給ペースを維持すること。公正で透明な評価基準なしに評価を処遇に結びつけることに反対。 |
昇格・昇任 | 国の級別定数による制限あり。平等取扱い原則があるが(国公法)、東北大では女性が係長級以上になることが困難。 | 全国レベルの級別定数はない。東北大は国家公務員時代と同じだが、運営費交付金の範囲内で実施する方針。均等法に対応した苦情処理制度はつくらず。 | 少なくとも現在よりも教職員が不利にならないようにし、かつ女性の昇格・昇任を改善すること。均等法に対応し、雇用上の性差別を扱う苦情処理制度を整備すること。人事査定・評価制度を導入する場合、性差別を誘発しないことを制度的に保証すること。 |
給与制度の変更 | 人事院勧告と法改正で賃上げ・賃下げ。 | 人事院勧告は合理性があるとして寒冷地手当を削減・廃止。 | 人事院勧告に無批判に追随することなく、自主的な人事政策を策定すること。給与制度変更の年次サイクルを明確にすること。 |
教員評価と労働条件の結びつき | 勤勉手当などについて、部局毎に検討・実施されている。 | 評価に基づく給与制度の導入を計画(中期計画)。具体案不明。 | 公正で透明な評価基準を確立することが先。それなしに評価を処遇に結びつけることに反対。 |
勤務時間・休憩 | 8時30分始業で17時終業。8時間勤務で休憩30分。このほか勤務時間中に15分の休息が2回ある。実質は7時間30分労働して1時間休む。 | 8時30分始業・17時15分終業、休憩45分・休息15分。実質7時間45分労働して1時間休むことになり、負担増。 | 労働時間短縮計画を立てること。 |
職員の超過勤務 | 命令による。超過勤務手当はリジッドな予算制約内でしか支払われない。不払い残業(いわゆるサービス残業)が横行しているが、労基法適用外のため、労働基準監督機関に申し出ることができない。 | 労使協定により実施。不払い残業は罰則付きで禁止されている違法行為だが、民間企業でも国立大学法人でも横行している。労基法・三六協定違反は労働基準監督機関に申し出ることができる。実際、労基署から不払い分の支払を命じられるケースもある。 | 超過勤務を極力行わず、教職員の健康と私生活を守る方針を明確にすること。不払い残業がないようにすること。組合で相談受け付け。労働基準監督機関への申し出を支援。 |
教員の勤務時間管理 | 形式は職員と同じだが、実態は異なる。 | 教授研究が労働時間の過半を占める講師以上の教員に専門業務型裁量労働制を導入できる。東北大では労使協定により、病院以外は助教授以上全員に適用。診療を行う教員は対象外。 | 裁量労働制を導入する場合、あわせて教員の負担増に報いる増単手当を新設すること。 |
宿日直 | 医師・歯科医師などにつき給与法等で規定。 | 労基法では、緊急医療が頻繁に行われれば宿日直ではなく通常の勤務という扱い。そうした部分は交替制や変形労働時間制での対処が必要。 | 負担増や待遇改悪が生じていないか要調査。 |
年次有給休暇 | 20日。20日まで繰り越しあり。日、半日、時間単位取得。 | 法人化以前の日数を維持(職員労働時間等規程第20条)。時間単位の取得は労基法違反とみなされるおそれがあるので慣行として維持(同上第22条)。13事業場で労使協定により計画年休制度を導入。 | 計画年休の強制をしないこと。とくに、准職員・時間雇用職員の年休自由取得権を脅かすような導入をしないこと。 |
病気休暇 | 勤務時間法により有給で保障。非常勤職員は無給。 | 法人化以前の制度を維持(職員労働時間等規程第25条)。准職員・時間雇用職員は無給(准職員等労働時間等規程第15条2項) | 准職員・時間雇用職員とも有給休暇とすること。 |
特別休暇(出産、結婚、忌引き、選挙権行使、ボランティアなど) | 勤務時間法により有給で保障。日日雇用職員・時間雇用職員は劣悪。 | 法人化以前の制度を維持(職員労働時間等規程第25条)。男性の育児参加のための特別休暇新設などの改正(同条)。准職員・時間雇用職員は劣悪。 | 長期勤続者のリフレッシュ休暇を創設すること。特別休暇の日数を改善すること。准職員を正職員と同等で処遇し、時間雇用職員に結婚、忌引き休暇を保障すること。 |
育児休業 | 子どもが3歳になるまで。無給。1年間は育児休業手当金が文科省共済組合から支給され部分的に所得保障。任期つき教官も取得できる。 | 育児介護休業法の最低限より高い制度を維持。育児休業給付金が雇用保険から支給され部分的に所得保障。育児介護休業法改正に従い、准職員・時間雇用職員も一定の条件に当てはまれば取得できる(採用から1年を経過し、休業終了日以後、1年雇用されること)。 | 准職員・時間雇用職員は、採用後1年を経過したら、休業終了後、ただちに雇用が終了する場合を除いて、取得できるようにすること。 |
介護休暇(休業) | 連続6か月以下。無給。介護休業手当金が文科省共済組合から支給され部分的に所得保障。任期つき教官も取得できる。 | 法人化以前の制度を維持。介護休業給付金が雇用保険から支給され部分的に所得保障。育児介護休業法改正に従い、准職員・時間雇用職員も一定の条件に当てはまれば取得できる(採用から1年を経過し、休業終了日以後、1年雇用されること)。 | 准職員・時間雇用職員は、採用後1年を経過したら、休業終了後、ただちに雇用が終了する場合を除いて、取得できるようにすること。 |
任期制教員が育児休業・介護休業をとった場合の任期進行 | 停止しない。 | 停止しない。 | 育児休業・介護休業中は任期の進行を停止すること。 |
研修 | 教員は勤務地を離れた研修、現職のままの長期研修が権利として保障されている(教特法)。職員の場合は、任命権者が実施する(国公法、人事院規則)。 | 教員の研修について、教特法と同様(本則第46条)。 | --- |
職員の人事交流の性格 | 国の組織内部での異動。 | 東北大学以外の国立大学法人・独立行政法人との人事交流は出向となる。文部科学省との人事交流は辞職・採用となっていると思われる。他大学では役員出向制度を利用して、国家公務員への復帰を予定した役員就任もあるが、東北大学では要確認。 | 役員出向制度を利用した役員就任はおこなわないこと。出向は後述。 |
配置転換に関する労働者の権利 | 異動命令の権限は強力。教員は評議会の議によらなければ転任されない(教特法)。 | 配転命令権を明記(本則第13条)。私学では教員を職員に職種転換したことが紛争となる例あり。 | 適性や家庭責任などについて、本人の事情と希望を踏まえること、転居を伴う配転はその都度本人の同意を条件とすること、他職種への転換は教員については行わず、職員についてはその都度本人の同意を条件とすること。 |
出向に関する労働者の権利 | --- | 人事交流は在籍出向で行う。就業規則案に包括的出向命令権を明記(本則第13条)。労働条件の不利益変更を防止する条項なし。出向先は5カ所(出向規程第4条) | 出向は、その都度本人の同意を条件とすること。出向・復職の手続や、労働条件が不利益変更されないことを就業規則に明記すること。 |
転籍に関する労働者の権利 | --- | 労働契約の解除・再締結なのでその都度本人の同意が必要。本学採用者の転籍は行わない方針。 | 裁量的な転籍命令権を就業規則に記さないこと。 |
兼職 | 国公法・人事院規則等による制限。勤務時間内兼職は、兼職時間だけ給与減額。 | 週15時間、月45時間、年間360時間、本学給与の額を超えるものは兼業審査会で審査。勤務時間割り振りがないことから、集中講義の泊まりがけ非常勤講師などは有給休暇を取得して出かけることになる。 | 法人化以前に認められてきた兼業については、支障がないようにすること。 |
倫理 | 国家公務員倫理法・倫理規程。 | 東北大独自に、従来の法・規程に準じた倫理規程を制定。教職員の規程や役員に適用されないが、役員の規程は未定。利益相反のルールを検討中。 | 非常勤役員を含む、役員の倫理規程、役員・職員の利益相反ルールを明確にすること。 |
安全・衛生 | 人事院規則などによるが、罰則なし。 | 労働安全衛生法による。違反には刑事罰あり。事業場毎に、規模に応じて総括安全衛生管理者、衛生管理者、産業医、作業主任者を選任し、安全衛生委員会を置く。 | コンプライアンスのための適切な措置をとること。学生の安全も考慮した措置をとること。安全衛生委員会で超過勤務による健康問題をチェックすること。 |
災害補償 | 国家公務員災害補償法による。 | 労働者災害補償保険法による。補償が現行水準を下回る部分は、国大協の保険に加入して措置。 | 政府は、当然増というべき保険料を運営費交付金の算定基礎に加えること。 |
苦情処理制度 | 不利益処分に関する人事院への不服申し立て。(国公法・人事院規則等)。 | 法的保障なし。東北大学は苦情処理制度を整備せず。 | |
雇用機会均等 | セクシャル・ハラスメントに関してのみ具体的規制と相談制度あり(人事院規則、人事院指針) | 女性差別・セクハラに関しては労使代表による苦情処理制度等を設けねばならないが(均等法と厚生労働省指針)、東北大学ではセクハラ防止対策に集中している。 | 労使代表と専門委員・外部委員による苦情処理制度を整備すること。セクハラだけでなく雇用に関する性差別を取り扱うこと。 |
懲戒 | 国公法、人事院規則、人事院指針などによる。教員は評議会の審査結果によるのでなければ懲戒処分を受けることはない(教特法)。人事院の不服申し立て制度あり。 | 教員の懲戒基準は教育研究評議会で承認しているが、懲戒審査自体は懲戒委員会で行う。不服申し立て制度なし。 | 教員の懲戒処分は教授会・教育研究評議会の議に基づくこと。労使代表を含む不服申し立て制度を整備すること。 |
定年 | 教官63歳。職員60歳。国公法、教特法、東北大学の規程による。 | 法人化前と同じ。法科大学院の教員など、職務の特殊性がある場合は個別に規定。高齢者雇用促進法にしたがい、教員は2013年度までかけて定年を65歳に引き上げ。職員は再雇用制度を拡大して65歳まで雇用(人事戦略会議検討中)。 | 年金支給開始年齢にあわせ、65歳を定年とすること。政府は、法令遵守に従って生じる人件費当然増分を運営費交付金で保証すること。 |
退職金 | 国家公務員退職手当法による。法改正で切り上げ・切り下げ。 | 国家公務員時代から通算される。現行制度と同じ支給基準。 | 准職員に正職員と同じ積み立て方式の退職手当制度を適用すること。時間雇用職員に退職手当を支給すること。 |
整理解雇 | (身分保障の項参照) | (身分保障の項参照) | (身分保障の項参照) |
雇用保険 | 不適用。 | 加入。保険料を負担しなければならない。文科省共済との給付調整が一部あるが、保険料が安くなるわけではない。 | |
公務員宿舎 | 利用可能(国家公務員宿舎法)。 | 宿舎は文科省や財務省が国立大学法人に現物出資。国立大学法人に出資されない公務員宿舎に入居していても、引き続き居住できる。宿舎使用料は宿舎法を踏まえて各国立大学法人が決定する。 | 唐突な使用料引き上げなど負担増がないようにすること。 |
公的医療保険・年金 | 文部科学省共済組合(国家公務員共済組合法など)。 | 法人化前と同じ。独立行政法人改革により変化する可能性。 | --- |
労働基本権 | 国公法により大きく制限される。職員団体に加入できるが、職員団体の交渉権は限定されており、労働協約締結やストライキはできない。大学が交渉を拒んでも罰則はない。 | 団結権・団体交渉権・争議権を保障。教職員は労働組合に加入できる。大学が団体交渉を拒めば不当労働行為として罰せられる(労組法)。交渉のあり方等は労働協約による。 | 組合と誠実に交渉すること。 |
不当労働行為 | 制度不適用。 | 労働委員会への申し立て・訴訟が可能(労組法)。 | 不当労働行為を行わないこと。組合活動抑制と労使紛争につながりかねない政治活動禁止条項を就業規則から削除すること。 |
賃金交渉 | 学内ではほとんどなし。 | 団体交渉権を保障。東北大学は、賃金・人事制度改定のサイクルを明確にしていない。 | 賃金・人事制度を改定する場合の年次サイクルを明確にして、組合と誠実に交渉すること。 |
就業時間内組合活動 | 形式上禁止。実態は、様々。 | 東北大学では、労働協約に規定した範囲のみ。 | |
便宜供与 | 実態は様々。 | 労働組合の独立性を損ねるものは禁止されているが、軽微なものは容認されており(労組法)、便宜供与の中止や組合間差別はむしろ不当労働行為にあたる。東北大では、労働協約と契約に基づき事務所貸与。 |
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